フォーサーズ雑記帳（バックナンバー）

OLYMPUS OM-D E-M1 ファースト・インプレッション(その6)

• さて、この比較にレンズを加えると重量差は広がってくる。レンズ交換式カメラはシステム全体で評価しなければならない。標準ズームレンズで見てみよう。M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROが超小型軽量で安いことがわかるだろう。

• ちなみに、手ぶれ補正についてはオリンパスはボディ内補正で一貫しているので○(ボディ内)としたのに対し、ニコンやパナソニックはレンズ内補正なので○、×で区別した。ただし、パナソニックはDMC-GX7にボディ内に手ぶれ補正を搭載してきていることを付記しておきたい。また、コーティングの部分は特に記載のないレンズは「ノーマル」と記載した。通常のマルチコーティングという意味である。防塵・防滴についてだが、ニコンは最近になってレンズの防塵・防滴をアナウンスしなくなった。オリンパスに比べると若干劣る防塵・防滴性能だと言われていたが、何かトラブルがあったのだろうか。それとも、単にポリシーの変更なのかはわからないが、カメラが防塵・防滴であってもレンズがそうでないと意味がなく、情報がないのは困ったものである。ここでは一律に△にしてある。

• 個人的な要望をピンク色で載せてみた。これはフォーサーズのZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWDに相当するレンズとして要望したい。ニコンにもAF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VRという小三元ズームと呼ばれるレンズが存在するとおり、実際には135換算で24-120mmぐらいが我々アマチュアには一番使い安いからだ。フォーサーズにもニコンにもラインアップされているのには意味があるのである。マイクロフォーサーズには一応、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZが存在するが、暗すぎるのだ。

  標準ズームレンズ
  メーカ	製品名	フォーマット	135換算	重量	手ぶれ補正	コーティング	防塵・防滴	希望小売価格(税抜)
  オリンパス	ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD	フォーサーズ	28-70mm	900g	○(ボディ内)	ノーマル	○	295,000円
  ニコン	AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED	FX(135)	24-70mm	900g	×	ナノクリスタル	△	260,000円
  パナソニック	LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S.	フォーサーズ	24-70mm	305g	○	ナノサーフェス	○	119,000円
  オリンパス	M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO	フォーサーズ	24-80mm	382g	○(ボディ内)	ZERO	○	107,000円
  ニコン	AF-S DX Zoom-Nikkor 17-55mm f/2.8G IF-ED	DX(APS-C)	25.5-82.5mm	755g	×	ノーマル	△	220,000円
  オリンパス	ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD	フォーサーズ	24-120mm	575g	○(ボディ内)	ノーマル	○	119,000円
  ニコン	AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR	FX(135)	24-120mm	710g	○	ナノクリスタル	△	156,000円
  オリンパス	M.ZUIKO PRO (F2.8-F4.0) 個人的要望	フォーサーズ	24-120mm	XXXg	○(ボディ内)	ZERO	○	XX,000円
  オリンパス	M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ	フォーサーズ	24-100mm	212g	○(ボディ内)	ノーマル	○	47,500円

• フォーサーズに比べてマイクロフォーサーズは多少ではあるが単焦点レンズが豊富である。一応、それらもリストアップしてみよう。ただ、調べてみて驚いたが標準レンズがほとんどない。勝手な想像だが、今や標準レンズは標準ズームレンズに取って代わられているのではないだろうか。キットレンズもズームレンズなので仕方ないのかと思う。

• 私が写真を始めた頃は50mmの標準レンズがキットレンズだったのだが、カメラメーカはユーザの利便性を高める一方で、自分で首を絞めているのではと思えてならない。まあ、私もOMシステムでは標準ズームであるZUIKO MC AUTO-ZOOM 35-70mm F3.6を購入し標準単焦点レンズは持っていなし、私のOMシステムでの「標準」レンズはZUIKO MC AUTO-W 24mm F2だったりするので個人的には何の問題もない。ただ、一般的には50mmというは標準レンズとして必要ではないかと思えるのだが……

  標準レンズ
  メーカ	製品名	フォーマット	135換算	重量	手ぶれ補正	コーティング	防塵・防滴	希望小売価格(税抜)
  パナソニック	LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 ASPH.	フォーサーズ	50mm	200g	×	ナノサーフェス	×	70,000円

