2023/07/01
Next 初代フィット 1.5T(その14) - ホンダ、F1復帰宣言。しかし、時、既に遅し。 -
- ホンダが2026年からF1に復帰するというニュースが入ってきた。そのニュースをホンダがスポンサーでもある商用メディアは好意的に伝えているのだが、ネットニュースは懐疑的に伝えている。そもそも、ホンダが復帰する理由に挙げていることは撤退前に分かっていたことだからだ。F1が電動化率を上げることやカーボンフリー燃料100%にするなどということはかなり前から決まっていたことらしいのだ。それを理由にするというのは腑に落ちないというのは当然だろう。2026年からのホンダのF1は第5期になるらしいが、これは4回撤退していることを意味する。ホント、辞めます詐欺だ。
- 勝手な想像でしかないが、F1撤退が自動車販売への大きなマイナス要素であることに気づいた経営陣が慌てて撤回したというのが真相だろう。しかし、ホンダは欧州から撤退状況であるためイギリスのF1開発拠点は既になく、それゆえ盟友だったレッドブルやアルファタウリに袖にされてしまった。結果的にアストンマーチンと組むことになり、またまたゼロからの再スタートになってしまうわけだ。ネットニュースで「はあ…、何をやっているんだ」と言われても仕方がないだろう。まあ、ホンダの権力争いで傍流の八郷前社長が敗れ、本流の三部社長に代わったからという単純なことなのかもしれない。
- ただ、F1に復帰したら車が売れるのか、といえば、そんなことはあり得ない。既にホンダの車はF1のイメージとは似つかわない面白くないものになっているからだ。車の開発には少なくても5年はかかる。今からホンダがアグレッシブな車を開発したところで手遅れということだ。まあ、今さらホンダがガソリンエンジン車を真面目に作ることはないだろう。今のホンダはEV用の二次電池の調達に多額の投資をしてしまったからだ。今さら後戻りはキツイだろう。
- ホンダはユーザーを舐めているのだろうか。F1というイメージだけで車が売れると思っているのであれば思い違いも甚だしい。最近になってアメリカでF1が人気になっているためブランド強化になるのも理由の1つとニュースには書かれていたが、カーボンフリーに寄ったF1で勝ったからといってハイブリッドカーやEVが売れるだろうか。ブランドイメージは崩れ去るのは一瞬であり、再構築には長い年月が必要なのだ。ホンダはS2000やNSXの後継らしき「スペシャリティ」と「フラッグシップ」という2つのスポーツカーをピュアEVとして開発すると発表している。そのEVシフトとカーボンフリーに寄ったとはいえF1とのイメージギャップがモヤモヤする。相反するブランディングに思えてならない。
- 問題は人材だ。EVシフトにまっしぐらのホンダからは多くの人材が流出したと懸念される。ホンダF1の主要メンバーは撤退時に退社したと聞く。ホンダ・レーシング(HRC)に四輪のレース部門を移管して今もレッドブルにF1エンジン(パワーユニット)を供給しているとはいえ、それは開発ではなく単なる製造に近いらしい。F1のレギュレーションによってパワーユニットの開発やアップデートが2025年中までは凍結・制限されているからだ。それでは担当者は面白くないだろう。これから2026年に向けて新たなパワーユニットを開発しなければならないわけだが、そのための人材がホンダに残っているのか心配になってしまう。私が同じ立場だったら愛想を尽かしてとっくに辞めているからだ。
- 今のホンダ車に載っているエンジンはハイブリッドではない軽自動車を除けば発電用にチューニングされているらしい。実際、ハイブリッドと言いながらほとんどモーターで走行するのだから当然ではある。今さら、CAFE規制に貢献する低燃費でパワフルなエンジンを開発できるのか。多くのガソリンエンジン開発者を失ったであろうホンダに私はその未来を想像できない。4代目のフィットに試乗してもエンジンパワーをまるで感じなかったからだ。
- エンジンパワーが半分、モーターパワーが半分の新たなF1に興味があるかと言われれば無くはない。しかし、フォーミュラEの方がマシン開発によるEVへの技術のフィードバックという意味では有意義だろう。しかし、現在の技術ではバッテリーだけでF1のように2時間走れるわけはなく、45分間を2台のマシンで乗り継いで走るなど苦心していたわけだ。スピードを上げるとバッテリー消費も激しくなるので動力性能的にはF3クラスらしい。今ではバッテリーの容量が増えて2台のマシンを乗り継ぐ必要はなくなったのだが、レース時間が45分間と極めて短いため興行がよく成り立っていると思うレベルである。まあ、ガソリン給油の代わりにバッテリーを充電/交換するわけにもいかないのだから仕方ないのだが、それゆえ参戦するメーカーもドライバーも少なく、F1よりもかなり格下扱いされている状況なのだ。まあ、EVの最先端の世界がこのレベルなのにEV化を声高に叫んでいるのはいかがなものかと思う。
- 余談だが、カーボンフリーを叫び、EV化にまっしぐらの欧州メーカーであるアウディ、BMW、メルセデスがフォーミュラーEから撤退している。うーん。モヤモヤする。今、ロシアのウクライナ侵略によって欧州のエネルギー事情は悪化している。ドイツが欧州のEV化に反旗を翻したのもそれゆえだろう。まあ、ドイツはディーゼルゲート事件でディーゼルエンジンによるCAFE規制クリアの道が閉ざされたため、やむなくEV化に舵を切ったに過ぎない。言い訳ができれば及び腰になるのは仕方ないだろう。