フォーサーズ雑記帳（バックナンバー）

CP+ 2014 雑感 (その5)

• さて、CP+の雑感の最後はシグマである。今回シグマは山木社長自らがプレゼンを行い、新型のFoveon X3 Quattroセンサをアピールした。トップ自らがユーザの前に出て製品のアピールをするというのは熱意の現れであるのと同時に危機感の現れとも言える。

• しかし、残念ながら、私にはFoveon X3 Quattroセンサのコンセプトが良くわからなかった。山木社長は否定したものの新型のFoveon X3 Quattroセンサは3層式のメリットを捨てたのではと思えたからだ。加えて、極めて特殊な形状のdp2 Quattroも私にはユニークとは思えなかった。ホールディング感は良いのかもしれないが、カメラバッグには非常に収まりが悪いではないか。

• 山木社長の登場も私のように思う人への対応を意図したものだったのだろう。しかし、私はせっかくの3層式のイメージセンサを4:1:1にしたのかは良く理解できなかった。私は3層式のメリットはベイヤー配列センサに必要な複雑な画像処理が不要だからと思っていたのだが、Quattroセンサは似たようなことをするのではと思えてならなかった。

• このQuattroセンサの誕生の理由にはシグマのカメラのレスポンスの悪さがあるらしい。確かにサクサク動かないのだ。シグマはそれをイメージセンサの情報量の多さのせいだと思ったらしく、結果として1層目が1,960万画素なのに対し、2層目と3層目の画素数を1/4の490万画素に落として画像処理でカバーする道を選んだようだ。1世代前のFoveon X3 Merrillセンサは1,600万画素の3層だったので合計4,800万画素だったのだが、このQuattroセンサは1,960万画素＋490万画素＋490万画素＝2,940万画素と総画素数では少なくなっているのだ。

• 他社のベイヤー型のイメージセンサは高解像のもので3,600万画素、普通のもので2,400万画素、高感度に強いもので1,600万画素程度のものが多い。確かにそれらに比べると画素数は多い。しかし、ベイヤー配列の4画素を1画素に合成して画にする処理は3層式のFoveon X3センサでは不要のはずだ。まあ、単に3層の画像を重ね合わせれば良いというものではなく、2層目、3層目になるほど光量が落ちてしまうのでそれなりの画像処理が必要らしい。しかし、安易だと思ってしまうのは私だけだろうか。

• 普通に高速化したいのなら1,600万画素×3層を1,000万画素×3層にするとか、画像処理エンジンの高速化やアルゴリズムの改善を選ぶのではと思うのだが、シグマは難しい方法を選んだようだ。確かに、画素数を減らせば製品力が落ちてしまうし、画像処理エンジンの高速化は半導体の技術革新を待たなければならない。アルゴリズムの改善も時間がかかるだろう。シグマにすれば苦渋の決断というところだろう。

• いくら優れた技術があっても総合性能で大きく見劣りすれば製品としては売れない。これまでのシグマのカメラはサクサク動かず、JPEGではなくRAWで撮らないと本領を発揮出来ないという扱い辛さがあり、マニアにしか売れなかった。しかし、それではビジネスにならないのだ。シグマは交換レンズメーカでもあるので、他社マウント向けの交換レンズで稼ぐことはできるが、カメラで大赤字というわけにはいかないのだ。そして、ベイヤー型のイメージセンサの高画素化によってローパスフィルタが不要になりつつある。3層式のセンサのメリットの1つが失われつつあるわけだ。

• しかし、その対応がベイヤー配列による不自然な画像処理が不要というもう1つのメリットを捨て去ることだったというのが私には理解出来ないのだ。メリットを2つとも捨て去って戦えるとは思わない。ただでさえトップ2に対抗するのは難しいのに、私にはシグマには重要な戦力であった飛び道具が無くなってしまったように思えて成らないのだ。

• シグマのユーザからすれば大きなお世話だということだろうが、シグマの行く末を心配してしまうのも当然ではないだろうか。誤解して欲しくはないのだが、私はシグマが嫌いではない。私は「独創」「ユニーク」というのが大好きである。クルマはホンダ車を長年愛用し続けているし、パソコンはアップル、カメラはオリンパスを使い続けている。AVシステムはソニーだった。これらはいずれも「独創」「ユニーク」が似合うメーカなのである。私はソニーが崩壊して残念な思いをしているが、シグマにそうなってもらいたくないだけなのだ。日本では「独創」「ユニーク」は難しい。そういう会社は応援したいと思っている。

• カメラとしての完成度を上げるというのは簡単なことではない。特にデジタルカメラはフィルムカメラと異なり画像処理が必要である。他社はベイヤー配列センサの汎用エンジンをカスタマイズすれば良いのだが、シグマはイチから画像処理アルゴリズムを作らなければならないのだ。そして、操作インターフェースを始めとするソフトウェア開発が必要になる。それもまた難しいのだ。その厳しさに耐えて素晴らしいカメラを生み出して欲しいと思ってやまない。