• さて、オリンパスのマイクロフォーサーズには標準単焦点レンズが存在しない。一応、フォーサーズにはZUIKO DIGITAL 25mm F2.8があるのだが、暗いパンケーキレンズであり、お薦めの標準レンズとは言えないようだ。その点、パナソニックはまじめにレンズをラインアップしているように思える。私はパナソニックはキヤノンと同じくあまり好きな会社ではないのだが、マイクロフォーサーズシステムだけは評価が異なる。カメラ部門はパナソニックでは新しい組織でビデオカメラ部門などから人材を引き抜いて作ったのだと思われるが、他のカメラメーカからのヘッドハンティングなども行ったのではないだろうか。良い意味でパナソニックの中では少し異質な感じがしている。

OLYMPUS OM-D E-M1 ファースト・インプレッション(その5)

• さて、フォーサーズとマイクロフォーサーズとの統合についても書いておこう。まずはE-7だが、斎藤巧一郎氏によるとE-5と形状は異なるものの大きさは変わらなかったそうだ。ガラスペンタプリズムの重さが200g程度なので、軽くもならないらしい。開発者トークで出た話だが、限りある開発リソースをマイクロフォーサーズに絞ることに決めた理由はミラーレスカメラの将来性らしい。OVFはガラスペンタプリズムの重量のため軽くはできないし、イメージセンサのサイズが小さいフォーサーズではファインダ像を大きくするためには接眼レンズで拡大せざるを得ない。どう考えても小型にはできないのだ。それに対し、EVFにはまだまだ可能性があり、伸びしろも大きいというのが決め手だったようだ。

• グローバルで見れば、まだまだ一眼レフの方が圧倒的に多数派である。しかし、日本国内に限っては一眼レフカメラは頭打ちで伸びておらず、ミラーレスカメラだけが大幅に伸びているのだ。撮像面位相差AFでフォーサーズレンズの使用が可能になればミラーレスのマイクロフォーサーズに開発リソースを絞り込むのは当然であろう。そして、一眼レフカメラにはニコンとキヤノンのビッグ2がある。残念ながら、オリンパスではビッグ2に全く敵わないのだ。まあ、これはオリンパスに限ったことではなく、恐らく、一眼レフカメラはこの先数年でビッグ2だけに集約されてしまうのでは、と思っている。悲しいが、現状では日本の製造業には不採算事業に資金をつぎ込む余裕がないのである。一眼レフ5大メーカが切磋琢磨していた古き良き時代が懐かしい。

• 現実問題として、同じ一眼レフであるニコンのD610の重さは850gである。つまり、FXフォーマット(俗に言うフルサイズ=135サイズ)のカメラでE-5より軽く小さいのだ。そして、安い。DXフォーマット(APS-C)になるとさらに軽くて小さくて安いのだ。こういう現実はシビアに受け止めなければならないだろう。あくまでも概算だが、イメージセンサの面積比はフォーサーズ：DXフォーマット：FXフォーマット＝1：2：4なのである。それなのに重量でも、大きさでも、価格でも勝てないのである。その点でも、というか、その点でこそ一眼レフであるフォーサーズをあきらめてマイクロフォーサーズに集中することは戦略的には理にかなっている。

• E-M1を加えて表にしてみよう。並べてみるとE-M1が最も小型・軽量であることがわかる。しかし、安くはない(笑)。ちなみに、フォーサーズもマイクロフォーサーズもイメージセンサの大きさ(フォーマット)は同じ4/3インチ(フォーサーズ)である。

  カメラボディ
  メーカ	製品名	フォーマット	大きさ	重量	防塵・防滴	オンラインショップ価格(税抜)
  オリンパス	E-5	フォーサーズ	142.5mm×116.5mm×74.5mm	892g	○	199,800円
  ニコン	D610	FX(135)	141mm×113mm×82mm	850g	○	198,000円
  ニコン	D7100	DX(APS-C)	135.5mm×106.5mm×76mm	765g	○	133,000円
  オリンパス	E-M1	フォーサーズ	130.4mm×93.5mm×63.1mm	497g	○	144,800円

