フォーサーズ雑記帳(バックナンバー)
このページには フォーサーズやMacintosh についての個人的メモを掲載しています。不定期に更新します。
2022/11/21
フィット RS(その6)
- 11月10日にフィット RSのガソリンモデルが公開された。ただ、プレスリリースのかけらもなく、こっそりとウェブサイトで公開されただけだった。スペックを見れば「ダメだ、こりゃ」というもので、こんなものでRS (Road Sailing)を名乗るのか、というシロモノだった。マニュアル・トランスミッションが搭載されないのは仕方ないにせよ、セミ・オートマチック機構であるパドルシフトがないのは致命的だ。そして、e:HEVのRSにあるドライブモードスイッチがないためSPORTモードがない。VGR(可変ステアリングギアレシオ)も採用されていない。専用タイヤでもなくサスペンションの強化も弱いようだ。ゆえに、e:HEVのRSと比べるといろいろ見劣りするスペックである。
- そもそも私は現在の日本車にはコンパクトで、ガソリンエンジン車で、セミオートマチック機構がついている、という要件を満たす車がほとんどないと思っていた。しかし、そうではなく、それはホンダに限ったことだったようだ。つまり、ホンダだけがカーボンニュートラルを先取りしていたのだ。まあ、ハイブリッドカーはカーボンニュートラルの対象外であり無意味なので単なる私のイヤミである(笑)。そして、他のメーカーにはまだ私の条件を満たす車がラインアップされていたのだ。各社のウェブサイトで真剣に探してみた結果、新しい発見がいろいろあった。ようやく希望が見えてきたようだ。ただ、1年後はわからない。カーボンニュートラルへの対応が加速する状況なので、今がガソリンエンジン車を購入できる最後のチャンスなのかもしれない。この点については別途書くことにしよう。
- まず、トヨタであるが、ラインアップは豊富なのだが、私の要望を満たしてくれるのは基本的にヤリスになってしまうようだ。ヤリスにはSUVタイプのヤリスクロスもある。ヤリスクロスはホンダのフィット CROSSTARみたいなものと思っていたが、ウェブページも別になっており、車種からして別物らしい。まあ、統計データ上はヤリスに括られるのでヤリスクロスが何台売れているのかはわからないのだが、こちらはノーチェックだった。他にはライズがあるが、これはダイハツのロッキーのOEMモデルなので後述する。ダイハツは今やトヨタの完全子会社になっているのだ。
- さて、ヤリスでパドルシフトがついているのはGRヤリスだけだ。ただ、これはレーシング・モデルで、ホンダでいえばシビック TYPE Rみたいな位置付けのモデルだ。一応、一般ドライバー向けのRS(Runabout Sports)というグレードがあるのだが、結構高い。ヤリスクロスには何とシーケンシャルシフトマチックが付いていることに今ごろ気づいた。さらに、マイナーチェンジして追加された新グレードのGR SPORTにはパドルシフトが付いているのだ。まあ、シーケンシャルシフトでも十分なのだが、ヤリスクロスという選択肢に気づいたことは大きい。ただ、GRヤリスもヤリスクロスもヤリスの兄弟車で同じプラットフォームを使っているらしいが、サイズが少しだけ大きくて3ナンバーである。昔とは違い、自動車税はサイズではなくエンジンの排気量で決まるので3ナンバーというのはネガティブな要素ではないだろう。
- 次にマツダであるが、コンパクトカーにはMAZDA 2がある。かつてはデミオと呼ばれたモデルだが、ヤリスクロス同様にシフトレバーでギアのアップダウンが可能で、モデルによってはステアリングスイッチと呼ばれるパドルシフト機構がついている。価格も安いのだがモデル末期なのが残念である。最近は年次改良といって毎年小規模なマイナーチェンジが行われるようになっているのだが、基本設計が古いため電動パーキングブレーキではなくサイドブレーキだったりするのだ。それも当然で、MAZDA 2は2014年にデミオとしてリリースされたものなのだ。そのデミオが2019年にマイナーチェンジした際にMAZDA 2に改名されたらしい。この基本設計が10年近く前というのは大きなマイナスポイントだ。それなのに次のフルモデルチェンジが全く見えない。あくまでネットの噂であるが、次のモデルはトヨタのヤリスのOEMになるという話すらある。どうなるにせよガソリンエンジン車がリリースされる可能性はかなり低いと思われる。
- 3番目にスズキであるが、スイフトとスイフトスポーツがある。調べてみてわかったが、スイフトスポーツだけでなく、スイフトのRS(Road Sports)グレードにもパドルシフトがある。こちらもモデル末期ではあるが、リリースは2017年なので、基本設計はMAZDA 2ほど古くはない。まあ、電動パーキングブレーキではなくてサイドブレーキではあるのは古い設計の証だろう。ただ、次のフルモデルチェンジではガソリンエンジン車はリリースされず、マイルドハイブリッドなどの電動化が進むという噂なので買うなら今しかないというところだ。
- 4番目にダイハツであるが、ロッキーがある。この車はダイハツから他社にOEMされてトヨタではライズ、スバルではREXという名前で販売されている。この車は2019年のリリースなので設計は新しい。2021年のマイナーチェンジでハイブリッドモデルが追加されたのだが、同時に最上位グレードのPremium Gには電動パーキングブレーキが搭載されたのだ。燃費も20.7km/Lと良くて、エンジンパワーは87PSと、ちょっと足りない気もするが、車重も1トンを切っており、軽自動車の64PSに比べれば十分だろう。正直なところ、ダイハツは全くノーマークだった。ロッキーのテレビコマーシャルをよく見た記憶はあるのだがSUVは眼中になかったからだろうか。