• 前回のニコンや今回のシグマの記事は多少ネガティブなものだったので公開をためらっていたが、あくまでも私の個人的な考えであり、記録に留めておくのも良いかと思ったのだ。Photokina 2014が開催されたことで、オリンパスからはOM-D E-M1 Ver. 2.0とM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO、1.4xの専用テレコンバータであるM.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14が発表された。ニコンはFXフォーマットのD750を発表している。キヤノンはAPS-CサイズのフラッグシップであるEOS 7D mark IIを発表した。ペンタックスはまたフルサイズ参入の噂が飛び交っている。それらの記事を書く前にまとめておきたいと思ったわけだ。決して2社を貶める意図があるのではないことをご理解いただきたい。

CP+ 2014 雑感 (その4)

• さて、CP+終了から半年以上経過してしまったが書きかけのまま放置していたCP+の原稿をアップしておこう。Photokina 2014が始まり、カメラ業界にも動きが出てきている。それらの前にまとめておかないといけないからだ。

• CP+では毎度のごとく各社のステージを重点的に見て回ったのだが、ニコンの阿部秀之氏のステージについて書いてみよう。阿部氏は皆が知るところのニコン製品スーパープレゼンテーターである。阿部氏は「今こそ一眼レフの真価を問う」というテーマで光学ファインダの素晴らしさを説明してくれた。

• まず驚いたのは、ソニーやオリンパスは既に光学ファインダを作っていないので、今や光学ファインダを作れるのは今やニコン、キヤノン、ペンタックスの3社のみになってしまっているという話だ。確かシグマやライカにも光学ファインダはあるはずなのだが、自社生産ではないのだろうか。阿部氏は一眼レフにはハッセルブラッドなどウェストレベルファインダも存在するし、ペンタミラー式もあると断った上で、光学ファインダ＝ペンタプリズム式として、前述の3社をあげたのだ。裏を返せば、他は全て電子ビューファインダ(EVF)に替わってしまったのである。

• 阿部氏によれば、一眼レフが現在のカメラの主流になったのは「撮影対象をそのまま肉眼で見ることが出来る実像式であること」によるそうだ。そのとおりではあるとは思うが、それは光学ファインダでもEVFでも同じではないだろうか。しかし、阿部氏は光学ファインダの再現域は無限で、ファインダは撮影範囲(構図)を決めるためだけのものではなく、透明感、空気感まで撮影者に伝えるものである。と、熱弁を振るったのだ。

• そして、光学ファインダであってもピンキリであると続けた。例えば、ニコンD4のファインダは素晴らしく、同じニコンのD800のファインダとは格が違うそうだ。同じサイズであっても内面反射を抑える作りや光学設計の良さによって非常にクリアに見えるらしい。そのため、細かなものまでくっきり見えるそうだ。また、コンパクトカメラであるニコンのCOOLPIX Aのオプション光学ファインダDF-CP1は42,000円もするのだが、肉眼で見る以上にきれいに見える、撮る気にさせると絶賛だった。

• しかし、ちょっと話に無理があるようだ。私はアマチュアなので、ファインダを覗いて透明感や空気感を感じたいとは思わない。そして、フォーサーズがイメージセンサが小さいために「井戸の底を覗くようなファインダ」と皮肉られた際にもその意味がわからなかった。私にはファインダは構図を決めるためのものでしかないからだろう。構図を決めるためには視野率が100%であることこそが重要であり、大きさや空気感などを気にしたことはなかったのだ。

• さて、少し考えてみよう。一眼レフの心臓部はクリックリターンミラーと光学ファインダである。これを作るには多くのノウハウが必要であり、簡単に習得出来る技術ではない。そのため、一眼レフカメラはほとんど新規参入のない日本メーカの独占的な市場であった。また、そのマーケットシェア構造はトップ2の寡占状態にある。そのトップ2であるニコン、キヤノンに直接対抗することは実際のところ不可能であり、他のメーカはトップ2が取りこぼしているニッチなマーケットで細々とビジネスをすることしかできなかったのだ。

• このような状況の中、レンズ交換ができるコンパクトカメラというコンセプトのミラーレス一眼が登場したというわけだ。そして、女子カメラとして大ヒットし、結果として大きなマーケットを形成するまでになった。パナソニック、オリンパスのマイクロフォーサーズやソニーのEマウントシステムがシェアを伸ばし、さまざまなメーカが参入する中、ニコンはNikon 1、キヤノンはEOS Mをリリースして一応の対抗姿勢を見せているが、まだ本気ではないようだ。

• これはかつてミノルタのオートフォーカスを搭載したα7000が登場した時とはかなり違うように思える。確かに最初はニコンもキヤノンも「おもちゃ」扱いをして相手にしなかったが、それは表向きのことで、裏では必死で対抗機を開発していた。そして、ミノルタをさっさと追い抜いてしまったのだ。これこそがトップ企業の戦術なのだ。しかし、このバブル時代とは異なり、現在の厳しい経済状況ではニコンもキヤノンもレンズを含めたカメラシステムを一新するだけの力を割けないのではと思ってしまう。