• 補足だが、これ以降の表にもキヤノンの製品は登場しない。それはキヤノンの製品に評する価値がないということではない。単に私がキヤノンをあまり好きでないだけだ。少し脱線して説明しておこう。私はオリジナリティのある製品、独創的な製品が好きだ。そのため、AV機器ではソニーの製品を、コンピュータやスマートフォンではアップルの製品を、自動車ではホンダ車を、そして、オリンパスのカメラを愛用してきた。逆にオリジナリティに乏しい、二番煎じのメーカの製品はほとんど購入しない。私の中ではキヤノンはそういうメーカの1つに分類されているのだ。例えば、キヤノンはデジタルカメラへの参入は遅かったが、IXY DIGITALシリーズの大ヒットでいきなりトップシェアに躍り出たりした。これは先駆者が苦労して開拓した市場に、後から分け入っておいしいところを根こそぎ持っていくように見えた。まあ、私の単なるイメージなのだが、そういうメーカにはあまり共感しないというわけだ。

• 一応、フォローしておくと、他社の真似を出来る企業はそれだけの技術力を持っているということである。電子スチルカメラと呼ばれたデジタルカメラの元祖は1981年に発表されたソニーのマビカだが、実際には市販されていない。これに対し、キヤノンは1986年にRC-701を、そして、1988年にRC-250(Q-PIC)を発売している。実はキヤノンは電子スチルカメラの開発をかなり以前から行っていたのだ。そして、市販された電子スチルカメラの元祖の栄誉はキャノンの頭上に輝いているわけだ。繰り返すが、これは私の一方的な想いであり、人によって想いは異なるだろう。さて、脱線はここまでにしよう。

OLYMPUS OM-D E-M1 ファースト・インプレッション(その4)

• 新発売のM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROは良い感じである。大きいかと思ったが、実際に触るとそうでもない。重さは382gである。このレンズにもM.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0に採用されたスナップショットフォーカスが採用されている。ピントリングを手前に引くとマニュアルフォーカスに簡単に切り替えることができる便利な機能である。私は広角レンズがが好きなので、M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0は興味がある明るい単焦点レンズなのだが、防塵・防滴ではない。当時オリンパスに聞いたら「スナップショットフォーカス機構だと防塵・防滴が難しい」ということだったのだが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROは立派な防塵・防滴なのだ。真っ赤な嘘だった(笑)のか、技術が進歩したのか、どちらだろう。「マニュアルフォーカス・クラッチ機構」という別の名前になっているので、機構そのものが違うのかもしれない。また、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROにはL-Fn(レンズファンクション)ボタンがある。いろいろな機能を割り当てることができるらしい。

• E-M1は現状の全てのマイクロフォーサーズとフォーサーズのレンズ情報をカメラ内に持っており、倍率色収差を補正可能で、シャープネスを最適化できるらしい。私は素人なので「デジタルでは補正出来るのに今までやっていなかったのか」と思ってしまった。そこで、倍率色収差について調べてみた。それによれば、以下のようなことのようだ。レンズには収差があり、カメラのレンズ設計では凸レンズと凹レンズを巧みに組み合わせて、最近では非球面レンズや低分散ガラスレンズなどを使って高度に収差を光学補正している。しかし、フィルム時代のレンズなど、その補正がうまくできていないレンズでは高画素のイメージセンサで使うと画像がシャープでなかったり、画像の輪郭部分に色のにじみが出たりと粗が目立ってしまうのである。倍率色収差とはそのうちの画像の輪郭部分の色のにじみのことで、その補正は色によって結像する大きさが違う画像をデジタル処理で同じ大きさに揃えて重ね合わし、色のにじみを出ないようにする処理のことらしい。画像処理ソフトでは実現されているこの処理は他社のカメラ、特にニコンではD3から画像処理エンジンに搭載している機能で、パナソニックでも最近のカメラでは搭載しているようだ。ただ、この機能は裏を返せばレンズ自体の性能が高くないと言っていることにもなるので、各社ともあまり積極的にアピールされていないようだ。

• 他社が積極的にアピールしていない機能をオリンパスが全面に出している意図がよくわからない。デジタル専用設計のZUIKO DIGITALレンズはとても光学性能が高い。私にはデジタル的に補正する必要などないように思えるのだが……。オリンパスは光学性能が若干劣っているなどとは全く言っていないが、これは小型化を優先したM. ZUIKO DIGITALレンズ用の機能なのだろうか。私は低い光学性能をデジタルで補正するのは邪道だと思っている。確かに安いコストで高画質が得られるかもしれないが、イメージセンサのベイヤー配列自体が暫定的なもので、デジタル補正はまだまだ発展途上の技術だと思っているからだ。まあ、ベイヤー配列でなくなったとしても別のデジタル補正処理を行えば良いのかもしれないのだが、その判断は今することではないだろう。