- 念のために書き加えると、日産と三菱は対象外なので調べていない。度重なる不正、改まらない企業姿勢、そして、経営立て直しの立役者であったカルロス・ゴーン氏の追放劇のあくどさ、などが目に余ったからだ。
- さて、これらをまとめてみた。ホンダ党の私が作った表なので間違いや勘違いがあるかもしれない。また、微妙に同じ尺度で比較できていない項目もある。たとえば、車両重量は最低重量と最大重量が混在している。ご容赦いただきたい。参考までにホンダ車も加えてある。
メーカー |
モデル |
グレード |
排気量 |
最高 出力 (PS) |
サイズ(mm) 全長 全幅 全高 |
社内(mm) 長さ 幅 高さ |
重量(kg) |
最小 回転 半径 (m) |
燃費(WLTC) |
セミ・オートマ機構 |
パーキング ブレーキ |
車両価格(円) |
備考 |
判定 |
トヨタ |
GRヤリス |
RS |
1.5L |
120 |
3,995 1,805 1,455 |
1,880 1,430 1,175 |
1,130 |
5.2 |
18.2km/L |
パドルシフト |
電動 |
2,650,000 |
3ナンバー 3ドア 4人乗り |
○ |
ヤリスクロス |
GR SPORT |
4,185 1,765 1,580 |
1,845 1,430 1,205 |
1,450 |
5.3 |
17.6km/L |
パドルシフト |
電動 |
2,367,000 |
3ナンバー SUV |
○ |
Z |
4,180 1,765 1,590 |
1,415 |
18.8km/L |
シーケンシャルシフト |
2,232,000 |
◎ |
マツダ |
MAZDA 2 |
15S |
1.5L |
110 |
4,065 1,695 1,525 |
1,805 1,445 1,210 |
1,090 |
4.7 |
20.3km/L |
シフトレバー ステアリングスイッチ |
サイド |
1,748,500 |
モデル末期 |
△ |
スズキ |
スイフト |
RS |
1.2L |
91 |
3,855 1,695 1,500 |
1,910 1,425 1,225 |
900 |
4.8 |
20.0km/L |
パドルシフト |
サイド |
1,797,400 |
モデル末期 |
△ |
スイフト スポーツ |
- |
1.4L ターボ |
140 |
3,890 1,735 1,500 |
1,910 1,425 1,225 |
990 |
5.1 |
16.6km/L |
パドルシフト |
サイド |
2,099,900 |
モデル末期 |
△ |
ダイハツ |
ロッキー |
Premium G |
1.2L |
87 |
3,995 1,695 1,620 |
1,955 1,420 1,250 |
980 |
5.0 |
20.7km/L |
シーケンシャルシフト |
電動 |
2,068,000 |
SUV |
◎ |
X |
4.9 |
サイド |
1,820,000 |
SUV |
△ |
ホンダ |
フィット |
RS |
1.5L |
118 |
3,995 1,695 1,540 |
1,955 1,445 1,260 |
1,110 |
5.2 |
17.9km/L |
× |
電動 |
1,959,100 |
- |
× |
HOME |
1,090 |
4.9 |
18.5km/L |
1,826,000 |
ホンダ |
N-ONE |
RS |
660cc |
64 |
3,395 1,475 1,545 |
2,050 1,300 1,195 |
860 |
4.8 |
21.8km/L |
パドルシフト |
電動 |
1,999,800 |
軽自動車 |
× |
Premium Tourer |
1,889,800 |
- この表を見てみると、各車一長一短でベストな車はない。エンジン出力では1.4Lターボのスイフト スポーツが一番だが、140PSまでのパワーは要らないだろう。燃費ではロッキーの20.7km/Lが一番で、最小回転半径ではMAZDA 2の4.7mが一番である。価格ではMAZDA 2が一番安いものの同条件の比較ではなく、オプションの有無で変わってくる。しかし、こうして冷静に見てみるとフィットはあまり良い評価ができないことになる。表の数値には表れていないが、センタータンク・レイアウトによる室内の広さや運転時の視界の良さ以外に特長が見出せないのだ。まあ、ホンダに言わせればその快適さこそが重要ということなのだろうが、私の求めるものとは異なる。余談ではあるが、フィットよりもN-ONEの方がよっぽど魅力的だ。しかし、軽自動車という制約はいかんともし難い。そして、価格がフィットより高いというのがなんとも腹立たしい。どうして、N-ONEのスペックのフィットが作れないのか。企画担当者の頭の中を覗いて見たいものだ。
- さて、ここにきてブレーキホールド付きの電動パーキングブレーキが便利ということに気づいて条件に追加することにした。交差点などで停止すれば自動的にパーキングブレーキがかかり、信号が青になってアクセルを踏むと自動的にパーキングブレーキが解除されるのは便利だからだ。しかし、モデル末期とはいえ、スイフトとMAZDA 2はなぜ電動パーキングブレーキを搭載しないのだろう。ダイハツのロッキーは2019年のリリース時にはサイドブレーキだったはずだが、2021年のマイナーチェンジで電動パーキングブレーキに換装している。やればできるはずだ。商品力もアップするのにやらないのは解せない。
