パネルディスカッションについて(1998年2月18日 14:00〜 国際会議場メインホール)
これも午後に行われた無料の講演です。空席がかなりありました。もったいない!大阪にもNTTの電話回線を通じてTV会議のように中継されたみたいです。
マクロメディア社の手嶋さんがうまく仕切ってくれていて、とても良いセッションでした。手嶋さんって良い方ですね。基調講演でも話されていましたが素敵です。(まあ、Macintosh も Windows も両方立てないといけない立場で話されるのでそう感じるのかもしれませんけど。)
確かに今や Macintosh も Windows も関係ないんですよね。Macintosh ユーザは結構こだわるかもしれないですが、Windows には Windows の良いところがあり、Macintosh には Macintosh の良いところがあるのです。そして、Windows がパソコンの OS として圧倒的なシェアを持っているのは事実なのですから。昨年の Mac World Expo Tokyo の来場者アンケートで、84%の人が Macintosh でけでなく Windows も使っているという調査結果が紹介されていました。
参加者
- マクロメディアジャパン:社長 手嶋さん(司会)
- マイクロソフトジャパン:会長 古川さん
- アップルコンピュータジャパン:社長 原田さん
(手嶋さん)今後はメディアの境はなくなる。紙媒体、Web、Webtv、放送、通信……。どれかのメディアのために作って水平展開するのではなく、あらかじめ全てのメディアに対応することを前提にして作る方向に進むだろう。(全く同感です。私はまだ、そこまでいってませんけど。)
(手嶋さん)外資系会社が「日本市場に力を入れます」とコミットすることが大切だ。外資系の企業のトップに対し日本のユーザはアピールして欲しい。(全く同感です。そのためには我々ユーザも商品を買って儲けさせてあげないといけないですね。あくまでも商売ですから。)
FLASH 2 の販売比率について
- (手嶋さん)Macromedia FLASH 2 のWindows 版:Macintosh 版の比率はアメリカでは7:3ですが、日本では23:67で逆転している。日本ではクリエイターには Macintosh が強い。
- (古川さん)それは、まだ日本市場で Macromedia FLASH 2 が十分売れていないからでは?確かに日本の Macintosh ユーザ の中にはセンシティブな(先鋭的な)人がいるのでそうなりがちだ。でも、Macromedia FLASH 2 の良さが受け入れられれば、もっと Windows 版も売れるはずですよ。
- (原田さん)日本とヨーロッパはアップルのブランドロイヤリティーが強い。アメリカはそうでもない。そういう影響もあるだろう。
- うーん。たぶん、古川さんの意見が当たっているかもしれない。また、日本での Macintosh のブランドイメージというより、クリエイターの環境が Windows に移行できない要因があるような気がします。フォントとか。
マイクロソフトの古川さんの発言は「大人」ですね。さすが大マイクロソフトジャパンの会長をしているだけのことはあります。普通の人は立場があるのでなかなか言えないようなこともおっしゃっていました。アップルユーザのSONYのVAIO-505 に対する思いも一番わかってくれているようでした。原田さんのファンには申し訳ないですけど「ちょっと器が違う」かな?古川さんの方が Macintosh に対する思い入れが強い気さえしました。(まあ、原田さんにはアップルの日本責任者としての立場があっての発言なので、他のお二人に対しハンデがあるのですけどね。)
- (質問者)ソニーの VAIO-505 のような PowerBook を出すつもりはないのか?日本の市場には必要だと思うが、それは米国本社に伝わっているのか?
- (原田さん)それは伝えている。しかし、Jobs も言っているが、今アップルはフォーカスしている。(集中した動きをしている。)いろいろな製品をつくることはできない。(まあ、立場はわかるのですけどね。もう少し言いようがあるでしょうに……)
- (古川さん)いや、そういうことではなくて、Macintosh ユーザとしては、ああいう VAIO-505 のような NoteBook PC はアップルから出て欲しかったということでしょう。アップルも昔 PowerBook をソニーに作ってもらっていたのに。やめなければ良かった。(ちょっと一言多いですけどね。)
Web TV (Webtv)について
- (手嶋さん)Microsoft は日本でも Web TV を始めましたが。うまく行きそうですか?
