2023/04/15
Next 初代フィット 1.5T(その7) - 初代フィット 1.5Tの7SPEEDモードについて
- ちょっと原点に戻って初代フィット 1.5Tの7SPEEDモードについて仕様を確認してみよう。ステアリングについているスイッチには7 SPEED MODEと書いてあるのだが、厳密には7速オートシフトモードという自動変速モードと7速マニュアルシフトモードの2種類がある。
- 7速オートシフトモードはステアリングの7 SPEED MODEスイッチを押せば起動する。そして、これまで試乗した車の場合は「D」や「S」とシフトセレクトの表示だけだったが、シフトインジケーターに「1」から「7」までちゃんと表示されるのだ。まあ、CVTなので厳密なものではないし、「シフトインジケーターが7速を表示中に条件を満たすと燃費向上のため、さらに高速の変速比に切り換わります。このとき、シフトインジケーターは7速のままとなります。」とマニュアルには書いてある。そして、7速オートシフトモードはDレンジだけでなくSレンジでも動作するのだ。ちなみに、Sレンジはマニュアルによると「上り坂、下り坂に使う位置。(高回転領域を有効に使用できます)」というものである。まあ、要はスポーツモードということなのだが、大人の事情でそうは書けないということなのだろう。そして、普通のDレンジの場合は「D」表示のみ、Sレンジの場合は「S」表示のみでシフト段数の表示はない。つまり、「7速オートシフトモードと通常のDレンジ、Sレンジとの違いは何なのか」が、キーポイントなのだ。具体的に見てみよう。
- まず、ドライブのDレンジとSレンジの違いは先に書いたとおりで、DレンジがノーマルモードでSレンジがスポーツモードとなる。Dレンジでは1,000回転超をキープするようにCVTが制御されているのに対し、Sレンジでは2,000回転超をキープするように制御されるようだ。エンジンの回転数が高いためSレンジの方がパワーもトルクも出るというわけだ。初代フィット 1.5Tの低燃費ゾーンは私の経験では2,000〜3,000回転ぐらいなので、不思議なことではあるがスポーツモードのSレンジの方が燃費が良いことになる。
- 次に、7速オートシフトモードだが、DレンジでもSレンジでも起動する。ただ、それぞれのレンジのエンジンの回転数が違うため自動シフトアップのタイミングが異なる。Dレンジでは2,000回転超でシフトアップする感じだ。街乗りでは6速ぐらいまで普通にシフトアップする。対して、Sレンジでは1速から2速へは2,000回転弱で変速し、2速から3速は3,000回転弱、3速から4速は3,000回転超で自動でシフトアップする。街乗りでは4速ぐらいまでしか上がらない感じだ。当然ではあるが、ブレーキを踏んで減速すればどちらのレンジでも自動でシフトダウンする。結果として、うまく使えば0.5km/L〜1km/L程度ではあるが通常のDレンジやSレンジよりも燃費が良いのだ。
- そして、7速マニュアルシフトモードの場合はステアリングの7 SPEED MODEスイッチを押して、さらにステアリングの「+」か「-」のシフトスイッチを押せば「M」の緑色のマニュアルシフトモード表示灯が点灯する。そして、「+」か「-」のシフトスイッチを押すことでシフトアップ/ダウンができるのだ。7速オートシフトモードと同様にDレンジでもSレンジでも機能する。つまり、初代フィット 1.5Tには通常のドライブのDレンジとSレンジ、そして、7速オートシフトモード、7速マニュアルシフトモードがあり、2×2=4パターンが選べるわけだ。20年前の車にしては頑張っていると思う。パドルシフトの先駆けのシステムで、ステアリングの左右にそれぞれ「+」と「-」のスイッチがあるのでパドルシフトよりも操作しやすいのだが、直進時以外はスイッチがステアリングと一緒に回って位置が変わるというのは欠点だろう。
- 7速マニュアルシフトモードの場合はDレンジであれ、Sレンジであれ、基本的には手動でなければ、つまり、「+」か「-」のシフトスイッチを押さないとシフトチェンジしない。基本的にはというのは、あまりにもエンジンの回転数が上がるとエンジンを守るために強制的にシフトアップするということだ。マニュアルによれば「エンジン回転数が6,000rpm以上になるとシフトアップします。エンジン回転数が1,400rpm以下になるとシフトダウンします。」ということだ。もちろん、ブレーキを踏んで速度を落とすと自動で2速までシフトダウンする。
- さて、こうしてみると、今試乗している各社の車には初代フィット 1.5Tに搭載されている7速オートシフトモードがないということになる。例えば、同じホンダのN-ONEの場合は7速マニュアルシフトモードしかない。私の違和感はそこにあったというわけだ。このモードがなければどう困るのか、逆になぜ今の車には搭載されていないのか冷静に考えてみよう。
