World PC Expo 2001 Report(その1)

Last Updated 2001/9/30

このページには World PC Expo 2001 についての個人的なレポートを掲載しています。
この情報はあくまでも私個人の感じたレポートです。私は Macintosh と Windows PC の両刀使いではありますが、基本的には「Mac 使い」なので細かなところでは理解不足の点があるかと思います。以下の内容を無条件で信用しないで下さい。みなさん個人の価値観で判断して下さい。

目次


概要

 World PC Expoは今年で7回目です。私が行くのは今回で4回目になります。今年は2001年9月19日から9月22日まで幕張メッセで開催されました。(昨年は2000年10月17日から10月21日まで東京ビックサイトで開催されました。)
 昨年は東京ビックサイトに変更されて10月に後ろ倒しされていたのに一昨年と同じ9月に戻ってしまいました。私は何も知らなかったのですが、Windows World Expo Tokyoはなくなったようです。昨年は中止になったようで、7月5日〜7月8日に幕張メッセで開催される予定はキャンセルされました。詳しくはわかりませんが、マイクロソフトが出展を取りやめたからだそうです。そして、今年は企画すらされなかったようです。確かに、
昨年のレポートに書いた通り、日本のコンピュータ展示会は多すぎます。淘汰が始まると思っていましたが、既に始まっていたわけです。Windows World Expo Tokyoと競合しなくなったので本来のスケジュールに戻ったのでしょう。
 また、昨年開催された東京ビックサイトには良いところも多かったのですが、いろいろ問題もありました。詳しくは昨年のレポートを参照ください。幕張メッセ側が営業力で巻き返したのかもしれませんが、幕張メッセの方が総合力が上だったということでしょうか。
 余談ですが、来年のMacworld Conference & Expo Tokyo 2002は例年より1ヶ月遅い3月21日〜3月23日に東京ビックサイトで行われます。今回のWorld PC Expoが幕張メッセに戻ってきたこととあわせて考えると興味が尽きません。

展示内容について

 今回も最終日のみの来場だったので、じっくり展示を見ている時間がありませんでした。私は2つのスペシャルセッションの聴講を第一にし、残った時間でアップルコンピュータとマイクロソフト、Palm Computing、各社デジタルカメラのブースを中心に見て回りました。ですから非常に片寄った簡単なレポートになります。ご了承下さい。

来場者と出展社

 今年のWorld PC Expoも非常に活気があったと思います。11月にWindowsxpが登場することもあり、各社からWindowsxp Ready PCが展示されていたようですが、詳しく見ている時間はありませんでした。低消費電流のCPUであるCrusoeをTransmeta社がPRしていました。とにかく最終日の土曜日なので人が多くて身動きが大変でした。久々に大混雑のエキスポを経験した気がします。主催社の発表によると来場者数は 303,619人だったそうです。アジア最大のデジタル総合展という看板には偽りはありません。
 World PC Expoは毎年いろいろなテーマで出展社を集めます。昨年もUSBパビリオンやIEEE1394パビリオンなどがありました。今年は台湾パビリオンなどアジアのPC関連企業のパビリオンが大きなエリアを占めていました。もちろん、出展ブースは小さな1コマ分だったりするのですが、出展社数が多いので広さはかなりのものです。アジアのPCの中心は日本から台湾や韓国などに移りつつあるわけです。このあたりは主催社の工夫が光るところです。

デジタルカメラ

 デジタルカメラは相変わらず勢いがあり、各社新製品を投入していたようです。私はオリンパスのCAMEDIA C-40ZOOMに興味をひかれました。400万画素の非常にコンパクトなモデルなのですが、人が多くて満足に触れませんでした。ステージに巨大水槽を持ち込んで水着のコンパニオンを潜らせるのは反則です。(笑)確かに防水ハウジングなどをPRするのも意味があるのですが、人が多くて近づけません。まあ、来場者の注目を集めるのは重要です。「デジタルカメラならオリンパスのCAMEDIA」と思ってもらえれば成功なのですから。CAMEDIA C-40ZOOMに触るのは発売されてからにしましょう。お店でいくらでも触れるようになる発売日は10月19日です。