- 20年も経つと車のテクノロジーも大きく進化する。キーを持っているだけでドアロックは外れるし、エンジンスタートはボタンになっている。てんこ盛りの安全装備もある。カーナビが当たり前だと思っていたらスマホのナビを使うためのディスプレイオーディオなんてものもあるのだ。他にも知らない機能がたくさんありそうだ(笑)。
- さて、最終的に候補として◎がついたのはヤリスクロスのZとロッキーのPremium Gの2つになったわけだ。ここで問題なのはどちらもSUVであることだ。正直なところ、SUVがよくわからないのだ。私は小型車=コンパクトカーで検索していたのだが、SUVでも探さないといけないようだ。ただ、その前にSUVって何?というところから始めなければならないのだろう。
2022/11/06
フィット RS(その5)
- さて、私が欲しいのはガソリンエンジン車であれば良いというわけではない。しかし、私が求めるポイントを満たす車はほとんど見つからないのが実情である。まず、ガソリンエンジン車であること。そして、パドルシフト等のセミオートマチック機構を持っていること。扱いやすいコンパクトなサイズであること。この3点はマスト条件なのだが、これを満たしてくれる車がホンダには見つからない。やはり、私は異端なのだろう。
- そもそも、車は大きくなり過ぎている。私は日本人にはファミリーユースや趣味の車を除けば1〜1.5Lクラスのコンパクトカーで十分だと思っている。ホンダで唯一と言って良いスポーティーな車であるシビックは今や大型車になってしまった。かつてのアコードを軽く上回る大きさになってしまったのだ。少し、Wikipediaで調べてみた。
車名 |
全長 |
全幅 |
全高 |
重量 |
備考 |
初代シビック(3ドアハッチバック) |
3,545mm |
1,505mm |
1,325mm |
650kg |
1972年〜 |
初代アコード(3ドアハッチバック) |
4,125mm |
1,620mm |
1,340mm |
875kg |
1976年〜 |
初代フィット(ガソリン車) |
3,850mm |
1,675mm |
1,550mm |
1,110kg |
2001年〜 |
3代目シビック(3ドアハッチバック) |
3,810mm |
1,630mm |
1,340mm |
830kg |
グローバルに大ヒット |
初代CR-X |
3,675mm |
1,625mm |
1,290mm |
800kg |
3代目シビックがベース |
4代目フィット(ガソリン車) |
3,995mm |
1,695mm |
1,540mm |
1,100kg |
現行モデル |
10代目シビック(ガソリン車) |
4,550mm |
1,800mm |
1,415mm |
1,370kg |
現行モデル |
10代目アコード(ハイブリッド車) |
4,900mm |
1,860mm |
1,450mm |
1,560kg |
現行モデル |
2代目N-ONE RS(ガソリン車) |
3,395mm |
1,475mm |
1,545mm |
860kg |
現行モデル |
- こうしてみると今のフィットが昔のシビック、それも、グローバルに大ヒットした3代目のワンダーシビックより大きいことがわかる。付け加えると、室内空間だけなら昔のアコードより大きい気がする。結論から書くと、ホンダは日本向けの個人用自動車はフィット・クラスに特化して良いのではと思ってしまう。北米市場にはドライバーの体格的に大型の車が必要なのは当然で、中国市場には富裕層のための豪華な車が必要なのは仕方がない。しかし、いくら道路事情が良くなったからとはいえ、それらの車を日本に持ってきても貧乏な日本人には買うことができないのだ。若者の車離れが叫ばれているが、簡単な話で「高過ぎて買えない」だけなのだ。昔のホンダ車は若者に買える手頃なラインアップだった。そういう意味で高価になり過ぎたレジェンドやオデッセイ、NSX、CR-V、などが生産終了したのも当然だと思える。
- 今こそ貧乏な日本人向けにお手頃価格の車が必要だろう。だが、車が売れない現状で自動車メーカーは売上確保のために車の高付加価値化による価格アップに舵を切ってしまっている。安全性能にコストをかけるのは良いのだが、要らない機能が多過ぎる気がしてならない。その代表がハイブリッドシステムだろう。コストアップ分をガソリン代で回収するのは微妙だし、長期間乗れば乗るほど性能の落ちた重たいバッテリーを余分に積んで走っていることになるわけだ。必ずしもメリットがデメリットを上回っているようには思えないのだ。
- ホンダはお手頃価格の車=軽自動車と考えているようだ。ホンダの軽自動車は一昔前の低調が嘘のように充実しており、メインのN-BOX、そして、N-WGN、N-VAN、N-ONEの4タイプをラインアップしている。ただ、安全性能をてんこ盛りにしている分、価格も結構高い。N-BOXの場合、一番安いN-BOX Gで145万円、ターボ車のN-BOX Custom EX・ターボなら204万円である。これは車両本体価格なので、オプションをつけるともっと高くなる。ホンダはNシリーズが大ヒットしている現状に儲かって仕方ないと大満足だろう。軽自動車は薄利多売と言われるが、その根拠はなんなのか。ハイブリッドシステムも付いておらず、大量のリチウムイオン2次電池も積んでいないのだ。値引き合戦さえしなければ十分に利益が出ているはずだ。さて、生産台数が減っても車両価格が上がれば売上は減らないとホンダは考えているかもしれない。しかし、それで雇用が守れるのだろうか。生産台数が減れば製造に関わる社員数は少なくて済むではないか。やはり、数を造らねば、数を売らなければならないのだ。
