Photo Imaging Expo 2008 (PIE2008) Report

2008/04/20

Photo Imaging Expo 2008 (PIE2008) レポート

PIE2008が終了した。例年どおり東京ビッグサイトで3月19日(水)から3月22日(土)で開催されたのだが、今年は西館ではなく、東館の第4ホールから第6ホールで開催された。西館の場合にはフロアを移動する必要があったのだが、東館はワンフロアなので便利である。さらに、会場が長方形なので私のような方向音痴にはわかりやすい。西館は「くの字型」なので迷いまくっていたのだ。ただ、今年は天候に恵まれず、初日は雨、2日目は大雨で、晴れたのは最終日だけだった。主催者発表でも来場者数が大幅に減少しているが、この天候では仕方がないのかも知れない。ちなみに、PIEの入場者数は2005年10万5,755人、2006年10万3,825人、2007年11万9,098人、そして、今年は86,459人となっている。主催者は会場レイアウトの違いにより、計測センサーの前を通過する人が減ったのではと推測しているそうだが、私の個人的な感触でも例年とそれほど入場者数は変わっていなかったと思われる。
さて、今年は3月20日が春分の日で3月22日が土曜日なので、週休2日の会社員なら2日間来場可能なわけだが、私は3月19日も1日休みを取って3日間PIE2008を満喫した。私のExpoの楽しみ方は以前に私の Expo のまわり方に書いたが、Mac World ExpoであろうとPhoto Imaging Expoであろうと変わりはしない。基本的には出展社のステージ見学を中心にまわっている。
ただ、PIEならではというのは、やはりある。コンパニオンの撮影…ではなく、結構良い手提げ袋がもらえるのだ。普通の展示会では紙袋を配るのだが、PIEでは丈夫な手提げ袋を配ってくれる。下手なエコバッグより良くできており、毎年ハクバのブースでもらうのを楽しみにしているのだが、今年はカメラのキタムラの袋の方が上等だった。ボールペンはいっぱいもらえるが手提げ袋はPIEならではだろう。他にも紙ではない袋を配っているところが数社ある。コストが気になるが、こういう出展者には好感が持てる。紙袋はゴミになる可能性が高いが、こういう手提げ袋はエコバッグなどとして再利用されると思われるからだ。それに比べてカメラメーカの袋は気に入らない。肩にかけられるのだが、横に長いため邪魔になる。まあ、大きく社名のロゴが入るのでインパクトはあるのだが、ちょっと考えて欲しいものだ。
さて、今年のPIEを一言で表すなら、「ビギナー向け」である。これは各社の新製品カメラがエントリークラスのものが多いのでそうなったのだろう。各社のイチオシはニコンはD60、キヤノンはEOS Kiss X2、ペンタックスはK200DとK20D、ソニーはα350とα200、そして、オリンパスはE-420と、K20Dを除いてエントリーモデルなのだ。もちろん、昨年の秋に各社のフラッグシップやハイエンドモデルが登場しており、それらはPIEでは初お目見えではある。しかし、ペンタックスのK20Dを除いて各社は個々にお披露目を済ませており、今年はエントリーモデルにシフトしたのだろう。
カメラ業界が再び大きな転換点にいるのは間違いない。コンパクトデジタルカメラ市場は伸びが鈍ってきており、デジタル一眼レフカメラに大きな期待が集まっている。一眼レフカメラはシステムであり、単体でのコンパクトカメラと比べて売り上げは格段に大きいはずだからだ。しかし、一眼レフの売り上げは急速に増えてきているものの、売上に比べて利益は少ないようだ。エントリーモデルの売上比率が高く、さらに標準ズームレンズとのレンズキットや標準/望遠ズームレンズとのダブルレンズキットの比率が高いからだ。カメラメーカの誤算だったのはレンズキットやダブルレンズキットのユーザがそこに留まっていることである。レンズを追加購入したり、外付けフラッシュを購入するユーザが思ったほど多くはないからだ。それを見込んでレンズキット/ダブルレンズキットを出血奉仕しているのにユーザが追加投資をしてくれないとメーカは辛いだろう。カメラメーカは何とかして一眼レフユーザの裾野拡大をはかろうとしているのだろう。各社ともにビギナー向けのステージを多く用意していた。
