Mac World Expo Tokyo '99 Report (2)
Page Edit 1999/02/24-03/07
このページには Mac World Expo Tokyo '99 についての個人的なレポートを掲載しています。
この情報はあくまでも私個人の感じたレポートです。これが絶対正しいとは限りません。みなさん個人の価値観で判断して下さい。特に極秘情報などは書きません。(知りません。(^^;))公開された情報だけです。
また、ほめたり、苦言を呈したりしていますが、何ら利害関係はありません。ただ、少しでも良くなって欲しいと期待しているだけです。
Internet Explorer 4.5J について
- 以前に Internet Explorer 3.0J を使った時にフォーム入力画面で文字化けしたので使うのを止めました。プルダウンメニューで都道府県などを選ぶ際に文字化けしたのです。選んだ後は正しく表示されたのですが、使いづらかったので削除してしまいました。エクスプローラバーなど面白い機能が付いていただけに残念でした。
- そこで、マイクロソフトのブースで聞いてみました。彼らも文字化けは認識していたそうです。やはりバグだったようです。ただ、「問題は Internet Explorer にあったのではなく、Mac OS 側にあった」そうです。「Text Encoding Converter にバグがあった」そうです。
- この Text Encoding Converter というのは Mac OS 以外のテキストを Macintosh 用に変換する機能を提供しています。文字コードや改行コードなどを変換するのでしょう。インターネットは基本的に UNIX のテキストが主流です。文字コードは「EUC」ですし、改行コードは「LF」です。インターネットブラウザにも「文字エンコード」のオプションがあり変更は可能です。通常表示はここで修正できるのですが、プルダウンメニューなどには有効ではありませんでした。
- ここで疑問が生じます。では、何故 Netscape Navigator では正しく表示されたのでしょう?マイクロソフトの人によると「Text Encoding Converter を使っていないから」だそうです。マイクロソフトは(アップルとの関係を修復した後は)アップルの技術を積極的に採用しているそうです。Internet Explorer 3.01J の不具合によりアップルの Text Encoding Converter のバグは解決されたそうです。「もっと Internet Explorer を使ってください。そうすれば Mac OS もどんどん良くなります」だそうです。
- ちなみに、Internet Explorer 4.5J は Power Macintosh 専用です。68k Macintosh には Internet Explorer 4.01J を使う必要があります。4.01J でも問題なくプルダウン表示できるそうです。でも冷静に考えると Mac OS 側の問題ならば最新の Mac OS をインストールしないといけないのかな?68k Macintosh の場合、私は Mac OS 7.6.1J ですが Mac OS 8.1J をインストールしないといけないかもしれません。
- そのうち実験してみようと思います。Mac OS 7.6.1J + Internet Explorer 3.0J と Mac OS 7.6.1J + Internet Explorer 4.01J で文字化けチェックをすれば良いわけです。前者は文字化けするはずです。私が以前にインストールした時と同じ構成のはずですから。後者も文字化けすれば Mac OS のバグだったのです。たぶん、Mac OS 8.1J にアップデートすれば文字化けは解消するでしょう。それでも解消しなければ Mac OS 8.5.1J にアップデートしなければならないのですが、それは不可能です。そんなことは無いことを祈りましょう。また、後者のみ文字化けが解消すれば Internet Explorer のバグで、マイクロソフトがウソつきだったわけです。あるいは Text Encoding Converter を使うのを止めたのでしょう。
- 言葉の端々にマイクロソフトだなあと思うところはありましたが、彼らが本気で Mac OS 対応製品を開発しているのは確かのようです。私もマイクロソフトには Mac OS 対応製品の開発を頑張って欲しいと思っています。私が Macintosh にはまった原因の一つが Microsoft Excel 2.2J でした。責任はとってもらわないとね。(^^;)
Adobe Acrobat 4.0J と New CID Font について
- 今回のアドビのステージはそれほど興味を引きませんでした。これはアドビが悪いのではなく、私が昨年 Seybold Seminars Tokyo Publishing '98 を見たからでしょう。内容がほとんど同じだったのです。Adobe Photoshop 5.0.1J と Adobe Illustrator 8.0J の新機能のPRが中心でした。
- さて、アメリカでは Adobe Acrobat 4.0 のリリースが噂されています。ブースでは特に説明されていなかったのですが聞いてみました。日本語版も確実に開発されているようです。他のフォントメーカのブースで聞いた話も総合すると、既にベータ版を配布して評価もかなり進んでいるようです。
- Adobe Acrobat 4.0J は日本語フォントの埋め込み(Embed)をサポートします。今の Adobe Acrobat 3.0aJ では1バイトの欧文フォントしか埋め込みできなかったのです。そのため、PDF ファイルが OS やプリンタを選ばずに元のドキュメントのイメージを再現できるといっても微妙にフォントが変わっていたりして違和感があったのです。日本語版では1世代遅れましたがフォントの埋め込みがサポートされるわけでデジタルドキュメントの普及にさらに加速がつきそうです。
