フォーサーズ雑記帳(バックナンバー)
このページには フォーサーズやMacintosh についての個人的メモを掲載しています。不定期に更新します。
2014/03/08
2014年のデジタルカメラ業界展望(その5)
- さて、CP+の雑感はまだまだあるのだが、先に中断している2014年のデジタルカメラ業界展望を書ききってしまいたい。
- ここでミラーレス一眼の是非を考えてみることにする。よく言われるのはミラーレス一眼は日本市場だけの製品で海外ではそれほど売れていないということだ。そのため、ミラーレス一眼に注力するメーカは危ういとされるのだ。この議論のポイントはミラーレス一眼が日本以外で本当に売れていないのか、売れていないとするとその原因は何か、ということだ。
- 確かに、ミラーレス一眼は海外ではそれほど売れていないらしい。ただ、それは日本市場に比べてということだ。日本人のカメラ好きは世界的にも突出している。海外から見た日本人のイメージの1つに「眼鏡をかけてカメラを首からぶら下げている」というものがある。携帯電話にカメラ機能を追加してメールで送る「写メール」を開発したのも日本人だ。それほどカメラが、写真が好きな国民と他の国民を同じに考えてはいけないだろう。
- 私はミラーレス一眼のコンセプトが悪いとは思っていない。ただ、それぞれの国にはそれぞれのお国柄がある。海外旅行をすれば良くわかるが、観光地はカメラでいっぱいである。そのカメラをつらつら眺めるとどんなカメラが売れているかが何となくだがわかるのだ。最近はiPadを掲げて写真を撮る猛者も多いのだが、普通のカメラがやはり多い。観光地だけあってスマートフォンで写真を撮る人の割合も低いのだ。そこで多く見かけるのがネオ一眼だ。もちろん、一眼レフは多い。コンパクトカメラも多いのだが、ミラーレス一眼よりもネオ一眼が多いように思える。
- これが意味するところはファインダを覗いて撮影するスタイルがまだ一般的だということだ。背面液晶を見て撮影するスタイルが市民権を得ているのはスナップだけなのかもしれない。日本人に限らず、旅行などの特別なイベントにはカメラを持っていくのではないだろうか。スマートフォンで撮る写真はそれなりでしかない。小指の爪ほどのイメージセンサ、豆サイズのレンズでは特別な写真は撮れないと皆わかっているのだろう。「大切な写真はカメラで撮る」というのは国を問わず、誰もが思う基本原則なのだろう。
- スマートフォンやタブレットがカメラを脅かす存在であることに異論はない。しかし、特別なイベントはカメラで撮りたいというのも理解出来る。つまり、私には現時点でスマートフォンにおされてカメラが売れないという意見には無理があると思えてならないのだ。私の考える理由はこうだ。カメラは既に1家に1台ではなく、1人に1台の製品になっている。つまり、成熟した製品になっているのだ。しかし、これまでは発展途上の製品で、高画素化に代表されるモデルチェンジを繰り返してきた。800万画素で十分と言われながら、今やエントリーモデルでも2400万画素までに高画素化しているのだ。
- これ以外にもオートホワイトバランス、オートフォーカス、露出制御、手ぶれ補正、など基本性能が大幅に向上しているのだ。つまり、これまでは毎年のようにカメラを買い替えてきたユーザが買い替えなくなってきたのではないだろうか。カメラメーカは旧製品との差別化を図るためにアートフィルターやHDR、タイムラプス、などの付加機能を充実させているが、基本性能の向上は足踏み状態である。私はカメラメーカはこういう状況に対応すべく、モデルチェンジサイクルを伸ばすべきではないかと思っている。現状での1年程度というモデルチェンジサイクルでは消耗戦にしかならないからだ。
- 加えて、カメラのボディ価格は下がる一方である。基本性能が上がっているのに価格が下がるというのはユーザにはうれしいことだがメーカにとっては厳しい。これはシェア争いの結果で、カメラのレンズに互換性がないため、安い価格でボディを販売してユーザを獲得し、レンズの販売で儲けようという戦術なのだ。これはインクジェットプリンタを安く販売してインクで儲けるというビジネスモデルと同じように見えるが、実は違う。インクは消耗品だがレンズは消耗品ではなく、追加購入の必要がないからだ。
- ユーザがダブルズームキットを買って「これで充分」と思ってしまうのはカメラメーカの大きな課題になっている。私見だが、これはカメラメーカの自業自得である。そもそもボディを安く売るだけで良いのにレンズをキットにするからいけないのだ。レンズで儲けるはずが、そのチャンスを失ってしまっている。昔はレンズキットというのは50mmの標準レンズ付きだったのだが、いつからこんなことになってしまったのだろうか。
- では、スマートフォンは恐るに足らないのかというと、そうではない。「カメラがなければ写真は撮れない」という名言がある。私はそれを米谷美久氏の文章で見たのだが、写真を撮る人なら誰もが言いそうな言葉である。シャッターチャンスはいかなる時にもあるが、普通はカメラをいつも持ち歩かないということだ。カメラメーカは「常時携帯できるカメラ」を目指してコンパクトカメラの小型化に取り組んできた。デジタルカメラになり、さらに小型化されフィルム切れの心配もなくなっている。しかし、シャッターチャンスはいつもあるわけではなく、カメラを持ち歩く必然性が弱いのだ。これに対してスマートフォンは電話として常時持ち歩いているツールであり、常時電源が入っているのでいつでも撮影可能なのだ。このアドバンテージは大きいだろう。
