Macintosh 雑記帳(バックナンバー)
このページには Macintosh についての個人的メモを掲載しています。不定期に更新します。
1999/10/24
うわさ系サイトはアップルの味方か敵か
- iMac DV 「Kihei」の画像が先行して一部の Macintosh うわさ系サイトに掲載されたことを考えてみよう。アップルはアメリカの企業なのでこのような「スクープ情報」はアメリカのサイトにまず掲載される。Mr. Jobs は機密保持を重視しており以前ほど情報が漏れることが少なくはなったが、情報漏れを完全に防止できてはいないようだ。これら Macintosh うわさ系サイトに掲載された iMac DV 「Kihei」の画像は本物だったのだ。情報はアップルか取り引き業者から漏れたものだと思われる。取り引き業者とはカタログ作成に関わる業者やホームページ作成に関わる業者の事である。漏れた画像はカタログやホームページに掲載された画像と同じものだったからだ。そして、これらの情報は日本の Macintosh うわさ系サイトでも「リンク」という形で紹介された。かくいう私もそれを見た1人である。言い訳けととられても仕方ないが、内容に興味があったのではなく、本物か否かに興味があったのだ。
- アップルは激怒し、法的処置をほのめかし、うわさ系サイトに掲載された画像を削除させた。当然である。企業秘密を第三者に勝手に公開されて怒らないわけがない。それが競合他社に有利な情報になるからだ。また、株価にも大きく影響を与えてしまう。偽情報ならネガティブな反応が出るかもしれない。本物なら実際の発表時のインパクトが薄れてしまう。これは犯罪だ。もう少し補足するなら、企業にダメージを与える情報を公開して株価を下げて株を買い占める。その後にガセネタとわかれば株価は回復するのでそこで買い占めた株を売り払う。そうすれば大儲けできるのだ。
- 私もうわさ系サイトの運営者がアップルを利用して儲けようと思ってこのような情報を公開しているとは思わない。ただ、彼らは思慮の浅い「子供」であるだけなのだろう。そういう情報を掲載することでアクセスが増えるだろうと思っている程度なのだろう。しかし、これは許されることではない。アップルが大きな損害を受ければ彼らは訴えられ、責任を追求されるだろう。次期 Macintosh を勝手に想像し、予想しているのなら罪はない。しかし、企業の秘密情報を公開したり、その情報を「リンク」というさらに公開すれば罪になる。それを認識すべきである。実際にはそのすぐ後に正式の発表があり、アップルが大きな被害を被っていないから見逃されたに過ぎない。
- もちろん、情報を漏らした犯人は探し出され罰せられているだろう。もし、犯人が特定できればではあるが。彼らが漏らさなければうわさ系サイトが情報を掲載することもできなったわけである。アップルにもうわさ系サイトに対し強固な態度を取り続けられない弱味があるのだ。元はといえば身内に犯人がいるわけだからだ。だからといって、うわさ系サイトの責任が無くなるわけではない。それは別の問題だ。
- また、これを「やらせ」と見る向きもある。この iMac DV の発表は Mac World などの定期的なタイミングで行われたわけではない。全くのイレギュラーのタイミングでもなく、それなりの知識のある人になら何らかの発表があるかもしれないと思われるものだったのだが。その発表そのものに注目を集めるためにアップルがわざと情報をリークしたというのが「やらせ」の根拠である。だが、これはあり得ないだろう。偽情報をリークするならわかるが、本物の情報をリークすればインパクトが薄れてしまうだけで逆効果だからだ。
- SOTEC への訴えなど、アップルは iMac のデザインに関してかなりナーバスになっている。それも当然であろう。iMac こそが今のアップルを支えているドル箱だからだ。私も知らなかったが、Pro 向けの Power Macintosh G3(Blue & White)は思ったほど売れていないらしい。もちろんヒットはしているのだろうが、大ヒットにはなっていないということだ。既存の周辺機器の問題やデザイン変更が理由だろう。つまり、アップルが復活したと Macintosh ファンは喜んでいるわけだが、そんなに手放しで喜べる状況ではないということだ。SOTEC ごとき小物相手に大人気ないという者もいるが、そんな余裕はアップルにはないのだ。iMac は薄利多売製品であり、200万台売れたところで利益は思ったほど多くないのだろう。その証拠にアップルは Mac OS でも儲けようとしている。アップデータを Macintosh 情報誌の附録の CD-ROM には収録させずに有償販売しているのだ。インターネットからは無償でダウンロードできるわけだが、これは有償販売に切り替えたと言って良いと思う。
