Mac World Expo Tokyo 2000 Report (4)
最終更新 2000/06/04
このページには Mac World Expo Tokyo 2000 についての個人的なレポートを掲載しています。
この情報はあくまでも私個人の感じたレポートです。これが絶対正しいとは限りません。みなさん個人の価値観で判断して下さい。特に極秘情報などは書きません。(知りません。(^^;))公開された情報だけです。
また、ほめたり、苦言を呈したりしていますが、何ら利害関係はありません。ただ、少しでも良くなって欲しいと期待しているだけです。
4)iToolsについて
1月のSan Fransisco Expoで発表されたアップルのインターネットサービスであるiToolsはほとんど紹介されませんでした。単に日本語でのサービスも準備しているというだけの紹介であり、あまりの淡白さに驚いてしまいました。日本人が英語を使えないため説明しても無駄だと思ったのでしょう。我々も頑張って英語程度は使えるようにならないといけません。時間的制約もあったのでしょうが、残念です。
iTools
- 私の解る範囲で補足しておきます。iToolsは北米でのサービスではありますが、英語さえ読み書きできれば日本のMac OS 9ユーザでも使えるようになったそうです。つまり、全て英語で登録すればちゃんと「Japan」が選択でき、iToolsのサービスが利用できるわけです。
- iToolsはフリーメールの「Mac.com」、20MBのフリーホームページの「iDisk」、 HomePageのテンプレートサービスの「HomePage」、「有害」サイトに接続できないようにする「KidSafe」、インターネットポータルサイトの「iReview」、グリーティングカードサービスの「iCards」から構成されています。
- 同様のサービスはインターネットポータルサイトなどで行われていますが、アップルらしい味付けがされており、使いやすいようです。特にiDiskは単にホームページスペースにとどまりません。デスクトップにマウントできるので自分のHDDと同じように使えるのです。通常のフリーホームページはHTMLが理解できないとファイル保存スペースとしては使えませんから、大きなアドバンテージです。自分のHDDと同じように使えるので緊急時に使えそうです。出張中にHDDがクラッシュしてHDDの中身を全て失っても最低限必要なファイルを置いておけばiDiskから利用できるわけです。
- iToolsはすぐに日本語で使えるわけではありませんが、非常に魅力的です。iToolsはMac OS 9でないと利用できませんから私のようなMac OS 8.6Jユーザには利用資格はありません。そのためiToolsを使いたいがゆえにMac OS 9を購入するユーザが増えそうです。と言うよりも、iToolsはアップルがMac OS 9を販売するための大きな支援策なのでしょう。Mac OS Xへユーザの興味が移行する中、今一つ売れていないMac OS 9の販売をテコ入れするためにアップルが知恵を絞った結果生まれたのがiToolsだと私は思っています。もちろん、Mac OS 9にiToolsに対応する機能が組み込まれてあったからできたことではありますが。
- 私もそのうち使ってみようと思っています。ただ、今すぐにMac OS 9を購入するつもりはありません。欠陥商品は買わない主義です。アップデータをあてないと使えないのでは困るからです。現在のMac OS 9.0.xには大小さまざまなバグ(欠陥)があるようです。4月からインターネット上でMac OS 9.0.4アップデータが配付され始めましたが、アップルはいつになったら店頭の製品をバグフィックス版に置き換えるつもりなのでしょう。私はそれを待っているわけです。
- まあ、Mac OS 9.0.4にもバグは残っているようですからFinal Mac OS 9.x.xの登場はまだ先でしょう。最終版ぐらいはインターネットではなくショップで販売してもらいたいものです。 ただ、それはかなり先になるかもしれません。つまり、Mac OS Xの発売よりも後になるかもしれないということです。店頭にMac OS 9の在庫が大量に残っていれば、アップルは新しくMac OSを製造しないだろうからです。しかし、Mac OS Xが動作しないPower MacintoshもあるのですぐにMac OSが販売終了になるわけではないでしょう。気長に待ってみましょう。
- 追加情報
- のんびりレポートをと書いているうちにMac OS 9.0.4Jが店頭販売されています。
- ただ、Mac OS 9.0.4Jですから一部のバグは残っています。ですから、Final Mac OS 9.x.xというわけではないのです。ただ、Mac OS Xの発売が4ヶ月ほど延期されたこともあり、Mac OS 9の重要性が増しているのは確かです。どこまでMac OS 9が進化するのか楽しみです。まあ、これ以上いじらずにバグ取りに集中する方が良いとは思いますが……
5)Mac OS Xについて
次期Mac OSであるMac OS X日本語版がついに披露されました。1月にSan Fransiscoで発表されたのは英語版でしたが、その日本語版が早々と披露されたわけです。そしてスケジュールも公開されました。もう「次世代」という修飾語は使えないぐらい早く登場します。「次期Mac OS」と書いたのはそのためです。Mr. Jobsのプレゼンの順に合わせて説明しましょう。Mac OS Xの基本コンセプトは以下の通りです。
Single OS Strategy