• そういう状況の中での阿部氏のプレゼンテーションであるということは心に置いておかないといけないだろう。ニコンの意向に添って阿部氏はプレゼンしているわけだ。かつて、Nikon 1が登場した時に阿部氏がベタ誉めしていたことを忘れてはいけない。しかし、一眼レフのトップメーカの1社であるニコンは一眼レフでまだまだ儲けていかなければならないのだ。そのために阿部氏は一眼レフの中核である光学ファインダをテーマに選んだのだろう。

• そして、阿部氏はミラーレス一眼の「一眼レフを超えた」というようなキャッチコピーに対するいらだちを隠さなかった。確かにEVFは光学ファインダにはいろいろな面で及ばない。しかし、EVFをあまり悪く言わないで欲しいというのが私の考えだ。それはフィルムカメラからデジタルカメラへの移行を否定するのと同じことだからだ。

• 以前から書いているが、私はミラーレス一眼は女子カメラからオヤジカメラに進化すべきと思っている。そして、実際にEVFを内蔵したミラーレス一眼が増えている。当初からEVF内蔵型を製品化していたパナソニックに続いてオリンパスはOM-Dを投入し、E-M10で既に3モデルになった。富士フイルムはX-T1でヒットを飛ばしている。これらのカメラに飛びついているのは私と同じように体力の衰えたオヤジたちが多いのだろう。一眼レフからミラーレス一眼へのパラダイムシフトは近いと思えてならない。

• 正直なところ、ニコンが心配である。ニコンのカメラは嫌いではないからだ。ニコンの力を持ってすればミラーレス一眼でも勝ち残ることは不可能ではないだろう。しかし、それは一眼レフの終焉を意味する。だからニコンは最後まで一眼レフを守ろうとしているのだろう。強者の戦略だと思うが、そう巧くいくのか心配なのだ。強者は変化への対応が遅れがちであり、それこそが強者の最大の弱点だからだ。

CP+ 2014 雑感 (その3)

• さて、CP+の雑感に戻ろう。今年のCP+は大雪で予定が大幅に狂ってしまったが、目的は2つあった。1つは最近評判の富士フイルムのカメラを見てみようというもので、もう1つは各メーカの考えを確認したいというものだ。

• 残念ながら富士フイルムのX-T1は長蛇の列で触ることは出来なかった。スペックだけを簡単に見てみよう。

  	E-M1	X-T1
  メーカ	オリンパス	富士フイルム
  イメージセンサ	LiveMOS (フォーサーズ) 1,628万画素	X-TRANS CMOS II (APS-C)1,630万画素
  ローパスフィルタ	なし	なし
  ファインダ	236万ドット 135換算0.74倍	236万ドット 135換算0.77倍
  背面液晶	3.0型 104万ドット チルト式	3.0型 104万ドット チルト式
  フラッシュ	外付け(付属)	外付け(付属)
  大きさ・重さ	130.4×93.5×63.1 (mm) 497g	129.0×89.8×46.7 (mm) 440g
  オートフォーカス	撮像面位相差AF コントラストAF	撮像面位相差AF コントラストAF
  手ぶれ補正	センサーシフト式 5軸補正	レンズ内補正
  ISO感度	100、200〜25600	100、200〜6400、 12800、25600、51200
  測光	324分割デジタルESP測光	TTL256分割測光
  シャッタースピード	60秒〜1/8000秒、バルブ	30秒〜1/4000秒、バルブ
  連写	10枚/秒	8枚/秒
  記録メディア	SD (UHS-I)	SD (UHS-II)
  防塵・防滴	○	○
  スマートフォンによる制御	○	○
  その他	ダストリダクション、 耐低温、ライブビュー、 アートフィルター、HDR、動画、 ライブバルブ、タイムラプス	ダイヤルオペレーション、 マルチモード・ビューファインダー、 フイルムシミュレーション、 アドバンストフィルター、動画

• こうやってスペックを見てみるとX-T1はなかなか良い感じである。APS-Cサイズにも関わらずE-M1よりも軽く小さいのは驚きである。レンズ次第ではあるが、十分に評価に値するカメラに思える。長蛇の列にも納得である。

• 富士フイルムのフジノンレンズ FUJINON XF 10-24mm F4 R OISが3月15日に登場した。135換算で15〜36mmの手ぶれ補正内蔵の超広角レンズを用意してくるのはさすがである。オリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROは2015年以降にならないと登場しないことを考えると既に存在していることは大きなアドバンテージである。他にもFUJINON XF 18-55mm F2.8-4 R LM OIS (手ぶれ補正内蔵、135換算27〜84mm)やFUJINON XF 55-200mm F3.5-4.8 R LM OIS (同84〜305mm)もある。さらに、FUJINON XF 14mm F2.8 R (135換算21mm)という単焦点レンズもある。

