Macworld/Tokyo 2001 Report (2)
最終更新 2001/05/07
このページにはMacworld Conference & Expo/Tokyo 2001についての個人的なレポートを掲載しています。
この情報はあくまでも私個人の感じたレポートです。これが絶対正しいとは限りません。みなさん個人の価値観で判断して下さい。特に極秘情報などは書きません。(知りません。(^^;))公開された情報だけです。
また、ほめたり、苦言を呈したりしていますが、何ら利害関係はありません。ただ、少しでも良くなって欲しいと期待しているだけです。
New Power Mac G4について
- Power Mac G4もモデルチェンジしました。733MHzモデルがフラッグシップになったのです。しかし、対するPentium 4は1.5GHzを達成しています。スピードだけを比べると半分の能力しかないように見えます。アップルのデモもこのイメージを払拭するのにかなり力を入れているようでした。Adobe Photoshop 6を使ったデモではそれぞれ733MHzのPower PC G4と1.5GHzのPentium 4を搭載したモデルでの比較ではPower PC G4が24秒で終わった処理にPentium 4は36秒かかっていました。つまり、733MHzのPower PC G4は2GHzのPentium 4の能力を持っているというのがデモの趣旨です。
- アップルはこのようにCPUの「MHz神話」に終止符を打とうとしています。「りんごとオレンジを比較するのは無意味だ」とも言っていますが、全くその通りです。Power PCとPentiumシリーズは全くアーキテクチャの異なるCPUです。ですからスピードだけで比較するのはナンセンスなのです。
- また、CPUのスピードが上がっただけではありません。バスの速度も100MHzから130MHzに上がっています。そのため、メモリコントローラが改訂されておりスループットが大幅に向上しています。AGPも2Xから4Xに向上しています。こういう部分も加わって先のAdobe Photoshop 6を使ったデモのスピードが実現されているのです。PCIスロットも1つ増えています。
- ただ、1つだけ注意しなければいけないことがあります。Adobe社はCPUの能力を充分に引き出すアプリケーションを作るのがうまい会社です。ですから、デモで使われたPhotoshop 6もPower PC G4とPentium 4の能力を充分に引き出しているのです。つまり、Power PC G4のマルチメディアエンジンであるVelocity Engineの能力も充分に引き出しているのです。しかし、全てのソフトハウスがAdobe社のようにCPUの能力を充分に引き出すアプリケーションを開発できるかというと、そうではないのです。つまり、一般的なアプリケーションを使うならば、必ずしもPower PC G4が速いとは限らないのです。まあ、IBM-PC/AT互換機にはPentium IIIが搭載されているモデルの方が多いですから気にすることもないでしょう。
- キャッチコピーは「Power to Burn」。アップルがSuper Drive(DVD-Rドライブ)を搭載しました。ちなみに、日本語で「CDを焼く」と言いますが、英語でも「Burn」と言うようです。(というより逆ですね)アップルはDVD-ROMドライブを重視するあまり、CD-RWドライブの投入が遅れてしまいました。まあ、MacintoshにはZipドライブやMOドライブなど他の大容量記録ドライブがあったのですから仕方なかったのかもしれません。
- 実際のところ、MP3などのデジタル音楽をCD-Rに記録することが始まってはいます。しかし、どれだけ使われているかは不明です。「カタログ・スペック」という言葉があります。消費者は無意味なカタログ上の数字で購入判断をするということです。アップルは泥沼のカタログ・スペック競争に手を染めたのかもしれません。CD-RWを飛び越えてDVD-Rを選択したのです。もちろん、CD-RWモデルも用意されているのですが、Comboドライブは用意されていないのです。このあたりの中途半端さは気になるところです。
アップルのビジョンについて
- San Franciscoでの繰り返しではありますが、Mr. JobsはDigital Lifestyleの説明をしました。1980年〜1994年までは表計算やDTPなどの「Productivity」(生産性)の時代、また、1995年〜2000年は「Internet」の時代であった。そして、2001年からは「Digital Lifestyle」の時代になる。これがアップルのビジョンなのです。
- 日本企業はビジョンを示すことが下手なのですが、アメリカ企業は非常に得意です。ビジョンとは「目標」と言い換えても良いものなのですが、売上目標などではなく、そうなりたいという「イメージ」なのです。社員はもちろんですが関連企業やユーザまでもがこのビジョンを実現するために努力するわけです。
- アップルのこの「Digital Lifestyle」というビジョンはMacintoshコミュニティだけでなく、パソコン業界そのものを導いていくような気がしてなりません。今後のパソコン業界を判断するポイントになるのではと思います。
- そして、このビジョンを実現するためにはCPUの能力はまだまだ強化されないといけないのです。例えば、DVDを焼くためのソフトウェア・エンコードを可能にしたのはPower PC G4のVelocity Engineの能力にあります。その能力はまだまだ強化される必要があるのです。さらに、メモリももっと必要です。HDDの容量も必要です。パソコンは新たな領域に踏み込もうとしているわけです。
OpenTypeフォントについて
- Mac OS XではOpenTypeフォントが標準搭載されます。このOpenTypeフォントはPostScriptフォントをベースにTrueTypeフォントを統合したものと考えて良いでしょう。
- 欧米のフォント情勢は簡単です。Adobeという巨人が全てを取り仕切っているといっても良く、かといって利益を独占しているというわけでもないからです。しかし、日本では状況が全く異なります。Adobeは巨人ではなく、モリサワという巨人が存在し利益を独占しようといろいろな制約を設けているからです。
- モリサワの設けている制約については省略しますが、日本のフォント情勢は大きく変わってきています。Mac OSには今まで「細明朝体」(リュウミンライト)や「中ゴシック体」(中ゴシックBBB)というモリサワのフォントが標準搭載されてきたのですが、Mac OS Xでは大日本スクリーンのフォントが標準搭載されることになるのです。
