Macintosh 雑記帳(バックナンバー)
このページには Macintosh についての個人的メモを掲載しています。不定期に更新します。
2002/10/12
Mac OSからMac OS Xへ(その2)
- さて、そうは書いてみたものの、私はMac OS X v10.1のパッケージを購入してしまった。別に私は先進ユーザでもなければ、Mac OS Xが快適に動くだけの能力を持ったPower Macintoshを持っているわけでもない。Mac OSの最終版であるMac OS 9.2のインストールCD-ROMを確保したかったからなのだ。もちろん、Mac OS X v10.2が発売された後もMac OSのインストールCD-ROMを入手する機会はあるかもしれないが、そのあたりが不明確だったので8月24日を待たずに購入したのだ。結果としてアップルからMac OS X v10.2のユーザは2003年3月1日までならば2,500円でMac OS 9.2のインストールCD-ROMを入手することが可能であることが発表になったが、まあ、良しとしよう。
- もちろん、Mac OS X v10.1のパッケージを購入した理由はそれだけではない。私の使用しているPower Macintosh G3は「一応」Mac OS X対応モデルなのである。これからMac OS Xへ移行するためのチェックぐらいには使えるはずである。このMac OS X v10.1を使って、あるいは2,500円でv10.2へバージョンアップして、そのあたりを確かめてみようと思ったわけである。何事にも備えが必要なのだ。
- 私は未だにMac OS 8.6を使用しているが、それは主にハードウェアの制約のためである。つまり、使用中のPower Macintosh G3 Desktop 266MHzはシリアルポートやADBポート、SCSIというレガシー・インターフェースを持っている。もしMac OS Xに移行したら、シリアルで接続しているTAは使用不能になりインターネットに接続できなくなってしまう。さらに、SCSI接続のMOドライブやスキャナも使用不能になる可能性が高いのだ。(と、書いているうちにTAが壊れてADSL環境に変わったことは先日述べたが、それでシリアルポートが不要になったかというと、そうではない。Palm VxとHotSyncするためにシリアルポートは必要なのだ。同時並行で原稿を書いていると話が前後してしまうのは困ったものだ。)
- もちろん、ソフト的な制約もある。Mac OS 9はMac OS 8.6とMac OS Xとの橋渡し役のOSであり、内部がかなり変更されている。Carbon LibというMac OS X互換のライブラリ群が導入され、また、Mac OS Xの中ではClassic環境として動作する。これらの仕様変更によりMac OS 9上ではMac OS 8.6で動作していたアプリケーションが不具合を起こすことがあるらしい。最新バージョンのソフトならばアップデータが提供されたり、バージョンアップが行われたりするわけだが、古いバージョンのソフトを使用している場合にはそれが期待できない。
- 私はMicrosoft Excel 4.0を持っているのだが、Mac OS 9.2.2では恐らく動作はしないだろう。使用中のMicrosoft Excel 5.0もマイクロソフトのホームページに掲載されている互換リストには名前がない。今回確認して驚いたのだが、私が使用しているMac OS 8.6での動作も保証の対象外だったのだ。企業ユーザであれば取引先とのファイル交換などに互換性が必須であるのでMicrosoft Excel 98やMicrosoft Excel 2001、Excel Xなどにバージョンアップするだろう。しかし、個人で使用する場合には複雑な機能を使うわけでもないのでバージョンアップは不要である。私は無償バージョンアップ期間中にMicrosoft Excel 4.0を購入したためMicrosoft Excel 5.0のバージョンアップ版も持っていただけで、購入したわけではない。当時はMacintosh Centris 650というMC68040というCPUの載ったマシンを使っていたが、現在のPower Macintosh G3に移行する際にPower PCに最適化されたパワー・アプリケーションであるMicrosoft Excel 5.0に切り替えたに過ぎないのだ。
- これは1つの例だが、個人ユーザにとって古いバージョンのソフトの互換性というのはかなり重要なポイントである。つまり、よほどの「パソコンおたく」でない限り、次々にソフトをバージョンアップしたりはしないものだ。(この「おたく」とは先進的な専門家という意味で「誉め言葉」である。念のため。)必要な機能があればそれで良いのである。そして、古いバージョンのソフトを使い続けているが故に個人ユーザの新しいOSへの移行は簡単には進まないと思われる。
- 私の場合、Microsoft Excel 5.0はMac OS 8.6でも動作している。もちろん、他のアプリケーションとの相性かもしれないが、落ちることもある。しかし、動作はしているわけだ。ただ、これはマイクロソフトが動作を保証していない以上、単なる幸運なのかもしれない。Mac OSのバージョンアップには何回か大きな節目がある。その節目を私が越えていないが故に使い続けていられるのに過ぎないのだ。つまり、ソフトのバージョンアップの多くは機能強化のためであり、最新OSに対応するためのものばかりではない。それゆえ、古いバージョンのソフトでも意外に新しいバージョンのOSで動作したりするのである。