- これは1月にSan Fransiscoで発表されたことと同じです。「4月にFinalベータバージョンを提供し、夏には製品版を販売する。そして、2001年の1月からは全てのMacintoshにMac OSではなくMac OS Xをプリインストールして出荷する。」というものです。つまり、21世紀にはMac OS Xのみが提供されるわけです。アップルはMac OSとMac OS Xを併売するのではなく、Mac OS Xのみを販売することに決めたのです。だから、「Single OS」なのです。このことについては以前に書きましたのでここでは省略します。ただ、この以前に書いた印象は大きく変わりました。それについては後述します。
- 追加情報
- 5月のWWDC(World Wide Developers Conference)でスケジュールが延期されました。夏にはパブリックベータが提供され2001年の1月から発売されるそうです。簡単に言えば4ヶ月ほどスケジュールが延期されたのです。延期された理由はわかりません。技術的な問題が明らかになったのか、Mac World Expo後にソフトハウスから修正要求があったのか。何らかの改良が必要なのでしょう。
- Macintosh情報誌はマイクロソフトの同様な延期を引合いに出し、好意的に受け止めているようです。私の立場は保留にしたいと思います。情報がまだ少ないからです。
- ただ、Mac OS 9がすぐに店頭からなくなってしまうかというとそうでもないようです。これはMac OS 9を必要とするPower PC 604xモデルや Power PC 603xモデルが現役で使われているからです。もちろん、Macintoshの新製品にはMac OS Xがプリインストールされているわけですし、おそらくMac OSをインストールしても起動しないでしょう。ですから、Mac OS 9は旧Macintoshのバージョンアップ用OSとしてしか意味を持ちません。細々と販売されて将来にはインターネットから無償配付されるようになるでしょう。ただし、現在無償配付されているのはMac OS 7.5.5J(漢字Talk 7.5.5)までですから、かなり遠い将来になるでしょう。その時にアップルがまだ存在していればということになります。
State of the art plumbing
- この英語が何を意味するのかは私にはよくわからないのですが、古いテクノロジの上に新しいテクノロジを加えるということのようです。Mac OSをきれいにお色直しをして新しいテクノロジを組み込むということを意味しているようです。
- これはMac OSとの互換性を維持しながらMac OSにあった不安定さを改善し、強固なOSであるUNIX OSのコア(マイクロカーネル)を組み込んだことを意味します。 DarwinというLinuxライクなマイクロカーネルにより強固なメモリプロテクションや仮想メモリとプリエンティティブ・マルチタスクを実現しています。 簡単に言えばMac OSのようにメモリ管理によるトラブルでシステム全体が異常終了することがなくなるわけです。
- Mac OS Xのカーネルですが、元々はMr. Jobsが興し、アップルに買収されたNeXT社が開発したUNIX互換OSであるOPENSTEPのカーネルであるMach(マーク)がベースになっています。ワークステーション用の強固なOSであるUNIXをパソコン用に移植しようとしたわけです。Mac OS XがLinuxと比較されるのはここに理由があります。このMachのバージョン2.5をベースにしたものがRhapsodyであり、その名称変更版であるMac OS X Serverです。余談ですが、Mac OS X ServerとMac OS Xは全くの別物です。単に名前が似ているに過ぎません。さて、Mac OS XではOPENSTEPの最終版のカーネルであるMach 3.0をベースにしています。Mach 3.0では複数のCPUへ平均的に負荷を分散させ効率的に処理するマルチプロセッシングに対応しているそうです。
- このMach 3.0を含むMac OS Xの基盤部分がDarwinという名前で公開されています。ですから、実際にはMach 3.0=Darwinではなく、Darwinにはネットワーク機能なども含まれているのですが、細かいところはおいておきましょう。私もそんなに詳しくないのです。ただ、この「公開」については説明が必要でしょう。公開はオープンソースという形式で行われており、UNIXの世界では当り前のことです。これはDarwinのソースコードを公開し自由に改変を認め、改変の結果を集中管理しDarwinへ再び組み込むことで改良を行う方式です。これは無料で行われます。つまり、ソースコードを見るために費用は必要無く、逆に改良した結果に費用を支払うこともしないということです。ですから、Darwinが全世界の有能なソフトエンジニアの興味の対象になれば、アップルは自らの負担が極端に少ないままで改良版のDarwinを手に入れられるわけです。
- 先ほど「古いテクノロジ」「新しいテクノロジ」と書きましたが、実はそうではないのです。テクノロジにはいろいろな側面があります。アイデアはもちろんですが、環境が大きく影響します。UNIXは別に新しいOSではありません。FreeBSD系をはじめ、いろいろな種類がありますが、古くからワークステーション用に使われてきたOSです。当時のパソコンに搭載されていたCPUは非力でワークステーション用の強力なCPUのようにUNIXを動作させることができなかっただけなのです。その後、PentiumやPowerPCという強力なCPUが登場し、パソコンでUNIXが動くようになっただけのことです。ようやく、誰でもUNIXを使える環境が実現されたというのが真相です。
Killer Graphics