• 先にも書いたが、2年あまりで12本のレンズを発売したのは素晴らしい。実際にはカメラの開発と同時にレンズも開発していたのだろうから、4年間ぐらいで12本というところだろうか。ただ、残念ながら、いずれも防塵・防滴ではないのがネックである。富士フイルムは今後防塵・防滴のレンズの発売を計画しているようだが、今は1本もないのである。これは困りものだ。ロードマップ上ではFUJINON XF16-55mm F2.8 R OIS WR (手ぶれ補正内蔵、135換算24〜84mm)とFUJINON XF50-140mm F2.8 R OIS WR (手ぶれ補正内蔵、135換算75〜210mm)の2本が2014年に登場することになっている。これらはオリンパスのM.ZUIKO DIGITAL PROレンズとガチンコ対決するレンズである。どの程度の画が撮れるかが気になるところではあるが、超広角ズームの計画がないのが残念である。まあ、私はメーカ問わず発売されるまでは何も信用しないので、これ以上のコメントは控えたい。

• さて、CP+からしばらく経ってカメラショップでX-T1に触ることができた。事前に私の中でハードルが上がり過ぎていたのが悪かったのだが、第一印象は「うーん」というものだった。正直なところ、頭でっかちなデザインは好みではない。そして、本当に防塵・防滴なのかという作りの粗さが気になってしまった。メモリーカードスロットやリモートレリーズ端子などのカバーが簡単に開いてしまうのだ。オリンパスユーザの私から見るとかなり頼りない。実は「防塵・防滴はピンキリ」と言われるとおり、各社が明確な基準に照らすことなく防塵・防滴をうたっているのである。まあ、オリンパスの防塵・防滴が凄すぎるという面もあるのだが、各社ともJISとかIPXとかの基準に則って欲しいところである。

• もう1つ「うーん」と思ってしまったのは電子ビューファインダ(EVF)の見辛さだ。カメラを天井の蛍光灯に向けると明るさが蛍光灯に引っ張られて天井が真っ暗になってしまうのだ。平均測光にすると少しマシになるのだが、これは困る。少し待つと天井が見えてくるのだが、もっさりした感じである。表示タイムラグは世界最小らしいが、明暗への応答性能が悪いのだろうか。こういう事例を見るとオリンパスのキャッツアイコントロールはなかなか有効なようだ。これは展示機の個体差なのかもしれないが、電子ビューファインダのもう一歩の進化を期待したいところである。

• EVFを覗いてみたのだが、目で見たものとEVFを通して見たものにギャップを感じてしまった。これはオリンパスのE-M1では感じなかった点で、最近のEVFは良くなってきたと驚いたのだが、X-T1の場合には微妙な色味が気になってしまった。これは室内ミックス光環境下でのオートホワイトバランスにちょっと難があるということなのだろうか。

• また、各種設定メニューでサブメニューへの移行時にわざわざワンクッション入れている理由がよくわからない。サクサクと設定変更出来ないのでストレスが溜まってしまうからだ。ある程度自分のセッティングが固まればメニューに触れることは減るのかもしれないが、ちょっと残念に思える。

• ネットでは「光漏れ」が指摘されていた。富士フイルムも早急に対策を発表したので落ち着いたようだが、カメラメーカとしては信じられない失態である。フィルムであってもイメージセンサであっても光に反応するのでカメラでは遮光は必然だからである。リモートレリーズ端子カバーを開けてレリーズを使うと光漏れを起こすというのは困ったものだ。レンズ交換式カメラ開発にブランクが合った間にノウハウが失われてしまったのかもしれない。まあ、失敗は誰にもあることで、再発させないことが肝心である。今後に期待しよう。

• さて、触ってみてさらに「うーん」感は強まってしまった。今となってはダイヤル・インターフェースは使い辛いのだ。そもそも、X-T1のダイヤルはかなり固めでファインダを覗きながら指先で動かすことが難しい。そこで、前後のコマンドダイヤルを使おうとしたのだが、絞り値とシャッタースピードしか割り当て出来ないようだ。そして、そのコマンドダイヤルで絞り値を変更したくてもレンズに絞り環がある場合は絞り環の方が優先されるようだ。ただ、絞り環は1段刻みなので1/3段の微調整はコマンドダイヤルで行うようだ。しかし、全てをコマンドダイヤルで行うことはできないようだ。このハイブリッドなインターフェースは不便ではないのだろうか。しかも、Xシリーズのレンズには絞り環があるものとないものが混在しているので混乱しそうである。

• まあ、フィルムカメラ時代はレンズに絞り環があったし、ボディにシャッタースピードダイヤルや露出補正ダイヤル、ISOダイヤルなどがあった。そして、撮影時にそれらで設定を変えながら1枚1枚大切に撮っていたのだ。フィルム代も現像・プリント代もバカにならなかったからだ。しかし、今ではレンズに絞り環はないし、前後のコマンドダイヤルで絞り値やシャッタースピード、露出補正を1/3段で設定出来るのだ。