- 私はカメラメーカがインターネットばかりに注力している状況に危機感を覚えている。ブログ用に直ぐにネットに写真をアップロード出来る機能をアピールするコンパクトカメラが増えているのだ。その機能自体を否定するわけではないのだが、カメラはそんなところでスマートフォンには絶対に勝てないことを認識すべきである。
- 先に述べたとおり、重要なのは「ファインダ」ではないのだろうか。私は欧米でミラーレス一眼がそれほど売れていなかったのはファインダがついていなかったからだと思っている。そして、最近は少しずつだが欧米でミラーレス一眼の販売が伸び始めているのはファインダ内蔵モデルがいくつか登場したからではないだろうか。それ以前はパナソニックが孤軍奮闘してたが、ニコンやソニー、オリンパスがファインダ内蔵のモデルを投入したことで潮目が変わったのだと思っている。
- ここで重要になってくるのは電子ビューファインダ(EVF)の完成度である。光学ファインダ(OVF)を使ってきたユーザがEVFに違和感を持つのは仕方ないが、許容出来るレベルに仕上げなければならないのだ。私の個人的な感覚では現状のEVFはいい線をいっているのだが、もう一歩というところだ。応答性はもちろんだが、白飛び、黒潰れしないなどの再現性の向上が望まれる。私はミラーレス一眼が欧米で売れていないのはなく、OVFに比べて大きく見劣りしないEVFを搭載すれば十分に売れるのではと思っているのだ。
2014/03/02
CP+ 2014 雑感 (その2)
- オリンパスについて続きを書いてみたい。まずはオリンパスのイチ押しのE-M10から書いてみよう。E-M10はE-M1やE-M5の廉価版のエントリーモデルである。E-M5と同じ1605万画素のイメージセンサを搭載し、E-M1と同じ画像処理エンジンTruePic VIIを搭載しているのだが、防塵防滴ではなく、手ぶれ補正を5軸ではなく3軸にスペックダウンしてコストダウンを図っている。オリンパスはよく「下克上」という下位モデルなのに基本性能で上位モデルを上回ってしまう失策を繰り返してきた。それによって先に発売された上位モデルの販売が失速したことが何度もあったのだ。しかし、今回はそうではなく、良い意味で差別化ができているのではないだろうか。
- ただ、デジタル処理についてはE-M1やE-M5を上回っている部分があり、ライブコンポジットという機能が追加されている。これは夜景撮影時に1〜3秒程度の長時間露光写真と数分の長々時間露光写真をカメラ内で合成する機能である。これによって夜景と星や車のテールランプの軌跡を同時に写真に収めることができる。こういう写真を三脚は必要ではあるものの背面液晶で確認しながら簡単に撮影できるのだ。オリンパスはライブバルブなどもそうだが、夜景撮影のハードルを下げようと工夫を重ねているようだ。これはフォーサーズはイメージセンサーが小さいから高感度撮影が弱いという指摘に対する1つの回答なのだろう。
- 個人的にはE-M10には気に入った点とガッカリした点がある。気に入ったのはフラッシュが内蔵されたことだ。やはり、小さくても内蔵している方が良い。超小型の外付けフラッシュを同梱するというのは設計者の敗北・妥協でしかないと思っていただけにようやく実現したかと思う。ただ、グリップが小さいのにはガッカリした。私はE-M1のようなグリップを期待していたからだ。E-M10には撮像面位相差AFはない。そのため、フォーサーズのレンズを使用することを想定していないのだろうが、M.ZUIKO DIGITAL PROレンズを使うにはグリップが頼りない。まあ、冷静に考えるとエントリーユーザがM.ZUIKO DIGITAL PROレンズを使う可能性は低いだろう。一応、シンプルな外付けグリップを用意したのがオリンパスの気配りというところだろうか。また、背面液晶はフリーアングルにはなっていない。これも残念な点だがE-M10はマイクロフォーサーズとしても小型のカメラなので仕方がないだろう。E-M10の価格はオリンパスオンラインショップで79,800円である。微妙な価格だが、まあ良いだろう。
- オリンパスはE-M10に合わせて3本のレンズを発表した。1本はようやく登場した標準レンズのM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8、2本目は超薄型の標準電動ズームレンズであるM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZ、最後はフィッシュアイボディーキャップレンズ BCL-0980である。
- まず、標準レンズのM.ZUIKO DIGITAL 25mm F1.8であるが、F1.8というのは並である。まあ、パナソニックにLEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 ASPH. があるので差別化したと解釈しよう。パナソニックのLEICA DG SUMMILUX 25mm/F1.4 ASPH. のメーカ希望小売価格70,000円に対して42,000円というのはレンズの格を良く表していると思う。さすがにF1.2とかを望んではいけないのだろうか。まあ、私はこれまでOMシステムでさえ標準単焦点レンズを買ったことがない「変わり者」なのでこれ以上のコメントは控えよう。