- かつてはアンチ Microsoft の最大の対抗馬に祭り上げられたアップルだが、それほどの大企業なのだろうか。従業員数や資本金、売上高などは関係ない。アップルはパソコン市場の5%程度のシェアしか持っていないのである。そしてソフトもハードも全て自分でまかなわなければならない。OS 別のシェアを出したところで、OS/2 などとともにその他に分類されてもおかしくない程度の存在なのだ。そして、Macintosh はできが「良く」長持ちする。なかなか新製品に買い替えてもらえないのだ。これで経営が成り立つわけがない。G3 から G4 へのアップグレードの混乱もこのあたりを見直そうとしているとしか思えない。
- どんなに優れた製品を提供する企業であっても潰れてしまっては意味がない。存続して優れた製品を提供し続けてこそ価値があるのだ。アップルは生き残りのためにさまざまな試行をしている。Mac OS の有償アップグレードにしてもそう、CPU アップグレードの廃止にしてもそうだ。新製品の開発情報を秘密にすることもそうだ。私にはそれらが企業として当然の事と思える。
- 本来うわさ系サイトというのは企業の応援団のはずである。しかし、これらのサイトで最近疑問に思うような記事が多い。彼らは本当に応援団なのか。「ユーザあってのメーカ」という言葉はある意味では正しい。某ビデオデッキメーカのようにまともにユーザサポートできないメーカは非難されて当然ではある。商品を買ってもらってユーザになってもらってこそメーカは存在できるのだ。
- しかし、ユーザは物乞いではない。機能アップが少ないからといって OS のアップデートを無償で行えというわけにはいかないだろう。ほんの少しのアップデートであっても多くの人件費や開発費がかかっている。メーカは開発費を回収しなければならないのだ。気に入らなければ買わなければ良い。CPU のアップグレードもそうだ。Macintosh は以前のように100万円以上出さないと買えないわけではない。3年も使えば買い替えた方が良いのではないか。CPU 以外の部分でも大幅な機能強化がはかられているはずだ。それが気に入らなければ買い替えなければ良い。私は「購入しない」というのが消費者の最大のアピールだと思っている。新製品にしてもそうだ。インターネットでいたずらに非難するのは好きになれない。
- また、新製品の開発情報も同じである。事前に次期製品の情報が漏れれば既存製品が売れ残ってしまう。かつてアップルは旧製品の在庫の山に埋もれて潰れるところだった。原因は情報リークではなく、品質問題やマーケティングの失敗だったようだが、結果としては同じことが起こるのである。旧製品は安い価格で叩き売りされ収益を圧迫し、多くの開発費を注いで創り上げた新製品は売れ残り、悪循環が続くのである。ユーザにとっては安く購入できて嬉しいかもしれないが、悪循環の終りには企業倒産しか待っていないのだ。
- そう、「メーカあってのユーザ」でもあるなのだ。メーカが無くなってしまえばユーザは存在できない。Mac OS を開発しているのも Macintosh を開発しているのもアップルだけなのだ。代りはないのである。パソコンメーカで潰れた会社はいくつもある。いまだに根強い人気を持っている Amiga を開発していた Commdore 社も倒産した。一時は Gateway 社に部分的に買収されて存続するかに見えたが実現しなかった。潰れてしまえばおしまいなのだ。アップルがそうならない保証はない。つい2年前に私達はその恐怖におののいたではないか。もう忘れてしまったのか。
- 私達ユーザがアップルの命運を握っているのだ。それを忘れてはならない。影響力のあるサイトの運営者はそれを肝に命じてもらいたいものだ。
1999/10/23
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1999/10/20
そんな格言あったっけ?