- (原田さん)どうも Newton や Pipin と同じような感じだ。あらかじめ期待をあおっておいた場合、実際に製品化されたものがそれを裏切ったら受け入れられない。アップルやバンダイはそれに気づいて一般消費者向けから特定消費者向けにターゲットを変更した。やはり、イメージしたものに技術が追いつかなかった。今回の Web TV も技術的・ソフト的なハードルがあるのではないか?Web TV でなければ見れないようなコンテンツがあれば普及すると思う。
- (手嶋さん)確か Microsoft はアメリカで報道関係の会社を買い取ったときに、ニュースを TV で流した後で Web で配信するのではなく、あらかじめ Web で配信することを意識して記事を書くようにするのだ、とコメントされていましたね。
- (古川さん)そうですね。原田さんのおっしゃることはよくわかります。頑張ります。
- (原田さん)私も応援していますから。
- この部分はちょっと記憶があいまいです。面白い部分だったのですが。^^;)
クラリス座談会(1998年2月19日 13:30〜 Busioness SOHO Pavilion Solution Stage)
これからのソフトウエアについて論ずるはずが、新しいファイルメーカー株式会社についての話が中心でした。でも、面白かったです。(毎日やっています。司会が変わるので内容も少しづつ異なったようです。これは2月19日のものです。)
参加者
- Mac World Japan:副編集長 沖本さん(司会)
- クラリス株式会社:社長 宮本さん
- アクラリス株式会社マーケティング部:部長 木藤(きとう)さん
- Windows World Japan:編集長 富樫さん
発言を順不同で、記憶の範囲で書いてみます。
(沖本さん)ファイルメーカー株式会社に移行する経緯は?また、どのソフトを扱うのか?
(原田さん)アップルの100%子会社であることには変わらない。2年前には逆にアップルからMacOSの販売を移管されたりもした。特に好評のファイルメーカーPro にフォーカスするということだ。あとクラリスホームページも扱う。会社名と製品名が同じというのもよくあることで、その方がわかりやすい。クラリスという名前は良い名前だが、クラリスワークスのイメージが強すぎるかもしれない。クラリスホームページも名称変更する予定だ。詳しくはホームページにもリリースをアップしている。
(沖本さん)どうしてクラリスホームページだけがファイルメーカー株式会社に残るのか?他のクラリスワークスなどはアップルに移行するのに?
(木籐さん)クラリスホームページがファイルメーカー株式会社に残るのは、米国では既に発売されているVer.3 でファイルメーカーPro と緊密に連携して動くから。今後もファイルメーカーPro と関連するようなアプリケーションを開発していく。また、SDK(Solution Distribution Kit)は単にローカライズするのではなく、いろいろな可能性を検討したい。今の SDK は単にランタイム版を作るだけの機能しかなく、米国でもいろいろな機能強化要求があるからだ。
(富樫さん)どうしてWindows 版を出したのか?ハイブリッド版は?
(原田さん)96/10に出したが、それまではプラットフォームが違えばデータ互換がないというのが常識だった。でも、それはホントなのか?互換性が取れることを示したくて実践した結果だ。また、ハイブリッド版はユーザに多くの選択枝を与えたいと思ったから出した。2ライセンスを2本とも Macintosh で使うもよし、Macintosh と Windows で1本づつ使うもよし、2本とも Windows で使うもよしということだ。
(富樫さん)Windows の世界には競合製品もいっぱいあるはず。どう戦っていくのか?
(原田さん)ファイルメーカーは全世界で300万本を販売した。最近も大幅に伸びている。これは、使いやすいということが受け入れられていると思う。日本では Macintosh 版の方がやや多いが、米国では Windows 版の方が多く、また、急激に伸びている。また、ファイルメーカーに関わるサードパーティーのデベロッパーは2,500社もある。私はファイルメーカーをエンドユーザーデータベースと呼んでいる。これは、マクロなどを駆使しないと使えないプログラマーデータベースと区別するためだ。実際に Windows ユーザからも使いやすいと好評だ。Windows ではNo.2のデータベースソフトになっている。
(富樫さん)Windows ユーザと Macintosh ユーザは違うと思うが、どう区別しているのか?