マイクロソフト

 昨年と異なり、マイクロソフトはWindowsxpを全面に出して大々的なPRを行っていました。もちろん、OfficexpもPRしていたようです。さすがに人だかりがすごく満足に歩けない状態でした。Windowsxp日本語版は11月16日に発売されます。

アップルコンピュータ

 アップルはイベントホールに追いやられ、小規模な展示しかしていませんでした。ステージは大きいのですが、ハードウェアの展示がなかったので寂しい限りでした。そのステージにも空席が目立ち、周辺のサード・パーティの1コマの小さなブースにも人がちらほらという状態でした。ニューヨークのテロ事件の前からの決定だと思うのですが、どうしてしまったのでしょう?このイベントホールは人が少ないので私にとって唯一の休息エリアになってしまいました。(笑)

HotSyncステーションとPalmデバイス

 昨年面白いと思った「HotSyncステーション」はなくなっていました。残念です。
 また、Palm関連の展示もバラバラでまとまっておらず、私はパームコンピューティングのみしか見ることができませんでした。まあ、それは当然で、以前は日本IBMだけで他は輸入品だけという時代もあったのですが、今ではソニーなども参入しているのでPCなどと同じ場所で出展されているわけです。ハンドスプリングが見あたらなかったのですが、各社が出展していたのだろうと思います。シャープのザウルスを抜いて日本のトップシェアになったPDAですから今後が楽しみです。


スペシャルセッション(ハンドヘルドソルーション−ネクストステージへの飛躍)
-パームコンピューティング-(無料)

(2001年9月22日 11:00〜12:00 国際会議場)

 昨年のセッションでは同時通訳の不手際で良くわからなかったのですが、それを反省したのか今年のセッションは日本語で行われました。2000年4月に設立された日本法人も順調に軌道に乗ってきたのでしょう。パームコンピューティングの代表取締役のクレイグ・ウィル氏が日本語で話してくれました。しかし、Palmもまだまだ知名度が低いのか会場は半数近くが空席でした。昨年も空席がありましたので、私はギリギリに会場入りしたのですが案の定でした。せっかくの無料のセッションなのでもったいないですね。

 講演はPalmのシェアの紹介から始まりました。1999年は世界で59%だったのが、2000年は63%に上昇したそうです。Windows CEは逆に22%から20%に減少しているそうでPalmの一人勝ち状態が続いているそうです。2001年もアメリカでは80%のシェアを誇っているそうです。

 Palmの成功要因も紹介されました。簡単にまとめると、「オープンである」「大きなパートナーに恵まれている」「多くのデベロッパーに支えられている」ということです。これは昨年から一貫して変わらないものです。また、Palmデバイスのメリットとしては「シンプル」「マルチプラットホーム」「長いバッテリ寿命」「使い勝手の良さ」「多くのアプリケーション」などがあげられていました。

 昨年はモバイルインターネット(Web Clipping)の紹介が中心でしたが、今年はそれを前提とした話になりました。まずは、携帯電話やノートパソコンとの比較ですが、「携帯は結局通話しかしない」「ノートパソコンは結局持ち運ばない」とバッサリと切り捨てていました。私は携帯電話もノートパソコンも持たない「非モバイラー」ですが、まさしくウィル氏の言う通りです。私は昨年のこのセッションで話題になったNTT DoCoMoと共同開発しているという携帯電話内蔵のPalmデバイスを待っているわけですが、未だに発売されません。Palm OS 4.0Jも完成しているのに、いつまで待てば良いのでしょうか。ただ、私のPalm Vxも充分に活用されているとは言いづらいところですから、どちらにしても買い換えるのは先の話です。

 そして、Palm OS 4.0Jを搭載したm500シリーズが紹介され、Palmの拡張性がアピールされていました。拡張にはプラグインとアドオンの2種類あってSDカードやマルチメディアカード(MMC)による拡張をプラグイン、ユニバーサルコネクタによる拡張をアドオンと呼ぶそうです。プラグインのSDカードにはSDIO(エスディー・アイオー)と呼ばれるSDカードやMMCの先に小さなモジュールがついた拡張機器もあります。LANポートやモデムポートを持ったものやBlueToothモジュールなどがあるようです。
 この種の超小型カードも主導権争いが続いており、SD/MMC対メモリースティックの一騎打ちの状態にあります。このWorld PC Expo Tokyo 2001ではメモリースティック・パビリオンがあるかと思えば、SD/MMCのPRパンフレットが大量にばらまかれていたりします。Palmデバイスではソニーが当然ですがメモリースティックを採用していますが、SDIOを武器にSD/MMC陣営も頑張っているようです。

