Mac World Expo Tokyo 2000 Report (3)
最終更新 2000/06/04
このページには Mac World Expo Tokyo 2000 についての個人的なレポートを掲載しています。
この情報はあくまでも私個人の感じたレポートです。これが絶対正しいとは限りません。みなさん個人の価値観で判断して下さい。特に極秘情報などは書きません。(知りません。(^^;))公開された情報だけです。
また、ほめたり、苦言を呈したりしていますが、何ら利害関係はありません。ただ、少しでも良くなって欲しいと期待しているだけです。
Power Book G3
- 「Pismo」と噂されていたNew Power Book G3が発表されました。といっても、Mr. Jobsが『これが「Pismo」だよ』と言ったわけではないので違うのかもしれません。開発コードというものはその程度のもので、製品登場後には無意味になるものなのです。しかし、Mr. Jobs体制後のアップル製品名はわかりづらいため、「Yosemite」など登場後も開発コード名で呼ばれる製品があるのも事実です。
- 会場は大興奮でした。New iBookはマイナーチェンジなので、まあ、許容範囲でしたが、完全なニューモデルが登場するとは誰も思っていなかったのでしょう。異様な興奮状態でMr. Jobsの紹介が進みます。
- New Power Book G3は前モデルPower Book G3(Bronze)とほぼ同じデザインでした。それをMr. Jobsは「デザインはそのままでCPUをPowerPC G3 500MHzにアップした世界最速のポータブルパソコン」と紹介してくれました。Wintel陣営のノートPCに搭載されているMobile Pentium IIIは消費電流が多く発熱も多いのです。そのため高速なものをノートPCに搭載するには限度があるわけです。これはPowerPC 7400(G4)でも同じことです。Pentiumに限らず半導体は動作速度に比例して消費電流は大きくなり、発熱量は増えるのです。そのため、Power Book G4は登場しないわけです。
- しかし、Wintel陣営にも500MHz以上のMobile Pentium IIIが搭載されたノートPCはあるはずです。どうして「世界最速」なのでしょう。一つにはお得意のベンチマークで比較した場合にそれでもNew Power Book G3が高速だという結果が出ていたのでしょう。そして、もう一つにはMobile Pentium IIIは消費電力を落とすためにバッテリ駆動時にはスピードを落としているからでしょう。
- これらは単なる私の推測です。というのもMr. Jobsは既成事実のように「世界最速のポータブルパソコン」と言い切ってしまい、何ら裏づけを示さなかったからです。しかし、それでも納得してしまうわけですから話術が巧みというかMacintoshユーザが寛大なのか……。とはいえ、このぐらいのスピードになると「どうでも良いぐらい速い」ので細かなことは気にしなくても良いかもしれません。
- さて、New Power Book G3の仕様ですが、ようやくシステムバスが100MHzになり、Ultra ATA/66 のIDE HDDを搭載し、ATI Rage Mobility 128グラフィックチップを搭載し、DVD-ROMドライブも標準搭載されました。つまり、Power Book G3(Bronze)よりも大幅にチューンアップされています。デザインは同じでも中身は全く異なるフルモデルチェンジされたモデルなのです。
- そして、SCSIに代わってFireWire(IEEE1394)ポートを2つ搭載しています。このことからPower Book G3(FireWire)と呼ばれたりするようです。FireWireポートはそれぞれ400MbpsをサポートするのでDVカムコーダも接続できます。Final Cut Proを使えば世界中どこでもDesktop Videoが実現できというのがNew Power Book G3の売りのようです。背面のポート類を見てもSCSIポートが2基のFireWireポートに変更された以外に違いが見られません。
- さらに、AirMacに対応し、アンテナを内蔵しています。AirMacカードはキーボードの裏に内蔵するのでPCカードスロットを潰すこともありません。そのために内部構造が若干変更になったはずですが、拡張ベイはPower Book G3(Bronze)と基本的に上位互換であり、デザインがほとんど同じPower Book G3(Bronze)の周辺機器(バッテリやストレージモジュール)がほとんどそのまま使えます。ただし、「基本的」に上位互換であるので、一部使えないモジュールなどもあるかもしれません。特にサードパーティ製は確認が必要でしょう。
- 製品を統合してラインアップを削減しているアップルですが、PowerBookの周辺機器も同じように削減しているわけです。これは当然の事で、私には「ようやく気がついたか」と思えてしまいます。今までPowerBookはモデル毎に新たに設計されてきており周辺機器は互換性がありませんでした。これは周辺機器がバッテリ程度だけだった頃なら当然のことでした。モデル毎に新たに設計されているので消費電力などが異なるからです。バッテリ容量はきょう体のサイズに左右されますが、消費電力と駆動時間にも影響されるからです。