• 私はニコンのNikon Dfのようなインターフェースを期待していたのだが、ちょっと違うのだ。Nikon Dfの場合には絞り値はコマンドダイヤルで1/3段刻みで設定できる。また、シャッタースピードもダイヤルを「1/3 STEP」にセットすることでコマンドダイヤルで1/3段刻みで設定できるのだ。しかし、同じレトロなスタイルのカメラなのだが、X-T1は明らかに異なるインターフェースのようだ。個人的にはX-T1のインターフェースは使えない。私は時と場合によってモダンとレトロのインターフェースを使い分けるというニコンの提案には賛同出来るが、デジタル時代に今さらレトロなフィルムカメラのインターフェースには戻りたくないからだ。

• 結論を書いておこう。私が勝手にハードルを上げ過ぎたのが悪いのだが、X-T1は購入しないと思う。防塵・防滴の超広角ズームレンズがないのが致命的なのと、思ったほど使い勝手が良くなかったこと、そして、EVFの残念感がその理由である。まあ、私はオリンパスユーザなので、他社のカメラには少し厳しいのかもしれない。これはX-T1を貶める意図で書いたものではない。私は富士フイルムに期待しているし、X-T1の後継機や防塵・防滴レンズの登場を楽しみにしている。ご理解を賜りたい。

2014年のデジタルカメラ業界展望(その8)

• 最後に古くからのカメラユーザならだれでも知っているが、重要な問題を書いておこう。先に「カメラシステムはプロからビギナーまで各階層に支持されないと成り立たない」と書いたが、実際にその支持を受けているメーカはニコンとキヤノンの2社しかないということである。

• プロカメラマンもいろいろだが、多くは報道カメラマンやスポーツカメラマン、雑誌や書籍に掲載される写真を撮るカメラマンが多いようだ。そして、多くのプロカメラマンは新聞社や雑誌社の社員や契約社員であるらしい。つまり、雑誌のグラビアを撮ったり、写真集を出版できるようなフリーカメラマンはごく一部である。その彼らプロカメラマンがメインで使っているのはニコンかキヤノンのカメラがほとんどなのだ。やはり、圧倒的な信頼感があることが大きいのだろう。

• もう1つ、信頼性以外の理由があるらしい。ニコンかキヤノンのカメラ以外を仕事に使うとクライアントから信頼が得られないのだ。両社以外にも良いカメラやレンズはあるのだが、カメラに詳しくないクライアントには「プロ用」と思ってもらえないわけだ。カメラマンは次の仕事を請け負いたいのでクライアント受けするニコンやキヤノンのカメラを使わざるを得ないのである。そう、両社のカメラ以外はプロカメラマンのメインカメラと認知されていないのが現実なのだ。

• 加えて、一眼レフではなくミラーレス一眼ともなれば、電子ビューファインダ(EVF)は光学ファインダ(OVF)にまだまだ敵わない、プロの使用に耐えるレンズが極めて少ない、など課題が多いのだ。これはニコンやキヤノンのミラーレス一眼であっても同じである。まだプロがメインカメラとして使えるミラーレス一眼システムは存在しないのだ。

• 長い流れで考えればミラーレス一眼の時代が来ると思う。レコードからCD、MD、そして、メモリオーディオと移り変わってきたように、カメラもレンジファインダーから一眼レフ、ミラーレス一眼に移り変わっていくだろう。ただ、それはミラーレス一眼が一眼レフ以上の能力を持つ必要がある。待っていても実現はしないのだ。

• さて、もう少しだけ、とりとめがないが、うまくまとめきれなかった雑記を続けよう。トップ2のニコンやキヤノンは一眼レフで圧倒的な強さを誇っている。そのため、直接対決を避けてミラーレス一眼で対抗しようとしているのがパナソニック、オリンパス、そして、富士フイルムである。これに対し、ソニーやペンタックス、シグマは一眼レフでの対抗をあきらめていないようだ。

• もちろん、後者の3社はニコンやキヤノンに勝てるとは思っていないだろう。トップ2社のカバー出来ていない隙間を狙っているのだと思うのだが、現状ではそれでビジネスが成り立つのかは疑問である。自動車業界と比べて考えてみたい。自動車業界ではトヨタと日産以外のメーカも元気だからだ。私はそれは「個性が際立っている」からだと思っている。

• ホンダにはスポーティなイメージ(個性)がある。マツダやスバルには特別なエンジンのイメージがある。それらの個性がユーザに評価されているとすると各カメラメーカの個性は何だろう。ソニーの一眼レフはミラーが可動しないトランスルーセントミラー・テクノロジーを採用している。半透明のミラーを使用することでレフレックスミラーのアップ・ダウンを不要にしたため12コマ/秒などの高速連写が可能なのだ。そして光学ファインダ(OVF)ではなく電子ビューファインダ(EVF)に早々に移行している。EVFには欠点もあるが、メリットもあるのだ。