- この大日本スクリーンのフォントは「ヒラギノ」シリーズというOpenTypeフォントでUnicodeに対応しています。UnicodeやOpenTypeはフォント業界の期待を集めている技術ですが、モリサワは消極的で大日本スクリーンは積極的という違いが見られます。これはディフェンディング・チャンピオンとチャレンジャーの立場の違いというところが大きいようです。このあたりはややこしいので別にまとめてみましょう。
- 簡単にOpenTypeはフォントのメリットを書いておきましょう。Mac OSとWindowsのクロスプラットフォームであり、Unicode対応であり、プリンタフォントが不要であるということです。なぜプリンタフォントが不要なのかというと「ダイナミックダウンロード」という技術によりTrueTypeフォントのようにパソコンからプリンタにフォント情報を送れるからです。
- これらのメリットにより、プラットフォームの違いによる外字の文字化けがなくなります。そして、17,000字余りの文字をサポートし、プリンタ側にフォントがないことによる出力問題もクリアされます。そして、高価なプリンタ用フォントを購入する必要がなくなるのです。これらのOpenTypeフォントはPostScript3プリンタで出力可能です。対応しているOSはMac OS XとWindows2000になります。
- 実は昨年から書き連ねているこれらのフォントに関するレポートがあるのですが、まとめきれていません。そのうち公開できるかと思います。(いつになるのでしょう?笑)
Adobe InDesign 1.0J、他
- 「出るぞ、出るぞ……」と言われて早一年。ようやくAdobe InDesign日本語版がリリースされました。既に英語版はリリースされていたわけですが、日本語の組版に特有な制約によって日本語版のリリースに時間がかかっていたわけです。ただ、この時間はライバルのQuark Expressを牽制するのに役立ちました。強力な新製品が発売されるのがわかっていれば買い控えが起こるからです。かわいそうにAdobe InDesignの発表によってQuark Expressのバージョンアップは進まなかったのです。
- こういうマーケティング手法はフェアではないのですが、認められています。なぜなら競合つぶしのために意図的に先行発表したのか開発が遅れたのかはわからないからです。
- InDesinについては他のメディアでも書かれているので省略します。さて、AdobeはDTP(Desk Top Publishing)からWeb Publishingへ移行しようとしています。PDFファイルを使った電子校正、そして、印刷ではなくPDFファイルでの電子配布がパソコンだけではなく、PalmなどのPDAや携帯電話にも行えるようになってきています。
- さらに、電子書籍の配信にもPDFをベースにしたAdobe eBook Readerを発表しています。Acrobat Readerの機能に加えて蔵書管理機能などが追加され、電子書籍に特化したものになっています。そして、電子書籍はこれまでパソコンでしか読めなかったのですが、PalmなどのPDAでも読めるようになるようです。Acrobat Reader for PalmやiMode上でも読めるようになれば一気に普及するかもしれません。これまではノートパソコンでしか読むことができなかったので文庫本的な手軽さがなかったからです。
Macromedia UltraDeveloper 4、他
- DTPはAdobeの独壇場だったわけですが、Web PublishingではMacromediaが一歩リードしています。「Web Publishing」は定義がいくつかあり、先に述べたAdobe流の定義もあるのですが、一般的にはホームページデザイン全般のことを指すようです。そして、この分野で大巨人のAdobeを一歩リードしているのがMacromediaというわけです。
- MacromediaはDreamWeaver 3とFireWorks 3という強力なツールを提供しているわけですが、今回それぞれが「4」にバージョンアップしました。さらに、DreamWeaver 4の機能拡張版としてUltraDeveloper 4がリリースされました。ホームページをデータベース・サーバと連携させることはよくあるのですが、そういうページを作るのは簡単ではありません。UltraDeveloper 4はそれをいとも簡単にやってのけます。ページを作成しながらサーバ側のプログラムであるCGIやSSIを自動生成し、そのプレビューまで見れるのですから驚きです。なんという技術の進歩でしょう。これはお買い得です。これが今回のExpoでの一番の発見だったと思います。
ショップ巡り
- Macworld/Tokyoの楽しみの一つにショップ巡りがあります。今回のExpoではショップの数は減っているものの掘り出し物がたくさんありました。ただ、この「掘り出し物」というのがくせ者で、実は倒産した問屋などから値切り倒して買ってきたものだったりします。つまり、通常では普通のパソコンショップでは販売されない(販売してはいけない)ものも含まれていました。
- ただ、これは法律違反ではなく、あえて書くなら「契約違反」なのですが、契約した企業(問屋やショップ)が倒産していては契約も履行できないわけです。私たちにとっては「お買い得商品」なのですが、寂しい気がしなくもありません。売れ残るまでショップや問屋に商品を押し込むメーカも悪いですし、ショップや問屋やそれらが倒産したら在庫を買いたたくバッタ屋にも問題があります。「デフレ」と言われますが、それはこれと同じような仕組みで成り立っているわけです。このようなサイクルはずっと回り続けるわけではありません。そのうちストップするわけですが、その時にどうなってしまうのかを今から考えておかなければなりません。
- 誤解されては困りますが、こういう「掘り出し物」を売ったり買ったりしてはいけないと書いているのではありません。私も「掘り出し物」を購入したりしています。ただ、先に書いたようなことを考えておかなければいけないと書きたいだけなのです。でも、ちょっと難しすぎる問題ですね。
[Expo Tokyo Report (その1)]
[Macintosh 雑記帳のトップページ][Expo Report Top]
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そんなにたいしたページではありませんが…(^^;)
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