- さて、Darwinは基盤技術でしかありません。その上にさまざまな技術が組み合わされて始めてOSとして機能するわけです。ここでは画像描画技術が大きく3つにわけて紹介されました。まず、2D GraphicsにはPDFベースのQuarts、3D Graphics用にはIndustry StandardのOpenGL、マルチメディア用にはQuickTimeと豪華なグラフィックエンジンが用意されました。詳しくは知りませんが、Mac OSではQuick Drawという2Dグラフィックエンジンが長く使われてきました。このエンジンの出来が良かったため、後継のエンジンであったQuickDraw GXが定着しなかったこともありました。そして、QuickDarw 3Dが登場するなどアップルの画像描画技術は継ぎはぎだらけになってしまいました。これらがMac OS Xでは整理され統廃合されたようです。
- QuartsはAdobe社が開発したPDFをベースにしています。これはAcrobatで使われている技術でPostScriptがベースになっています。PostScriptは印刷用の記述言語で大多数のページプリンタで採用されています。Acrobatはこの技術を使って画面に印刷すべき内容を表示するわけですが、Mac OS Xはそれを全面的に採用したわけです。つまり、Display PostScriptなのです。かつてアップルはDisplay PostScriptのライセンス料の高さに納得せずに採用を断念していました。そのため、Mac OSではPostScriptフォントを画面上でラスタライズするためにAdobe Type Manager(ATM)を必要としていました。
- これに対し、NeXT社はDisplay PostScriptのライセンスを受けていました。つまり、NeXT社の吸収合併によりアップルはDisplay PostScriptを手に入れたというわけでしょう。Quarts=Display PostScriptなのかは良くわかりませんが、似たようなものであるのは確かです。アップルにもQuickDraw GXなどで蓄積した技術があるわけで、それらを融合させたものなのかもしれません。
- デモはなかなか面白かったのですが、私のような素人には「何かすごい」というぐらいしかわかりませんでした。(^^;)、Quartsの特長はまず、リアルタイム描画とアンチエイリアス、次にコンポジットエンジンを内蔵、最後にPDF形式での保存が標準、の3点です。デモはMac OS X用のPDFビュアーに画像が保存されたPDFファイルをドラッグ&ドロップして行われました。TOY STORY 2のロゴを使い、オブジェクトを自由に回転させたり、拡大・縮小したり、透明度を変化させたりしてくれました。
- これの何が素晴らしいのか……。アルファチャネルをOSレベルでサポート……?。実は良くわからないのですが、想像するに、今まではMac OSでキチンとサポートされていなかったためアプリケーションレベルで独自に機能拡張して実現していた難しい画像描画を、Mac OS XではOSレベルでサポートしたので簡単なビュアーソフトであっても高級なグラフィックソフトと同じようなことが簡単にできるということでしょうか。
- OpenGLとQuickTimeは説明するまでもないでしょう。今までMac OSで無理矢理継ぎはぎで実現されていた3D描画とマルチメディア機能がMac OS Xで整理統合されたわけです。ですからポイントは何ができるかではなく、キチンと動作するのかということになります。今までのMac OSでは新たな機能を追加すると他の部分に不具合が起こるということがよくありました。今回のデモでは3Dゲームはキチンと動作していましたし、QuickTimeムービーも問題なく動いていました。まあ、デモですから動くように作ってあるわけですが、製品版が楽しみではあります。
- また、QuickDraw 3Dは役割を終えたことになります。アップルは自社技術を削り込み、業界標準(Defact Standard)を採用するようにしていますから当然ではあります。技術は維持改良していくためだけにも大きなリソースが必要なのです。業界標準を採用する理由にはそういう開発費用を削減するということもあるわけです。
Design for Internet
- これは最初からインターネットを考慮してデザインしたOSということですが、デザインというのは「設計」ということです。かつてのCopland OSもそれを目指していました。しかし、このインターネットとの関連の部分がうまくいかずに没になったと聞いています。この話が本当かどうかは別にして、今ではインターネットはパソコンに不可欠になっていますから、Mac OS Xがインターネットを念頭において設計されているのは当然のことです。この流れはWindowsでも同じであり、自分のパソコン上のファイルとネットワーク上のコンピュータのファイルを何ら区別なく使うことができるというのが今後の常識になるでしょう。そして、Mac OS XでもWindowsのエクスプローラと同じくブラウザと同じように使えるNew Finderが主流になるでしょう。
[Expo Tokyo Report (その1)]
[(その2)]
[(その3)]
[(その5)]
[(その6)]
[Macintosh 雑記帳のトップページ][Expo Report Top]
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そんなにたいしたページではありませんが…(^^;)
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