(原田さん)お客様をWindows ユーザと Macintosh ユーザというようにラベルづけなどしない。実際、ハイブリッド版のファイルメーカーPro のユーザの90%は1ライセンスを Macintosh で、もう1ライセンスを Windows で使ってくれている。
(宮本さん)Windows ユーザの中には MS-DOS などの流れで「難しいソフトを使いこなす」のに喜びを感じる人もいるような気がします。
(富樫さん)そういう人もいますが、やはり Windows3.1、Windows95、そして、Windows98 と進歩するに従って、「簡単な方が良い」と感じる人が多くなっている。それだけ裾野が広がっているということでしょう。
(富樫さん)最近のアプリケーションの肥大化をどう考えるか?
(宮本さん)Claris の企業スローガンは「Simply Powerful Software」だ。「実は難しい処理」をユーザにはできるだけ簡単な操作で実現してもらう。これがソフト屋の勝負どころ。だからといってソフトが肥大化するものではない。
(原田さん)お客様がソフトを買うのは、「快適に」「短時間で」自分のやりたいことができて「喜び」を感じたいから。そう思ってもらえるアプリケーションソフトを提供してきたと思うし、これからも提供していきたい。4月1日からファイルメーカー株式会社として再出発します。ご支援お願いします。
教育トラックの Mr. Wozniak の基調講演(1998年2月21日 10:00〜 国際会議場メインホール)
Mr. Wozniak がどのような育ち方をしたのかがわかって興味深かったです。最初に、若借りし頃に Mr. Wozniak がアップルパイをぶつけられ、耳までおおわれている写真を見せて、「これが、Apple Pie-in ear だ(Apple Pioneer だ)Mr. ゲイツのパイをぶつけられた写真についたキャプションよりずっと良いでしょう?」と皆を笑わせてくれた。
- 父がエンジニアだったので子供の頃からエレクトロニクスが身近にあった。
- 学校の先生がプログラムに興味を持った少年 Wozniak のために近くの企業に話をつけてプログラムを作れるように手配してくれた。(日本ではあり得ないですね。)
- 学生時代はエレクトロニクスでよくいたずらをした。自分で作った、TVに妨害電波を出す装置を隠し持ってTVの映像を乱しておいて、Mr. Wozniak がTVに手を触れると直る(隠し持った装置を止める)ようなことをして人々を煙に巻いていた。
- ホーム・ブリュー・コンピュータグループで Mr. ゲイツのプログラムをコピーしたのが最初の違法コピーじゃないかなとも言っていた。(これにMr. ゲイツは相当腹をたてていたそうですからね。まあ、今にすれば当然の怒りでしょうけど。当時はちょっと状況が違ったのでしょう。うまい言葉がみつからない。^^;))
- 最初にパソコンらしいものを作った時に、当時勤めていたヒューレットパッカードに製品化を提案したところ、良い製品だと認めてくれたが製品化のためのリソース(人員・お金)はさけないと退けられた。その時に Mr. Jobs に「ボード状態で売れば良い。損しても構わない。自分たちの会社なのだから。」と言われてアップルをスタートした。(こういう起業家精神はうらやましいです。もちろん精神論では片づかない問題で、日本にはそういう起業家をバックアップする投資家がいないという問題もありますから。銀行も貸し渋りしていますし。)
- 内容は面白かったが、もう少し現在されている子供達への教育の話を聞きたかったなあ。
- 余談だが、同時通訳はもう少し感情を込めてやって欲しいなあ。ディスクジョッキーみたいな同時通訳があればうけると思う。せっかくのジョークがうまく伝わらないのだ。まあ、私が英語のヒアリング能力を磨けば良いだけですが。
教育トラックの実例紹介(1998年2月21日 11:00〜 国際会議場メインホールにて)
玉川学園小学部の渡瀬先生が子供達がアメリカの学校と E-mail、TV会議、会議室、交換訪問などを通じて交流している事例を紹介してくれた。実際に玉川学園と電話回線をつないで(TV会議で)子供達(小学五年生)が環境問題への取り組みを発表してくれた。
- これほどのコンピュータ環境が整っている学校があるのかという驚きより、最近の小学生が交流のため自分で英語を学ぼうと努力していることへの驚きが大きかった。
- このシステムによって、子供が英語を学ぼうというモチベーションが生まれ、テクノロジーに対して積極的に関わるようになり、国際理解や異文化理解、自国文化理解ができる、と説明されたが、それ以上にこんなに自主的な自立心旺盛な子供達が育っていることが素晴らしい。