- 次の標準電動ズームレンズであるM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZはパナソニックのLUMIX G VARIO 12-32mm/F3.5-5.6 ASPH./MEGA O.I.S.への対抗モデルだろう。このレンズは中に手ぶれ補正ユニットを内蔵しているのに70gと超軽量のレンズで沈胴時に24mmと薄くなり、LUMIX DMC-GM1とセットで発売された超薄型レンズである。オリンパスのM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 EZは93gと少し重いが沈胴時には22.5mmと現時点では世界最薄である。ライバル競争によって双方の技術が磨かれるわけだ。
- 余談だが、パナソニックが明るい高級ズームレンズであるLUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S.やLUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8 /POWER O.I.S.を発売し、ヒットしたことがオリンパスのM.ZUIKO DIGITAL PROレンズを生んだと言えるだろう。同じマイクロフォーサーズ陣営である両社だが、カメラ市場での存在感はオリンパスの方がかなり上である。パナソニックのラインアップはよく考えられているのだが歴史が浅いからだろうか。ちょっとかわいそうである。良きライバルとして切磋琢磨して欲しい。
- 最後の魚眼のボディーキャップレンズはメーカ小売価格が12,000円で、もはやキャップではない。パンフォーカス的に魚眼レンズが使えるのは面白いとは思うが、ちょっと無理がある。個人的にはパナソニックのLUMIX G FISHEYE 8mm/F3.5の方がまじめに作られた良いレンズだと思う。まあ、95,000円のレンズと比べてはいけないし、オリンパスもレンズではなくボディキャップだと言っているのでここまでとしよう。(笑)
- さて、最近私が気にしているのはネオ一眼なのだが、オリンパスも新製品を発表している。STYLUS SP-100EE (Eagle's Eye)は135換算で24mm〜1200mmという超弩級光学ズームを搭載したネオ一眼である。Eagle's Eyeという愛称が物語るとおり、ドットサイト式照準器を備えているのも特長である。ドットサイトとはスナイパーライフルなどの照準器に搭載されている照準用の赤いレーザー光線を照射する機構のことなのだが、SP-100EEにはそれが搭載されているのである。ただ、映画で見るように被写体に赤い点がポッと当たるわけではなく、照射された赤いレーザー光はポップアップストロボの下部に用意された半透過型ミラーまでしか届かない。その半透過型ミラー越しに見て、赤い点を被写体に重ねるとファインダ内に被写体を大きく捉えることができるというわけだ。
- 鳥や飛行機などを撮る場合にEagle's Eye(ドットサイトスポット)で被写体を追いながら、最後にファインダで押さえるという使い方を想定しているのだろう。ただ、ドットサイトの精度はどうやって維持するのだろう。発光部と半透過型ミラーの距離は数センチであり、そこでの誤差は数百メートル先ではとても大きなものになってしまう。ちょっと気になるものの、面白いアプローチである。ただ、イメージセンサは1/2.3インチと極小で、レンズの明るさもF2.9〜6.5と暗い。私には特殊用途のカメラでしかなく、数が売れるとは思えない。製品化したのはかなりの冒険であろう。ただ、この冒険は経営的にはレッドカードだが、趣味の道具のカメラとしてはリコーの全天球カメラのTHETAと同様に評価出来るだろう。
- オリンパスにはもう1台STYLUS 1という正統派のネオ一眼がある。こちらは135換算で28mm〜300mmの光学ズームだが、全域F2.8なのが特長である。明るい高倍率ズームは大型になるのだが、イメージセンサが1/1.7インチと小さいためリーズナブルなサイズに収まっている。スタイルもOM-Dライクに仕上げられている。こういうカメラが欧米で売れているのだ。
- そういえば、OLYMPUS OI. ShareはFlashAirに対応しているSDカードを挿せばE-5でも使えるかと思ったのだが、カメラ側が対応している必要があるらしく、「E-5では使えません」と言われてしまった。普通に考えればFlashAirは単なる無線通信機能でしかないので、カメラ側に通信機能がついていないと使えないのは当然ではある。私は最近夜景撮影に興味がわいてきており、レリーズ代わりにリモコン機能が使えるかと思っていただけに残念である。素直にレリーズかリモコンを買えということだろう。
- 最後に書いておこう。M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROは開発が始まっているそうで、どのレベルのものかは不明だが「良い感じ」らしい。オリンパスに関する情報は以上である。
2014/02/23
CP+ 2014 雑感 (その1)
- デジタルカメラ業界展望の記事が書きかけなのだが、今年のCP+はいろいろあったのでそちらを先に公開しよう。