- うーん。『良い会社でも失敗はあるが、優れた企業は失敗を改める』……アメリカにもそんな格言はないと思うぞ。それを言うなら『過ちては改むるにおそるることなかれ(論語)』だと思うなあ。とはいえ、過ちをいち早く謝罪し訂正できるということは素晴らしい。確かにスペックダウンしておいて価格据え置きはない。未だに「原因究明せよ」と追及しているサイトもあるが、企業のトップが適切に謝罪し撤回したのだからそれで良いではないか。ただ、これがアップルでなかったらこうも素直に謝罪できただろうか。いや、Mr. Jobs でなければと言い換えた方が良いかもしれない。例えば、某ビデオデッキメーカはお客さまをクレーマー扱いしておいて長い間シカトしていた。某パソコンメーカとそれを後押しする大ソフトハウスと大LSIメーカは他社のデザインをパクって、それを賛美しておいて未だに開き直っている。ほんとうに謝るということは難しいものだ。下手なプライドは持つだけ邪魔だと痛感した。
- iBook の製品版に触ってみたが、どう考えても標準搭載メモリが少なすぎる。Mac OS だけでかなりのメモリを消費しており、まともな速さでアプリケーションが動かなかった。仮想メモリを使っていたのだろう。32MB ではなく 64MB を標準にすべきだったと思う。日本語 OS はフォント容量が大きく英語版 OS より多くのメモリを消費するのはわかっているはずなのに、いつもアメリカモデルと日本モデルは同じメモリ搭載量で出荷されてしまう。何とかして欲しい。追加用のメモリなど一般の消費者より製造メーカの方が安くまとめ買いできるのだから。 台湾地震でメモリが不足しているとしたらなおさらである。
- 「Power Mac G4」が正式名称だったなんて……Macintosh を名乗らない Macintosh が増えてしまうのは寂しい気がする。てっきり略称だと思っていたのだが、今月の Macintosh 情報誌にはそのように書かれていた。 やはり、名前にはさまざまな人の思い入れがあるのでむやみに略したり短くして欲しくないというのは私が歳をとったということだろうか。
1999/10/15
SOTEC e-One 訴訟
- 今さらながら SOTEC の e-One について書いてみようと思う。実は以前にも書いてはいるのだが、その後の iMac訴訟の議論が変な方向に進んでいるので改めて書いてみたい。10月9日の日経新聞の「SATURDAY NIKKEI "X"」の記事が私の言いたいことを代弁してくれている。さすがにプロの書く文章はひと味違う。タイトルは「工業でザイン独走競え-iMac訴訟を検証する-問われる企業哲学」であった。この記者の文章は本質を正しくついている。久々に胸がすかっとする文章にめぐり合えた気がする。どうも iMac訴訟について書かれた文章を読むと、「法律的には……」というニュアンスのものが多い。確かに「意匠登録していなかった iMac のデザインが不正競争防止法で保護された」というのは興味深い内容だが、ポイントは別のところにあるような気がする。それを日経新聞の記事は適切に書いてくれている。図書館などで探して読んでみることをお勧めする。
- 私なりに書いてみると、キーワードは「確信犯」と「プライド」である。e-One のデザインは誰が見ても iMac のデザインを真似ている。よほどのへそ曲がりで無い限りは iMac と e-One は似ていると判断するはずだ。特にキーボードやケーブルなどはそっくりだ。これは iMac スタイルの Wintel PC を作りたいという「確信犯」に他ならない。私は Wintel という言葉が嫌いなのだがあえて使ってみた。というのも e-One の新聞全面広告には SOTEC の大辺社長だけではなく、マイクロソフトの成毛社長とインテルの伝田社長が仲良く登場していたからだ。3人で「パソコンは、こうでなくっちゃ、ね。」、「ウィンドウズマシンでこのデザイン。……と成毛社長」では「確信犯」と決めつけられても当然である。
- ただ、メンツだけは守りたいようで大辺社長は「iMac の真似ではない」と強がっていた。間違えてもらいたくないのは「プライドを守る」ことと「メンツを守る」ことは全く別であることだ。「プライドを守る」とは前向きな対応で不条理なことに対する抵抗であるが、「メンツを守る」ことは後ろ向きの対応で「ごまかす」「強がる」「自己保身」などというネガティブな行為である。
