フォーサーズ雑記帳（バックナンバー）

Next 初代フィット 1.5T(その6) - マツダ MAZDA 2 -

• 最後に試乗したのはマツダのMAZDA 2だ。簡単にスペックをおさらいしてみよう。この表に見る限りは非常に良い感じだ。

  メーカー

  モデル

  グレード

  排気量

  最高 出力 (PS)

  サイズ(mm) 全長 全幅 全高

  社内(mm) 長さ 幅 高さ

  重量(kg)

  最小 回転 半径 (m)

  燃費(WLTC)

  セミ・オートマ機構

  パーキング ブレーキ

  車両価格(円)

  備考

  判定

  マツダ

  MAZDA 2

  15S

  1.5L

  110

  4,065 1,695 1,525

  1,805 1,445 1,210

  1,090

  4.7

  20.3km/L

  シフトレバー ステアリングスイッチ

  サイド

  1,748,500

  △

• 乗った感じはこれまでの中では一番だった。シートがピカイチで腰部のホールド感が素晴らしい。ただ、自慢のペダル・レイアウトは確かに良い感じではあるが、それほどでもない。慣れの問題だろう。メーターはタコ・メーターが中央にあり、左右に燃料計や燃費系、シフトポジションなどが表示される感じだが小さい。ADAS関連の情報の表示スペースがない感じだ。小さなヘッドアップディスプレイがついていてそこに集中表示される感じは見やすいが全体としてまとまりがない。このあたりに設計の古さを感じる。ナビ・オーディオはディスプレイオーディオとして固定でサードパーティーの製品はつけられないようだ。マップデータが搭載されたSDカードを入れればナビになる。まあ、必要にして十分なのだが古い感じだ。

• ステアリングもシートも自由に調整可能でよくできている。室内スペースはフィットに比べると狭いものの十分だ。しかし、後席を倒す際には荷室と背もたれがフラットにならないのは今ひとつだ。センター・タンク・レイアウトやシートアレンジはホンダが特許を握っているのだろうか。ここはホンダ車の独壇場だ。サイドブレーキが助手席に干渉するというYouTube動画があったが、そんなことはなく余裕で扱うことができた。悪意のあるフェイク動画だ。

• 問題はセミ・オートマチック機構だ。シーケンシャルシフトとパドルシフトの両方があるのは良い。マニュアルモードでは手動でシフトノブかパドルでシフト・アップ/ダウンが必要なのは当然だが、ドライブモードでもパドルシフトが有効なのだ。ただ、動きはスイフトやN-ONEと同じだった。マニュアルモードでは自動でシフトアップ/ダウンしないし、ドライブモードではパドルが有効なのは一瞬ですぐにオートマチックに戻ってしまうのだ。MAZDA2の場合はこれが少し極端な感じがした。

• 例えば、街乗りでセミオートマチックが必要なのは遅い車の後についた場合がある。遅い車の後ろにつくとスピードを落とす必要があるのでブレーキを踏む。そうするとMAZDA 2のドライブモードではスピードも落ちるがエンジンの回転数も落ちるのだ。これがマニュアルシフトの車ならばシフトダウンしてエンジンの回転数をキープすることができる。同じようにパドルを使ってシフトダウンしてエンジン回転数をキープしようとしてもドライブモードの場合は自動でシフトアップしてエンジンの回転を落としてしまうのだ。

• これは私のようにタコ・メーターを目安に運転していると困ってしまうのだ。MAZDA 2の燃費の良い回転数は分からないが、今乗っている初代フィットの場合は2,000回転強ぐらいが燃費の良いレンジなので、2,000回転ぐらいをキープする感じで7SPEEDモードで走るのだが、MAZDA 2では1,000回転ぐらいに下がってしまう。最近の車はエンジンのトルク特性のグラフを公開していないのでよくわからないが、いくら何でも最大トルクが1,000回転ってことはないだろう。とすると街乗りでもマニュアルモードで走るしかないが、そんなことはしたくない。うーん困った。これはMAZDA 2がトルクコンバーター式オートマチックだからなのかもしれない。CVTならば直ぐにエンジンの回転が落ちないのかとも思ってしまう。