- しかし、軽自動車は日本独自のガラパゴス規格だ。車両サイズに制約があり、エンジンパワーにも制約がある。少し身長の高い人なら足元が窮屈な感じだろうし、インパネシフトに手が届きづらいはずだ。4人しか乗れないし、とてもグローバルに戦える車ではない。そして、車両サイズの制約ゆえに車幅が狭い割に車高が高い。だから、高速道路などで高速走行時に強い横風をまともに受けたりすると安定性に危惧がある。結局のところ街乗り車、シティーコミューターでしかない。それならば、と、軽自動車規格のEVを発売したくなる気持ちもわからないではない。まあ、日産と三菱なので私の眼中にはないのだが、小さい車にどれだけのバッテリーが積めるのかと考えると無理を感じてしまう。EVが当たり前になって補助金がなくなれば誰も買わないだろう。
- つまり、グローバルに戦える1L〜1.5L程度のお手頃価格のガソリンエンジン車をリリースしなければ生き残れないのだ。ファミリー向けの車や趣味の車だけでは数が売れない。それは世界市場でも同じことなのだ。ハイブリッド車しかり、軽自動車しかり、ガラパゴス車では世界で戦えないのだ。失われた30年などと言われるとおり、日本経済はボロボロだ。世界で儲けないでどうする、ということなのだ。そして、お手頃サイズの車は世界で売れるはずだ。広大な大陸では大きな車でも問題ないと思うかもしれないが、世界の主要都市は思った以上にコンパクトなのだ。東京と比べられないほど小さい。つまり、コンパクトカーこそ似合うのだ。まあ、欧州は完全にEVにシフトしてしまっているし、中国もEV化するだろう。しかし、まだ時間がかかる。そして、私はそれ以外の地域ではアメリカも含めてガソリンエンジン車はまだまだ売れると思っている。グローバルでは未だにガソリンエンジン車が圧倒的に多数派なのだ。
2022/10/22
フィット RS(その4)
- ホンダのハイブリッドシステムはフィットの3代目と4代目で大きく変わっている。4代目フィットに搭載されているe:HEVについて調べてみた。
- e:HEVというハイブリッド・システムはホンダが「EV(電気自動車)に近いハイブリッド」と表現しているとおり、低速域ではEVのようにバッテリー駆動のモーターで走行する。そして、速度が上がってくるとハイブリッド、つまり、モーターとガソリンエンジンの両方で走行し、高速域ではガソリンエンジン走行となる。ただ、EVと異なるのはガソリンエンジンがずっと動いているということだ。そして、e:HEVはモーターを2つ持っていて1つは走行用、もう1つは発電用なのだ。つまり、ほとんどの場合にガソリンエンジンがシリーズ・ハイブリッド的に発電用モーターを回しているわけだ。そうすると、そもそもEV走行に変速機構があるのか?ということになる。変速機構がなければシフトチェンジそのものがないのだ。ここが、3代目フィットのハイブリッド・システムのi-DCDとの違いのようだ。i-DCDは複雑なDCT(Dual Clutch Transmission)というクラッチ・システムを持っており、7段の変速ができた。まあ、その複雑さゆえに3代目フィットはリコールを連発してしまったのだが。
- e:HEVが変速機構を持たないのであればスピードはどう調節するのか? 結局のところ、モーターの回転数だろう。つまり、EVと変わらないわけだ。CVTなら擬似的な変速も可能かもしれないが、モーターでは難しいだろう。エンジンの回転数を1,000回転からリニアではなく一気に2,000回転、そして、3,000回転に上げるようなもので負担が大きいからだ。そうすると、e:HEVではパドルシフトはあり得ないことになり「減速セレクター」というのもわかる気がする。ただ、高速域ではエンジンで走行するはずだから、変速ギアはあるのではと思ってしまうが、無いようだ。高速走行しかしないわけだから高速ギア固定という感じらしい。
- マニュアルシフトなら、ロー(1速)、セカンド(2速)、3速、4速、5速、とシフトアップするが、5速マニュアルだとそれ以上にはシフトアップできない。高速域のe:HEVはその5速だけを使うようなものらしい。そうすると、スピードを上げるためにはエンジンの回転数を上げるしかなくなる。まあ、実際、マニュアル車でもそうなのだからe:HEVでそうなっていても問題はないか。ただ、注意すべきはe:HEVはマニュアルシフトの4速までモーター走行しているようなものであるということなのだ。
- つまり、ホンダのe:HEVというハイブリッドシステムというのは街乗りだけを考えると既にEVになってしまっているというわけだ。ホンダは脱ガソリンエンジンを宣言しており、EV化を進めているのだから当然ではある。そして、e:HEVからガソリンエンジンを取り除けば簡単にEVになりそうではある。しかし、それは簡単ではない。シリーズ・ハイブリッド的なシステムからガソリンエンジンを取り除くということは発電機がなくなるわけで、それを補って余りあるバッテリーを積まなければならない。そのコストはべらぼうに高く、短時間の給油ではなくなり、充電に長い時間がかかるようになるのだ。
- しかし、ホンダの優れたエンジンが単なる発電機と化してしまっている現状は嘆かわしい。F1で培った技術を投入して開発していたはずなのだが、これではF1から撤退するのもうなづける。単なる発電機用のエンジンなど誰でも作れるからだ。そこにF1のノウハウなど必要ない。