 パームコンピューティングではワイヤレスネットワークを3つに分けて考えているようです。面白い分類だったのでメモしてみました。

 携帯電話も確かにワイヤレスネットワークですね。

 さらに、充実したアプリケーションも紹介されました。データベースではFile MakerやOracleに対応し、ドキュメントリーダーもAcrobat PDFファイルやMicrosoft Wordファイル用などが各種あります。スプレッドシートもMicrosoft Excelファイルを始め各種対応しています。最近流行のCRM、SFA、SCM用のアプリケーションなども揃っているそうです。

 また、いろいろな企業や団体でPalmを採用しても、その費用はすぐに回収できるという例が紹介されました。VolvoやUS Postal Service、LA Fire Departmentなどが例に出されました。

 日本ではどうかというと、同じ戦略を維持しつつ、2000年4月から日本法人をオープンしましたが、2000年のPDAの国内シェアで51%を獲得し、シャープのザウルスを抜き去ったそうです。

 日本のアプリケーションも紹介されました。SDコンテンツ(SDカードで提供されるアプリケーション)は辞書、百科事典、地図、ゲームなどがリリースされつつあります。また、Documents to Go 4.0JというMicrosoft Officeとのデータ連携ソフトの日本語版もリリースされます。これはPalm m500シリーズにバンドルされるそうです。このDocuments to Go 4.0JはWordファイルの閲覧と編集が可能なWord to Go、Excelファイルの閲覧と編集が可能なSheet to Go、PowerPointファイルの閲覧が可能なSlideShow to Goの3つから構成されています。ただ、このアプリケーションはPalm OS 4.0Jが必要なので私のPalm VxはPalm OS 3.5Jなので使えないのです。Palm OSのアップデートが提供されるはずなのですが、なかなか始まりません。アップデートが待たれます。

 日本でもモバイルインターネット(Web Clipping)がスタートしており、YAHOO!コンテンツなどが利用可能になっています。また、携帯電話のメールと違ってISP(インターネット・サービス・プロバイダ)のメールや会社で使っているメールをダウンロードできるメリットが強調されていました。

 企業におけるソリューションも紹介されていました。これにはServer Sync SolutionとWireless Web Solutionの2つがあります。
 Server Sync Solutionは企業内のサーバとTCP/IPによってデータレベルでHot Syncするもので、必要なときだけアクセスします。Lotus Domino ServerやMicrosoft Exchange Server、ODBCに対応したRDBMSなどと同期サーバを中継してSyncするそうです。近々XML Serverも同期可能になるそうです。
 Wireless Web SolutionはWeb Clippingの技術を使ってProxy Server経由でサーバにアクセスしてデータを取ってくるものです。ただ、サーバにのみ不可をかけるのではなく、Palm側でも処理を受け持つ分散処理になっています。要はWebブラウザの検索ページのような画面からサーバにアクセスして必要なデータのみを検索してダウンロードするようです。このPalm用のアプリケーションを簡単にウィザードによって作れるQuick Plus!というアプリケーションも紹介されていました。

 最後に今後のPDAのロードマップ的なビジョンが示されていました。PDAは以下のような進化を続けているそうです。


スペシャルセッション(モバイルフリートーキング)
どこへ向かう?ケータイ文化 〜3000万台のネット端末が創り出す未知の社会〜

(2001年9月22日 14:00〜15:30 国際会議場)

 さて、Palm最大のライバルであるケータイも勉強しなければと携帯電話も持っていない私が参加したセッションですが、非常に面白かったです。できるだけ内容を忠実に掲載しましたが、メモが不十分で誰が発言したのかわからなくなったコメントもあり、私の主観がかなり入ったまとめになってしまいました。ですから内容の責任は私にあります。念のため。

 出席者は以下の方々でした。(敬称、表記を略させていただきます。)