• シグマはFoveonという三層式のイメージセンサによる高解像感が個性であろう。三層式のセンサは他社が製品化していないので圧倒的なアドバンテージである。ただ、他社がローパスフィルタ・レスになって解像感が上がっている現状ではそれ以外の基本性能で他社よりかなり見劣りしてしまうディスアドバンテージをカバー出来るのか厳しいところだ。

• 既に撤退を決めてしまったが、オリンパスには強力なダストリダクションシステムによるゴミ・ゼロと強固な防塵・防滴というヘビーデューティの個性があった。ライブビューは他社のカメラにも搭載されているものの、この2点のアドバンテージは未だに崩れていないのだ。

• では、ペンタックスのカメラの個性は何なのだろうか。良くわからないのでペンタックスのホームページで調べてみると、APS-Cサイズでは最多のレンズを誇っているそうだ。私はニコンがトップだと思っていたので少し意外だったが事実である。APS-Cに特化していたのが功を奏したということだろう。ただ、カメラボディの個性は弱い。各社の特長ある機能をうまく盛り込んでいるので総合力は高いのかもしれないが、個々の性能では二番煎じの域を出ていない気がする。まあ、フォーサーズが今後フェードアウトしていくだろうから、そのポジションに入れるかもしれない。

• よくオールドレンズが死蔵されていると言われるが、デジタル黎明期ならいざしらず、今ではそれほど有効ではないだろう。性能的にはおもちゃレベルであり、我々中年以上のユーザのノスタルジーでしかないからだ。若い新しいユーザには通用しないだろう。そして、カメラボディだけを買ってもらっても儲からないという事実を忘れてはならないだろう。

• もう1点付け加えるならば、レンズ交換式カメラはシステム機器なので、一度製品化すれば維持する責任がある。そういう意味ではソニー(ミノルタ)、シグマ、ペンタックスの頑張りは評価されるだろう。ただ、それはビジネスとは別次元の話である。

2014年のデジタルカメラ業界展望(その7)

• 先に交換レンズ開発のためのリソース問題を書いたが、それはニコンとキヤノン以外のカメラには圧倒的にレンズが不足しているからだ。それはカメラシステムとしては致命的であり、そのまま放置するとユーザをつなぎ止められないだろう。

• 私はミラーレス一眼に未来を感じているが、ミラーレス一眼は歴史が浅いこともあり圧倒的にレンズが足りない。今後どれだけのレンズを揃えられるかでそのカメラシステムの将来が決まる気がする。電子ビューファインダ(EVF)の進化はカメラメーカではどうしようもないが、レンズであればカメラメーカ自身で何とかできるはずだ。

• 一般的なユーザには各社のミラーレス一眼のレンズラインアップは充分に見えるかもしれない。標準ズームと望遠ズームがあれば事足りるからだ。しかし、ハイアマチュアユーザやプロには全くもって物足りない。これは重要なことで、カメラシステムはプロからビギナーまで各階層に支持されないと成り立たないのである。

• 本当にそうなのか、と思うかもしれないが、少なくともこれまではそうだったのだ。これはレンズ交換式カメラ市場の特殊性かもしれない。例えば、自動車の場合には軽自動車専業メーカが存在するからだ。ただ、軽自動車をコンパクトカメラだとすれば、やはり一般的なことなのかもしれない。まあ、コンパクトカメラはオートバイかもしれないのだが。

• 我々アマチュアカメラマンはプロカメラマンの撮る写真に憧れる。それがカメラを購入する大きな動機になるのだ。あのプロカメラマンの使っているカメラなら、レンズなら同じような素晴らしい写真が撮れるかもしれない、と思うからだ。カメラメーカがCP+のようなイベントでプロカメラマンにステージ上でカメラやレンズの素晴らしさを力説してもらうのはそのためだ。

• しかし、当然ながらプロ用のカメラやレンズは良いモノだけあって高価である。そのため、我々は身の丈にあったカメラやレンズを選んで購入することになる。つまり、カメラメーカはプロ用とアマチュア用のカメラ、レンズをラインアップしなければならないのだ。プロ用機材は高価だがプロカメラマンの数は多くはない。そのため、売上も利益も稼げない。これに対して、アマチュアカメラマンは桁違いに多いので、アマチュア用の機材がヒットすればカメラメーカは大いに儲かるのだ。

• 具体的に書くと、カメラメーカはボディで3ランク、交換レンズで2ランク程度の製品をラインアップする。これで、プロ、ハイアマチュア、ビギナーをカバーするわけだ。例えば、オリンパスはフォーサーズでSUPER HIGH GRADE、HIGH GRADE、STANDARDの3ランクのレンズを製品化していた。オリンパスのように明確にグレードを分けていなくてもグレード分けはある。例えば、ニコンは標準レンズの50mmにはF1.4とF1.8があるなど同じような焦点距離でF値の異なるレンズを用意しているのだ。