• さて、残念なのはM.ZUIKO PROレンズがM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROの1本しか存在しないことだ。開発者トークでも「展示してあるレンズには中身が入っていない」と明言されていたので、現実にはM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROはモックアップしか存在しないようだ。2014年後半発売予定ということは、早くても1年後ということになる。それどころか、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROは追い込みに必死でE-M1の発売に間に合わず、最初はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZがキットレンズとしてセット販売されるていたらくなのだ。

• あまりにもレンズの開発ペースが遅いと思われるので、「フォーサーズレンズを小さくすれば良いのだから簡単でしょ」と説明員に聞いてみたが、そうではないそうだ。私の持っているZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWDやZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDは望遠方向にズームするとレンズの全長が長く伸びる。こういうタイプのレンズはレンズの繰り出し量が大きいため、動画撮影などではAFスピードアップのネックになるそうだ。そのため、動画撮影にも対応するマイクロフォーサーズのレンズにするにはズームによって全長の変化がないインナーフォーカスタイプに変更しなければならず、設計が全く始めからやり直しになってしまうそうだ。

• さて、E-M1の重量について補足しておこう。私はカメラボディは500gが1つの区切りだと思っている。単なる感覚的なものなのだが、497gという重さは合格点であろう。ただ、E-5が892gなのに対し、E-M1が497g、MMF-3が42g、HLD-7が235g、BLN-1が52gなので、合計すると826gである。確かにオリンパスの説明員が「全部合わせてもE-5よりは軽い」と言っていたのは嘘ではないが、たった66gだ。カメラボディだけが66g軽いからといっても……フォーサーズレンズのボディとしては微妙である。光学ファインダとレフレックスミラーボックスを捨て去ってこの重さでは全く物足りない。やはり、マイクロフォーサーズのカメラボディはマイクロフォーサーズレンズをつけてこそ小型軽量のメリットがでるのだろう。

OLYMPUS OM-D E-M1 ファースト・インプレッション(その3)

• さて、ここからは実機を触った後の印象をまとめておこう。最初は混雑しているであろう秋葉原のPhoto Festa 2013ではなく、小川町のオリンパスプラザで触ったのだが、グリップは何の違和感もなくしっくり手になじんだ。こうでないと使い物にならない。ようやくオリンパスのマイクロフォーサーズカメラは男性の手のサイズにフィットするようになったわけだ。これは素晴らしい。

• そして、ファインダも確かにE-5より大きく、EVFの割には見やすいと思われた。ただ、通常のシーンでは問題はなかったのだが、オリンパスプラザ内から明るい自動ドアの外を覗いた時に白く飛び気味になってしまった。応答もちょっと遅れるのは仕方ないのだろうか。これではちょっとE-5ユーザにとっては厳しいかもしれない。後で秋葉原のPhoto Festa 2013で確認するとキャッツアイコントロールという外光に合わせてEVFの明るさを自動調整する仕組みがあるようだが、最終版ではどこまでブラッシュアップできているのだろう。EVFには情報表示などのメリットがあるが、その恩恵を享受するためには大前提としてよく見えないといけないのである。オリンパスはE-5よりも大きく、APS-Cサイズの競合機に匹敵する大きなファインダだとアピールしているが、E-5のファインダで何の問題も感じない私としては大きさにはインパクトを感じなかった。要はいかに自然に見えるかということではないだろうか。

• そして、撮像面位相差AFだが、オリインパスプラザのE-M1にMMF-3とZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWDをつけた状態で、持参した E-5と同じレンズの組合せと比較してみた。結果は残念なもので、E-5の方がかなり合焦が早い。ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWDはフォーサーズ最速のAFスピードを誇るレンズなので、E-5と組合せるとスッと合焦するのに対し、E-M1の撮像面位相差AFは合焦する直前にレンズがガタガタいってしまい、最後にピントの微調整を行っているような感じである。オリンパスの説明によれば、他社は撮像面位相差AFでピントを追い込み最後はコントラストAFで高精度に合焦させるのに対し、E-M1は最後まで撮像面位相差AFで合焦させるそうだが、そんな感じではない。最終版でもう一度確認してみないといけないだろう。もちろん、E-M5に比べれば桁違いに良くなっていたし、マイクロフォーサーズのレンズならばコントラストAFで素早く静かに合焦するのは書くまでもない。