(司)簡単な自己紹介とケータイへの関わりを教えてください。
(い)いつもケータイのスイッチは切っています。私は電話が怖いので、いつも留守電にしているのです。元編集者だったのですが電話をかけるのがイヤでやめたほどです(笑)。電話はいつまでたっても慣れないメディアです。
(高)私はコンテンツを作る仕事をしていますが、総務省の情報通信審議会の委員でもあります(笑)。ケータイは10個ぐらい持っています。電話用、ネット接続用、……
(早)このメンバーの中では私が一番アナログ人間でしょう。この前ケータイを買い換えようと店に行って「白黒で、大きなボタンで、簡単なもの」と注文したのですが、白黒モデルはもう無かった(笑)。
(大)ケータイはずいぶん前から使っています。メールも2〜3年前から使っています。ただ、メールアドレスをほとんど人に教えていないのに迷惑メールが来るのです。私は自分で納得しないものにはたかが2円でも払いたくないのでアドレスを変えます。その時に新しいアドレスを連絡する友人を厳選するので友人が減ってしまいます。それでも、また迷惑メールが来てしまいます。それを繰り返しているのでどんどん友達が減ってしまって……(笑)。

(司)メール中心の今の若者のケータイの使い方をどう思いますか。
(高)私は数年前に「音声通話は8kぐらいしか回線を使わない。電話会社は余った50kぐらいを使うパケット通信で稼ぐようになるので、かける電話は無料になるはず。」と発言したのですが実現していません(笑)。メール(パケット通信)は圧倒的に増えたのですが……。
(い)私は電話は人の時間を束縛するので嫌いです。しかし、FAXやメールは良いですね。メールは会話と違ってリアルタイムではないでしょう。書く時間が必要なので少しですがタイムラグがある。今、メールはスピードが受けていると言われていますが、そうではなく、ちょっと遅れて届くのが楽しいのではないかと思います。
(大)私はメールがウケけたのは「すぐに用件に入れる」からだと思います。話す場合は前置きがいりますが、メールでは省略できるじゃないですか。だから、便利だしスピードがあると言われるのだと思います。
(い)でも、即時的にコミュニケーションが取れているわけではないでしょう。
(高)確かにそうですね。それに、メールの場合、「!」という返事や「?」という返事もできますよね。
(い)それは電報の時代にもありました。確かにそういう返事はイメージが広がります。
(早)メールというのは文字数で料金が決まるじゃないですか。だから、今のメールは安い料金で送るために文字数を少なくしようと工夫されるのです。それがすぐに用件に入ることにもなるのではないでしょうか。

(司)メールでのコミュニケーションはどうですか。
(い)メールを受けて判断をしない人は問題です。完全な受け身だとみんな同じになってしまう。
(高)大ヒットは出るけれども画一的になってしまって多様化しない現状は怖いですね。
(大)インターネットカフェで集まってネットしていてもしゃべらない人達がわからないです。同じテーブルにいるのにですよ。しゃべらないなら集まらなければ良いのに。
(い)それは独りでいると寂しいから。動物的に集まっているだけでしょう。
(い)最近のTVには異様にテロップが多いよね。画面の中でしゃべっている内容がテロップに流れるのだけれど、今の若者はそのテロップを見て理解しているようだね。
(早)確かに若い人と話していても「えっ?」と聞き返されることが多いですね。話を聞いて理解するということが苦手のようです。
(い)つまり、文字離れというのは間違いで、文学離れということですね。文字を見て理解していることが多いようです。先のTVの例はメディアの過剰サービスですが、絵も出る、文字も出る、音声が出るというのはケータイと同じです。
(高)人は楽なものを求める傾向があります。普通買い物をする場合は何件も店をまわって気に入ったものを探します。しかし、最近はセレクトショップというものがあって流行のものが集められている。そこで選ぶだけになっています。