- ただし、どんなフォントでも埋め込めるわけではありません。欧文フォントでは True Type フォントと PostScript Type1 フォントだけが埋め込めます。日本語フォントではTrue Type フォントと PostScript CID-Keyed フォントが埋め込み可能になります。
- CID-Keyed フォントについて簡単に説明しましょう。CID-Keyed フォントは Chracter IDentifier-Keyed フォントの略でキャラクタ(文字)割り付けを改善したフォントです。従来の PostScript フォントは OCF フォントと呼ばれて区別されます。OCF は Original Composite Format で「元々のつぎはぎだらけの形式」ということです。いかにもとってつけたような名称で、今後このフォントを使い続けるつもりがないことがわかりますね。(^^;) とにかく、PostScript フォントは Macitnosh DTP とともに進化してきたのですが、元々1バイトフォントでした。それを日本語などの2バイトに対応させるためにいろいろ細工して「つぎはぎだらけ」になってしまいました。それを整理し、ユニコードなどさまざまな文字コードに対応可能な形に作りなおしたものが CID-Keyed フォントなのです。この CID-Keyed フォントはアウトラインの抽出可能が可能になり、PDF ファイルに埋め込み可能なのです。最近の PostScript 3 プリンタにも標準搭載されています。今後は標準フォントになり、近い将来 True Type フォントと統合される Open Type フォントの原型にもなるはずです。(1999年3月号の MAC LIFE に詳しい特集があります。ご参考まで。)
- この CID-Keyed フォントは2年ほど前からリリースされていました。しかし、普及が遅れていたのです。一つは Mac OS 側の対応が遅れていることが原因です。最新の Mac OS 8.5.1J でも問題が残っているようです。フォント側が大改訂されたのにともない、Mac OS も Mac OS 8.5J でフォント管理が改訂されました。OS ですから最低限の互換性を維持しなければならないので完全な大改訂にはならなかったようですが、それでもトラブルが起こっています。Mac OS 8.5.1J でかなりバグフィックスされたようですが、詳しくはわかりません。今後も少しづつ修正されていくでしょう。
- もう一つの問題は根深い問題のようです。日本語のフォントにはアドビとモリサワの力関係がものをいいます。アドビはご存じの通り DTP の中心企業です。モリサワは DTP 以前からの写植フォントの中心企業なのです。フォントには著作権があります。その文字の微妙な形に権利があるのです。それを字母(じぼ)といい、これを持っている企業は少なくモリサワはその最大手なのです。漢字は多くの文字があるので自力で字母は作れないのです。アドビのフォントもモリサワの字母を使っているそうです。つまり、アドビはモリサワに頭が上がらないのです。これが日本語 PostScript 環境をおかしくしたようです。ATM(Adobe Type Manager)という PostScript フォントを画面上でラスタライズ(スムージング)する技術があります。欧文環境ではこの ATM には解像度制限がないそうです。しかし、日本語の MacOS 環境では600dpi に制限されています。(Windows95/98 環境では制限がないそうです)これは、日本語 PostScript フォントビジネスで解像度毎にフォントが設定されているからです。つまり、600dpiまでの低解像度フォントとそれ以外の高解像度フォントと2種類あるのです。私達は高解像度フォントを使うことはないのですが、プロや DTP 出力センターなどのイメージセッタ(高解像プリンタみたいなもの)には高解像度フォントが必要です。そしてこのフォントが高価なのです。私の勝手な想像ですが、このビジネスを維持するためにモリサワがアドビに圧力をかけ、ATMに解像度制限をつけさせたと思われます。Windows95/98 用の日本語 PostScript フォントはないのでビジネス的な問題がなく、ATMには解像度制限がつけられなかったのでしょう。しかし、それゆえに Windows95/98 用の日本語 PostScript フォントは発売されなくなったのです。Windows DTP がかけ声だけに終わっているのはそのためです。このあたりはもはや膠着状態で関係者はあきらめていた感があります。
- 事実、モリサワがリリースした CID-Keyed フォントはただリリースしただけのフォントで使いものになりませんでした。アウトラインの抽出はできない。(まだ、リリースされていませんが)Adobe Acrobat 4.0J への埋め込みもできない。従来の OCF フォントと同じフォント名なので混在が不能で入れ替えるしかない。当然 DTP 業界は大混乱です。これで CID-Keyed フォントは息の根が止められたかに思いました。実は私は何も知りませんでした。今回の Expo でいろいろ聞いてみるとこのような事が浮かび上がってきたのです。ただ、私の想像もかなり含まれているので事実かどうかはわかりません。念のため。
- しかし、アドビもある動きをしました。オリジナルフォントのリリースです。「小塚明朝」という明朝体をリリースしました。ゴシック体も準備中です。モリサワの支配を脱却しようとしたのだと思います。DTP アプリケーションの雄が腹を決めたのです。モリサワも折れるしかなかったのでしょう。ついにモリサワから「まともな CID-Keyed フォント」がリリースされます。彼らは New CID-Keyed フォントと呼んでいますが、本来の CID-Keyed フォントそのものです。アウトライン抽出も可能で、Adobe Acrobat 4.0J への埋め込みも可能です。フォント名も従来の OCF フォントと同じではないので混在が可能になります。やっと動き出したというわけです。