- さて、日本では製品生産終了後8年間は保守パーツの供給が義務付けられています。これは消費者保護のためですから、他の国でも同様な規制がありそうです。そのため、モデル毎に周辺機器が異なるとアップルはそれぞれを8年間供給し続けなければならす、大きな負担になるわけです。これがバッテリだけならまだ良かったのですが、PowerBookが高機能化するに従い、バッテリベイだけではなく拡張ベイが追加されたので負担が一気に増えてしまいました。つまり、CD-ROMドライブやDVD-ROMドライブ、Zipドライブなどストレージデバイスが使えるようになったのです。これらを8年間供給しつづけるのは至難の技です。
- これはサードパーティにとっても同じことです。MOドライブモジュールやSuper Diskドライブモジュールを提供しているメーカもあるのです。これらがPower Book G3(Bronze)にしか使えず、Power Book G3(FireWire)用には新たに設計し直さないとすれば……彼らはPowerBookの周辺機器ビジネスから撤退してしまうでしょう。設計費用、製造に必要な金型費用、前モデルの供給用在庫、サービス・サポート、それらに見合うだけの販売量をPower Book G3(Bronze)は稼げなかったはずです。供給量が不足したことが最大の原因ですが、おそらくiBookの1/10も売れていないでしょう。採算が合わないビジネスにしがみつく理由はないのです。
- 私はようやくノートパソコンも一人前の製品になったと思いました。デスクトップパソコンでは周辺機器は上位互換で使えることがほとんどであるからです。きょう体も数世代使い回しされるのが当り前です。以前のMacintoshには「3世代の法則」というのがあり、少なくとも3世代は同じきょう体が使い回しされていました。例えば、Macintosh IIvi → Macintosh IIvx → Macintosh Centris 650 → Macintosh Quadra 650とか、Power Macintosh 7200 → 7500 → 7600 → 7300 → G3 DTというようにです。もちろん、マザーボードは新しくなり電源ユニットの容量も変更されていますが、ドライブベイなどのサイズは同じであり、内蔵型の周辺機器は基本的に上位互換で使えたのです。
- これに対しPowerBookはモデル毎に違っていました。同時期に複数モデルが発売された場合には共通のきょう体であったこともありましたが、それは意味が違います。ようやく「Focus」(選択と集中)戦略がPowerBookにも浸透してきたということでしょう。これは我々ユーザにとってもメリットがあることであり歓迎すべきことです。いたずらに「次期PowerBookはデザインが変更される」などといううわさを流すことは慎むべきでしょう。ようやくPowerBookの機能が固まったのですから。ようやく機能が固まったのにデザインを変更するのは愚かです。私はアップルはそこまで愚かではないと思います。まあ、色ぐらいは変わるかもしれませんね。私はトランスルーセントデザインは好きではないので黒いままを望みますが、こういう事は買ってから言うべきですね。(^^;)
- さて、その他の仕様をまとめておきましょう。バッテリライフは前モデルのPower Book G3(Bronze)と同じく5時間、デュアルバッテリで10時間です。CPUのスピードが上がっているのにバッテリライフが縮まらないのは実はすごいことなのです。メモリやHDDなどはアップルストアではさまざまな組み合わせが用意されるようですが、販売店では2種類が用意され、それぞれ、CPU:400MHz、RAM:64MB、HDD:6GB、DVD-ROMモデルが29万8000円、CPU:500MHz、RAM:128MB、HDD:12GB、DVD-ROMモデルが39万8000円で2月18日から発売されています。
Power Mac G4
- さて、会場は興奮状態になってしまっているのにMr. Jobsは淡々と新製品を紹介し続けます。次はPower Macの発表です。クロックアップモデルが発表され、PowerPC 7400(G4)の供給難により一時発売中止されていたPower Mac G4 500MHzが復活しました。
- 以下の3モデルが新たに設定されコストパフォーマンスが上がっています。Power Mac G4 400MHz:19万8000円、Power Mac G4 450MHz:29万8000円、Power Mac G4 500MHz:42万8000円、それぞれが2月18日から発売されています。
AirMac
- そして、商標問題で名称が変更されるなどトラブルで発売が遅れていたAirMacが2月18日から発売されると発表されました。アップルのパソコンはPowerBookがAirMac対応になったことにより、全てがAirMac対応になりました。従来モデルを使い続けているユーザ以外は全てAirMacが使える環境が整ったわけです。