• また、アイドリングストップを使うと極端に発進のレスポンスが落ちる。これでは交差点の信号待ちで一番前に停車すると後続車に怒られそうだ。オフにすればスッと発進できるのだがどういう制御なのだろう。あまり良くない。また、スポーツモードがあるのだがちょっと極端な感じがする。私が乗っている初代フィットのスポーツモードに比べてエンジンが回りすぎる感じがする。軽く2,500回転ぐらい回ってちょっとうるさいのだ。このあたりの制御が洗練されていない感じがする。こういうことが気になるならマニュアル車を買えということだろうか。

• 加えて、電動パーキングブレーキではないのが痛い。ダイハツのロッキーが2年目のマイナーチェンジで最上位グレードに電動パーキングブレーキを乗せて来たことと比べると寂しく感じてしまう。また、欧州のCAFE規制に対応するためにトヨタからヤリス ハイブリッドのOEM供給を受けてMAZDA 2として販売しているなど厳しい感じがする。新型のSKYACTIV Xという高圧縮エンジンが思ったほど燃費向上に貢献しなかったのは非常に痛い。高いコストをかけて開発したエンジンを搭載しても燃費が向上しないとなると意味がないからだ。

• そして、やはりモデル末期であることが痛い。いろいろな部分が古いのだ。先に書いたとおりメーター部もそうだが、未だにCD/DVDスロットが付いていたりするからだ。メーター部分ぐらい刷新すれば良いのにと思うのだが、販売台数的に予算をかけられないのではと勘繰ってしまう。

• これはフルモデルチェンジさえしてくれれば解決するのか、ちょっと不安である。マツダは大型SUVにシフトしている感じでコンパクトカーには手が回っていないのではないだろうか。それ故なのか、MAZDA 2のモデルチェンジの情報が見当たらない。極端なものではモデル廃止というものや完全EV化というものがあるが、ガセだろう。そんな情報しかネットに転がっていない困った状況である。

• そうこうしているうちにMAZDA 2がマイナーチェンジした。しかし、見た目の変更だけらしく、中身は変わらないようだ。電動パーキングブレーキも付かない。うーん。さすがにこれでライバル車と戦うのは厳しいだろう。

Next 初代フィット 1.5T(その5) - スズキ スイフトスポーツ、スイフト -

• 5番目に試乗したのはスズキのスイフトスポーツとスイフトだ。簡単にスペックをおさらいしてみよう。

  メーカー

  モデル

  グレード

  排気量

  最高 出力 (PS)

  サイズ(mm) 全長 全幅 全高

  社内(mm) 長さ 幅 高さ

  重量(kg)

  最小 回転 半径 (m)

  燃費(WLTC)

  セミ・オートマ機構

  パーキング ブレーキ

  車両価格(円)

  備考

  判定

  スズキ

  スイフト

  RS

  1.2L

  91

  3,855 1,695 1,500

  1,910 1,425 1,225

  900

  4.8

  20.0km/L

  パドルシフト

  サイド

  1,797,400

  △

  スイフト スポーツ

  -

  1.4L ターボ

  140

  3,890 1,735 1,500

  1,910 1,425 1,225

  990

  5.1

  16.6km/L

  2,099,900

  プレミアム ガソリン

  △

• 乗り込んだら良い感じだ。昔ながらのアナログ2眼メーターは素晴らしい。私はデジタルメーターが好きではないのだ。そして、シートポジションもすっきり決まるし、ドアミラーも大きく後方視界も十分だ。ちょっと電動のミラーの調整が独特だが気にする必要はない。一度調整すればほとんど触ることがないからだ。と言うか、初代フィットと違うだけでこちらが主流かもしれない。ただ、乗り味については期待が大きかった分、インパクトは薄かった。最初に乗ったのがスイフトスポーツだったのだが、それほどスポーティーに感じなかった。CVTではなくトルクコンバーターのオートマチックらしいが私にはCVTとの違いがわからなかった。そもそも私はトルコン式のATに乗ったことがないのだが、ギクシャクとシフトするわけでもなかったからだ。エンジンも1.4Lのターボなのだが、ターボラグも感じない。私が鈍いのだろうが、昔々のターボエンジンとは全く違うのだろう。

• ただ、試乗時間が短かったことと街乗りだったこともあって、スポーティーという感じがしなかった。逆に言えば街乗りに普通に使える車ではあるのだが「普通」なのだ。ステアリングのキレも普通でクイックな感じがしなかった。もう少し若い人向けなのかもしれない。