一眼レフユーザの裾野拡大といっても大きく2つに分けられる。1つは既にデジタル一眼レフカメラを持っているユーザ向けのステージである。既存ユーザにさらにレンズをもう1本、外付けフラッシュなどのアクセサリなどを買ってもらいたいという狙いである。オリンパスは桃井一至さんがワイヤレスフラッシュを使った撮影方法を紹介してくれるステージや新製品のE-420と合わせてパンケーキレンズのZUIKO DIGITAL 25mm F2.8の紹介ステージを行っていた。一眼レフの大きな魅力はさまざまなレンズを使えることであり、レンズを交換するだけで撮れる世界が変わることである。そのアピールはとてもストレートであるが意味があるのだ。
もう1つはコンパクトデジタルカメラユーザ向けのステージである。「デジタル一眼レフカメラを使ってみよう」と動物撮影や旅行スナップ、風景写真などプロの写真家が自らの作品を使って撮り方を解説してくれるのだ。これは新たな一眼レフカメラユーザの創出を狙ったものである。オリンパスはE-SYSTEMトークライブなどと銘打って岩合光昭さんの野生動物写真や佐藤仁重さんのニューヨークの写真、AMIY MORI(アミイモリ)さんのポートレイト、吉住志穂さんのスイーツと花のマクロ写真、今岡昌子さんと清水哲朗さんの中国の旅写真など実例をもって説明していた。プロの作例を多数見せてもらえ、撮影時の状況や意図を解説してもらえたので勉強になった。これらのステージは当然ながら、どのレンズで撮影されたかも紹介されているのでレンズのアピールにもなっているわけだ。
デジタル一眼レフカメラも製品としてはこなれてきており、マニアックなものではなくなっている。昨年までとは異なり、銀塩一眼レフカメラとの比較などを説明する必要は全くなくなり、完全に普通の製品として定着したと言えるだろう。オリンパスが先陣を切ったライブビューもペンタックスを除いて各社当たり前のように搭載してきている。これはコンパクトデジタルカメラユーザはもちろん、メイクが崩れないので女性にもアピールするようだ。デジタルカメラになって女性が写真を撮ることが増えているように感じるが、各社ともそれを強く意識しているようだ。これはコマーシャルにも現れている。オリンパスは宮崎あおい、ソニーは香椎由宇と女性が写真を撮る姿を前面に出している。昔なら女性が出演するカメラのコマーシャルというと水着の女性が写真を撮られる方だったのだが……
さて、昨年まではオリンパス以外のステージもそこそこ見ていたはずなのだが、E-3を購入したからか、オリンパスのステージに居続けることになってしまった。というか、オリンパスが毎日違う内容のステージを行っていたので他社を回れなかったという方が正しいかもしれない。オリンパスもちょっと気合いを入れ過ぎだろう。同じプログラムで4日間行っても良かったのではないかと思うのだが(笑)。ただ、それでも、ペンタックスの谷口泉さん、ニコンの阿部秀之さん、田中希美男さんのステージは時間をやり繰りして見に行った。
谷口さんの推すペンタックスはこのPIE2008でK20DやK200Dを初お披露目したのだが、個人的にはそれほど興味がわかなかった。これはK10DやK100Dのインパクトが強かったためだろう。しきりにマイナーチェンジでないことをアピールしていたが、ライブビューなどの新しいネタがないので辛いようだった。これはペンタックスに限ったことではなく、優れた製品の後継製品はどれもが味わうことである。谷口さんはハイエンドモデルのK20Dで採用された新しいピクチャースタイルを中心にした「ピクチャー・スタイルはフィルムを選ぶのに似ている」とか「モノクロ撮影も楽しい。モノクロのフィルタ・ワークもデジタルで楽しめる」と絵作りの楽しみを解説してくれていた。ただ、正直なところ、谷口さんの強みはRAW現像テクニックだと思っていたのでちょっと残念だった。
阿部さんはD60を前面に出しつつ、ニコンのデジタル一眼レフカメラがいかにバランスよくラインアップされているかを毎度のとおり明確に説明してくれた。さすがに素晴らしいセールスマン(笑)でD60を「使いやすさを機能にした簡単に写せるカメラ」とアピールしていた。つまり、カメラ自体が初心者向けに手を抜いたものではなく、妥協をせずに徹底的に作り込まれたことを強調しつつ、「最後発であるがゆえに一番優れた」ダストリダクション機能を紹介していたのだ。一眼レフには必ずついているクイックリターンミラーの動きによる対流でゴミを外に出すそうだ。うーん。何だかなあ……(苦笑)。ただ、シャッターを押せばそこそこの写真が撮れ、カメラ内でRAW現像やJPEG加工が出来るので自分なりに味付けも可能な良いカメラのようだ。