(司)最近は小学生でもケータイを持っていますが、どう思いますか。
(早)アメリカでは子供はケータイを持っていないと思います。PCは持っているかもしれないけれど。
(い)シンガポールにはいましたよ。
(高)この間、小学生がPHSを無料で手に入れてすぐに解約して電子辞書として使っているのを見ました。そういう使い方もあるのかと驚きましたよ。
(大)PHSの「今どこサービス」を使うために子供に持たせている場合もあります。安全確認に使えるのです。
(い)確かに良い面もあるけれど、子供に持たせるものではないと思う。親が活用すれば良いのではないかな。
(高)本当に子供に持たせてはいけないものなの?かつてのエレキギターと同じ議論をしているのではないだろうか。
(早)確かに最近は公衆電話も減っているし、大人がどのように使うかを教えるべきですね。
(高)私は立場上、小学生に「情報とは何か」を教えています。そこで家の鍵と同じようにPCやケータイに鍵をかけることを教えているのです。個人情報が入っているのだから当然のことなのですが、あまりロックしている人を見たことがないでしょう。また、子供に「知らない人についていってはいけない」と教えますが、今は大人が出会い系メールで知り合った「見知らぬ人」についていってしまっています。今の大人は子供レベル以下かもしれないですね。

(司)ケータイのマナーはどうでしょう。
(高)成田エクスプレスに乗ったら酒を飲んで大騒ぎしている若者がいたんです。私は迷惑だなあと思いながら車両の隅で小声で帰るコールをしていたのですが、車掌に「ケータイを社内では使わないで下さい」と注意されてしまいました。しかし、大騒ぎしている若者には注意しないのです。何かおかしいでしょう。
(大)列車の中でケータイを使ってはいけないのはケータイの電磁波が心臓のペースメーカに悪影響を与えるからでしょう。
(高)いやいや。今の機種では問題ないでしょう。ペースメーカの件は携帯マナーのキャンペーンに利用されただけだと思いますよ。
(い)マナーは決まりではないのです。車掌が理由もわからずにケータイをだめというのが問題なのですよね。なぜだめなのかがわかっていないわけです。
(高)他の国では「ケータイを使うな」という表示はないですよね。ケータイとタバコは違うはずです。日本はモバイル先進国なのにマナーを形でしかとらえていないのが問題です。
 (実はケータイで小声で話しているのが一番耳障りだったりします。ウォークマンの「シャカシャカ音」はとても耳障りですよね。もちろん、大声で騒いでいるのが迷惑なのは当然です。赤ん坊を泣かせ続けても知らん顔の親もいますし、日本人のマナー知らずには困ったものです。)

(司)先ほどの画一的ということについてもう少しお聞きしたいですね。
(高)今の風潮は「判断したくない」「評価したくない」というものです。これは責任を避けているからです。最近、松田優作などの既に亡くなった人がCMに良く出ていますよね。これは「既に評価が決まっている」からです。
(い)今は情報が氾濫しています。その情報を誰かに判断してもらいたいのだと思います。CDが200万枚も売れるのは「みんなが買っているから」でしょう。つまり、自分で判断しているわけではないのです。
(高)日本最大の宗教は「流行」です。自分の好みとは関係なく、みんながやっているという理由で「流行」を追っているわけです。「我々はブランドに占領されている」と言った人がいますがその通りです。

(司)ケータイの伸びが頭打ちになっています。これからは高齢者用などの多様性を持たないと伸びていかないと思います。しかし、今のように画一的になっているならどうすれば良いのでしょうか。
(高)インターネットと同じくケータイをつなごうというアイデアがあります。みんなが基地局アンテナを立てて常時接続をするのです。そして、実際に使うのは3時間ぐらいですから、余った時間をフリーフォンとして解放してみんなに使ってもらうというものです。インターネットだってもともとは草の根的なコンピュータネットワークだったのですから可能性はあります。ただ、今は法的な規制があるので実現できないですが。
(司)日本はケータイを使ってITで復権しようとしていますが、このような手法は他の国で通用するのでしょうか。
(高)日本でケータイがウケけるのは「狭い」からでしょう。狭いと外に出ないとプライバシーは持てないのです。アメリカのように隣の家まで歩いていけないような国ではプライバシーは簡単に得られます。しかし、日本ではそうではありません。ケータイを持って少し席を外して得られる小さなプライバシーがウケているのです。だから、他のアジアの国でも通用するでしょう。
(大)日本ではキーボード文化が無かったからケータイの親指での文字入力が受け入れられたのかもしれないですね。
(い)そう、親指入力が普及したので、先に話題になったようにメールの文章が崩れて簡単な文章になってきたのですね。これは良い意味で言っているのです。
(高)動きながら何かをするというのは日本的なライフスタイルです。ウォークマンやゲームボーイなどはその典型で、ケータイもそうです。歩きながら電話している人やメールしている人が多いですよね。