- この玉川学園は私立の学園ですが、最近は子供達の悲惨な事件が続いているだけに他の学校もマネして欲しいところです。この学園は幼稚園から大学院まであるそうです。
- この学園はこれから CHaT Net(Children Home and Teacher Net)を立ち上げようとしている。学園と家庭をネットワークで結んで新たな挑戦を始めるそうだ。在宅学習なんていうのもありそうです。本当の意味での先生と親と生徒のコミュニケーションをめざしているそうです。
- 余談だが、このTV会議システムは画像はコマ落ちだが、音声は非常にクリアだった。玉川学園はもちろん、アメリカともきれいに接続されていた。
Newer Technology のワークショップ(1998年2月20日 12:30〜 国際会議場302会議室)
- 主催はメディアビジョン。このワークショップは面白かった。日本人のステージの見方はシャイで静かなものだが、ここでは派手にリアクションすることが求められる。米国本社の社長に日本ユーザの熱意を伝えたいというのが大義名分だったが、本来「観客」である我々もノッて楽しまなければ。ステージは一方通行のものではなく、双方向のコミュニケーションの場だと思う。良いと思えば拍手、気に入らなければブーイング、ユーザの気持ちをメーカに伝えなければつまらない。
- Newer はPowerPC チップのアップグレードカードで、米国No.1のシェア(80.2%)を持つ。
- Newer は IBM の CPU チップユーザのNo.2なので、IBM から優遇されている。(No.1はアップルですね。)アップルは最近フォーカスしているので価格のこなれた CPU を使うが、Newer は最先端のチップを使うので IBM も良い情報や試作サンプルをどんどんまわしてくれる。
- Newer はサードパーティで最初にアップルに採用され、最初の PowerBook が出た1990年から RAM カード(SIMM)を供給してきた。
- 信頼性第一で余裕をもった部品を使っている。一部のメーカのように 275MHz の CPU をクロックアップして 300MHz で売るようなことはしない。(これは正しい方針だと思います。半導体部品は製造工程でかなりの性能のバラツキがでます。また、最先端の製品ほど設計マージンが少ないものです。それを「改造」して使うなんて恐ろしいことです。設計マージンを超えて使用するということは動作の不安定というリスクだけではなく、製品寿命を縮めることにもなるのです。半導体部品は基本的には経時劣化しないものですが、それはあくまで設計マージン内で使用した場合のことなのです。)
- PowerPC603/604 シリーズはマザーボードのクロックスピードの影響を受けるため高速化が難しいが、PowerPC750 はバックサイドキャッシュのおかげで影響がない。だから Newer はPowerPC750 を選択した。
- Macintosh はマザーボードのROMにより、マシン状態を設定している。当然、Power Macintosh G3 以外のマシンではPowerPC750は認識できない。PowerPC750 が PowerPC603 互換だからといってそのままアップグレードカードにすると不具合がでるのはそのためだ。Newer は専用のチップを開発し、マザーボード毎の微妙な差を合わせ込むようにしている。だから安定しているし、Macintosh 互換機でも使用できるのだ。
- 昔のマシンの Level 2 キャッシュは容量が小さすぎるのでアクセスが頻繁に発生し、システムバスを占有してしまい、アップグレードカードの速さが生かせない。オフにしてシステムバスを解放した方が有利。Newer ならコントロールパネルでオン・オフ可能。
- 今年からメディアビジョンという力強い代理店を得たことで、日本市場でさらに伸びると期待しているし、Newer としても力を入れてサポートする。
- 良い会社ですね。Power Macintosh 6100/7100/8100 用の G3 アップグレードカードが作れるなら Macintosh Centris650 用のものも作れそうなのになあ。040PDSに差せば動かないのかな?
[Expo Report]
[Expo Tokyo Report (その1)]
[Expo Tokyo Report (その3)]
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