- EVについて原点に戻って考えてみると、現状の日本のEVは不完全だ。Honda eの走行距離はJC08モードで274kmしかない。ガソリンエンジン車なら普通は満タンで400kmは走れるのだから全く足りない。日本ではガソリンタンクの容量は東京-大阪間(約550km)を高速道路を使って無給油で走れる想定で決められていると聞いたことがあるのだが、現状のEVは全くの力不足と思えてならない。残念ながら、日本のEVは未だに街乗り専用車、つまり、シティーコミューターでしかないだろう。
- 加えて、欧州や中国、アメリカの大陸と違って日本は平地が少なくアップダウンが多い。これはEVには非常に不利な条件である。そして、前回書いたとおり、インフラが追いついてないのだ。個人的にはEVが普及するためには自宅で充電できないと無理だろう。スマホだって、電動アシスト自転車だって自宅で充電できるから成り立つのだ。スマホを外の充電スタンドでしか充電できなかったら、地獄だろう。そんなことを考えると、EV用のモバイルバッテリーなんかがあれば売れるのかもしれないと妄想してしまう(苦笑)。まあ、EVを充電するのではなくバッテリーパック式にして交換するということを真面目に考えている会社もあるわけだから、あながち冗談ではないかもしれない。実際にスマホ用のレンタル・モバイルバッテリーというものがあるのだから。
- しかし、日本において自宅でEVを充電出来るようになるだろうか。当面は無理だろう。結局のところ駐車スペース1台毎に急速充電器が設置される未来が来るのはいつだろう。私の生きているうちは無理な気がする。真面目に考えれば、電池の技術に革新的なブレイクスルーが起きなければ無理なのだ。全固体電池がその希望の星ではある。電解液がないので安全性が高く、エネルギー密度を高く出来る。つまり、満充電での走行距離が増えるのだ。そして、電解液を介す必要がないので超急速充電が可能になる。さらに、電解液がないので劣化しづらく長寿命であることが期待されている。まさに夢の電池である。しかし、まだ課題が多く実用化には時間がかかりそうだ。そして、それ以前に充電するための電力を供給できるのかという根本的な問題がある。ウクライナ危機に端を発したエネルギー危機は解決の目処が全く立っていないからだ。そう考えてみると当面の間はEVの時代にはならないということだろう。
- 未来に向けた開発は必要だ。私はそれを否定はしない。しかし、現時点ではガソリンエンジンを捨てるべきではないと考えているだけなのだ。
2022/10/08
フィット RS(その3)
- 10月7日にフィットがマイナーチェンジしハイブリッドのe:HEV RSが発売されたのだが、何とRSのガソリンエンジン車は「11月10日に発表を予定している」と情報が全くない。全くもって焦らしてくれる。他のグレードのガソリンエンジン車は1.3Lから1.5LにアップデートされているのにRSだけが遅れているというのは何か理由があるのだろうか。まあ、気長に待つしかない。
- ということで、カーボン・ニュートラルについてもう少し書いてみよう。カーボン・ニュートラルとは二酸化炭素排出ゼロを意味する。まあ、プラスマイナス・ゼロでも良いのではあるが、二酸化炭素排出権を購入してまでガソリンエンジン車を走らせるというのは現実的ではない。となれば、選択肢はEV(電気自動車)とFCV(燃料電池自動車)しか残らない。つまり、日本が得意とするハイブリッドカーはカーボン・ニュートラルには含まれないのだ。事実、イギリスが2030年にガソリン/ディーゼルエンジン車の販売を禁止する中にハイブリッドカーも含まれるのだ。これは日本の自動車メーカーにとっては非常に厳しい現実である。日本はEVで大きく出遅れてしまっているからだ。
- 1つの意見として「自動車メーカーの責任ではない」というものもある。確かに、FCVには水素ステーションが必要だし、EVには充電ステーション(充電スタンド、充電スポット)が必要だ。そういうインフラ整備は大きく遅れているが、これは1企業でどうこうできることではないからだ。インフラが整っていないとEVを充電するのもひと苦労となってしまうからEVが売れないというわけだ。
- 念のためネットで調べてみた。2022年3月末時点のゼンリン調べの日本の充電ステーションの数は21,198ヶ所で、これは日本にあるガソリンスタンドの6割以上の数らしい。意外に多いと思うかもしれない。しかし、ガソリンの給油には5分もかからないのに、EVの急速充電は30分もかかるのだ。普通の充電なら倍の時間がかかってしまう。充電ステーションで2台、3台と待っていたら充電する気も失せてしまうだろう。
- では、水素ステーションはどうだろう。同じリンク先によると2022年9月現在で161件らしい。しかも、4大都市圏に集中しているためインフラとして成立していない。首都圏: 58ヶ所、中京圏: 49ヶ所、関西圏: 19ヶ所、九州圏: 14ヶ所、その他: 21ヶ所、って、北海道や四国ではどうするんだってことになってしまう。水素の充填に必要な時間はガソリンの給油と変わらないらしいが、この数では意味がない。
- そして、EVやFCVはガソリンエンジン車に比べて非常に高価である。誰にも買えるものではないのだ。もちろん、台数が増えてくれば量産効果で安くなるだろう。しかし、EVに積まれるリチウムイオン2次電池が高価なので量産効果は期待薄だ。結局のところ、カーボン・ニュートラルというのは自動車を金持ちのものにしてしまう気がする。せっかく、少し頑張れば誰にでも自動車が買えるようになったのに、時代を逆行させているのではないか。そうなれば、インフラも整備できなくなる。富裕層のためだけに税金を使うことになってしまうからだ。