- また、モリサワは Windows95/98 用の日本語 PostScript フォント「View フォント」を発表しました。ただ、Windows95/98 の ATM は解像度制限がないので細工をしています。Macintosh 用の PostScript フォントは1000×1000のメッシュ(編み目)で構成されていますが、この View フォントは50×50メッシュで作られています。アウトラインの抽出は可能なので問題はないとモリサワは説明していますが、Adobe Acrobat 4.0J への埋め込みはできません。ラフなフォントなので埋め込みに耐えないと判断しそう決めたそうです。(拡大するとギザギザになるようです)プリンタ側に Macintosh 用の PostScript フォントをインストールしていれば出力は問題なくできるそうです。しかし、中途半端な話です。かつての CID-Keyed フォントと同じく、ただリリースしただけのフォントのようです。誰が使うのでしょう。モリサワがいくら抵抗しても流れは変わらないと思いますが……
Modern I/O について
- USB や FireWire(IEEE1394)を採用した周辺機器が多数出展されていました。
- USBはほぼ定着したといって良いでしょう。iMac 効果が歴然と現れています。本来は FireWire を採用すべき製品でさえも USB を搭載しています。具体的には MO ドライブや SCSI-USB 変換ケーブルです。iMac にはまだ FireWire が搭載されていません。そのため速度的に遅くなるにも関わらず無理矢理 USB に変換しています。SCSI-1 は5MB/s の転送速度ですが、bps に換算すると5MB/s=5M×8bit/s=40Mbps になり、最大12Mbpsの USB は1/4ほどのスピードしかないのです。それでも使えるだけ良いということでしょう。そのうちに iMac にも FireWire が搭載されますからそれまでの製品ということです。
- しかし、こんなに簡単に採用されるということは USB のコストは安いのでしょうね。カラープリンタなどは、シリアルポート(Macintosh 用)、パラレルポート(IBM-PC/AT 用)に加えて USB ポートを搭載しています。贅沢だと思いますが、コストが安いからできるのでしょう。
- これに対し、FireWire は高価なようです。コントローラだけで5US$ぐらいするらしいです。製造コストもかかりますから売値にすれば25US$(3,000円)ぐらい高くなりそうです。ライセンス料も加えるともっとでしょうね。HDD や MO ドライブなど FireWire 搭載の記憶装置が出展されていましたが、FireWire のみしか搭載していませんでした。個人的には移行期には SCSI ポートと FireWire ポート両方を搭載している機器があっても良いと思ったのですが……。コスト的に合わないのでしょう。ただし、すべて FireWire に移行するのではなさそうです。最高速度では SCSI の方が早いのです。1.3GB MO ドライブも SCSI 搭載でした。
- ただ、Ultra-2 SCSI は LVD(Low Voltage Differential)対応ケーブルで接続しなければなりません。LVD はあまりに高速になりすぎた Ultra-2 SCSI がノイズに極端に弱くなったため、その対策として開発された技術です。ただ、他の低速な SCSI 機器を接続すると高速性が犠牲になります。Ultra-2 SCSI は Ultra-2 同士で接続しなければ高速が維持できないのです。ややこしいですね。将来的には FireWire が主流になるのかもしれません。しかし、800Mbps の FireWire は簡単には実現できないそうです。高速 SCSI と同じような問題がありそうです。 しばらく様子見ですね。
従来機器の Modern I/O への接続について
- 従来機器を Modern I/O ポートに接続するためのアダプタが各種展示されていました。ぱっと見たところ、問題は解消されたようです。
- シリアルポートへ接続する機器を USB ポートへ接続するためのアダプタがあります。あえてややこしい表現をしたのには意味があります。一般に USB ←→ シリアル変換アダプタと言われているのですが、先に述べたような方向にしか接続できないのです。つまり、USB プリンタを Macintosh のシリアルポートに接続することはできないのです。
- 原則として Macintosh 側の Modern I/O ポート(高速側)に従来の周辺機器(低速側)を接続する事しかできないようです。ですから私のような 68k Macintosh を持っている者が、将来のことを考えて USB 搭載の周辺機器を購入して変換アダプタを使って接続するというのはできないのです。まあ、今のところ USB ポートしか搭載していない機器はほとんどなく、シリアルポートも搭載されているので問題は少ないかと思います。しかし、FireWire(IEEE1394)搭載機器については他のポートはつかないようなので注意が必要です。
- こんなことを考えるのは私だけかもしれませんが、Macintosh 側が高速、周辺機器側が低速の場合しか変換できない(有効でない)ということは覚えておいた方が良いと思います。同様に USB ←→ SCSI 変換アダプタや USB ←→ ADB 変換アダプタ、FireWire ←→ SCSI 変換アダプタなどもありそうですが注意が必要です。
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そんなにたいしたページではありませんが…(^^;)
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