• さて、私が気になっていたポイントは以上だが、Photo Festa 2013のステージや説明員から聞いたことをまとめておこう。

• E-M1の売りは以下の5つらしい。
  • フルサイズ一眼に匹敵する高画質
  • DUAL FAST AF
  • 大画面EVF
  • 5軸対応手ぶれ補正
  • 防塵防滴対低温

• フルサイズ一眼に匹敵する高画質はローパスフィルタレスの新型イメージセンサと新型の画像エンジンTruePic VII のファインディテールII 処理によって実現されているそうだ。まあ、これは主観的なものでもあるし、レンズ性能にも大きく左右される。言った者勝ちなので、コメントは控えよう(笑)。

• DUAL FAST AFはコントラストAF(ハイスピードイメージャーAF)と撮像面位相差AF(像面位相差AF)の2つが高速だということだが、マイクロフォーサーズレンズをつけるとコントラストAFに、フォーサーズレンズをつけると撮像面位相差AFに自動的に切り替わるそうだ。つまり、撮像面位相差AFはフォーサーズレンズ専用で、マイクロフォーサーズレンズはコントラストAFで十分ということのようだ。ただし、C-AFモードの場合に限りマイクロフォーサーズレンズでコントラストAFと撮像面位相差AFのハイブリッドAFになる。これは他社と同じくハイスピードの位相差AFと高精度のコントラストAFの良いとこ取りをしているのだろう。なので、動体追尾時にはマイクロフォーサーズレンズにもメリットはあるようだ。ただ、フォーサーズレンズでの動画撮影時には撮像面位相差AFが使えないそうでマニュアルフォーカスで撮影せざるを得ないそうだ。動画撮影にこそ必要な撮像面位相差AFなのに残念である。やはり、キヤノンのEOS 70Dの撮像面位相差AFの方が進化したもののようだ。

• 付け加えるならば、撮像面位相差AFはベイヤー配列で数が多い緑の画素を潰して配置されている。千鳥状に右チャネルと左チャネルが配置されているが上下チャネルは無いのでクロスではない。E-5の位相差AFセンサは11点ツインクロスセンサなので、E-M1のAFが性能的に劣るのは仕方がないだろう。まあ、イメージセンサの技術は進歩するだろうし、既にキヤノンが実現もしているので、次に期待というところだろうか。

• 大画面EVFとはカタログに書いてあるとおり、E-5より大きく、APS-Cサイズのファインダに匹敵する画面サイズのことである。そして、キャッツアイコントロールによって外の明るさに応じてEVFの明度を調整することで見やすいくなっている。OVFに比べると見劣りするし、応答性が悪いのは仕方がないが、E-M1のEVFと同等の外付けタイプのVF-4の表示タイムラグ(32ms)よりもチューンアップされたのか、タイムラグは29msと発表されている。デジタルになって撮影直後に画像を確認出来るようになったのだが、EVFではさらに撮影前に画像を確認できるのは便利で、露出補正などを外すことが少なくなるだろう。加えて、E-M1ではカラークリエイターという機能で色相と彩度をコントロールできる。こういうOVFにはできないことが可能になってくるのは面白いし、将来性を感じる。ただ、見やすいという基本性能ではまだまだOVFに敵わないのは事実として認識しておく必要がある。さらなる改善を期待したい。

• 5軸対応手ぶれ補正はE-M5で実現された機能だが、低速シャッタースピード時にもよく効くようにファームウェアをチューニングしており、進化しているそうだ。当然ながら、手ぶれ補正が強力な方が良いのだが、手ぶれ補正が求められるのはシャッタスピードが低速の時なのだ。従来製品は特定条件の低速シャッター時に手ぶれ補正がうまく効かないという噂があった。それが事実なのかはよくわからないないが、いろいろ改善されているようだ。