- だから、私はガソリンエンジン車に乗りたいのだが、ホンダはガソリンエンジン車に力を入れていない。困ったものだ。確かにカーボン・ニュートラルを考えればガソリンエンジン車にうつつを抜かしている場合ではないかもしれない。しかし、EVのHonda eは軽く500万円超えなのだ。何かおかしい気がする。集中するならEVとガソリンエンジン車であってハイブリッドカーではないと思えてならない。日本の携帯電話メーカーが壊滅した「ガラパゴス」の再来は勘弁してほしいものだ。
2022/09/29
フィット RS(その2)
- 私はガソリンエンジン派である。ハイブリッドカーはもちろんEV(電気自動車)にも否定的である。その理由はバッテリーである。ハイブリッドカーやEVには大容量のバッテリーが搭載されている。今はリチウムイオン2次電池が使われているが、これはパソコンやスマートフォンに使われているものと基本的には同じものだ。それらは劣化する。メンテナンスをすればずっと使えるガソリンエンジンとは異なり、長く走行すれば劣化し、徐々に満充電容量が減って使用できる時間が短くなってしまうのだ。そうすると満充電で走行できる距離は短くなり、アラームが出れば交換するしかなくなるのだ。これがスマートフォンなら買い替えやバッテリー交換もありなのだが、200〜300万円超の自動車ではそうはいかない。
- これはトヨタのプリウス登場時から言われてきたことだ。そして、バッテリー交換には多額の費用がかかる。ただ、ハイブリッドカーが登場して25年近く経っておりバッテリー寿命も伸びている。これはバッテリー自体の性能が上がったというのではなく、バッテリーの制御が上手になっただけである。もちろん、1997年12月に発売されたプリウスはニッケル水素バッテリーだったが今はリチウムイオンバッテリーに進化している。ただ、同じリチウムイオンバッテリー自体の進化は微々たるものでしかない。次のブレイクスルーは全固体電池の採用ということになるだろう。しかし、もう少し時間がかかりそうだ。そうそう、制御が上手になったというのは、多数搭載されている電池セルを満遍なく使うような制御によって長持ちさせているということである。
- つまり、何を書いているかと言うと、現在の2次電池=充電池は充放電可能回数に限りがあり、充放電を繰り返すと最大容量が減少していくのだ。そして、現在の技術では寿命が過ぎれば産業廃棄物となってしまうということだ。再生バッテリーというのは劣化の程度の少ない電池セルを組合せたに過ぎず、「再生」しているのではないのだ。「再生」できなかった電池セルから焼却処分によって一部のレアメタル(希少金属)を回収しているとはいっても肝心のリチウムは回収できていないらしい。正直言って全くエコではない。
- ガソリンエンジンだけでなく、バッテリーによって駆動されるモーターの力を合わせることで自動車の燃費を向上させることは素晴らしいアイデアではあるが、複雑なシステムが必要で大きなコストアップになる。バッテリーやモーター、インバータなどによって重量も大きく増えている。私には方向性がずれていると思えてならない。あくまでも個人的意見だが、まだEVの方がシンプルで理に適っているといえる。よく、「ハイブリッド技術で日本に勝てない海外の自動車メーカーがEVに活路を見出して国家ぐるみで推進している」と言われるが、そうだろうか。ハイブリッド技術は「ガラパゴス技術」ではと思えてしまう。ガラパゴス携帯電話と同じくハイブリッドカーは絶滅危惧種ではと懸念しているのだ。
- シンプルなガソリンエンジン車にハイブリッド技術を乗せて複雑しにて高価なハイブリッドカーが出来上がっている。「若者が車を買えない」と言われるが、車にいろいろ付加機能をつけて高価な商品にすれば収入の低い若者に買える訳がない。私はもっとシンプルな若者にも買える車が必要だと思っている。つまり、もっともっとガソリンエンジン車が必要だということである。
- こう書いていると、「いやいや、脱炭素/カーボン・ニュートラルって既定路線でしょ?」「規制でガソリンエンジン車は売れなくなるんだからEVへの移行は必然でしょ?」という反論が予想される。ただ、2020年の日本自動車販売協会連合会発表の日本の自動車販売台数(くらしTEPCO)を見ると、ガソリンエンジン車が55.7%、ハイブリッドカー37.13%、プラグイン・ハイブリッドカー0.59%、EV0.59%、ディーゼルエンジン車5.95%、FCV 0.03%、その他(LPガス車など)0.01%となっている。これは乗用車だけの数字ではあるが、日本ではハイブリッドカーは売れているものの本命のEVはほとんど売れていないのだ。少なくとも、日本ではカーボン・ニュートラルへの移行スピードは非常に緩やかと言える。まあ、2050年に目標達成を目指しているのだから当然ではある。
- グローバルで見ると、2021年にEVの販売台数がハイブリッドカーを抜いたらしい。カーボン・ニュートラルにハイブリッドカーは含まれていないのだから当然の流れだろう。さらに、イギリスがガソリン/ディーゼルエンジン車の販売禁止を2050年を待たずに2030年に始めるという話がある。元々は2040年と言っていたものが10年も前倒されたのだから日本とは大違いのスピードだ。同じく、中国も2035年に販売禁止するらしい。
- こうしてみると、今がガソリンエンジン車を購入するラストチャンスなのかもしれない。しかし、ウクライナ危機によってエネルギーの安定供給が怪しくなっておりカーボン・ニュートラルは先送りになるのではと思えるのだが、私の希望的な願望なのだろうか。そもそも、EVにはバッテリーが必要で、そのバッテリーにはレアメタル(希少金属)が必要なのだ。そう考えると、とてもではないが必要な台数分のバッテリーが用意できるとは思えない。世界的に見てもEVのシェアは10%に達していないと思われるので、少なくとも10倍のバッテリーが必要だからだ。色々な意味でカーボン・ニュートラルには無理がある。だからと言って10年先のことは誰にも分からない。全方位戦略を取らざるを得ないというのが日本の自動車メーカーの現状なのだろう。それにしても、ホンダはガソリンエンジン車に手を抜きすぎだと思えてならない。