• デジタル時代になってもこれは同じだ。例えば、ニコンのFXフォーマットのカメラボディはD4S、D800/D800E、D610の3モデルがラインアップされている。厳密にはランクだけではなく製品特性による差別化もされており、Dfのようなモデルもある。そして、DXフォーマットにも3モデル、ミラーレス一眼のCXフォーマットにも4モデルのカメラボディがラインアップされている。

• ところが、ミラーレス一眼のレンズは先に述べたとおりお寒い状況なのだ。例にあげたオリンパスはマイクロフォーサーズレンズを形式的には3つに分けているものの、ランクとしてはM.ZUIKO DIGITALとM.ZUIKO DIGITAL PROの2ランクしかない。ニコンのCXフォーマットの1 NIKKORレンズではランク分けできるだけのレンズが揃っていないのが現状だ。

• ミラーレス一眼は女子カメラとしてスタートしたため、エントリーユーザ向けのカメラやレンズがほとんどである。そこから脱却してプロがメインで使いたくなるカメラやレンズを増やしていかなければ、一眼レフの後継にはなれないだろう。単なる新ジャンルのカメラで終わるか、カメラ市場の主流に成り上がれるか、これからのカメラメーカ各社の生き残りをかけた開発競争次第ではないだろうか。

• プロ仕様のレンズで一番先行しているのはパナソニックだ。LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S.とLUMIX G X 35-100mm/F2.8/POWER O.I.S.の2本の明るい防塵・防滴のズームレンズ、そして、LEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 ASPH.とLEICA DG NOCTICRON 42.5mm/F1.2 ASPH./POWER O.I.S.の2本の明るい単焦点レンズをラインアップしている。これらのレンズをフィルムカメラの135サイズに換算すると28-70mm F2.8、70-200mm F2.8、50mm F1.4、85mm F1.2になる。まさに王道のレンズ達だ。加えて、LUMIX G VARIO 7-14mm/F4.0 ASPH. (135換算14-28mm)という少し暗いが超広角ズームレンズがある。このアドバンテージは大きい。

• ソニーは2つのレンズマウントと2つのセンサーサイズがあるために、レンズのラインアップが追いついていない。一眼レフのAマウントには明るい単焦点レンズも明るいズームレンズも存在するのだが、残念ながらミラーレスのEマウントにはそれらのレンズは皆無である。これでは全く物足りない。

• 2012年2月にX-Pro1でミラーレス一眼に参入した富士フイルムには勢いがある。わずか2年間あまりで12本のレンズを取り揃え、FUJINON XF23mmF1.4 R (135換算35mm)、FUJINON XF35mmF1.4 R (135換算53mm)、そして、FUJINON XF56mmF1.2 R (135換算85mm)の3本の明るい単焦点レンズをラインアップしている。そして、FUJINON XF10-24mmF4 R OIS (135換算15-36mm)という少し暗いが手ぶれ補正内蔵の超広角ズームレンズもある。これは私にとってポイントが高い。

• トップ2のニコンもキヤノンもミラーレス一眼を製品化している。しかし、ニコンには1 NIKKOR 32mm f/1.2　(135換算86mm)しか明るいレンズは存在しないし、キヤノンにはそもそもレンズが3本しかない。両社とも一眼レフカメラで圧倒的な強さを誇っており、キヤノンはミラーレス一眼カメラにまだ本腰が入っていないのだろう。

• さて、オリンパスだが、マイクロフォーサーズはミラーレス一眼の先駆けでありアドバンテージがあるかと思いきや、プロ仕様のレンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO (135換算24-80mm)の1本しか存在しないのだ。フォーサーズにはプロ仕様のレンズがたくさんあるのにこれは非常に情けない。開発表明されている3本のレンズが揃うのは2015年の終わり頃なのかもしれない。困ったものである。

• まあ、ミラーレス一眼の女子カメラからの脱却はこれからである。各社の格差はまだまだ挽回可能であるだろう。私はこの先の2〜3年でプロ仕様のレンズを何本リリース出来るかで将来を決めることになるのではと思っている。

2014年のデジタルカメラ業界展望(その6)

• ファインダの重要性を書いたが、電子ビューファインダ(EVF)はカメラメーカにはどうにも出来ない領域である。ULTIMICRONを製品化しているセイコーエプソンのなどのEVFユニットメーカの技術開発に期待して待つしかない。ただ、カメラメーカはEVFを採用し続ける必要がある。ビジネスにならなければEVFユニットメーカは製品の改良には取り組まないからだ。その意味ではEVF搭載のミラーレス一眼や外付けEVFユニットを販売することも購入することも意味があるわけだ。

• もう1つ考えなければならない点がある。自動車とは異なり、カメラはシステム機器だということだ。自動車は単独で走れるが、レンズ交換式カメラは交換レンズやフラッシュ、バッテリーグリップなどのシステムが十分に用意されなければ使えないのである。加えて、それらがメーカ毎に互換性がないのだ。