• 両方ともパドルシフトがついており、制御は同じようだ。感じとしてはN-ONEと同じだった。シフトレバーのD(ドライブ)レンジでもM(マニュアル)レンジでもパドルシフトのレバーは機能する。Dレンジで表示が一瞬M4とか表示されるがすぐにDという表示に戻るのも同じ、Mレンジでは手動でシフトアップ/ダウンしなければならないのも、Dレンジでは自動でシフトアップ/ダウンするのも同じだ。

• 唯一違うのはN-ONEが街乗りでも7速に簡単に入ってしまうのに対し、スイフトは街乗りだと4速ぐらいまでしか上がらないということだ。それだけ余裕があるということだろう。まあ、軽自動車と比べる車ではないのだが、もう少しスピードを出して試乗してみたかった。この試乗というのは重要なのだが、ほとんどの販売店は試乗コースを決めていて長く走れない。私が回った中ではトヨタとホンダだけが長く乗せてくれた。こういうのは営業担当者の裁量かもしれないが、ポイントが高い。販売店は商談よりも試乗に時間をかけた方が良いと思う。試乗中は商談の時間でもあるわけだし。

• スイフトもスイフトスポーツも期待が高すぎたためか普通のコンパクトカーに思えた。問題はサイドブレーキだ。電動パーキングブレーキがないのがマイナスポイントだ。また、後席を畳んだ際の荷室との段差が大き過ぎる。もう少し上手い処理ができなかったのかと思う。やはり、モデル末期なのが痛い。ネットでは次期モデルのテスト車両の写真が出回っているが、それはマイルドハイブリッドシステム搭載車だという噂である。スズキはマイルドハイブリッド化に活路を見出しているようだが、先に書いたとおり燃費への貢献は微々たるものでその場しのぎでしかない。とはいうものの、現状のスイフトの燃費は20.0km/L、スイフトスポーツが16.6km/Lであり、日本のCAFE規制の平均燃費である2030年モデルで25.4km/Lという値に遠く及ばない。その場しのぎであっても仕方ないところなのだろう。

• ちなみに、スイフトスポーツはプレミアムガソリン対応なのだが、販売店が言うにはリッター11円の差であれば満タンで500円も違わない。価格差以上の満足が得られると言うことのようだ。ただ、今後もガソリン価格は上昇し続けるだろう。ウクライナ戦争の動向もそうだが、先に書いた40年経過したガソリンスタンドのタンクの改修義務問題が大きい。その費用負担の大きさに廃業するスタンドも多いと聞く。都市部ならいざ知らず、郊外なら改修費用がペイしないかもしれないからだ。当然ではあるが、改修費用はガソリン単価に転嫁されるのだ。少しでも安いレギュラーガソリン対応であることに越したことはない。

• あくまでも個人的な感想だが、スイフトのデザインが好みではない。ずんぐりむっくりしていてスポーティーに見えないのだ。後部ドアのハンドルの仕様も好みではない。後席のドアがないように見えるように意図したものだろうが扱いづらいのだ。のっぺりしたリアビューもいただけない。この見た目が好みではないというのは結構致命的である。私にとって車は単なる移動手段ではなく趣味の道具であるからだ。まあ、フォローするわけではないが、かつてのホンダ車もリアのデザインはあんまり良くなかった気がする。今よりはマシだったが、マイナーチェンジで修正されるのはリアのデザインだったように思える。

Next 初代フィット 1.5T(その3) - ホンダ 4代目フィットRS e:HEV、HOME e:HEV -

• 3番目に試乗したのはホンダの4代目フィットRS e:HEVとHOME e:HEVだった。簡単にスペックをおさらいしてみよう。

  メーカー

  モデル

  グレード

  排気量

  最高 出力 (PS)

  サイズ(mm) 全長 全幅 全高

  社内(mm) 長さ 幅 高さ

  重量(kg)

  最小 回転 半径 (m)

  燃費(WLTC)

  セミ・オートマ機構

  パーキング ブレーキ

  車両価格(円)

