Macintosh 雑記帳（バックナンバー）

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MacWorld Tokyo

• 例年この時期になるとMacWorld Tokyoのために仕事を調整して休暇を申請するのだが、今年はその必要がない。MacWorld Tokyoはスキップされてしまったのだ。この決定がMac系のニュースサイトに掲載された時には「やはり」と思ったものだ。1998年のMacworld Expo Tokyoをピークに東京でのExpoは衰退の一歩をたどってきた。1999年にはiMacが登場しているわけだが、Windows95、Windows98が普及するにつれ、日本のパソコン市場はWindows一色に染まってきている。周辺機器メーカやソフトハウスの出展社も減少の一途をたどっており中止も時間の問題だと思っていたからだ。
• ただ、これはMacintoshマーケットに限った話ではない。Windows World Expo Tokyoは1999年を最後に中止されている。WindowsマーケットはWorld PC Expoに集中することで展示会を維持してきている。さらに、ここ数年のWorld PC Expoではケータイが幅をきかせており、PC Expoではなくなりつつあるようだ。
• このようにExpoが衰退しているのは不況が原因であるのは当然なのだが、展示会そのものの効果に疑問があるのが最大の理由と思われる。はたしてExpoに出展することでどれだけ売上が伸びるのかが良くわからないのである。新製品の発表ならば自社のWebページで公開すれば良く、パソコンショップには展示スペースが用意されている。展示会でカタログを配り、製品に触れてもらって、ステージでPRしてノベルティーを配る、……。企業はそれに効果を見いだせなくなってきているのだ。そのため、このような不況時には真っ先にそういうコストが削られてしまう。これらは販売促進費というような経費が削られることになるのだが、広告などもその影響を受けているのだ。
• ただ、MacWorldは「Macintoshコミュニティのお祭り」なので中止は残念でならない。ただ、基調講演程度しか見所のないExpoであるならば中止はやむを得ないだろう。アップルの課題は自社で儲けることは当然だが、周辺機器メーカやソフトハウスが儲けられるようなマーケットを創ることである。今のままではExpoを開催しても出展社は集まらない。この1月に行われたMacWorld San FransiscoにはMacWorld Tokyoに出展していなかった日系企業が多く出展している。ここに大きなヒントがあるように思えてならない。

PowerBook G4

• MacWorld San Franciscoで新しいPowerBook G4が発表された。私は噂系サイトを信用していないので事前情報を持っていなかったのだが、驚いてしまった。PowerBook G4は2ヶ月前にマイナーチェンジしたばかりだったからだ。ノートブックよりもデスクトップを変えるべきだろう、というのが素直な第一印象だった。「ポリンタンク」と呼ばれるデスクトップの巨大なきょう体はなかなかモデルチェンジされない。世間では省スペース型のデスクトップが主流なのに、アップルはPower Mac G4 Cubeの失敗がトラウマになってしまったのか、後継モデルを出そうとしない。アメリカでは省スペースモデルの需要はそれほど多くないらしいが、それ以外の国々では「スペース」は足りないはずだ。Mr. Jobsはどう考えているのだろうか。
• アップルは「省スペースモデル＝大画面ノートブック」と考えているように思える。日本のパソコンメーカにもそういう傾向があるようだが、私は反対である。ノートブックは「持ち運ぶ」のが主目的のパソコンであるはずだ。それゆえ、多くの制約がある。つまり、妥協の上に成り立つ製品なのだ。液晶モニタは視野角が狭く、動画再生時には応答性の遅さが気になった。これらは液晶の性能向上で大きく改善されたが、キーボードは相変わらずペラペラだ。キーストロークが構造上の制約で長くできないため、キータッチが良くなく、キーの識別が容易ではない。さらに、スペース的にテンキーが組み込めず、一部のキーはサイズが極端に小さい。また、マウスの代用にトラックパッドがあるが、私はトラックボールやアキュポイントの方が好きである。最悪なのは拡張性が乏しいことである。HDDやリムーバブルディスクが追加できない上に、PCIカードを挿して機能拡張もできない。ノートパソコンに唯一ある拡張用のPCカードスロットはアップルにとって「レガシー」なもので消えゆくものらしい。
• 今回アップルは17インチと12インチの2つのPowerBook G4を発表した。17インチは「省スペースデスクトップの代用モデル」、12インチは「持ち運び用モデル」という位置づけだろう。両モデルともおおむね好評のようだ。私も基本的に同感だが、あえて辛口のことを書いてみたいと思う。確かにFireWire（IEEE1394）800Mbpsを搭載し、AirMac Extreme（IEEE802.11g）、BlueTooth 1.1を採用した話題性はあるものの、前述の制約は解消されていない。17インチモデルでテンキーが採用されなかったのは信じられない。12インチモデルとのキーボード部品の共有化を優先したためらしい。
• 12インチモデルが意図的にスペックダウンされている点も気に入らない。同じきょう体で差別化するのは当たり前だが、きょう体が違うのだから最大限の努力をして欲しかった。システムバス速度、3次キャッシュ、PCカードスロット、FireWire 800、キートップのライトニングなど性能が劣るのは辛いところだ。物理的にスペースが少ないのと価格面の制約から仕方がないらしいが、本当にそうだろうか。このところの不況で消費者の目は厳しくなっており、妥協はしてくれない。この12インチモデルのスペックを見て（さらに、基板写真を見て）「マイナーチェンジまで待とう」と思われたらアップルの負けである。たかがカタログスペックだが、されどカタログスペックである。
• 冷静に評価するために同じく1月に発表されたばかりのSONYのVAIO Noteと比較してみよう。私は基本的に「Mac使い」なので公平な比較にになっていないかもしれない。参考程度に見て欲しい。