- 今年のCP+は大変だった。首都圏を20年ぶりの大雪が襲ったからだ。その1週間前にも30cm近い雪が積もったというのに、CP+に合わせて再びそれを超える雪が積もってしまった。1週間前は金曜日の夕方から積もり始めたが、この週は金曜日の朝から積もり始めたのだ。文字通り、CP+を直撃したのである。
- 初日の木曜日は午前中がプレスデーなので一般公開は午後からになる。そのため、私は毎年金曜日に休暇をとってCP+に3日間入り浸ることにしている。しかし、今年は大雪のため、金曜日は比較的空いていたCP+を満喫したものの帰宅困難者になり、土曜日は交通機関が運休したためCP+そのものが中止になってしまい自宅の雪かきで疲れ果ててしまった。そして、日曜日は大混雑したCP+の会場で移動に四苦八苦するはめになったのである。
- 記録を読み直してみると2011年にも雪が降っている。この2011年からCP+は3月から2月に開催時期が変更されている。結果として震災前の開催になったのだが、降雪のリスクを考えていなかったのだろうか。2011年の来場者数は49,368名だったが、快晴に恵まれた2012年は時短開催だったにも関わらず65,120名、2013年も同じく62,597名であったことを考えると降雪の影響を甘く見てはいけないようだ。
- 今年の来場者は公式発表によると、42,203名だったそうだ。2/13(木)は11,750名、2/14(金)は8,792名、2/15(土)は中止、2/16(日)は21,661名ということだ。時短解除になったにも関わらず、カメラに関わる多くのメーカや関係者が関わったイベントがこのような形になってしまい残念である。来年は2/12〜2/15という同じ2月開催の予定だが、3月開催に戻した方が良いのではないだろうか。会場確保など調整が必要だろうが、「地球温暖化」が実は嘘だったことは皆が薄々気づき始めていることである。日本においては2月は雪の季節であることを再認識した方が良いのではないだろうか。
- 余談だが、大雪から10日近く経っても除雪が追いつかずに道路が通行出来ないため孤立している集落があるらしい。自衛隊がヘリコプターで救出活動を行ったので無人らしいが恐ろしいことだ。これは首都圏といってもかなり郊外でのことではあるが、異例の事態である。震災以降は1週間程度の備蓄食料を持つようにしている家庭が多いのだが、それを超えると自力ではどうしようもないだろう。また、高速道路も雪で埋もれて走行中だった車が3〜4日間も立ち往生した。乗り捨てられた車が除雪の妨げになった側面もあるらしいが、そもそも30cm近い降雪を想定していなかったのだろう。除雪には雪の捨て場が必要であり、大量の雪を処理しきれなかったのではないかと思ってしまう。中央自動車道だけでなく、東名高速道路や新東名高速道路も同様で、トラック輸送が麻痺してしまった。結果としてスーパーやコンビニの棚からはパンなどが消えてしまった。1週間もの間、棚が空の状態が続いたのである。震災時を思い起こしたが、近所でも雪の重さに耐えきれずカーポート(簡易車庫)の屋根が支柱ごと潰れていたり、街路樹が折れていたり、未だに融けずに残っている大量の雪がその恐ろしさを我々に刻み付けたのだ。
- さて、まずはオリンパスについて書いてみよう。オリンパスのイチ押しはOM-Dの新モデルであるE-M10であるが、私の興味はM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PROにあった。これまで超広角ズームとしか発表されていなかったが、CP+に合わせて発表されたそのスペックは私の予想を上回ってきた。私の予想は7-12mm F2.8だったのだが14mmまでカバーするのである。大きさも予想以上に小さく、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROとほぼ同じ太さであった。もちろんモックアップなのだが、このサイズのまま製品化できるらしい。
- フォーサーズのZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0に比べて非常にコンパクトになっているので、その理由を説明員に聞いてみた。1つはフランジバックが短くなったこと、もう1つは光学性能のみに頼るのではなく、デジタル補正を加えていることが理由だそうだ。デジタル補正についての私の考えは少し変わってきているので、そこは別途書いてみたい。どちらにしても、製品としてリリースされないうちは絵に描いた餅でしかないので、これ以上のコメントは控えたい。
- オリンパスはマイクロフォーサーズに高性能レンズをようやく投入しようとしているが、PROレンズはまだ1本しかない。開発の遅さについての説明員は「10年先でも通用するレンズにするために時間を要している」と説明してくれた。イメージセンサは年々進化していくので、レンズ性能が追いつかなくなってくるのである。そのため、レンズは定期的にリニューアルされるのだが、オリンパスのレンズはほとんどリニューアルされないのだ。それはリニューアルの必要がないほど性能が良いということでもある。
