2019/09/08
ニコンとキヤノンからフルサイズ・ミラーレス一眼登場 (その2)
- さて、ミラーレス一眼はレンジファインダーカメラが復権したものだというのが前回の結論なのだが、ミラーレス一眼にも欠点があるという点を書いてみたい。
- ミラーレス一眼は小型で軽量、ミラーショックがなく連写が可能で動画も撮影できるというのが強みなのだが、大きな欠点が2つある。その1つがEVF(Electric View Finder)、つまり、電子ビューファインダである。残念ながら、かなり改善されたとはいうものの光学ファインダには及ばない。一見したらわかるのだが、白飛び気味だったり黒つぶれ気味だったりと自然には見えないのだ。最近は液晶だけでなくOLED(有機EL)を使ったものもあるが、色味は改善されても明るさの再現は今一つである。ここを割り切れるか否かでミラーレス一眼に移行できるかが決まるだろう。私は現時点ではまだ無理なので移行できていないわけだ。
- しかし、EVFにはEVFならではのメリットもある。実際の画像を表示するのではなく撮影される画像を見ながら撮影できるというのは大きなメリットである。これまでは撮影直後に背面液晶画面で確認していたものがファインダの中でリアルタイムで見ることができるのだ。簡単にいうと露出補正やホワイトバランス、アートフィルタ、などを適用した画像をファインダで確認しながら撮影ができるのである。そして、暗すぎて見えない状態でも光量をブーストすることで被写体を確認することも可能なのだ。
- ミラーレス一眼にはもう1つローリングシャッター歪みが生じるという欠点がある。これは動画撮影などで発生することが多いのだが、電子シャッターで発生する問題である。どういうものかは「ローリングシャッター歪み」でネットを検索すると実例の動画がヒットするので調べて見て欲しい。実は結構難しい問題で私のような素人には原理がよくわからない。別途調べて書いて見たいが、ここでは動いている被写体を撮影すると歪んだ写真になってしまう、あるいは、変な動画になってしまうという程度に留めたい。
- これはイメージセンサからのデータ読み出しが遅いことに原因があるのだが、イメージセンサが高画素化し続けているためいつまで経ってもデータの一括読み出しができないということのようだ。かつて、イメージセンサがCCDだった時には一括読み出しができていたので単に高画素化が原因ではなくCMOSイメージセンサ特有の問題なのかもしれない。
- 解決策としてグローバルシャッターの実現があげられているが、「グローバル」=「全体」という言葉に示されるとおりデータの一括読み出しを意味している。構造的な問題でなければ高画素化が止まれば製造技術の進歩で解決は時間の問題だと思われる。その実現まではメカニカルなフォーカルプレーンシャッターを使うことになるわけだ。これは静止画に限ってのことではあり、動画についてはその方法は使えない。
- もちろん、電子シャッターにもメリットはある。まずは動画が撮影できることだ。高速で動く被写体でなければ動画を撮影しても問題は少ないのである。それゆえにデメリットをおして採用されているわけだ。そして、高速連写が可能だということもメリットである。メカニカルなフォーカルプレーンシャッターにはどうしても「動作」する時間が必要なので高速化には限界があるのに対し、電子的なシャッターにはそれがないからである。
- さて、この2つが一眼レフに対してのミラーレス一眼の大きな欠点であるのだが、ニコン、キヤノンの両社がフルサイズ・ミラーレス一眼をリリースしたということは何を意味するのだろう。一眼レフからミラーレス一眼への移行は必然なのだろうか。
- 今回リリースしたのは両社ともフルサイズ機である。それまで両社がリリースしていた Nikon 1は1インチ、EOS M はAPS-Cサイズのイメージセンサを積んでいたのに対し、ついにフルサイズ(135サイズ)のイメージセンサを載せてきたのである。これはソニーのフルサイズのミラーレス一眼のシェアはわずかではあったものの、現時点で対抗を始めなければ危ういと両社が判断したことを意味する。Nikon 1やEOS Mでは本気度が足りない。だからこそのフルサイズ機なのだ。
- ただ、個人的にはそれでもニコンもキヤノンも本気度が足りないと思っている。それは両社ともフラッグシップではなくハイアマチュア・モデルをミラーレス一眼化しているからだ。既にニコンはNikon 1、キヤノンはEOS Mでミラーレス一眼をリリースしているわけでミラーレス一眼を作る技術は確立している。ただ、先に述べたとおりのミラーレス一眼の欠点を解決できない現状ではフラッグシップ機を製品化することはできなかったのだろう。それは一眼レフのトップ企業としては適切な判断だと思われる。ソニーは一眼レフではほぼ実績がなかったため思い切ったことができたに過ぎない。守るべきものがあるニコンやキヤノンはそういうわけにはいかないのだ。
- フラッグシップでない両社のミラーレス一眼はプロに響くのだろうか。ハイアマチュアには一定のアピールができてはいるものの、レンズは揃っておらず中途半端な状況であることは否めない。これではまだ「お試し」と思われてしまうのかと危惧してしまう。(続く)