(司)ケータイに映像や音楽を流すのはどうでしょう。
(大)テレビのスタッフと話したのはケータイを使ってレポートしてもらえるようになるということです。特に朝のテレビには使えそうです。山手線の混み具合などを駅毎にライブで伝えてもらえます。テレビのテロップのように常時その映像を流すと面白いでしょう。画質が少々悪い方が臨場感もあるし。
(早)定点ケータイカメラだったら面白いかも。スーパーの混雑具合をライブで流すというのは面白いでしょう。でも、プライバシーの問題もありますね。
(高)画質といえば、ナマはテレビが基準になっていて、録画はVHSが基準になっています。だから、DVDはキレイと言われるのです。それからするとケータイの画像はキレイとは言えない。誰もケータイで「タイタニック」を見ようとは思わないはずです。ブロードバンドと言いますが、ビデオメールなどの個人コンテンツがキーになるような気がします。
(い)私は電話が嫌いですが、留守番ビデオメールならタイムラグもあるし面白いかもしれません。
(高)どんなに優れたコンテンツであっても彼氏からのメールには勝てないですよ。作り込まれた商用コンテンツは難しいです。
(い)そもそもテレビがあるのに何でケータイの小さな画面で見なければならないのでしょう。
(高)確かにそうです。例えば、アイドルのヌードはDVDでやった方が儲かるでしょう。これは大きな問題です。先ほどのケータイでのレポートにお金を払いますか。それに、どうやって代金を回収するのでしょう。
 (いやいや、そういう話ではないでしょう。ケータイなどのモバイルツールのメリットは「場所を選ばない」ということです。テレビはテレビのあるところでしか見ることができません。ブロードバンド時代におけるケータイの役割は「場所を選ばない」で何ができるかなのですが、そこには言及されませんでした。今回は話題がゲストによって勝手にすり替えられて進んでいて司会者もうまくコントロールできていませんでした。それだけ個性の強いゲストだったというわけです。早見さんや大桃さんもなかなか話に入れないような感じでした(笑)。)
(い)映像というものは文化によって見方が異なります。くじらの映像を見て「キレイ」と思うか「うまそう」と思うか……(笑)。先のスーパーの定点カメラの場合、人が3人歩いた映像よりキャプションで「1人/10m2」と流した方が良く伝わると思います。映像というものは意外に信用できないものです。以前にメキシコで撮影した際に画が寂しいのでシマウマを入れようという話になったのです。しかし、メキシコにシマウマはいない。だから、馬に白ペンキを塗ってシマウマにしたのです。でも、画面では偽物とわからなかった(笑)。
(高)リアルワールドとネットワールドの連動が必要ですね。例えば、私は書店で本をチェックしてネットで買ったりしています。その方が安いからです。
 (こらこら。そんなことをしたら書店がかわいそうじゃないですか。儲からないと店はつぶれてしまいます。そうしたら、どこで現物をチェックできるのでしょう?高城さんはかなりネットにはまりこんでいますね(笑)。ただ、この問題はここ数年で大きくクローズアップされそうです。ここでの例は紀伊国屋書店でしたのでつぶれはしないでしょう。しかし、街の小さな書店などには大型書店も驚異ですが、ネット書店も大きな驚異なのです。)
(い)今の時代はみんながメールをしょっちゅう見ています。しかし、これは妄想であり、神経症だと思います。「私は必要とされている」と思いこんでいるだけなのです。リアルワールドとの接点を持たなければだめです。

