日本語フォントについて（2）

Final Updated 2002/05/19

JIS X 0201

さて、ISO 8859の日本語版というべきものがJIS X 0201で、拡張7ビットコードの説明の時に述べた通り、ISO 646の日本語版に1バイトカタカナ（俗称：半角カタカナ。通称：JISローマ字、JISラテン文字）を追加したものです。JISはJapan Industry Standardの略で日本工業規格のことです。
このJIS X 0201は制定された当時はJIS C 6220だったのですが、後に新設された情報処理分野に移動されJIS X 0201と名称変更されました。
このJIS X 0201は94文字から63文字拡張し157文字になっています。JIS X 0201には7ビットコード版と8ビットコード版の2つがあります。前者が拡張7ビットコード、後者がISO 8859にあたります。これを図にすると以下のようになります。

JIS X0201（JIS C 6220）7ビット版

JIS X0201（JIS C 6220）8ビット版

さて、JIS X 0201にどのような文字があるのかを見ていただくために一覧表を載せておきます。制御コード部分は読み飛ばしてください。1バイトカタカナ部分にはカタカナ以外の文字（記号）があることに注意してください。7ビット版でも8ビット版でも文字コード順は同じですからここでは8ビット版のみにしました。7ビット版の場合には128～255のコード番号を0～127に読み替えてください。

JIS X0201（JIS C 6220）8ビット版

さて、このJIS X 0201にはさまざまな呼び方があります。まず、「ANK文字」という呼び方があります。ANKはアンクと読みますが、Alphabet-Numeric-Katakanaの頭文字で、アルファベットと数字とカタカナの集まりということです。
次に、「JISローマ字カナ」という呼び方があります。前半のISO 646部分が「JISローマ字」、後半の追加部分が「JISカナ」なので、あわせて「JISローマ字カナ」ということです。
最後に、前半のISO 646部分を「JISラテン文字」と呼ぶことがあります。これはJIS X 0201の規格書の中に「ラテン文字」という表現があることに依っているようです。
また、このJIS X 0201の後半を「半角カタカナ」と呼ぶのは誤りですので注意しましょう。確かに昔のワープロ専用機では半角、倍角、縦倍角、4倍角、などのサイズがありましたし、実際に半角カタカナのサイズは横方向に半分になってはいます。ですから間違えてしまうのですが、文字コードには文字のサイズは関係ないのです。文字の区別はサイズではなく、字形で行うべきなのです。しかし、表現はともかく「全角カタカナ」なんていうものもあります。とすると、……。気がつかれた方もいると思いますが、JIS文字コードは「半角カタカナ」と「全角カタカナ」に「同じ字形であるにも関わらず、違う文字コードを重複して割り当ててしまっている」のです。これは後に問題になってしまいます。
ところで、1バイトカタカナが63文字であることに疑問を持つ人もいるかもしれません。カタカナは51文字と濁音20文字、半濁音5文字、「ャ」「ュ」「ョ」「ァ」「ィ」などを加えると86文字もあります。63文字では足りないですね。これは濁音や半濁音がそのまま収録されなかったからです。先のウムラウトなどのアクセント記号を合成した例と同じで「゛」「゜」のみを収録し、組み合わせて使うようにしたからです。確かに「半角カタカナ」では「カ」と「ガ」は文字サイズが違っており、「カ」と「カ゛」のようになっています。これは当時の非力なパソコンに負荷をかけないように収録文字数を減らしたからです。
ただ、これでは厳密には文字は「合成」されたことになりません。ただ連続しているだけなのです。それゆえ、文字サイズが異なっているのです。これは、8ビットコードであるISO 8859で文字合成が廃止されていることが原因かもしれません。JIS X 0201は厳密にはISO 8859準拠ではないのですが互換性を考慮しているのでしょうか。
また、「カタカナ」と書いていますが、記号も含まれています。よく文字化けで問題になる、俗に「半角句点」「半角読点」と呼ばれる1バイトの「。」「、」や「半角括弧」と呼ばれる1バイトの括弧記号などが含まれています。
さて、先にも少し書きましたが、これら8ビットコードは正式にはインターネットではサポートされておらず、7ビットコードしかサポートしないサーバもあるのです。つまり、E-mailは7ビットコードしかサポートしていないのにウェブブラウザは8ビットコードもサポートしています。何が違うのでしょうか。
この両者はインターネットを使うという点では同じなのですが、使い方が違うのです。ウェブブラウザはコンテンツの置いてあるウェブサーバに直に接続します。ですからウェブサーバが8ビットコードに対応すればそれで問題が解決するのです。
しかし、E-mailはパソコンからパソコンへ送られます。そして、送られる間にさまざまな経路をたどり、さまざまなメールサーバを通るのです。そのメールサーバの中には7ビットコードしかサポートしていないサーバがあるかもしれません。そのようなサーバを8ビットコードを使ったE-mailが通過すると、8ビット目が抜け落ちたり、破壊されたりしてメールが文字化けしたりするのです。最悪の場合にはサーバ側に傷害を与えてしまう場合もあるようです。それゆえ、E-mailでは8ビットコード、つまり、1バイトカタカナ（俗称：半角カタカナ）を使ってはいけないのです。
ただ、最近はブラウザとメーラーが統合されているので自動的に8ビットコードと7ビットコードを変換するようになっています。単独のメーラーもそれに対抗するために8ビットコードの変換をサポートするようになってきました。ですから1バイトカタカナを使っているメールが正しく表示されることもあるのです。ただ、8ビットのものを7ビットに変換するというのは無理があります。原則的に1バイトカタカナを使わないようにした方が良いのに越したことはありません。これについては後にもう少し詳しく書いてみます。