2022/09/10
フィット RS(その1)
- ホンダが8月5日に今年の秋に4代目フィットをマイナーチェンジしてRSを追加することをリリースした。フィットの販売不振を受けてようやくスポーティーグレードのRSを追加するわけだ。正直なところ「フィットは売れない」というイメージが固まってしまった状況で遅きに失したと思えるのだが、要は開発にそれだけ時間がかかったというわけだろう。つまり、そもそもフィットにスポーティーなグレードは全く検討されていなかったということだ。あらかじめ予定されていたのであればもっと早くリリースできただろう。しかし、「ホンダの街乗りコンパクトカーなんていらない」とユーザーからNOを突きつけられて慌てて追加したというのが私の推測である。ステアリング周りがヴェゼルから流用されたように見えるのもその根拠である。2020年の2月のリリースから2年半以上遅れてのリリースなのだからそう思われても仕方ない。
- 私が今乗っているのは初代のフィットだが、2001年6月の初代1.3Lモデルのリリースから1年余り後の2002年9月に追加設定された1.5Lモデルの1.5Tである。初代フィットにはRSは存在せず、この1.5Tがそれに相当するのだ。当時はパドルシフトは存在せず、ステアリングに「+-」ボタンがついている7SPEEDモードが売りだった。CVT(無段変速機)なのにセミオートマで7段変速が楽しめるのだ。私はこの1.5Tに既に20年近く乗っていることになる。
- パドルシフト、セミオートマなんて付いていても使わない、という人がいるが、街乗りだけならそのとおりだろう。しかし、街乗りでもシフトダウンでエンジンブレーキをかける際には有効に使えるのだ。今回、ホンダがチラ見せしたRSのスペックで「減速セレクター」というのはそれにあたるのだろう。ただ、パドルシフトと書いていないのが気がかりではある。加えて「e:HEV RSには減速セレクターとドライブモードスイッチを装備。」「e:HEV RS専用装備」という記載にはガソリンエンジン車はどうなるんだ?と気になるところである。私はハイブリッド車は買わないからだ。
- ネットで調べてみたが、減速セレクターはハイブリッド車のための装備でパドルシフトとは別物らしい。要は回生ブレーキの度合いを調整するためのもののようだ。だから、ガソリンエンジン車には減速セレクターがないらしい。まあ、回生ブレーキということはモーターにとってのエンジンブレーキのようなものだとは思うが、機構としては全く異なるのだろう。
- そうすると、パドルシフトがあるとすればガソリンエンジン車だけということになるのだが、フィットに近いヴェゼルにはパドルシフトが付いていないのだ。そもそもヴェゼルのガソリンエンジン車の販売比率は低いらしく、最廉価グレードにしかガソリンエンジン車が存在しないのだから仕方がない。ということは、……8月5日のチラ見せにガソリンエンジン車の情報がほとんどなかったということは……、パドルシフトは望み薄かもしれない。ただ、RSにはガソリンエンジン車が存在するのは確かであり、RSを名乗る以上何かあると信じたい。
- まあ、発売まで楽しみに待とう。フィットRSがダメならスズキのスイフト スポーツもあるとは思うが、あんまり好みのデザインではないのが困りものだ。ただ、2023年にはフルモデルチェンジするらしいのでスペックやデザイン次第では候補になるだろう。マツダのMAZUDA 2、トヨタのヤリスは候補外だ。マツダはマイナー過ぎるし、MAZUDA 2は数が売れていないのでアフターサービスを考えると不安である。ヤリスはとんがったデザイン過ぎて視界が悪すぎる。日産や三菱は会社がクズすぎるので門前払いだ。偽装などの不正もそうだがカルロス・ゴーン氏の追放劇は酷過ぎた。スバルにはコンパクトカーがない。ダークホースは同じホンダのN-ONE RSだが、いろいろ制約の多い軽自動車にコンパクトカーとほぼ同じ金額を払う気にならないのだ。車内は思ったより広いし、パドルシフトもついている。パワーが少ない割には走りも良い感じなのだが、軽自動車で200万円越えってあり得ないというのが素直な感覚である。
- しかし、ホンダは迷走している。「トヨタになりたいホンダ、と、トヨタになりたいホンダ」と言うが、そんなホンダに存在価値があるのかと思う。ホンダのアイデンティティとは何かをわかっていない世代が経営をしている現状には危機感を覚えてならない。余計なお世話と思うかもしれないがユーザーとしては気になる。私の好きだった「独創」というキーワードが似合う日本企業はほとんど壊滅してしまっているからだ。ソニーは今やエレクトロニクスメーカーではなくなってしまったし、オリンパスはカメラ事業を切り捨ててしまっている。最後の砦のホンダも瀬戸際に追い詰められているように見えてならない。日本企業そのものが危機的状況にあるわけで、これはホンダに限った話ではないのかもしれない。業態が変わっても生き残っていければ社員にとっては問題ないのだろう。しかし、ユーザーとしては寂しい限りである。結局のところ、私は異端なのだろう。マイナーな商品は数が売れず、そこにメーカーは力を入れられず、自然と販売終了になってしまうというのが実情だと思う。
2022/08/17
さらば! ホンダ?
