2013/09/14
キヤノン EOS 70Dとパナソニック LUMIX DMC-GX7(その2)
- 対するキヤノンのEOS 70Dは大きな飛び道具を持っていた。最近急速に技術進化している撮像面位相差オートフォーカス(AF)である。これまでは特定の画素に位相差AFセンサを仕込んで撮像面位相差AFを行なっていたので、その特定の画素部に被写体がなければ撮像面位相差AFが効かなかった。そのため、コントラストAFとのハイブリッドで使われていたのだが、キヤノンのEOS 70Dは全画素の約80%のエリアを2個のペアの画素(フォトダイオード)で構成し、その2個のフォトダイオードの画像のズレ(位相差)を検知してピントを合わせる技術を開発したのだ。EOS 70Dのイメージセンサは2020万画素だが、画素だけでカウントすると4040万画素ということになるわけだ。キヤノンの担当者によると2個の画素ペア毎に1個のマイクロレンズがあり、撮影時には1個の画素として機能するため2020万画素というらしい。
- EOS Kiss X7i(ハイブリッド CMOS AF)と EOS 70D(デュアルピクセルCMOS AF)の動体追尾AFのデモを見たが、AFが格段に良くなっているのに驚いた。AFが全くと言って良いほど迷わないのだ。まあ、これは動画撮影のための機能と言って良いのだが、マイクロフォーサーズでフォーサーズレンズを使う場合にも重要になる技術であるので非常に興味がある。キヤノンの技術のすごいところはAF時には2個の画素として撮像面位相差AFを行うが、撮影時には1個の画素として記録するという点である。ちょっと驚きである。これまではAFセンサのために画素を潰していたわけだが、その必要がなく、全画素が撮影に使えるからだ。
- ただ、AFポイントが1600点程度あるわけで、どこを優先するのかというのは気になるところだ。ニコンの3Dトラッキングに代表されるパターン認識が必要だと思われるのだが、鉄道模型のジオラマの撮影体験では私はうまく動体追尾撮影ができなかった。私はあまり連写をしないのでライブビュー時に背面液晶がブラックアウトしてビックリしてしまったというのもあるが、動画撮影にしてみても無理だった。慣れれば問題ないのかもしれないが、ちょっと気になってしまった。
- キヤノンは前のEOS 60Dを酷評されたので、今回のEOS 70Dには相当力を入れているようだ。60Dは正常進化した良いカメラだったと思うのだが、飛び抜けた新機能がなかったためネットユーザから叩かれてしまった。何もそこまでこきおろさなくてもと同情したものだった。EOS 70Dはキヤノンの持てる力を総動員して開発した全部入りカメラなので好感触で受け入れられるのではないかと思っている。
- さて、実際にEOS 70Dを触った第一印象は「軽い」だった。本体重量はCIPA表記で755gなのだが、付いていたレンズのせいなのか非常に軽く感じたのだ。EF-S 10-22mm F3.5-4.5 USMは385gなので、合わせて1140gしかない。E-5が892gでZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0が780gなので1672gだから当然ではある。もちろん、同格の製品を比べたわけではないのだが、APS-Cカメラの方が軽いというのは困ったものだ。キヤノンの軽さに価値を見いだしている製品ラインアップには好感が持てる。ただ、質感がちょっと安っぽい感じがしたのは考えて欲しい。「軽さ」イコール「安っぽさ」ではなく、あくまでも「質感」が「安っぽさ」につながっている気がしたのだ。まあ、多くの来場者が触るレンズは使い込まれた感が出てしまっており、仕方ないかとも思うのだが……。
- しかし、残念なのはキヤノンに私の好みの超広角レンズがないことだ。ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0を愛用している私としては135換算で14mmぐらいの超広角が欲しいのだ。この世界は知ってしまうと後戻りできない。しかし、これに対抗できるキヤノンのレンズが存在しない。改めてキヤノンの担当者に聞いてみたのだが、APS-Cサイズ専用のEF-Sレンズでは超広角レンズはEF-S 10-22mm F3.5-4.5 USMしかない。これを135サイズに換算すると16-35mmになる。単焦点レンズがあるかと思ったらEF-Sレンズには単焦点は60mm(135換算で96mm)のマクロレンズであるEF-S 60mm F2.8 マクロ USMが1本あるだけなのだ。ニコンとは何と違うのだろう。まさしくビックリである。これでは困ってしまう。カメラボディだけでは写真が撮れないからだ。
- 一応、キヤノンを弁護しておくと、135サイズのEFレンズなら充実しているようだ。例えば、EF 8-15mm F4L フィッシュアイ USMは防塵・防滴の魚眼レンズで円周魚眼から対角線魚眼にズームする面白いレンズである。ただ、APS-Cサイズのレンズとして使うと12.8-24mm相当の対角線魚眼ズームになる。面白さは半減し、魚眼ゆえに使いづらいレンズになってしまうのだ。単焦点ではEF 14mm F2.8L II USMやEF 20mm F2.8 USMがあるが、APS-Cサイズのレンズとして使うと22mmや32mmになってしまう。さらに、TS-E 17mm F4LやTS-E 24mm F3.5L II というティルトやシフトが可能なレンズもある。デジタル補正ではない光学補正が可能なとても面白いレンズである。しかし、APS-Cサイズのレンズとして使うと……やめておこう。キヤノンには比較的安価な135サイズのカメラボディもあるのだが、さずがにもう扱える体力が私にはないのだ。
- 余談だが、EOS 70DのJAPAN PREMIERには高級コンパクトカメラも展示されていた。説明を聞いて私が勘違いしていたことに気づいたので書いておきたい。私はPowershot G1 Xを単焦点カメラと思っていたのだが、135換算で28mm〜112mm相当のズームレンズを搭載していたのだ。それならば、1.5型のイメージセンサでも「かなり大型」と言えるだろう。ただ、ワイドコンバータ(ワイコン)が存在しないのには驚いた。私にはワイド端で28mm相当では全く足りないのだが、ワイコンが製品化されないというのは「売れない」ということなのだろうか。それとも、イメージセンサが大きいので光学性能を保証できないのだろうか。必ずワイコンを用意するリコーとは大違いである。まあ、カメラメーカによって方向性が異なるのは健全なマーケットだと思って良いだろう。各社が同じようなカメラを売り始めたらおしまいだからだ。IBM-PC/AT互換機やAndroidスマートフォンなどはその定型である。同じ部品を買ってきたら誰にでも作れる製品のマーケットには消耗戦しか残っていないのだ。