- まあ、実際には企業体力的にリニューアルにリソースを割けないという面もあるのだろうが、高画素化しても全く問題なく使えるSUPER HIGH GRADE(松)やHIGH GRADE(竹)のZUIKO DIGITALレンズ群の性能は折り紙付きである。オーバースペックという意見もあるだろうが、レンズは資産であり、良いものを求めたいという意見の方が多いのではないだろうか。M.ZUIKO DIGITAL PROレンズには松・竹レンズに負けない性能を目指してもらいたい。
- そういえば、以前には「動画での高速AF対応のためにインナーフォーカス化するのでフォーサーズのレンズ設計が流用できない」と説明を受けたのだが、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROはインナーフォーカスではない。確かにフランジバックが異なるので設計はやり直しになるのだろうが、インナーフォーカス化が理由というのは疑問である。ユーザとはいえ、メーカの説明員が開発品の状況を何でも教えてくれるわけではないだろうから、こういうことは話半分で聞いた方が良いのだろう。
- もう1つ、マイクロフォーサーズにテレコンバーターが何故無いのかも聞いてみた。説明員によると、1つは設計が難しいこと、もう1つは需要が少ないことが理由らしい。フォーサーズのZUIKO DIGITALのテレコンバータは全てのレンズに使用可能な高性能なものだ。超広角ズームレンズや魚眼レンズにも使用可能なテレコンバーターは珍しく、それはZUIKO DIGITALレンズ自体の光学性能が素晴らしいことを物語っているわけだ。説明員は言葉を選びながら話してくれたが、私なりに解釈したことを書いてみたい。オリンパスの公式見解ではないのでお間違いなく。
- まず、マイクロフォーサーズのM.ZUIKO DIGITALレンズはそもそもの光学性能が普通であるところをデジタル補正で高性能化しているらしい。これは小型化とコスト低減を優先しているからだが、テレコンバーターにそれぞれのレンズの補正情報を組み込むことは困難で、フォーサーズのように全てのレンズに対応させることは極めて難しい。しかし、レンズを限定すれば作ることは可能らしい。例えば、M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROやM.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4 PRO専用なら可能性があるのではないだろうか。開発時にテレコンバーターを想定しておけば良いからである。
- しかし、オリンパスからはテレコンバーターの開発発表はない。M.ZUIKO DIGITAL PROレンズの150mm〜300mm(135換算300mm〜600mm)の空白域を放置してはいけないだろう。これではシステムとしては完成したと言えないからだ。
- さて、もう1つの需要が少ないという点はハイアマチュアユーザがマイクロフォーサーズユーザになるか否かにかかっているだろう。フォーサーズユーザの去就とM.ZUIKO DIGITAL PROレンズの売れ行きが重要なのだ。そして、そのためにはオリンパスはM.ZUIKO DIGITAL PROレンズを早く発売しなければならないだろう。良いレンズが揃っていなければユーザは見向きもしないからだ。頑張ってもらいたい。
2014/02/15
2014年のデジタルカメラ業界展望(その4)
- フルサイズのことを書いたが、実際に製品化してしまったのがソニーである。ミノルタ時代のレンズ資産が使えると思ったのだろうが無謀である。ソニーはイメージセンサを開発・製造・販売しているのでフルサイズセンサの調達では有利であるが、販売数量はニコン、キヤノンに比べると桁違いに少ないのではないだろうか。
- 困ったことにソニーは一眼レフのAマウントだけでなく、ミラーレスのEマウントでもフルサイズ機を登場させてしまった。つまり、レンズマウントが2つ、センサーサイズが2つで4倍のレンズを開発しなければならないのだ。1マウント1サイズならば20本ですむところを80本ものレンズを開発するなど正気の沙汰ではない。ソニーは何を考えているのだろう。
- 1つ考えられるのは想定するレンズの数が違うということだ。1マウント1サイズで7〜8本で十分と思っているなら30本程度ですむ。それなら可能性はあるだろう。しかし、それは中途半端なシステムでしかないのではないだろうか。カメラシステムはプロ、ハイアマチュア、アマチュア、ビギナー、と各階層に受け入れられなければ成り立たないのだ。オリンパスはフォーサーズでレンズのグレードを3つに分けたし、ニコンには2つのグレードがあるように見える。中途半端なレンズラインアップはプロにもアマチュアにも受け入れられなくなってしまうのではと懸念している。
- まあ、レンズの開発ロードマップで夢を語っているうちは良いのだが、待てど暮らせどレンズが発売されない、となるとユーザは離反してしまう。フォーサーズの末期を思い出して欲しい。100mmマクロはロードマップに載っていたのだが結局発売されなかった。そして、オリンパスはフォーサーズ終了宣言に追い込まれたわけだ。