  備考

  判定

  ホンダ

  フィット

  RS

  1.5L

  118

  3,995 1,695 1,540

  1,955 1,445 1,260

  1,110

  5.2

  17.9km/L

  ×

  電動

  1,959,100

  ×

  HOME

  1,090

  4.9

  18.5km/L

  1,826,000

• 私の条件は満たさないものの、私は長年のホンダ党でいまだに未練があるからだ。ただ、正直なところ、私のレベルでは両車の違いがわからない(苦笑)。ホンダの営業も「デザイン面の違いが大きい」と説明するありさまで、エンジンも同じ、シフトも同じCVTなのだから違わないのも仕方はない。私は4代目フイットのデザインは嫌いではない。しかし、デジタル・デジタルしたメーターが全く好みではない。丸が全くない。アナログ・メーターに慣れた私にはデジタルのタコ・メーターはしっくり来ないのだ。

• 両車のサスペンションは違うはずなのだが差がわからない。ただ以前に乗ったマイナーチェンジ前のHOME e:HEVのふわふわ感とは違って落ち着いたふわふわ感だった。これはふわふわ感に私が慣れてきただけなのかもしれない。ただ、e:HEVのEV走行は面白くない。バッテリーが十分に充電されていればエンジンはかからないらしく、アクセルを踏み込んでスピードが60km/hぐらいを超えるとようやくエンジンが始動する感じだ。ただ、これはメーターにそう表示されるだけで最初からエンジンがアイドリングしているのか、いきなりエンジンがかかるのかはよくわからない。それぐらいエンジンの存在感がない。こういうのは違和感しかない。音や振動って大切なのだと痛感する。

• RS e:HEVにはドライブモードスイッチがあるが、エンジン音がしないので私にはNORMAL、SPORT、ECONの走りの違いがわからなかった。さて、販売店に置いてあるカタログは2022.10版で未だにフィット RSが乗っていない。ガソリンエンジン車の試乗車もない。売る気がないとしか思えない。フィットRS e:HEVについて自動車評論家はベタ褒めしているのだが、試乗会に招待されて乗せてもらっているのだから当然ではある。そんな評価を信じると思っているのだろうか。舐められたものだ。

• 一応、フォローしておくと、車内空間はピカイチだ。後席シートを畳むとダイブダウンしてフラットになるし、チルトアップすると高い空間ができる。センタータンクレイアウトによる空間的優位は他車を全く寄せ付けないものだ。ただ、初代フィットはヘッドレストを外せば前席まで含めてフルフラットになるが、4代目はそこまではできない。どうしてやめてしまったのか？ よくわからない。また、Aピラーを後退させたことによる前方視界の広がりは正直なところそれほど感じなかった。ただ、人によってはメリットに感じるかもしれない。

• 4番目に試乗したのはホンダのN-ONE Premium Tourerだった。簡単にスペックをおさらいしてみよう。

  メーカー

  モデル

  グレード

  排気量

  最高 出力 (PS)

  サイズ(mm) 全長 全幅 全高

  社内(mm) 長さ 幅 高さ

  重量(kg)

  最小 回転 半径 (m)

  燃費(WLTC)

  セミ・オートマ機構

  パーキング ブレーキ

  車両価格(円)

  備考

  判定

  ホンダ

  N-ONE

  RS

  660cc

  64

  3,395 1,475 1,545

  2,050 1,300 1,195

  860

  4.8

  21.8km/L

  パドルシフト

  電動

  1,999,800

  軽自動車

  ×

  Premium Tourer

  1,889,800

• なぜ、試乗したかというと、以前にN-ONE RSの試乗をしたことがあり、悪くない感触だったからだ。軽自動車ではあるものの、N-ONE Premium TourerやRSは私の条件(ガソリンエンジン車で、コンパクトサイズで、セミ・オートマチック機構を持っていて、ブレーキホールド機能付き電動パーキングブレーキを搭載している)を満たしているからだ。ダイハツのロッキー、トヨタのヤリスクロスのシーケンシャルシフトが変な動きをすることがわかり、ホンダのパドルシフトの動きを確認したくなったのだ。確認したところ、シフトレバーのD(ドライブ)レンジでもS(ドライブS)レンジでもパドルシフトのレバーは機能するのだ。