(司)ケータイを使う上での注意は何でしょうか。
(大)注意というわけではないですが、年輩の方に使って欲しいですね。私は親と生活の時間帯が違うのでメールをコミュニケーションツールとして使っていますが重宝しています。
(早)今のコミュニケーションの話ですが、向こうに人がいるということを忘れないで欲しいと思います。
(大)注意を思い出しました。先ほども話題になりましたが、判断する能力をつけるために何事も経験して欲しいと思います。さっき、高城さんがテレビを持っていないという話には驚きました。クリエイターはテレビなどから影響を受けているのかと思っていたからです。でも、やはり経験によるものが一番大切なのだと思いました。
(高)先ほどの小学生に教えていることですが、ネットを1時間したら5分ぐらいボーっとして休みましょう(笑)。疲れますからね。そして、自分にとってよりよい生活をするためにネットやケータイを使うべきです。週休2.5日になれば日本人のライフスタイルが変わると総務省の集まりで言い続けているのに相手にもしてもらえません(笑)。半日の休みを自分のために使えたら……
(い)「私は必要とされている」と思いこんでいる神経症を克服するには「自分は大した存在ではない」ことを認めて必要とされに行くことです。そうすれば世界の主人公が自分に戻ってくるはずです。また、私はケータイの肯定派です。今さら無くすことはできないツールだからです。
(高)ケータイは新しい特殊なツールです。テレビが壊れても「ああ壊れた。買い換えないと」と思うだけですが、ケータイやAIBOが壊れるととても悲しいのですから。
(司)ケータイは人と人を結びつけるツールで最大のコンテンツは「人」ということですね。コミュニケーションのステップの1つでそのツールがケータイというわけです。今はまだ過渡期ですが、それだけ潜在力があり面白いということでしょうか。今日はどうもありがとうございました。

個人的感想

 昨年はかなり技術的な話になりましたが、今年は「文化論」のような話になりました。しかし、今年の内容も充分に面白く興味深いものでした。少々独断に過ぎる分析もあり、括弧でツッコミを入れましたが、まあ、良いのではないでしょうか。彼らはケータイを悪く言えない立場なのですから。

 もう少し私のコメントを書いてみます。私は「ケータイとタバコは同じ」と思っています。昨年のレポートにも「ところ構わず携帯電話を使って話している人達を見ると、ところ構わずタバコを吸っているマナーの悪い人達を連想して不快になります。余談ですが、この2者は非常に良く似ています。本人以外には大変迷惑な代物ですし、「格好良い」と勘違いして入る輩が多いというのも同じです。」と書きましたが、その気持ちに変わりはありません。
 まあ、それ以前に日本人にはマナーという概念が希薄です。礼儀とマナーは大きく違うものです。つまり、礼儀は見知った相手やこれから知り合う相手に対するものですが、マナーは全くの他人に対するものです。しかし、日本人は「全くの他人」をほとんど意識しません。どうせ2度と合わないのだからと平気で失礼なことをするわけです。満員電車を想像すればマナーなど無いことがわかるでしょう。マナーというものは「他人に対して知人と同じように礼を尽くす」ということなのですが、日本人はナイフとフォークは外側から使うなどと「形式」であると思いこんでいるわけです。ゲストの方々が「形でしかとらえていない」と話されていたのはこのことでしょう。

 また、「画一的」という話題で「判断を避ける」という分析がされていましたが、私はもっとひどいと思っています。結果として「判断をしていない」わけですが、それは「避けている」のではなく、勝手に「判断を与えられている」のだと思います。テレビから流れてくる情報量は膨大です。それに影響を受けているのだと思います。ヒット曲は全てコマーシャルソングやヒットドラマの主題歌です。毎日無意識に聴いている音楽のCDが売れるのは当然のことです。
 私は「判断をしていない」のではなく、「判断ができない」のではと思っています。そうしてテレビなどを通じて「カリスマ」と呼ばれれる「芸能人」のマネをすることで流行が生まれているわけです。「○○というタレントは10代のファッションリーダー」などと言われたりしますが、これはマスメディアに作られたものなのです。自分で判断できない人が増えている社会は危険です。「していない」のならば、意識して「する」ようにすれば良いのですが、「できない」のですから「できる」ようになるには訓練が必要なのです。私はもっと危機感を持っています。

 最後にもう一度書きますが、私は携帯電話を持たない素人です。ですから、このレポートの中には誤りもあるはずです。また、この内容は出席者の方々が話したものをそのまま書いたものではありません。雰囲気を伝えようと書いてはみましたが、文章は私がメモしたものから起こしたものです。文責は私にあります。


Expo Report][(その2)
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そんなにたいしたページではありませんが…(^^;)

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