- 同じように4倍のレンズを開発しなければならないのがペンタックスである。645マウント、Kマウント(APS-C)、Qマウント(1/2.3インチ)、Qマウント(1/1.7インチ)の4種類を開発しなければならないからだ。先に書いたとおり、これにKマウント(135)が加われば5倍になるのだ。「大は小を兼ねる」という意見がある。135サイズ(フルサイズ)用のレンズはAPS-Cサイズのイメージセンサで問題なく使えるし、1/1.7インチ用のレンズは1/2.3インチ用に問題なく使えるからだ。ただ、それは、小型さのメリットをスポイルしていることを忘れてはならない。つまり、同じマウントサイズで小さいイメージセンサのカメラの存在価値が落ちてしまうのだ。
- ここで各社のマウント数とイメージセンサのサイズ数をまとめてみよう。
メーカ |
レンズ群種類 |
分類 |
マウント |
センササイズ |
ニコン |
3種類 |
一眼レフ |
Fマウント |
FX(135) |
DX(APS-C) |
ミラーレス一眼 |
1マウント |
CX(1インチ) |
キヤノン |
3種類 |
一眼レフ |
EFマウント |
EF(135) |
EF-S(APS-C) |
ミラーレス一眼 |
EF-Mマウント |
EF-M(APS-C) |
ソニー |
4種類 |
一眼レフ |
Aマウント |
135 |
APS-C |
ミラーレス一眼 |
Eマウント |
135 |
APS-C |
ペンタックス |
4種類 |
一眼レフ |
645マウント |
44x33mm |
一眼レフ |
Kマウント |
APS-C |
ミラーレス一眼 |
Qマウント |
1/1.7インチ |
1/2.3インチ |
オリンパス |
2種類 |
一眼レフ |
フォーサーズマウント(終了) |
フォーサーズ |
ミラーレス一眼 |
マイクロフォーサーズマウント |
フォーサーズ |
パナソニック |
2種類 |
一眼レフ |
フォーサーズマウント(終了) |
フォーサーズ |
ミラーレス一眼 |
マイクロフォーサーズマウント |
フォーサーズ |
シグマ |
1種類 |
一眼レフ |
SAマウント |
APS-C |
富士フィルム |
1種類 |
ミラーレス一眼 |
Xマウント |
APS-C |
- 一眼レフとミラーレス一眼はフランジバックが異なるので同じマウントであってもレンズは別ものになる。そのため、フランジバックの短いミラーレス一眼のマウントは一眼レフとは別のひと回り小さいサイズになる。つまり、ミラーレス一眼に参入した段階でレンズマウントは2つになるのだ。もちろん、一眼レフを持たずにミラーレス一眼に参入した場合にはこの限りではない。また、パナソニックやオリンパスのように一眼レフから撤退したケースも同様である。
- これを見ると危ないのはソニーとペンタックスだ。4種類の組合せがあるのは多すぎる。さらに、トップ2と比べてもシェアが桁違いに低すぎるのだ。簡単に書けば、売上に対して製品ラインアップを広げ過ぎているのである。経営的にはイエロー(警告)どころかレッド(退場)レベルである。
2014/02/08
2014年のデジタルカメラ業界展望(その3)
- 自動車業界の話を書いたが、カメラ業界はどうだろうか。私が一番懸念しているのは「選択と集中」が出来ていないという点である。製品ラインアップが絞り込めていないのだ。
- 確かにコンパクトデジタルカメラはラインアップの縮小が続いているが、各社のラインアップを見ると似たり寄ったりで「個性」が感じられない。まあ、我々の見えないところで開発だけを請け負っているメーカがあるので、そのプラットフォームを採用すると各社似たようなカメラになってしまうのかもしれない。しかし、それでは共倒れも時間の問題である。
- 主にプラットフォームを開発していたのは三洋電機だったのだが、パナソニックに買収されたため問題になっていた。パナソニックはカメラメーカでもあるので、ライバル会社にプラットフォームを依存するのはリスクがあるというわけだ。パナソニックはプラットフォームを開発していた部門を三洋DIソリューションズとして分社したものの理解を得られず、結果として三洋DIソリューションズを投資ファンドに譲渡することになった。現状はよくわからないが、このようなOEM/ODM供給はまだ続いていると思われる。それを否定するつもりはないが、ラインアップを絞り込むという観点で考えると「そこまでしてラインアップを補完する必要はないのでは」と思えてならない。恐らく、最近のラインアップ縮小はそういうOEM/ODMモデルが打ち切られているのではないかと推測する。
- 問題はレンズ交換式カメラである。私が驚くのはこの期におよんでフルサイズ(135サイズ)に参入しようというメーカがあることだ。135サイズのレンズ交換式カメラの市場は大きくない。ほとんどプロとハイアマチュアしかユーザはいないのである。そして、ニコンとキヤノンの牙城である。私にはそこに参入するのは無謀だと思えてならない。こういう「フルサイズへの参入をほのめかすメーカ」を私は要注意メーカに分類している。
- カメラメーカがフルサイズに参入しようとするのは過去のレンズ資産を活かせるからだ。歴史の長いメーカほど中古市場やユーザのところに多くのレンズが死蔵されている。フルサイズのカメラを発売すれば、死蔵されたレンズが使えるからと、ユーザが購入してくれることを期待するのであろう。しかし、フィルムカメラ用の古いレンズは今や使い物にならず「おもちゃ」でしかない。結果として新たにフルサイズ用のレンズを開発しなければならないのだが、その開発費用に対して市場のパイはあまりにも小さい。私には儲からないと思えてならない。