ISO 6429（JIS X 0211）制御コード

さて、制御コードにも規格はあります。それがISO 6429で、JIS X 0211というJIS規格にもなっています。最初はJIS C 6323として制定されたようですが、JIS C 6220と同じく新設された情報処理分野に移動されJIS X 0211と改称されました。
当然ながら、制御コードを規格化しておかないと文字コードは成り立たないのですが、あまり説明されている資料がありません。私なりに可能な限りまとめてみようと思います。
先ほどから「CL」「GL」「CR」「GR」ということを書いていますが、制御コードはそのうちの「CL」と「CR」です。制御コードの「文字」集合は私の調べた限りではこの2つです。文字集合と書いたのは先に説明した通り、制御であろうが図形であろうがコンピュータの世界では区別されないのです。
後に説明しますが、文字集合は「インユーステーブル」というものに呼び出されて使われます。この「CL」「CR」もインユーステーブルの1つなのです。ですから、文字集合（制御コード集合）としては「C0」「C1」と呼ぶのが正しいようです。しかし、2つしかない文字集合を2つしかない制御コード用のインユーステーブルに呼び出すのですから両者は同一のものとして説明されることも多いようです。
さて、この制御コードを1つずつ説明すればよいのでしょうが、良くわかりません。わかる範囲で説明します。
ASCIIコードは訳すと「アメリカの情報交換用の標準コード」になることは先に説明しました。つまり、異なるコンピュータ間でのデータのやり取りを行うために作られたものなのです。ですから、制御コードには文字を画として表示するための制御以外にもデータ転送の制御などの役割があります。

制御コード（C0）

制御コード（C1）

制御コードを分類してみましょう。「BS」はBack Spaceで1文字戻る制御をします。つまり、図形文字（Graphic Character）を画として表示させるための制御を行っているのです。このような制御コードは他にもあります。「LF」はLine Feedで行送りですし、「CR」はCarriage Returnで改行です。
また、通信制御を行うものもあります。「ENQ」はEnquiryで問い合わせ、「ACK」はAcknowledgeで応答、「EOT」はEnd of Transmissionで通信終了になります。まあ、当時はインターネットなどはありませんでしたから、この「通信」はテレックスなどの際に使われたのだと思います。
これらに対し、文字集合の切り替えに使われる制御コードがあります。後に詳しく説明する「ESC」はEscapeでESCシーケンスとして使われます。「SI」「SO」はShift In、Shift Outです。

詳しくはわかりませんが、制御コードは英語の略なので、それから役割を想像することが可能です。以下にC0制御コード一覧を載せておきます。（わかる範囲で種類毎に色分けをしてみました。）