もう少し紹介しておくと、阿部さんは「D40は敢えての6.1M」と高画素化が全てではなく、600万画素にはそのメリットがある、「ニコンは今までも優れた中級機をつくるのがうまかった」とフラッグシップからうまく技術を取り込んだD80を持ち上げた。そして、キヤノンの2000万画素機をレーシングカーと評し、D3を「どんなところでも撮れる戦車」とアピールしてくれた。この「どんなところでも」は高感度を意味していて暗いところを主にイメージしているようだ。
田中さんは最後のステージで時間をオーバーしながらもニッコールレンズの紹介をしてくれたのだが、ちょっと無理があるような気もした。まあ、今年はニッコールレンズ誕生75周年なのでそういう話になるのであろうが、Fマウントはマイナーチェンジはあっても不変なので昔のレンズも使える、というところまではわかる。しかし、「デジタルになると古いレンズでも良いところがそのまま出る。悪いところが誇張されるわけではない」という説明は苦しいような気がする。以前に柴田三雄さんに聞いた「新しいデジタル用に設計されたレンズは素晴らしい」という素直なコメントの方が納得できる。
ただ、ニッコールレンズの高品質の秘密を語ってくれた。鬼の品証と呼ばれる品質保証部がレンズを机の角にぶつけるなどの恐ろしい試験をしているらしい。プロが使うレンズは簡単に壊れてはいけないからなのだが、真面目なニコンらしいエピソードだ。また、「今までのニッコールレンズは高い解像力を持っているがボケ味に無頓着」というコメントには何となく共感できた。もちろん、その後で新しいレンズはボケ味がきれいとちゃんとフォローしていたわけだが(苦笑)。田中さんはD3 + AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED + AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8G EDの100万円セットがベストマッチングと言っていたが、同感ではある。ただ、私はE-3 + ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0 +ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD + ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDを選んでしまった。これでも100万円でおつりがいっぱい戻ってくるのだ。まあ、お金と腕力のある方はうらやましい(笑)。
さて、PIE2008ではカメラ以外にも見るべきものはたくさんあるのだが、今年はカメラ関連の書籍とカメラバッグを重点的に見てみた。まず、書籍だが、書店ではなく出版社が出展している場合には関連書籍が発売前に安く買えたりするのである。今回はインプレスが出展していたので「E-3マイスターブック」を発売日前に10%OFFで購入できた。出版社にとっても直販できるので儲かるはずなのだが、出版社の出展は減っており寂しいところだ。
もう1つのカメラバッグだが、カメラシステムを新調すると新しいカメラバッグが必要になる。さすがにOMシステム用のカメラバッグを流用し続けるのには無理があるからだ。ところが、なかなか良いものがなくて困っていたのだ。長くなるのでカメラバッグについては別に書いてみようと思う。
オリンパスのE-SYSTEMは「売れていない」と言われるが、会場では多くのユーザとすれ違った。ニコンやキヤノンに次いで多かったように思う。特にE-3とE-510ユーザが目についたのだが、E-SYSTEMユーザのひいき目だろうか。まあ、オリンパスブース近くだから当然ではある(苦笑)。

［Expo Report Top］

［フォーサーズ雑記帳のトップページ］

このページはリンクフリーです。ただし、商用サイトからのリンクはお断りします。
また、著作権を放棄しているわけではありませんので無断引用もお断りします。
そんなにたいしたページではありませんが…(^^;)