- 気がかりなのはオリンパスである。フォーサーズをやめてマイクロフォーサーズに集中したと思いきや、「より大きなフォーマットへの参入の可能性」をにおわせている。さすがに粉飾決算をするだけあって愚かである。フォーサーズマウントもマイクロフォーサーズマウントもフルサイズのOMマウントとは異なるからだ。つまり、死蔵されたレンズが使えるメリットはなく、新規にレンズを開発するリスクだけがあるのである。私には世間に自らの愚かさを晒していると思えてならない。
- フルサイズに参入をにおわせているのはペンタックスも同じである。HOYAの資産を食い潰し、リコーの資産を食い潰しながら、どこに進もうとしているのだろうか。確かにKマウントのフィルムカメラ用のレンズは死蔵されているかもしれない。しかし、APS-Cサイズ用のレンズと違ってリニューアルされていないのだ。そして、ペンタックスには他社と違ってレンズマウントの種類が多い。645マウントやQマウントも持っているのだ。それらのレンズも開発しなければならない。そんな余裕があるようには見えないのだが、何を考えているのだろうか。
- まあ、両社は実際にはフルサイズのカメラを製品化しているわけではない。単なる噂やユーザへのリップサービスのつもりでメーカの広報が情報発信しているだけなのかもしれない。私は実際に製品化された時が終焉へのカウントダウン開始だと思っている。両社とも良識ある判断をして欲しいものだ。
2014/02/01
2014年のデジタルカメラ業界展望(その2)
- デジタルカメラ業界を考える際に私が参考にしているのは自動車業界である。理由は簡単で、日本の製造業の中では珍しくトップ2以外のメーカが元気だからだ。何か再生のためのヒントが得られるのではという期待があるのだ。
- 考えてみると、自動車業界で3番手以降のメーカが生き残っている理由は「個性」ではないだろうか。自動車は単なる移動ツールではなく、自動車としての走行性能や燃費、安全性能などのスペックは当然だが、デザインや乗り心地など個性でも評価されるのだと思う。例えば、ホンダはF1に代表されるレーシングカーのイメージが強い。マツダはロータリーエンジンやディーゼルエンジンの、スバル(富士重工)は水平対向エンジンのイメージがある。それらのスペックの優劣はさておき、自動車の個性がユーザの趣味・嗜好に合えば根強いファンが生まれると思えるのだ。
- 「個性」と書いたが、これは難しいことだ。何故なら優秀な日本のメーカは簡単に模倣してしまうからだ。例えば、スバル(富士重工)が苦労して開発した運転支援システムのアイサイト(Ver. 2)は低速時の追突防止に有効な機能だが、今や多くの自動車メーカも同様の機能を搭載してきている。つまり、現状では「個性」ではなくなってしまったのだ。
- しかし、簡単に真似出来ない個性もある。先に述べたホンダのスポーティなイメージ、マツダのロータリーエンジンやクリーンディーゼルエンジン、スバル(富士重工)の水平対向エンジンは他社の追随を許していない。簡単に真似される技術と真似出来ない技術、このあたりに1つのヒントがありそうだ。
- さて、日本の自動車業界が安定してずっと成長を続けてきたというわけではない。自動車業界でも厳しい時はあったのだ。最近では東日本大震災やタイの大洪水での落ち込みが記憶に新しいが、その前に日本のバブル崩壊があった。それまでは高級車が飛ぶように売れていたが、それが止まってしまったのだ。当時は「いつかはクラウン」と宣伝していたトヨタがその最高級車クラウンを超えたセルシオという車を売り出したりしていたのだが、車種は半減した。当時は自動車ディーラーがたくさんあり、同じ自動車が外装・内装を少し変えただけの別車種として複数のディーラーで販売されていたのだ。
- 自動車メーカはまず、ディーラー毎に専用だった車種を複数のディーラーで併売するようにして車種を減らした。そして、ディーラーを統合した。例えば、ホンダはベルノ、クリオ、プリモ、という3つのディーラー群があったが、ホンダカーズに1本化した。トヨタも日産も同じである。必然的にディーラー固有の車種がなくなり、車種が半減したのである。ホンダの例を簡単に書けば、クリオ店用のアコードとプリモ店用のアスコット、ベルノ店用のラファーガは結局アコードに1本化された。元々はアコードだったのだが、バブルで3車種に分かれていたのである。私はホンダ党なので、他のメーカは詳しくないが、トヨタはもっとディーラー数が多く、兄弟車も多かったのだ。
- 中には業績悪化で他のメーカの傘下に入ったケースもあったが、これらの「集中」によって自動車産業はバブル崩壊を乗り切ったのだ。もちろん、現状の日本の自動車業界はバブル期には遠くおよず、価格の安い軽自動車やリッタカーが売れ筋ではあるが、多くの自動車メーカが生き残り、切磋琢磨しているわけである。まあ、エコカー減税などの政府の支援もあったわけだが、メーカ自身の努力があったのである。
- 自動車業界が強いと思うのはトップメーカがイノベーションを行っていることだ。普通は3番手以降のチャレンジャーが行うのだが、ハイブリッドカーのプリウスを業界初で製品化したのはトヨタである。トップメーカが守りに入らず攻めていることは注目に値する。