EOT：End of Transmission

NAK：Negative Acknowledge

SYN：Synchronous Idel

ETB：End of Transmisson Block

CAN：Cancel

EM：End of Medium

SUB：Substitute Character

同じく、C1制御コード一覧を載せておきます。（わかる範囲で種類毎に色分けをしてみました。）

BPH：Break Permitted Here

NBH：No Break Here

NEL：Next Line

SSA：Start of Selected Area

ESA：End of Selected Area

HTS：Horizontal Tab Set

HTJ：Horizontal Tab with Justification

VTS：Vertical Tab Set

PLD：Partial Line Down

DCS：Device Control String

PU1：Private Use 1

PU2：Private Use 2

STS：Set Transmit State

CCH：Cancel Character

MW：Message Waiting

SPA：Start of Protected Area

EPA：End of Protected Area

SOS：Start of String

SCI：Single Character Introducer

CSI：Control Sequence Introducer

ST：String Terminator

OSC：Operating System Command

PM：Privacy Message

APC：Application Program Command

JIS X 0208（JIS文字コード）

欧米文字に対し、漢字は文字数が多く、7ビット（94文字）や8ビット（188文字）にはとても納まりません。そのため、独自に拡張した形でコードを設定しています。漢字は日本はもちろんですが、中国、台湾や韓国、北朝鮮（朝鮮民主主義人民共和国）などのアジア圏で使われている文字であるので勝手に規格を作っては問題なのですが、日本が先行して1978年にJIS文字コードが制定されました。ちなみに、良く聞くCJKとはChina、Japan、Koreaの頭文字の略で漢字圏を意味します。
それがJIS C 6226-1978と呼ばれるもので、後にJIS X 0208-1978と改称されました。最後に西暦がついているのは中身が何度か改訂されているので改訂年で区別する必要があるからです。
このJIS X 0208はISO 646をベースに作られたもので、7ビットコードの94文字を元にしています。当然ですが、94文字では足りないので拡張されています。
ただ、その拡張方法は先の拡張7ビットコードと同じように文字ブロックを複数用意して切り替えるというものではありません。文字コードのエリア自体を大幅に広げたのです。つまり、JIS X 0201は7ビットコードを横につないで8ビットコードにしましたが、JIS X 0208は縦につないで2次元に拡張したのです。わかりやすくするために先にイメージを示します。

JIS X 0208（JIS文字コード）

この図で「2次元への拡張」のイメージがつかめると思います。7ビットコードであるISO 646を2次元に拡張するとこのような構造になるのです。
先に7ビット＋7ビット＝8ビットと説明しましたが、2次元ということは7ビット×7ビット＝14ビットになります。（49ビットにはなりません。）文字コードの世界では1バイト＝7ビットのこともあるように、14ビットでも2バイトコードと呼ばれます。漢字圏では2バイトコードが必須なのです。説明するには「2次元」とした方がわかりやすいかもしれないのですが、この世界では「2バイト」とした方が一般的なので、今後は「2バイト」と書きたいと思います。
2バイトとなると、縦と横のどちらが第1バイトかが気になります。この図の場合は「ブロック」と書いてある縦方向が第1バイトになります。電話番号で例えてみましょう。1234-5678という電話番号に市外局番が加わると03-1234-5678となります。この時の市外局番の03が第1バイトになるということです。ちなみに、これに国番号を加えると、+81の国番号が第1バイト、03の市外局番が第2バイト、1234-5678という電話番号が第3バイトになるわけです。文字コードも同じく、第1バイトによって94文字の第2バイトが分類されるという形式になるのです。
さて、この構造は互換性を持たせるためで、既存のISO 646と共存を図るための知恵だといえます。ISO 646は33～127までの94文字ですが、JIS X 0208はこれが2バイトに拡張されているわけですから、（33,33）～（126,126）のマトリックス（行列式）で表すことになります。（規格書などでは33/33などとスラッシュで区切る場合もあります）
しかし、このような行列式では面倒です。実はこれまで10進数をできる限り使ってきたのですが、ここからは16進数に切り替えます。実際の文字コードは16進数で表現されるからです。16進数は0,1,2,3,……,8,9,と続き、それで桁上がりせずにA,B,C,D,E,Fと続きます。これを10進数に換算すればA＝10、B＝11、C＝12、D＝13、E＝14、F＝15となります。そして、10進数の「16」は16進数では「10」になるわけです。つまり、16進数では1の位、16の位、256の位となるわけです。