- 前にも書いたが e-One 自体は良いマシンである。デザインさえ別にすればお勧めできる。以前には気がつかなかったが、何と PCカードスロットまでついているのである。これを128,000円で買えるのだからホントにお買得である。だが、あのデザインが全てを台無しにしてしまった。消費者は猿マネを歓迎しないだろうと思ったが、やはり2カ月間で20,000台程度しか売れていないようだ。多いような気もするが、iMac はワールドワイドでその20倍売れている。生産キャパとの関係もあるのだろうが Wintel 陣営の切り札マシンとしては少ないと思う。ソニーの VAIO を猿マネした他社の「銀パソ」もそれほど売れなかったことを考えると当然で、消費者をバカにした報いと言える。
- 最近の Mr. Jobs は日本を嫌っていないようでソニーを賛美するような発言をし、盛田名誉会長の死に哀悼の意を表したりしている。しかし、以前には日本や東南アジアを毛嫌いしていた話は有名である。そのため Macintosh の日本語化は大きく遅れてしまったほどだ。その理由は「コピー商品」である。かつて大ヒットした Apple II というパソコンは仕様が公開されており、それによって周辺機器やアプリケーションソフトがたくさん開発されていた。しかし、この仕様公開は「海賊版」というコピー商品を生み出してしまった。そして、それを作っていたのが日本を含めた東南アジアだったのである。西洋人が東洋人を差別する理由は肌の色だけが原因ではない。私は「文化の違い」という言訳では説明できない、東洋人に知的所有権への認識が「無い」ことへの嫌悪が最大の原因だと思う。
- 日本企業も今でこそ先進技術を「開発」しているが、最初はアメリカ企業の「コピー商品」からスタートしている。「軽薄短小」化が得意であるなどと強がってはみても、パソコン関連で日本独自のヒット技術などあるだろうか。結局のところアメリカの技術を「コピー」し「応用」しているに過ぎない。これでは嫌われても仕方ないではないか。情けないことに日本人はそのことを良く認識しているのだ。日本企業どうしは平気で真似をしている。「銀パソ」もそうだが、日本企業の製品など「コピー」の固まりだ。1社がある機能を搭載すればスグに他社も追随するということを繰り返してきた。それをしない企業の方が少ないため、ソニーやホンダが独創性のある企業と誉められるというとんでもない事態になっている。当たり前の事なのに誉められるというのは異常であろう。アメリカ人に理解できないのも当然である。
- もう少し違う書き方をしよう。「法律に違反しなければ何をしても良い」のだろうか。例えば、基準値をギリギリ超えていなければ汚染物質を垂れ流して良いのだろうか。因果関係が証明できないからと周辺で地盤沈下が起こっているのに地下水を大量に汲み上げ続けて良いのだろうか。私は法律は守るべき最低ラインであり、その上に企業独自の規制ラインがあると思っている。その2本のラインの距離が離れている企業は「良心的企業」であり、その距離がゼロに近い企業は「悪徳企業」だと思う。今回の SOTEC の場合は最低ラインより企業独自の規制ラインが低かったわけであり論外であろう。
- 「事実は小説より奇なり」というが、人の想像力は現実を超えられないのだ。法律もそうだ。人の想像できる範囲内でしか法律は作れない。よく法律に不備があると言われるが仕方がない。要は現実に合わせていかに素早く法律を改正するかがポイントなのだが、なかなか難しいらしい。それで、判例(過去の裁判の事例)が重要視される。過去の判決が後の裁判の基準にされるのだ。今回、各メディアで SOTEC 裁判が取り上げられるのはそのためである。だが、そこがクローズアップされすぎて、事の本質にまで突っ込んだ記事が少ないのが気になって仕方がない。
- さて、ともかく今回は外圧があってこの日本的な(アジア的な)「コピー」という悪しき常識が否定された。日本人は情けないが外国、特にアメリカからの圧力に弱い。しかし、これが一つのきっかけになってくれればと思う。何度も書いてきたことだが、猿マネをしても一時しのぎにしかならない。独自の製品を創らなければ売れないし、最後には撤退せざるを得なくなるのだ。かつての「電卓戦争」は教訓としては生かされてはいない。あれだけ争った起業達の中で今も電卓を作り続けている企業は何社あるだろう。その失敗を何度繰り返せばよいのだろう。パソコンだけではない。ほとんど全ての製品で同じことが続いている。企業が「プライド」を持って製品を開発するように目覚めて欲しい。それができない企業は潰れて構わない。そうでなければ日本企業に未来はない。真似するだけなら人件費の安い東南アジア諸国に勝てるはずはないからだ。
バックナンバー(その15)
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