• Dレンジではエンジンの回転が上がると自動的にシフトアップし、回転が下がると自動的にシフトダウンするのだ。これは私の初代フィットの7SPEEDモードと同じ動きで安心した。ただ、ディスプレイにはパドルシフトを操作したときに一瞬だけ「D 5」とか表示されるものの、その一瞬以外は「D」としか表示されない。対してSレンジではダイハツのロッキー、トヨタのヤリスクロスのシーケンシャルシフトと同じ動きだった。自動でシフトダウンするが、自動でシフトアップはしない。取扱説明書には「エンジンを保護するために、自動的にシフトアップやシフトダウンすることがあります。」と書かれているところも似ている。要はDレンジでは「なんちゃってマニュアルシフト」でSレンジでは「ガチのマニュアルシフト」ということだろう。街乗りならDレンジでシフトダウンして走り、高速道路ではSレンジでガチでシフトチェンジしながら乗れるということだろう。

• このN-ONEのスペックのフィットがあったら一発で決まりだったのだが、N-ONEは残念ながら軽自動車なのだ。それでいてフィットと値段が変わらないとは何という皮肉だろう。街乗りで試乗した感じでは60km/h程度で最上段の7速に入っていた。まあ、CVTなので実際の7速ではないのだが、パワーの余裕のなさは感じてしまう。実用上は問題ないエンジン・パワーであったとしても余裕がないのは痛い。高速道路でも問題なく100km/hぐらいは軽く出せるそうだがトップギアで回転数を上げてスピードを上げているのだろう。街乗りなら4速から5速で、高速道路で初めて6速、7速に上げるというのが私の感覚ではある。

• まあ、他の候補の車が全てダメだったときの「抑え」にはなると思う。センタータンクレイアウトによってフィットと同じようなシートアレンジが可能で車内はそれほど小さく感じないし、走った感じは楽しい。車幅が狭く、背が高いため交差点をクイックに曲がる感じではなく、少しふらつく感じもあるがSUVと同じく許容範囲だと思う。

Next 初代フィット 1.5T(その2) - トヨタ ヤリスクロス -

• 次に試乗したのはトヨタのヤリスクロスだ。簡単にスペックをおさらいしてみよう。

  メーカー

  モデル

  グレード

  エンジン (排気量)

  サイズ(mm) 全長 全幅 全高

  社内(mm) 長さ 幅 高さ

  総重量(kg)

  最小 回転 半径 (m)

  燃費(WLTC)

  最高 出力 (PS)

  セミ・オートマチック

  パーキング ブレーキ

  車両価格(円)

  備考

  判定

  トヨタ

  ヤリスクロス (SUV)

  GR SPORT

  1.5L

  4,185 1,765 1,580

  1,845 1,430 1,205

  1,405

  5.3

  17.6km/L

  120

  パドルシフト

  電動

  2,367,000

  △

  Z

  4,180 1,765 1,590

  1,415

  18.8km/L

  シーケンシャルシフト

  2,232,000

  アナログメーター

  △

• ヤリスクロスはロッキーよりひとまわり大きい3ナンバーのSUVであるものの車高はロッキーより低い。試乗したのは最上級のZグレードである。試乗のポイントはシーケンシャルシフトの動作だ。ここが問題なく私の希望どおりの動きをすれば他の部分の確認に進めるが、ダメなら総合力でロッキーより劣るということになる。ヤリスクロスはロッキーより大きいし、燃費も悪い、価格も高いからだ。しかし、ロッキーの不満な点であるシーケンシャルシフトの動作が問題なければ逆転の可能性がある。

• 結論から書くと、シーケンシャルシフトについてヤリスクロスのオンライン取扱説明書には「Mポジションで走行しているときでも、エンジン回転数が上がりすぎそうなとき、または下がりすぎそうなときは、自動的に変速段が切りかわる場合があります。」と書かれているのだが、実際には自動でシフトダウンするがシフトアップしない感じだ。もう少し具体的に書くと、シーケンシャルシフトになるM(マニュアル)ポジションでロー(1速)で発進するとそのままエンジンの回転数が上がっていって時速50kmぐらいまで走れてしまう。そこでようやくセカンド(2速)に自動でシフトアップするが、それ以上に自動でシフトアップしないようだ。まあ、一般道での試乗なのでそれ以上のスピードは簡単には出せない。ただ、高速道路で時速100kmを超えてからサード(3速)に自動シフトアップされても「遅いよ！」と突っ込んでしまいそうだ。要はエンジンとCVTの許容度が大きいのだろう。だからブンブンとエンジンを回しても壊れたりはしないのだろうが、気持ちが悪いのだ。実際に時速何キロまでが限界でシフトアップするのかというのがわからないのでは怖くて使えない。まあ、「自動的に変速段が切りかわる場合があります」という書き方から見て、勝手に切りかわってごめんなさい感が出ている気がする。