ちなみに、なぜ16進数なのかということの答えは簡単です。コンピュータが2進数で動いているからです。コンピュータのメモリやハードディスクの容量をビットとかバイトで表しますが、これは2進数系の単位です。そして、16＝2⁴なので16進数は2進数に簡単に換算できるのです。ちなみに、換算は以下のように行います。

16進数	2進数	10進数
1	0001	1
2	0010	2
3	0011	3
4	0100	4
5	0101	5

16進数	2進数	10進数
6	0110	6
7	0111	7
8	1000	8
9	1001	9
A	1010	10

16進数	2進数	10進数
B	1011	11
C	1100	12
D	1101	13
E	1110	14
F	1111	15

例えば、16進数で12ABならば、1＝0001、2＝0010、A＝1010、B＝1011なので、そのままつなげれば換算完了です。つまり、16進数の12AB＝0001001010101011になります。簡単でしょう？
また、文字コードの場合、10進数だと「126」のように3桁になってしまうのですが、16進数だと「7E」と2桁のままで桁上がりがしないというメリットもあります。
そうそう、私は16進数をそのまま「7E」と書きます。一応、事前にここからは16進数表示にしますと書きますが、途中から読む人には区別がつかないかもしれません。そこで、一般的には16進数表示の決まり事があります。参考までに書いておきます。なぜ参考までにというと、16進数はマイナーなのか決定版がないのです。いくつか書き方があるのであれば、どれを選ぶか迷ってしまいますよね。
- そのまま書く……7E
- 後ろに「h」をつける……7Eh
- 後ろに小さな「H」をつける……7EH
- 前に「0x」をつける……0x7E
- 前に「&H」をつける……&H7E
- 前に「#」をつける……#7E
ちなみに、「h」はhexadecimal numberの頭文字で「16進数」という意味です。
さて、先の33～126を16進数に換算すると21～7Eになります。試しに10進数に換算しましょう。21＝2×16＋1＝33、7E＝7×16＋14＝126というわけです。これを踏まえて先ほどの図を16進数表示に直しましょう。

JIS X 0208（JIS文字コード）

さて、16進数になったところで文字コードの表し方を見てみましょう。（これから後は文字コードを16進数で表記します。）1次元（1バイト）のコードなら単なる数字で表せるのですが、2バイトになると行列式にならざるを得ません。そこで考えられたのが「将棋」と同じ表し方です。将棋は縦横碁盤の目になっている将棋盤の上で駒を動かすゲームなのですが、「3四歩」（さん・よん・ふ）のように駒の動きを表します。「3四歩」とは横3縦四の場所に「歩」という駒を動かすという意味です。つまり、縦と横の符号を組み合わせてマトリックスの場所を特定するわけです。
この2バイトに拡張されたJIS X 0208という文字コードも同じ方法を使っています。「3021」という縦30横21というマトリックスの場所には「亜」という文字が配置されているというわけです。くどいようですが「3021」は16進数で、10進数に換算すると（48,33）になります。
では、このJIS X 0208には何文字入るかというと、理論的には94×94＝8,836文字を定義できます。しかし、これは最大数であり、電話番号などと同様に全ての組み合わせを使ってはいません。つまり、電話番号は市外局番や局番という分類があるため、10桁の全ての組み合わせを使いきれていないのです。
このJIS X 0208も同じです。文字にもアルファベット、ひらがな、カタカナ、数字、記号、漢字、……と種類があります。当然ながらそれぞれが文字コード表にバラバラに配置されているわけではないのです。漢字以外、JIS第一水準漢字、JIS第二水準漢字とエリアわけしているのです。ですから、このJIS X 0208も何度か改訂されていますが6,879文字しかありません。内訳はJIS第一水準漢字が2,965字、JIS第二水準漢字が3,390字、そして（非漢字）漢字以外が524字になります。
また、未定義エリアもありました。そこには各社が「外字」を置いており、これは後に大きな問題になるのですが、当時としてはやむを得なかったところでしょう。これについては後ほど説明します。

JIS X 0208（JIS文字コード）

［（その１）］［（その３）］［参考文献］
［Macintosh 雑記帳のトップページ］［日本語フォントについて］

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