- AirMacは業界標準の無線LAN規格であるIEEE802.11に準拠しています。アップルはDr. Amerio以降Defact Standard(業界標準)を採用し、IBM-PC/AT互換機とのギャップを埋めようとしてきています。もちろん、コストダウンにもつながります。アップルの米国でのAirPortの発表に続いて日本でも各社がPC用の無線LANシステムを発表・発売していました。日本のMacintoshユーザは先を越されてじりじりしていたはずです。これでようやく日本でも無線LANが使えるようになったわけです。
- さて、PIXARのCEOでもあるMr. JobsがTOY STORY 2の予告編QuickTimeムービーとフラプープでデモを行うと満場の拍手が起こりました。Mr. Jobsもサービスしてくれますね。(^^;)
3)DeskTop Videoについて
アップルはDTP(DeskTop Publishing)に代わるキラーアプリケーションをDTV(DeskTop Video)に絞り込んだようです。本当はDeskTop Movieと言いたいのでしょうが、そうするとDTM(DeskTop Music)とかぶってしまうのでDTVとしたのでしょう。
iMovie
- New PowerBook G3にはFireWireポートが搭載されたのでデジカム(Digital Camcorder=和製英語のDigital Video Camera)を接続し、Final Cut ProをインストールすればどこでもDTVが楽しめます。Mr. JobsはiMac DVにデジカムを接続し、iMovieを使って即席でDesktop Movieを作るデモをしてくれました。アップルは作られたDesktop Movieをソフト名と同じくiMovieと呼ぶようです。巨大スクリーンにデジカムの映像が写し出され、私はその日初めてMr. Jobsのご尊顔を拝したわけです。(^^;)
- さて、とても簡単にDesktop Movieが作ることができるのは良く解ったのですが、iMovieは単体で販売されていません。これはiMac DVを購入してもらう強力な材料であるからでしょう。単体販売を始めると従来のPower MacintoshにFireWire(IEEE1394)カードを増設してDesktop Videoを始めるユーザが出てきてしまい、iMac DVが売れなくなるからです。iMovieを1本を販売する以上の利益をiMac DVは生むはずです。そして、iMac DVが売れることで更に大きな周辺マーケットが生まれるわけです。アップルがそれを理解していないわけがありません。
- その証拠にNew PowerBookにはFireWire(IEEE1394)ポートが搭載されたにも関わらず、iMovieはバンドルされていません。同じくPower Mac G4にもバンドルされていません。Power Mac G4やPowerBookはプロ仕様なのでiMovieでは力不足と思ったのかもしれませんが、iMac DVの訴求ポイントを安売りしたくなかったと思われます。もちろん、Power Mac G4やPowerBookにはそれぞれの訴求ポイントがあるので、無理にバンドルする必要もなかったのでしょう。
- iMac DVユーザのiMovieについてのアンケート結果が披露されました。
| 世界 | 日本 |
既にiMovieを作った | 10% | 20% |
iMovieを作る予定がある | 32% | 50% |
- アップルがDTVを次のキラーアプリケーションにしたことで、iMovieの単体販売はありえないと思われます。しかし、iMovieに代わるFinal Cut Proは10万円以上もする高価なものです。もちろん機能は大幅にiMovieを上回りプロ仕様なのですが、私などには高級すぎます。サードパーティのムービー編集ソフトに期待しましょう。それらは既に存在するのですが、まだプロ仕様でiMovieのように直感的には使えないようです。価格も含めてビギナー仕様の製品を発売して欲しいものです。
- 追加情報
- のんびりレポートを書いていると状況が刻々と変わってしまいます。公開前に修正しなければならなくなりました。以下はこのレポート公開直前に追加した文章です。
- 皆さんご存じのように、実はその後にアップルはiMovieをフリーウェアにしました。常識では考えられないことで、私には理由がわかりませんでした。しかし、最近になってMicrosoft Windows Me(Millenium Edition)に「Windows Movie Maker」なるソフトが付属することを知りました。実際の仕様は知りませんが、Webzineなどを読む限りではWindows版のiMovieと呼べるようなものです。つまり、マイクロソフトがiMovie相当のソフトウェアをWindows Meに標準添付するのに対抗するために、アップルはiMovieをフリーウェア化したようなのです。