- まず、疑似的にでもシフト段数を表示するのは面白いものの、トルクコンバーター式のオートマチックならいざ知らず、CVTの場合には意味がない。ただ、私がこのモードを気に入って使っているのは通常のDレンジやSレンジに比べてエンジンの回転数が比較的高く制御されているため燃費が良いからなのだ。決してスポーティーに走れるからではない。しかし、この点は今の車に搭載されているドライブモードで十分にカバーできるのではないかと気づいた。どういう制御をするかによるが十分に代わりになりそうだ。私がこれに気がついたのがMAZDA 2の試乗後というのが何とも間抜けな話ではある。「時、既に遅し」だ。20年の情報ブランクはやはり大きい。
- ただ、今の車に全てドライブモードがついているかというとそうではない。例えば、ホンダのガソリンエンジン車にはついていないのだ。4代目フィットの場合は、唯一ハイブリッドのフィット RS e:HEVにドライブモードスイッチがあり、NORMAL、SPORT、ECONの3つのモードを切り替えできるのだが、試乗した際のメモを見ると「エンジン音がしないので私にはNORMAL、SPORT、ECONの走りの違いがわからなかった」とある。フィットはバッテリーの充電量によるものの街乗りではほぼEV走行なのでエンジンがかからないからだ。ドライブモードは車によって、メーカーによって異なる気がするが、さすがにもう一度試乗をやり直すというのも気がひけるところだ。
- なので、カタログ情報やネットにある取扱説明書で確認してみよう。まず、ロッキー(ライズ)には「DRIVEスイッチ」がある。押すとパワーモードに切り替わり、「エンジンとCVTのプログラムが切り替わり、アクセル操作に対するレスポンスが向上し、ストレスのない加速が可能になります。」と書かれている。ECOとPWRの2段階制御のようだが、初代フィット 1.5TのDレンジとSレンジの関係と同じようなものかもしれない。
- 次にヤリスクロスだが、「DRIVE MODEスイッチ」がある。パワーモード、ノーマルモード、エコドライブモードの3段階に切り替えられるようだ。試乗時のメモによれば「ノーマルモードとパワーモードの違いはよくわからなかった。」とある。まあ、試乗時のポイントはシーケンシャルシフトの挙動だったので特に気を配っていなかったので仕方ないだろう。
- 3台目のフィットは先に書いたとおりで、4台目のN-ONEも同じくドライブモードがないようだ。
- 5台目のスイフトと6台目のスイフトスポーツにもドライブモードがないようだ。ただ、パドルシフトがついていないグレードだとシフトノブにSモードスイッチがあり、坂道や山間部の走行に適した走りができるようだ。
- 最後のMAZDA 2には「ドライブセレクションスイッチ」がついており、SPORTモードに切り替えることができる。ただ、試乗時のメモには「スポーツモードがあるのだがちょっと極端な感じがする。私が乗っている初代フィットのスポーツモードに比べてエンジンが回りすぎる感じがする。軽く2,500回転ぐらい回ってちょっとうるさいのだ。このあたりの制御が洗練されていない感じがする。」とあり、あまり良い感じではなかったようだ。しかし、先に書いたとおり初代フィット 1.5TのSレンジの7速オートシフトモードでもエンジンは2,000回転〜3,000回転程度は回るので大差ないような気がするのだが、うるさく感じたということは下の方の2,000回転と2,500回転の違いなのかもしれない。
- こうしてみると、ドライブモードがあって、シーケンシャルシフトやパドルシフトがある車はロッキー(ライズ)とヤリスクロス、そして、MAZDA 2しかないことになる。ちょっと驚きなのだが、やはり、私の望む車というのは異端ということなのだろう。そういうことを望むのであれば素直にマニュアル車に乗れということなのだと思う。しかし、少ないとはいえ、私の希望をかなえてくれる車があるのは救いである。ただ、残念なのはホンダのフィットだけはセミオートマチック機構もなければドライブモードもマニュアル車もないことだ。ホンダはどこに向かっているのか非常に気になってしまう。
- しかし、スポーツモードというのはそもそも燃費改善とは真逆のものである。初代フィット 1.5Tの場合はたまたまエンジンの高回転域が低燃費ゾーンと重なったため燃費が良くなったのだが、今の車ではそういう期待は無理筋で、エコモードのある車の方が燃費改善の期待ができるような気がする。やはり、2段階ではなくエコモードがある3段階のドライブモードの方が私には合っている感じだ。現代のエコモードはエアコンの制御まで変化して省エネするようなので間違いなく燃費は向上するだろうからだ。