- ホンダが8月5日に今年の秋にフィットをマイナーチェンジしてRSを追加することをリリースした。それを受けて今年の1月に書いていた文書を公開しようと思う。お蔵入りの原稿を今になって公開するのはポジティブな要素が生まれたからだ。ネガティブな中身だけ公開するのは少し憚られたのだ。当時の私はホンダにまだ希望を持っており見限ったわけではなかったからだ。以下、当時の文章のままである。今となっては外れた予想もあるのだがそのまま公開する。
- ホンダが迷走している。レジェンド、オデッセイ、シャトル、CR-V、インサイト、NSX、S660、と相次ぐモデルの生産終了。そして、F1からの撤退。その原因は何だろうか。近年のホンダは中国偏重のビジネスを行ってきた。元々は日本市場でスタートしたホンダだったがアメリカで成功し、アメリカ人はホンダをアメリカ企業と思っている人も多かった。しかし、今は中国での合弁企業が莫大な利益を上げるまでになった。経営トップも中国ビジネスを行ってきた派閥が占めるに至った。つまり、今のホンダは中国市場を向いているのだ。
- 日本は島国で山岳地帯も多いアップダウンに富んだ地形である。それに対し、アメリカや中国は大陸で比較的平坦な地形である。クルマの電動化を声だかに叫ぶ欧州も大陸で、有名なアウトバーンがあるとおり同じく平坦である。この「平坦」というのがキーワードである。EV(電気自動車)は平坦な道を走るのが得意だからだ。逆に日本のようなアップダウンに富んだ道は苦手である。エアコンをつけて加減速をしながら走るとEVは航続距離が短くなってしまうのだ。
- しかし、中国シフトをしているホンダは経営資源をEV開発に集中せざるを得ない。中国ビジネスを失うと会社の存続に関わるからだ。そういう点ではNo.1のトヨタには敵わない。トヨタは「国ごとに事情が違うだろう、何でもEV化すれば良いというわけではない」と言っているのだが、ホンダにとっては情けないがこれが現実である。そして、不採算車種の生産終了という決定をしたのである。
- こういう理屈を書いていると真っ当な話ではある。しかし、ホンダのユーザーには不評なのだ。ホンダのアイデンティティは何か?それは「スポーティーなクルマ」である。その象徴であるF1からの撤退はホンダ・ファンを落胆させた。最後の最後でフェルスタッペンがドライバーズ・チャンピオンを獲得できたのは救いではあったが残念である。ホンダのF1チームメンバーはみんな退社してレッドブルに入社するのではと思えてしまう。ホンダは優秀な人材とアイデンティティを失ってしまうのではと思えてならない。
- その前兆はかなり前から現れていた。先の多くのモデルの生産終了もそのひとつだ。要は次期モデルを開発していなかったから生産終了するわけで、車名が消えるだけではないのだ。別のモデルが取って代わるような記事やブログがあるが、そんなことではないだろう。そして、ドル箱のコンパクトカーであるフィットの不振。これが象徴しているのはホンダのクルマ開発の方向転換である。「スポーティーさ」のかけらもない4代目フィットには唖然とした。私は初代フィットのユーザーではあるが、買い替えを断念し、未だに初代フィットに乗らざるを得ない状況に陥ってしまっている。
- 4代目フィットにはマニュアルシフト・モデルがない。そして、「スポーティー」なRSグレードが存在しない。これに落胆したホンダ・ユーザーは多かったと思われる。巷ではグリルレスの外観が格好悪いからという記事が多いが、それは本質ではないと思う。パドルシフトがついたセミ・オートマチックシフトのモデルもない。単なる街乗りの足としてのクルマであれば別にホンダである必要はないではないか。
- 最近思うのはホンダのトヨタ化、と、トヨタのホンダ化である。アグレッシブなトヨタ、守りのホンダ、こういう状況は全くもって面白くない。ホンダ・ファンとして余計な心配をしてしまう。
- 前向きに考えるなら、ホンダは日本においては既にコンパクトカー・メーカーになってしまっているのでそれ以外の車種を切り捨てるのは当然ということだ。これは中国偏重という以前に、日本の景気が悪くて大きな=高いクルマが売れないので仕方がない。事実、ホンダ車の売上の半分以上は軽自動車が占めているらしい。売れないクルマの生産を止めるというのは経営的には当然であるわけだ。
- ただ、日本にはホンダの社員がたくさんいるわけで、グローバル企業であるホンダにとって日本の工場で作ったクルマは日本で売り切らないといけないのだ。雇用を守るために日本の工場は軽自動車とコンパクトカーの生産にシフトしていたのだが、4代目フィットの不振によってホンダは雇用を守り切れるのか微妙な状況に陥ってしまっている。先の生産終了も工場の閉鎖とセットなのだ。現状は雇用を守ると言ってはいるが生産するクルマがなければそうもいくまい。困った状況なのである。
バックナンバー(その52)
フォーサーズ雑記帳 トップページ
このページはリンクフリーです。ただし、商用サイトからのリンクはお断りします。
また、著作権を放棄しているわけではありませんので無断引用もお断りします。
そんなにたいしたページではありませんが…(^^;)
Copyright (C) 1997-2025 T.Matsumoto. All rights reserved.
このページにでてくる製品名や名称は各社の商標や登録商標です。