• とはいうものの、せっかく試乗したので感想を書いてみよう。乗り込んだ際にロッキーと比べて少し高い着座位置と感じたが、すぐに慣れた。シートは電動でアジャストするが、一度決めたらシート位置なんて変えないからそんな機能は要らない。複数のドライバーが乗る場合には便利な機能だし、オプションで2人分の設定されたシートポジションに自動的に設定する機能も付くらしい。ステアリングはチルトもテレスコピックもある。確かにこの車の場合、私には両方必要だった。位置によってステアリングがメーターにかぶってよく見えなかったからだ。ただ、安全支援システムのカメラは意外に小さく、というか、フロントウィンドウのサイズに対してそれほど大きくなくて気にならなかった。秀逸なのはメーターだ。中央に液晶表示のアナログのスピードメータがあり、左に半月状のアナログ・タコメーター、右にアナログの燃料計などが配置されているのは美しく機能的だ。ただ、このメーターは最上位のZグレードにしか装備されていないのが残念だ。

• 走り出すとふわふわ感に「うーん」と思ってしまう。これが今時の高級感なのかとは思うが、路面の感じがダイレクトに感じられず、曲がるとフワッと外側に振られる。これは気持ち悪い。そこそこ試乗していると慣れてはくるが、ちょっとふわふわ過ぎる気がする。ロッキーに比べると交差点を曲がる際のクイック感は少ない。また、ドライブモードスイッチがあるのでノーマルモード、パワーモード、エコドライブモードがあるのだが、ノーマルとパワーの違いはよくわからなかった。エンジンパワーは問題ないが、インテリアはロッキーよりチープな感じだ。運転席にアームレストがない。ロッキーより車格は上だと思うのだが、リアシートのカップホルダーも安っぽい。高い車なのに高級感を感じないのはマイナスだ。とはいえ、しょせんはヤリスなのだから高望みかもしれない。

Next 初代フィット 1.5T(その1) - ダイハツ ロッキー Premium G -

• さて、ここからは試乗編だ。コンパクトカーだけでは候補が少ないのでコンパクトSUVも加えて試乗してみた。事前にネットでカタログや口コミ、動画を見て、私なりに評価の高い車から順に試乗している。

• まずはダイハツのロッキー Premium Gだ。簡単にスペックをおさらいしてみよう。黄色く塗った部分は私の要望を満たしていて、表の中で、より優れた点である。サイズはSUVとはいえコンパクトであるし、車重は1トンを切っている。シーケンシャルシフトがついているし、ブレーキホールド機能付きの電動パーキングブレーキが搭載されているので第1候補である。

  メーカー

  モデル

  グレード

  排気量

  最高 出力 (PS)

  サイズ(mm) 全長 全幅 全高

  社内(mm) 長さ 幅 高さ

  重量(kg)

  最小 回転 半径 (m)

  燃費(WLTC)

  セミ・オートマ機構

  パーキング ブレーキ

  車両価格(円)

  備考

  判定

  ダイハツ

  ロッキー (SUV)