• オリンパスのフラッグシップには当然の防塵防滴性能も強化されているそうだ。E-M5では若干だがE-5に及ばなかったらしいが、E-M1はE-5を超えているらしい。そうでないと「後継機」と言えないのだろう(苦笑)。防塵防滴はE-5に匹敵するレベルだが、それに加えて-10℃での動作保証が加わったことでE-5を超えたということらしい。まあ、冬のワシントンの氷点下でもE-5の動作は何の問題もなかったのだが、正式に低温動作保証されるのは大きいだろう。レンズについては全てのレンズが元々-10℃対応だったらしいので問題ないそうだ。

OLYMPUS OM-D E-M1 ファースト・インプレッション(その2)

OLYMPUS OM-D E-M1 ファースト・インプレッション(その1)

• さて、OM-D E-M1とM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROのファースト・インプレッションをまとめておきたい。実機にも触っているのだが、まずは実機を触る前のファースト・インプレッションをまとめておいたものを公開したい。正直なところ、当時の私の理性と感情は全く別の印象を持っていた。

• まずは、理性面の第一印象を書いてみたい。E-M1の外観だが、大きなグリップは合格だ。ようやくオリンパスのマイクロフォーサーズカメラに「オヤジカメラ」が登場したわけだ。以前から書いていたとおり、E-M5は私の手には小さすぎるので、大きなグリップのついた点は高評価である。ネットではこの非常に大切なポイントに否定的なコメントが多い。賛成派はそれほど多くはないようで、いたとしてもフォーサーズユーザであることが多いように感じている。やはり、ネットユーザには要注意だ。本当にカメラを使っているとは思えないコメントが見受けられるし、フォーサーズ、マイクロフォーサーズのユーザとも思えない輩も多い。普通に考えれば男性ユーザの手のサイズだったらグリップはあった方が良いし、後付けグリップだと機能が限られるし強度も不安があるのだ。少しずつだが現物を触ったユーザからの感触でグリップに肯定的な意見が増えてきているようだが、実際の触った感じはどんな感じなのか期待が膨らむ。

• その他の外観についての印象も書いておこう。背面液晶モニタがフリーアングルでないのはダメだろう。カメラバッグに入れる際にひっくり返して液晶画面を保護出来たのだが、それができなくなってしまった。ただ、光軸上にあるので、アングル決めなどでは使い安いとは思う。さらに、モードダイヤルはフラッグシップにつけてはダメだろう。上面液晶画面もない。最悪なのはフラッシュが外付けなことだ。使用頻度が低いからこそ内蔵しておかないとフラッシュをカメラバッグに入れっ放しになりそうだ。それなら、ちゃんとしたフラッシュを持って歩きたいところだ。それぐらい工夫して内蔵したらどうだ、と言いたい。電源レバーもいただけない。私はOM-4のユーザでもあるので、この電源レバー自体には何の違和感もないのだが、OM-4ではフィルムの巻き戻しクランクにあたる部分をそのまま丸く残しているのはダメだ。そこにはAFモードボタンやHDRボタンが置かれているが、押しやすいとはいえないだろう。デザインというのは機能を活かすためのもので、デザインに機能を埋め込んではいけないのだ。ここに普通にボタンを置けば4つぐらいは簡単に並ぶはずだ。

• オリンパスもやり過ぎたと思っているのか(笑)、カタログにはボディの上面写真も無ければ、左肩部分の拡大写真もない。余談だが、このカタログは分厚く、製品発表後に直ぐにカメラショップ店頭に並ぶなど気合いの入ったものなのだが、基本的な情報が抜け落ちている変なものだ。カメラボディの6面図(正面、背面、上面、下面、左面、右面)が載っておらず、付属するフラッシュのFL-LM2やパワーバッテリーホルダーのHLD-7の重量も載っていない。イメージカタログとしては良いものだが、肝心の製品カタログとしては今ひとつである。

• 一番の売りである撮像面位相差オートフォーカス(AF)とコントラストAFのハイブリッドであるDUAL FAST AFも気になる。オリンパスはこれをコントラストAFにほとんど対応できていないフォーサーズレンズのAFに使うために採用したようだ。「フォーサーズレンズでもAFが効きます」と言いたいのだろう。それには異論があるが、後述することにしてここでは触れない。先日、キヤノンのEOS 70DのデュアルピクセルCMOS AFのデモを見てきたが、動画撮影でAFが迷わないのには驚いた。オリンパスOM-D E-M1のDUAL FAST AFは単に説明を読んだだけだが、キヤノンのEOS Kiss X7i のハイブリッド CMOS AFと同様の構造で一世代遅れているように思える。まあ、キヤノン以外とは同等で、キヤノンが一歩進んでいると考えるべきだろう。実機を触ってフォーサーズ最速のZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWDを使ってE-5とAFスピードを比べてみたい。37点の撮像面位相差AFポイントがどの程度効くのか楽しみである。