- Mac OS(漢字Talk)はバージョン7.1からバージョン8.6まで基本的には大きな変更はされていない。よく『Mac OS 8.0は互換機メーカへのライセンス対策で「8.0」と名付けられたが、実質的には「7.7」である』と言われるのはそのためだ。(この流儀でカウントすると「8.1」は「7.7.1」、「8.5」は「7.8」、「8.6」は「7.9」になってしまう。)厳密にはバージョン8.5からフォント周りが変更されてはいる。これは我々のような2バイト系の言語を使うものにとっては大きな変更だった。そのため、未だにDTP分野ではMac OS 8.1Jが使い続けられているのは良く知られているところだ。しかし、この変更は個人ユーザの使っている範囲では大きな変更ではなかったのだ。しかし、Mac OS 9.xは中身が大きく変わっているのは先に述べた通りだ。
- 当然ながら、アップルやソフトハウスはMac OS 9.xとアプリケーションソフトの互換性を検証し、それを公開してくれている。しかし、古いバージョンの互換性は確認が難しい。互換性リストに載っていないことが多く、載っていても「保証外」と書かれているからだ。考えてみれば当然のことで、互換性の検証は事例の積み重ねであるから、検証用の事例が少なければ「保証」はできないのだ。理屈の上では問題ないはずだが、他のソフトとの「相性」で不具合を起こすことは良くあることだ。不具合を確認し対策するのは簡単ではない。多くのバージョンについてそれぞれ互換性を検証することは非常に多くの労力を必要とする。それゆえ、ソフトハウスは最新バージョンのみの「保証」に注力するしかないのである。ハードウェアが8年後に修理不能になるのは部品の入手が困難になるなどの物理的な原因によるのだが、ソフトウェアがサポート対象外になるのは労力の問題に過ぎない。労力といってもコストなので仕方がない。人件費はコストの中でも多くの割合を占めているのだ。もちろん、新しい商品を買ってもらわないとビジネスにならないということでもあるのだが。
- アップルがこのような作業を代行すれば良いのだが、現実には難しい。古いバージョンの互換性を検証するということはソフトハウスの最新バージョンの販売を妨害することになるからだ。OSとアプリケーションソフトは一心同体である。OSのバージョンアップにソフトが対応してくれないとOSが売れなくなってしまう。ソフトハウスを怒らせるわけにはいかない。
- 結局のところ、ユーザは自分で互換性を身をもって検証することになる。そして、不具合があればインターネット上の各種掲示板などで先人の教えを請うことになる。これは大変な労力を要する作業なのだ。この課題を解決することが重要なのだが、今のところ具体的な解決策はないのである。
2002/09/28
Mac OSからMac OS Xへ(その1)
- Mr. Jobsは2002年5月6日のWWDC(World Wide Developer Conference)でMac OSの葬式を行い、Mac OS Xへの完全移行を明言した。そして、2002年7月17日のMacworld New YorkのKeynote SpeechでMac OSの提供を終了し、今後はMac OS XのClassic環境としてのみ提供されるようなコメントをしたらしい。
- その直後にはインターネット上で「今後のMac OS XのパッケージにはMac OS 9.xのCD-ROMは付属しない」「今後のMacintoshはMac OS 9.xでは起動できない」など、さまざまな情報が飛び交っていた。しかし、Macintosh情報誌は沈黙を守り、Mr. Jobsのこの決定に対して何ら否定的なコメントはしなかった。大きなスポンサーであるアップルのご機嫌をそこねることはできないわけだ。
- さて、私は未だにMac OS 8.6を使用しているが、それは主にハードウェアとソフトウェアの制約のためである。決してMac OS Xに否定的なわけではない。逆に「AppleがMac OSからMac OS Xへどのように移行するのか」を興味を持って見守っているぐらいだ。前例がないわけではないが、あのMicrosoftですら未だに成功していない難しい課題だからだ。
- そのMicrosoftはWindows 9x系からWindows NT系への移行に着手したものの完了していない。Macintoshユーザのために簡単に例えるならば、Windows 9x系はMac OS、Windows NT系はMac OS Xに相当すると思って問題はない。
- 移行の障害は多くのCPUパワーやメモリを必要としたというハードウェア的なものと、アプリケーションの互換性や周辺機器用のドライバ類が充分に揃わなかったというソフトウェア的なものである。そう、これはMac OSからMac OS Xへの移行が進まないのと同じ理由なのだ。
- さて、MicrosoftはWindows NT系の最新バージョンのWindows XPで移行を開始した。紆余曲折はあったものの、もうWindows 9x系のWindowsのパッケージはパソコンショップで購入することはできなくなっている。また、WindowsがプリインストールされたPCは全てWindows XPモデルになっている。つまり、製品ラインアップからWindows 9x系のWindowsを無くしたのである。これで新規のユーザは無条件でWindows XPを購入することになるわけだ。