  Premium G

  1.2L

  87

  3,995 1,695 1,620

  1,955 1,420 1,250

  980

  5.0

  20.7km/L

  シーケンシャル シフト

  電動

  2,068,000

  ◎

  X

  970

  4.9

  サイド

  1,820,000

  △

  L

  CVT

  サイド

  1,677,000

  アナログメーター

  △

• ロッキーはコンパクトSUVなので車高が高い。そのため乗り込みづらいかと思ったが問題なかった。乗った感じは悪くない。室内は広く、荷室も広い。ネットにはステアリングにチルト機構はあるがテレスコピック機構がないと書かれていたが、私の場合はドライビング・ポジションに問題はなかった。よく考えれば私の今乗っている初代フィットもチルト機構だけだった。同じくネットの情報ではアクセルペダルの位置が左に寄っているため右足の収まりが悪い、というものがあったがそれも問題はなかった。確かにもう少しアクセルペダルが右にあった方が自然だとは思うが、サイズに限りがある小型車の場合は仕方ない。致命的でなければ慣れるだろう。メーターは液晶ディスプレイで4パターンから選べるようになっているがデザインが異なるだけで、タコメーターがメインになっているのには好感が持てる。それより気になったのはフロント・ウィンドウ中央上部の安全支援システム用のカメラだ。結構大きなもので最初は驚き、前方視界の妨げになると思ったが、実際にはすぐに慣れた。乗り心地も問題なくフラフラもしない。小回りが効いてクイックに曲がることができる。このクイック感には驚いた。そして、エンジンパワーも問題ない。これなら決まりだと思ったのだが、ちょっと問題に気づいた。

• シーケンシャルシフトの動きがおかしいのだ。今乗っているホンダの初代フィットの7SPEEDモードの場合、自分でシフトアップ/ダウンできるのは当然なのだが、CVTに負荷がかかると自動でシフトアップ/ダウンするのだ。つまり、低速ギアでスピードを出すと自動でシフトアップするし、高速ギアでブレーキを踏むと自動でシフトダウンするわけだ。しかし、ロッキーのシーケンシャルシフトはブレーキを踏むと自動でシフトダウンするが、アクセルを踏んでも自動でシフトアップしないのだ。これは困る、というか、気持ちが悪い。低速ギアでアクセルを踏むとシフトアップせずにエンジンの回転数が急に上がる。燃費が悪くなるのは当然だがエンジンやCVTが故障しそうだ。コンピュータ制御が進んでいるのに20年前の車で出来ることがなぜ出来ないのか理解に苦しむ。おそらくは出来ないのではなく、何らかの設計思想によって「やらない」のだろう。解せない。

• 私の要望(ガソリンエンジン車、コンパクトクラス、セミ・オートマチック、ブレーキホールド機能付き電動パーキングブレーキ)をコンパクトを除いてほぼ満たしてくれているだけに残念だ。何のためのシーケンシャルシフトなのだろう。マニュアルシフトの代わりなのだろうか。確かにそうであるならば勝手に変速されたら困るし怖い。そう考えると合点がいく。しかし、このような仕様であればオートマ免許でうまく扱えるものなのか疑問だ。こういう設計思想は気に入らない。だから、セミ・オートマチック機構は使われなくなり搭載率が落ちてきているのかもしれない。ガンガンとシフトアップ/ダウンして走りたい人はマニュアルシフトを選ぶのではないだろうか。しょせんセミ・オートマチックは「なんちゃってマニュアル」で、ゆる〜く運転できれば良いのではと思うのだが、そういうドライバーは少ないのだろうか。

• 善意に解釈すると、普通の街乗りならばシーケンシャルシフトのシフトダウンしか使わない。エンジンブレーキはもちろんだが、前の車が遅い場合にシフトダウンしてエンジンの回転が落ちることを防ぐこともできる。しかし、高速道路やワインディングロードを走らない限り、シーケンシャルシフトでシフトアップすることはほとんどないだろう。そういう意味では自動シフトダウンだけで実用上は良いかもしれない。シフトダウンした後にドライブモードの「D」に戻せばオートマチックにシフトアップするからだ。ただ、そのまま坂道走行の「S」にしておくとアクセルを踏み込んだ際にエンジンが高回転してしまうというわけだ。

• 余談だが、取扱説明書によると「S」が「スポーツ」ではなく「坂道走行」というのは設計思想が出ているようで面白い。上り坂、下り坂で使うことを想定しているのだろうか。

• また、後日にスズキのスイフトに試乗した際にアナログメーターの良さを再認識した。初代フィットもアナログメーターだし、腕時計もそうだがチラッと見ただけで情報が読み取れるメリットは大きいのだ。今のご時世、ほとんどがデジタルメーターになってしまっているが、あわよくばアナログメーターはないのかと要件が1つ増えてしまった。ロッキーにもエントリーグレードのLにはアナログメーターが装着されているのだが、シーケンシャルシフトが付いていない。優先順位はシーケンシャルシフトの方が上なのでロッキーの選択肢はPremium Gとなる。