- もう1つ強いと思うポイントは海外生産、海外販売である。アメリカ人にホンダはどこのメーカかと聞けば、「アメリカのメーカ」と答えるように現地化が進んでいる。当然、開発もアメリカで行われており、アメリカに合った自動車が販売されているのだ。同じアコードであっても日本仕様とアメリカ仕様、ヨーロッパ仕様はかなり違うのである。これは大きなヒントであろう。
2014/01/26
2014年のデジタルカメラ業界展望(その1)
- 年末年始をのんびり過ごして未だに怠け癖が抜けない。暦が良く9連休もあったので、なかなか生活サイクルが元に戻らなかったのである。週一回の更新を心がけていたが、滞ってしまった。情けないが、趣味のページなんてそんなものだろう。ボチボチ再会したいと思う。
- さて、年末年始になると「総括」やら「展望」がいろいろ語られるので、私も少し書いてみたい。目的は2つある。1つはこのページの主旨と同じで自分の考えの記録である。そして、もう1つの理由は既存の展望に納得出来ないことである。経済面に特化した展望にはカメラの知識不足が見え隠れしてしまうし、カメラ雑誌系の展望にはカメラメーカへの遠慮が見え過ぎるのである。それゆえ自分の考えを公開することに意味があると思う。
- 私の考えを書く前に、まず、各所で語られている展望をざっくりまとめてみたい。それらには大きく2つあるようだ。1つはニコンとキヤノン(とソニー)以外は生き残れない、というもので、もう1つは各社のバラ色の未来が語られているものだ。前者は経済系ライターが、後者はカメラ雑誌系ライターやカメラメーカ自身が語ったもののようだ。両者のギャップは経済面で見ているか趣味的に見ているかの違いだろう。
- これらの意見を見て思うのは「何故、趣味の道具に機械的に経済原理を当てはめるのだろう」、「何故、『何でもやります』というバラ色の夢物語を無責任に語るのだろう」ということだ。つまり、両極端に過ぎるのだ。
- リーマンショック以来、「シェアがトップ2の企業しか生き残れない」という法則が当然のように語られている。そして、トップ2に入れない企業はその分野から撤退し、自らがトップ2になれる事業に全力を注ぐという「選択と集中」の戦略が常識になりつつある。これは高度経済成長から低成長に変わり、市場のパイが大きく増えない現状では一理あるのだが、全ての業界に当てはまるわけではない。例えば、自動車業界はこの理屈ではトヨタと日産の2社しか生き残れないということなのだが、そんな状況ではない。ホンダは元気だし、軽自動車のスズキも元気いっぱいである。
- しかし、自動車業界は例外なのかもしれない。この法則は多くのところで生きているのである。素直にデジタルカメラ業界に当てはめて考えてみたい。まず、かつて一眼レフ5大メーカと言われたニコン、キヤノン、ミノルタ、ペンタックス、オリンパスの5社から見てみよう。シェアがトップ2のニコンとキヤノンは除いて、3番手以降では、ミノルタがコニカと合併してコニカミノルタになり、カメラ部門が切り離されてソニーに吸収されている。ペンタックスは潰れてHOYAに買収されて救われたが、カメラ部門は愛想を尽かされて放り出されてしまった。結局再びリコーに買収されて今に至っている。オリンパスは経営難だったにも関わらずそれを隠して粉飾決算をしていた。その後始末に追われているのと同時に、カメラ部門は赤字体質から抜け出せずにいる。
- 次に、映像事業からカメラ事業に参入したパナソニックやソニーを見てみよう。最近ではデジタルカメラでも動画撮影が可能になっており、ビデオカメラとの境界があいまいになってきている。彼らはそれ以前から大きなイメージセンサを使うデジタル一眼レフカメラの可能性に着目していたのである。パナソニックはオリンパスからカメラ技術の提供を受けてユニバーサルマウントのフォーサーズ規格に賛同し、ソニーはコニカミノルタのカメラ部門を買収することでそれぞれ参入を果たしたのだ。
- ただ、両社ともその映像事業の中核の1つであるテレビ事業が不振を極めている。原因はさまざまだが、1つにデジタル化がある。アナログテレビにはノウハウが必要だったが、デジタルテレビは部品を揃えれば誰でも作れるのだ。そして、製造に関わる人件費が安く、為替レートが安い国のメーカならそれだけで低価格に造れてしまうのだ。結果として日本のテレビメーカは価格競争に敗れ、パナソニックもソニーも大規模なリストラに追い込まれてしまっている。
- デジタルカメラメーカには他にも富士フイルムやシグマ、リコー、カシオ計算機などもある。富士フイルムやカシオ計算機はコンパクトデジタルカメラで大きなシェアを誇っていたこともあった。しかし、コンパクトカメラ事業は下から上からスマートフォンとミラーレス一眼にユーザを奪われ、非常に厳しい状態である。リコーは高級コンパクトカメラに活路を見出したが、そこも今は激戦区になってしまっている。シグマは元々交換レンズメーカだったのだが、カメラ事業に参入してきた。レンズを作っていれば当然描く夢なのだが、現実は非常に厳しいようだ。
- こうして見てみると、確かにニコンとキヤノンのトップ2以外には安泰と思えるメーカが1社もない。現在は日本の製造業には厳しい状況ではあるが、ちょっと悲惨である。少し考えてみたい。
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そんなにたいしたページではありませんが…(^^;)
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