- だが、これで移行が完了したわけではない。ユーザの大多数は未だにWindows 9x系のWindows MeやWindows 98、Windows 95を使用しているからだ。これらのユーザに全てWindows XPを使ってもらうことができないと移行は完了しない。しかし、既存ユーザのパソコンではWindows XPを快適に使えないかもしれない。それゆえ、Windowsのバージョンアップだけでは済まず、PCや周辺機器の買い替えが必要になってくるのだ。もちろん、これは時間の問題かもしれない。パソコンに限らず製品には寿命がある。壊れてしまえば買い替えざるを得ないからだ。その時にユーザがWindows XPがプリ・インストールしたパソコンを買ってくれれば自動的に移行が進むのである。
- パソコン用OSのマーケットではシェアが非常に重要になる。シェアが高いOSの周りにはビジネスチャンスが多い。それゆえ対応するソフトや周辺機器が自然と増えるわけである。もちろん、競争も激しいのだが、パイが大きいので少しの取り分でも利益が得られるのだ。
- シェアというものは面白いもので、ある一定以上のシェアを確保してしまえば安泰になる傾向がある。このある一定以上のシェアを確保した企業はガリバー(巨人)と呼ばれ、別格扱いになる。日本の自動車市場のトヨタ自動車が良い例だろう。2位は日産自動車、三菱自動車、本田技研工業と入れ替わってはいるが、トヨタ自動車がトップを明け渡したことはない。
- ただ、トップ・シェアというものは自動的に守られるものではなく、トップならではの戦略を取ることによって守られていることを忘れてはならない。確かにトップは大いに有利だが絶対ではない。その良い例が日本のビール市場である。キリンビールが40%以上のシェアを確保しトップを独走していたのだが、アサヒビールが「スーパードライ」を発売してから徐々に差が詰まり、ついには逆転してしまった。
- さて、パソコン用のOSにも同じことが言える。Microsoftは90%以上という圧倒的なシェアを持っているガリバーだ。この優位は当面揺らぐことはないだろう。しかし、アサヒビールの例にもある通り、未来永劫Microsoftがトップであるとは限らないのだ。新規ユーザがWindows XPを選択しなかったら……、買い替えユーザがWindows XPを選ばなかったら……、Microsoftの天下は崩れ去るのである。
- このような状況の中でAppleはWindowsからMac OS Xへの乗り換える「Switch」というキャンペーンを始めている。そう、今まで書いてきたようにWindows 9x系からWindows NT系への移行期である今が最大のチャンスだからだ。Appleは「Windows XPではなく、Mac OS Xを選んでください」とアピールしている。Windowsにはガリバーであるが故のハンディがある。妬みによるウィルス攻撃のターゲットになってしまうのだ。さらに、Windows XPの不正使用防止のためのライセンス方式も不評である。この絶好のチャンスをAppleがどこまで生かすことができるかがパソコン用OSの未来を決すると言っても過言ではない。
- しかし、あまり悲観的なコメントはしたくないが、Mac OS X v10.1はWindows XPに比べて「完成度」が低い。レガシー・インターフェースのサポートは切り捨てられたままである。また、Mac OS Xの機能を最大限に生かせるソフトウェアもまだまだ少ない。確かにAppleの主張する通り、Mac OS Xで動作するソフトは着実に増えている。しかし、それはMac OSでもMac OS Xでも両方でネイティブに動作するソフト、つまり、Carbonアプリケーションであり、Mac OS Xに最適化されたCocoaアプリケーションはまだまだ少ないのである。
- 残念ながらMac OS X v10.1の現状はWindows XPの前のバージョンであったWindows 2000の状況に近いように思われる。このWindows 2000のケースでは時期尚早であり、Microsoftは移行を断念したのである。しかし、この絶好のチャンスにAppleは勝負をかけたようだ。Mac OSに決別し、8月24日にMac OS X v10.1の次のバージョンである「Mac OS X v10.2 Jaguar」を前倒して投入したのだ。Appleの起死回生を狙う「Jaguar」の投入だが、どこまで効果をあげられるだろうか。
- 先ほどWindowsユーザがパソコンを買い替える際にWindows XPを選ばない可能性があると書いたが、同じことはMac OSユーザにも言えるのだ。Mac OSユーザがパソコンを買い替える際にMac OS Xを選ばない可能性もあるのである。Mac OS Xの安定度や先進性は受け入れられているが、Finderなどの使い勝手が変わったことに不満を持っているユーザは多い。そして、従来バージョンのv10.0やv10.1は必ずしも一般のMac OSユーザに受け入れられているとは言い難い。「ベータ版と思えば……」「最初はこんなものだろう」と許してくれるのは新しい物好きの先進ユーザだけだ。
- さて、当然ながら「Mac OS X v10.2 」の完成度が決め手にはなると思われるが、私はAppleがどこまで頑張れるのかを楽しみにしている。やはり、Microsoftにパソコン用OS市場を完全制覇されては面白くない。独占は消費者にとって最悪の結果でしかないからだ。
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2002/09/16
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