  スペック	12インチPowerBook G4	VAIO V505R
  価格	229,800円	250,000円（ZDNet予想）
  CPU	PowerPC G4（867MHz）	Mobile Pentium 4（1.8GHz）
  システムバス速度	133MHz	400MHz
  メモリ（標準）	256MB	256MB
  グラフィックチップ	nVIDIA geFORCE4 420 Go	ATI MOBILITY RADEON
  ビデオメモリ	32MB	16MB
  モニタ	12.1インチTFT（1,024×768）	12.1インチTFT（1,024×768）
  外部モニタ	1,600×1,200（約1,670万色）	1,280×1,024（約1,677万色）
  HDD（標準）	40GB（Ultar ATA/100）	60GB（Ultar ATA/100）
  ドライブ（標準）	Combo Drive（DVD-ROM/CD-RW）	Combo Drive（DVD-ROM/CD-RW）
  通信	10/100Base-TX、IEEE802.11g 56Kモデム、BlueTooth 1.1	10/100Base-TX、IEEE802.11b 56Kモデム
  インターフェース	USB1.1×2 IEEE1394（400Mbps、6ピン）	USB1.1×2 IEEE1394（400Mbps、4ピン）
  	外部ディスプレイ出力、ヘッドフォン出力 マイク入力、ライン入力	外部ディスプレイ出力、ヘッドフォン出力 マイク入力
  		PCカードスロット（TYPE II） メモリースティック・スロット
  サイズ/重量	277(W)×242.4(D)×33.5(H)/2.09kg	277(W)×218(D)×30(H)/1.99kg
  OS	Mac OS X 10.2	Windows XP Professional
  バッテリ持続時間	5時間	2.5〜5時間（バッテリパック（S））
  その他		USB外付けフロッピードライブ付属
  オプション	メモリ（最大）640MB	メモリ（最大）1GB
  	Super Drive選択可能（DVD-R/CD-RW）	別売りポートリプリケータあり

  スペック	17インチPowerBook G4	VAIO GRV99G
  価格	419,800円	350,000円（ZDNet予想）
  CPU	PowerPC G4（1GHz）	Pentium 4（2.6GHz）
  システムバス速度	167MHz	400MHz
  メモリ（標準）	512MB	512MB
  グラフィックチップ	nVIDIA geFORCE4 440 Go	ATI MOBILITY RADEON 9000
  ビデオメモリ	64MB	64MB
  モニタ	17インチTFT（1,440×900）	16.1インチTFT（1,600×1,200）
  外部モニタ	2,048×1,536（約1,670万色）	1,600×1,200（約1,677万色）
  HDD（標準）	60GB（Ultar ATA/100）	60GB（Ultar ATA/100）
  ドライブ（標準）	Super Drive （DVD-R/CD-RW）	DVD±RW Drive （DVD-RW/DVD+RW/CD-RW）
  通信	10/100/1000Base-TX、IEEE802.11g 56Kモデム、BlueTooth 1.1	10/100Base-TX 56Kモデム
  インターフェース	USB1.1×2 IEEE1394（400Mbps、6ピン） IEEE1394（800Mbps、9ピン）	USB1.1×3 IEEE1394（400Mbps、4ピン）
  	PCカードスロット （TYPE II）	PCカードスロット （TYPE II×2＝TYPE III×1） メモリースティック・スロット
  	外部ディスプレイ出力、ヘッドフォン出力 マイク入力、ライン入力	外部ディスプレイ出力、ヘッドフォン出力 マイク入力
  		プリンタポート、AV出力
  サイズ/重量	392(W)×259(D)×26(H)/3.09kg	355(W)×292(D)×44.4(H)/3.8kg
  OS	Mac OS X 10.2	Windows XP Professional
  バッテリー持続時間	4.5時間	1〜2時間（バッテリーパック（S））
  オプション	メモリ（最大）1GB	メモリ（最大）1GB
  		別売りポートリプリケータあり

• 正直なところ、新しいPowerBook G4は「Mac使い」には魅力的かもしれないが、Windowsユーザに勧められるものではないようだ。CPUやシステムバス速度から見てもパワー差は2倍あり、デュアルCPUではないPowerBook G4には旗色が悪い。VAIO GRV99GはDVD±RW Driveを搭載しており、アップルのSuper Driveは見劣りしてしまう。さらに、ソニーはVAIOだけでなく元々AV機器メーカであり、AV機器との連携も売りにしている。つまり、iアプリケーションもDigital Hub構想もアップルの専売特許ではなくなっているのである。道を切り拓いたのはアップルだが、猛烈な追い上げによりアドバンテージはなくなりつつある。
• さて、消費者はどう判断するのだろうか。そろそろ新しいPowerBook G4が店頭にならぶそうなので楽しみである。