• 個人的にニコンの一眼レフ用レンズのラインアップは素晴らしいと思っている。プロの使用にも耐える高級レンズからビギナー用のエントリーレンズまで多彩に取り揃えられているからだ。そして、それらはかなり高性能であり、私好みのシャープなレンズが多い。ニコンの一眼レフの歴史は長い。そして、Fマウントはマイナーチェンジされてはいるが、基本仕様は変わっていない。だから、レンズが多いと考えるのは間違っている。フィルム時代のレンズはデジタルカメラでは力不足であり、リニューアルが必要だからだ。ニコンは地道にそのリニューアルを行ってNo.1のデジタルレンズラインアップを構築したのである。その努力は素晴らしい。

• それに対してキヤノンのレンズラインアップは豊富ではあるが、デジタル対応へのリニューアルが遅れているように見える。私が欲しい広角系のレンズは特にリニューアルが遅れているようだ。EF8-15mm F4L フィッシュアイ USMというユニークな魚眼ズームレンズもあるだけに残念である。レンズの開発には多くのリソースが必要である。ビッグ2のキヤノンですらこのような状況であることを考えると、ニコンが特に頑張っていると言った方が良いのかもしれない。

• レンズ開発のリソースを考えると企業体力は重要である。素晴らしいレンズラインアップを誇るニコンだが、経営基盤はそれほど強固ではないようだ。ニコンはカメラ事業以外に半導体製造装置事業を行っているが、日本の半導体製造業は絶不調である。海外でどれだけ売り上げているか不明だが不安要素ではある。カメラ事業への依存が高すぎるような気がするからだ。ニコンも「多角化」を模索しているのか、電子顕微鏡メーカ最大手の日本電子に出資するようだ。まあ、顕微鏡といっても半導体がらみのような気がするのだが。

• 他のレンズ交換式カメラを発売しているメーカも見てみよう。これらはあくまでも私見であるのでご注意いただきたい。キヤノンは立派なOA系の企業で企業向けのコピー機やプリンタ、一般向けのインクジェットプリンタなどで十分な基盤を持っている。ニコンと違ってカメラ事業への依存は小さいのだ。加えてイメージセンサを自社開発できるところが強みだろう。

• ソニーは残念ながら経営が火の車状態でもはや製造業としての体を成していない。テレビ事業を分社化し、パソコン事業を売却したりと大規模なリストラ続きで先が見えない。今や銀行・保険・映画・音楽などの方が主力ではないのかと思ってしまう。PS4などのゲーム機やEricssonから買収したスマートフォンに製造業の片鱗をのぞかせているが、これらはソニーの本流ではない。人材の流出が止まらず、昔ながらのソニーファンの私も見限ってしまったほどのていたらくである。

• ペンタックスはリコーという新しいパトロンを見つけたが、それがいつまで続くのかは疑問である。前パトロンのHOYAが手放したのには理由があるはずだし、リコー自身の経営も決して順風ではなく、リストラを行っているからだ。

• オリンパスは粉飾決算の後始末で資金が不足している。そのため、M.ZUIKO DIGITAL Proレンズの開発に異常なほど時間がかかっているとしか思えない。ソニーからの出資を受けたはずだが、焼け石に水だったのだろうか。

• シグマは手ぶれ補正の特許侵害でニコンから年間の利益が吹っ飛ぶほどの多額の賠償請求をされている。まだ係争中ではあるが、かつて日本のカメラメーカがオートフォーカスの特許侵害で多額の賠償金を支払ったことを思い出してしまった。その負担はカメラメーカにかなりのダメージを与えたのだ。

• パナソニックもテレビ事業などの不振でリストラ中である。ただ、ソニーと違うのは経営再建の光が見えてきていることと、オリンピックのワールドワイド公式パートナーとして2024年までスポンサーを継続するなど希望が見えることだ。やはり、「明るい気持ち」は大切なのだ。

• 富士フイルムはフイルム事業はカメラのデジタル化によって大きく縮小し、コンパクトカメラは他社と同様に苦戦中とカメラ関連事業は厳しい状態のようだ。しかし、医療分野やOA分野(富士ゼロックス)では好調を維持しており、グループとしては盤石のようだ。

• こうしてみると、キヤノンと富士フイルム以外はリソース不足で交換レンズが充分に開発出来ないリスクがあるということになる。しかし、実際にはそんな単純なことではない。事実、レンズラインアップが一番充実しているのはニコンである。多角経営によってカメラ事業への依存度が低いということはカメラ事業以外にもリソースを割かなければならないということであり、逆にカメラ事業への依存度が高い場合にはカメラ事業を死守するために大きな投資をすることを厭わないということでもあるからだ。

• ここで認識すべきは交換レンズの開発には多くのリソース(人材、設備、資金)が必要だということだ。そして、そのリソース確保には安定した経営状態が必要なのだ。しかし、絶対条件ではない。また、マウント数やイメージセンサのサイズ数によって開発すべきレンズの数も異なるだろう。会社の経営状態は重要事項だが、なかなか外部の者には知ることが出来ない部分である。忘れない程度に1つの指標と捉える程度で良いだろう。