- マイクロソフトの戦略は素晴らしく、iMovieがあるからiMacが売れるという事実を正しく認識し、適格な対抗策を打ち出したわけです。多額の開発費がかかったソフトウェアを無料で提供するなどマイクロソフトにしかできない芸当です。それゆえマイクロソフトは嫌われるわけです。Internet Explorerが無償配付されたために、Netscape社は窮地に追い込まれてしまいました。今回はアップルの番なのです。ユーザはiMovieが無料になったと喜ぶのでしょうが、私は危機感を強く持ってしまいました。アップルは持ちこたえることができるでしょうか。反トラスト法違反でマイクロソフトの分割案が出されるのもこういうマイクロソフトの強さを恐れるがゆえなのです。
- マイクロソフトの戦略は別に違法でも何でもないのです。ただ、普通の企業には資金不足で実現できないような超常識的なことを行っているだけなのです。私はアップルとマイクロソフトは仲良くして欲しいと思っていましたが、心配になってしまいました。こういう激突が続くと再び2社の関係は冷えていくでしょう。もともとライバルなのですから仕方ないのでしょうが……
- 日本企業でマイクロソフトに匹敵する戦略を打ち出していたのはソニーだけでした。というよりもソニーの方がiMovieより先行していたのです。ソニーは早くからインターネットを重視した戦略を打ち出してVAIOをリリースし、PostPetをリリースしていました。そして、次にパソコンでのテレビ録画やビデオ編集などに移行してきているのです。もちろん、これはソニーのAV機器とVAIOの融合をはかったものですが、他のパソコンメーカはまだ「インターネット!」とPRしているわけで、大きく出遅れています。マイクロソフトはそれに危機感を持ち、Windows MeにWindows Movie Makerをバンドルすることにしたのでしょう。
- ただ、アップルの判断は少し早かったかもしれません。Windows Meの登場はまだ先のことですし、FireWire(IEEE1394)搭載のIBM-PC/AT互換機は非常に少ないからです。デジカムが接続できなければ意味がありません。iMac DV対抗のPCが登場するのは秋になるでしょう。また、Windows Movie Makerの機能は未知数です。使い勝手もわかりません。マイクロソフトの戦略はまず無料で対抗製品をとりあえずリリースし、相手に打撃を与えながら改善していくというものです。実際にInternet ExplorerもVersion 3.02になるまでは使いものにならなかったのです。しかし、リリースしたということで競合相手にダメージを与えることに成功したのです。ですから、アップルも状況を見極めた上でフリーウェアにすれば良かったのではとも思います。しかし、Windows Movie Makerが登場した後で、出来が良くないなどの非難合戦をした後でフリーウェアにするよりも、さっさとフリーウェアにするよりは先手を打ってフリーにする方がスマートです。アップルの先手の決断に拍手を送りたいと思います。
IBM ViaVoice Millenium for Macintosh
- アップル以外の製品が久々に基調講演で紹介されました。たった1つではありますが歓迎したいと思います。まあ、他にも紹介されるべき製品があったと思いますから充分ではないとは思いますが、欲を言えばきりがありません。
- アップルが音声認識から撤退してからというものMacintosh用の音声認識ソフトはありませんでした。ようやくIBMからそれも日本語版が発売されるのです。なかなか認識率も高く、興味深いところです。かなりざわついた会場でも問題なく認識していました。口述筆記も可能になりますから、こういうホームページ作成も楽になるでしょう。もちろん、辞書は自分で作らないといけないでしょうが、コンピュータ用語辞書やHTML作成用辞書など各種辞書が用意されると面白くなりそうです。
- ただ、価格がちょっと高いような気がします。マイク付きのヘッドセット込みとはいえ英語版の価格が22,000円というのはたくさん売れる商品ではなさそうです。CPUの高速化により今までアドオンボードなどが必要だった音声認識がソフトウエアで処理できるようになり簡単に使えるようになったわけですから、もう少し戦略的な価格設定をしても良かったのではと思います。もちろん、まだ日本語版は価格が発表されていないわけですから安くなる可能性はあります。期待したいものです。
- 追加情報
- のんびりレポートを書いている間に発売が決まってしまいました。
- IBM ViaVoice Millenium for Macintoshは6月23日から12,000円で発売されるそうです。IBMは戦略的な価格をつけてくれました。大歓迎したいですね。IBMの意気込みを感じてしまいます。どの程度の辞書がついてくるのかが楽しみです。これは語数をではなく、質が問題になります。私が使いそうな語句が辞書にたくさん入っていれば購入してしまいそうです。ボーナスも出ることですから。(笑)
[Expo Tokyo Report (その1)]
[(その2)]
[(その4)]
[(その5)]
[(その6)]
[Macintosh 雑記帳のトップページ][Expo Report Top]
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そんなにたいしたページではありませんが…(^^;)
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