• キヤノンのEOS 70Dはミラーレスではないので、当然ながら位相差AFセンサを積んでいる。それに撮像面位相差AFを追加した意味はデモで動画撮影時の様子をアピールしていたとおり、コントラストAFが十分に効かない動画撮影のためである。動画の場合にはピントを合わせ続けるということが重要なのだが、ピンポイントで配置された位相差AFセンサでは被写体がそこから外れるとAFが迷ってピントがボケてしまう。そのため、コントラストAFに切り替えてピント合わせをするのだが、フォーサーズも含めて普通の一眼レフはコントラストAFに完全に対応出来ていない。それを解決するのが撮像面位相差AFの技術なのだが、マイクロフォーサーズレンズにも何らかの効果があるのだろうか。マイクロフォーサーズは最初から動画撮影を想定して作られた規格なので、普通に考えると撮像面位相差AFは不要なはずなのだ。わざわざ搭載したのはフォーサーズレンズのためだけなのだろうか。よくわからない。

• 電子ビューファインダ(EVF)は236万ドットと高精細で高倍率であり、ファインダ画面の大きさだけならE-5を凌駕しているらしい。個人的にEVFは光学ファインダ(OVF)にまだまだ敵わないと思っている。EVFは明るい状態だと簡単に白飛びしてしまい、暗いと潰れてよく見えないのだ。そして、カメラを左右に振ったりするとEVFの画像はちょっと遅れて追随するなど応答性も悪い。しかし、EVFは部分的にOVFを上回る機能を持っている。情報表示、画像補正の反映などはOVFにはできない機能なのだ。PEN E-P5にVF-4をつけてみて良い感じだと思ったのだが、それがE-M1に内蔵されているわけだ。どれぐらいチューンアップされているのか楽しみである。

• さて、先ほど後述すると書いたが、個人的にはマイクロフォーサーズカメラはフォーサーズカメラとは全く別物だと思っている。そのため、私はマイクロフォーサーズでフォーサーズレンズを使う必要はないと思っているのである。今回、M.ZUIKO DIGITALレンズが整理されてM.ZUIKO PRO、M.ZUIKO PREMIUM、M.ZUIKOの3ラインに分けられた。一応、グレードが明確になったものの、後付け感は否めない。中間グレードのM.ZUIKO PREMIUMにも防塵・防滴のレンズがほとんど存在せず、デザイン面の一体感もあまり感じないからだ。今まで「何も考えず、闇雲にレンズを増やしていた」ツケが回ってきたわけだ(笑)。しかも、情けないことに今回新たにグループ分けされたM.ZUIKO DIGITALレンズのPROレンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」の1本しかない。2014年内には望遠ズームのM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROが発売予定だが、ロードマップには超広角ズームや超望遠レンズが書かれているだけで焦点距離も発売時期も明らかにされていない。レンズが無ければ写真は撮れないのだ。

• 私にはフォーサーズレンズは愚直なまでに光学性能にこだわっているが、マイクロフォーサーズレンズは小型化を優先して光学性能に妥協してデジタル補正しているという先入観がある。そして、明るい単焦点レンズが何本もあるが、ズームレンズは暗いレンズばかりなのである。それは大きな不満であり、マイクロフォーサーズへの移行を妨げる最大の要因だったのだ。その意味ではM.ZUIKO PROレンズの登場は福音であるものの、その性能は未知数である。マイクロフォーサーズのズームレンズとしては最大級の明るさ・大きさなので高性能であって欲しいと思っている。

• しかし、M.ZUIKO PROレンズの開発は進んでいるのだろうか。オリンパスがフォーサーズを立ち上げた時には4本のZUIKO DIGITALレンズが登場している。今回のM.ZUIKO PROレンズが1本しか登場しない状況には危機感を覚えてしまう。十分な開発人員・開発費用が確保出来ていないのではと心配してしまう。粉飾決算の傷はかなり深いと思われるからだ。開発費が何とかなったとしても優秀なエンジニアが流出してしまっては開発ができないからだ。