フォーサーズ雑記帳(バックナンバー)
このページには フォーサーズやMacintosh についての個人的メモを掲載しています。不定期に更新します。
2013/04/20
CP+ 2013 雑感(その3)
- さて、前回にE-620と40-150mmの組合せとE-5と50-200SWDの組合せの写真の差に唖然とし、考えを改めなければならないとを書いたのだが、何の考えを改めないといけないのかを書いておこう。
- 実は今年の私のCP+のテーマは各社のミラーレス一眼カメラを比べることだった。寄る年波には勝てぬのだろう、E-5を中心としたセットが重く感じてきたからだ。私はアンチ・マイクロフォーサーズだったのだが、そうも言っていられなくなってきてしまった。詳しくは別途書いてみたいが、このところ、各社のミラーレス一眼を比較検討していたのだ。私はE-5を中心としたシステムとE-620を中心にした小型軽量システムの2つを使い分けているのだが、そこにもう1つの超小型軽量システムを加えるとなると慎重にならざるを得ない。システム一式となるとかなりの金額が必要だからだ。
- ミラーレスカメラは「女子カメラ」として販売されているように、メインターゲットは女性である。それゆえ、まずは「小型・軽量が第一」のコンセプトで設計されていると思われる。つまり、私の使ってきたE-3やE-5のようなヘビーデューティなカメラとは対極にあるのだ。しかし、昨年春にオリンパスがE-M5を、そして、昨年末にパナソニックがDMC-GH3を発売したことで、流れが変わってきたように思える。ミラーレスカメラのターゲットに私のような体力の衰えてきた中年・老年ユーザが加えられたようだ。確かに現代の日本ではお金を持っているのは女性と老人なので、考え方としては正しいだろう。特に、これまで一眼レフカメラを使ってきた中年・老年ユーザが満足できるミラーレスカメラが必要になってきているのだ。
- 私の検討対象になっていたのはオリンパスのE-M5、パナソニックのDMC-GH3とニコンのNikon 1 V2の3機種である。ただし、昨年のCP+で感じたとおり、E-M5ではフォーサーズのレンズを充分には使えない。オートフォーカスが迷い過ぎるからだ。システムとして小型・軽量化を目指すためにはフォーサーズのレンズを考慮してはいけないようだ。つまり、アダプターなどを使わず、専用レンズでシステム構成することを前提に考えなければならないのだ。
- いろいろ検討をしていたのだが、当面はE-5で頑張ろうという結論になってしまった。確かに、Nikon 1のシステムも少しずつ充実してきており、1 NIKKOR VR 6.7-13mm f/3.5-5.6という、135換算で18-35mm相当の超広角ズームレンズも登場することになっている(2013年3月7日発売)。しかし、小さいと言われているフォーサーズよりセンサーが小さいのが気になってしまう。そのディスアドバンテージを上回る、連写や動画撮影のメリットが私には必要なさそうなのだ。なるほど、ニコンのアピールするとおり、Nikon 1 V2は基本性能を磨き上げたアドバンストカメラだと思うのだが、写真メインの私にはちょっと合わない感じだ。
- パナソニックは手ぶれ補正機構をボディ内に持っていないのがネックだ。ボディ内に手ぶれ補正機構を持っていないにも関わらず、パナソニックのレンズには手ぶれ補正機構がないものがあるのだ。特に私が一番欲しいLUMIX G VARIO 7-14m/F4.0 ASPH.に内蔵されていないのが一番の問題である。広角系には手ぶれ補正は不要というのは誤りで、明るさが足りない状況では広角系でも手ぶれ補正が有効なのは当り前のことだ。LUMIX G X VARIO 12-35m/F2.8 ASPH./POWER O.I.S.やLUMIX G X VARIO 35-100m/F2.8 POWER O.I.S.という素晴らしいレンズが発売されているのに残念である。つけ加えるならば、ズームリングの回転方向がオリンパスと反対なのもちょっと戸惑うところである。
- では、オリンパスで決まりかというと、そうではなかった。私はPEN-FTからの根っからのオリンパスユーザなのだが、M.ZUIKO DIGITALレンズの行き当たりばったり感には困惑している。同じレンズが何度もリニューアルされていたり、フォーサーズのZUIKO DIGITALレンズと異なり、グレード分けも不明確である。デザインもバラバラで、色も黒やシルバーがあったり無かったりする。単焦点レンズが多いのは良いのだが、私の欲しい焦点域ではないのも困ったところだ。パナソニックの統一されたデザイン感とレンズラインアップを見習ってもらいたいところである。結局のところ、ニコン、パナソニック、オリンパスの3社ともに決定打が無かったというわけだ。
- もちろん、同じマイクロフォーサーズ規格なので、手ぶれ補正の付いているオリンパスのE-M5にパナソニックレンズを組み合せるのも選択肢になるのだが、「何だかなあ」という感じで踏み切れないのだ。カメラは趣味の道具であると良く言われるが、惚れ込まないと購入には踏み切れないものだ。
- まあ、マイクロフォーサーズに100mm以上(135換算200mm以上)の明るいレンズがないのも理由の1つではある。リアコンバーター式のテレコンバーターが無いのも困ったことの1つだ。フォーサーズとはレンズの設計思想が異なるからだろうか。こうして考えてみるとフォーサーズをミラーレスにし、小型化したカメラシステムが欲しかったのだが、それはマイクロフォーサーズとは似て非なるものなのかもしれない。
- 単純に考えると、E-5のマイクロフォーサーズ版のカメラボディに防塵・防滴のマイクロフォーサーズ版の7-14mm、12-60mm、50-200mm、1.4xテレコンがあれば直ぐにでも移行できるのだ。しかし、オリンパスはそう考えてはおらず、フォーサーズのレンズがあるからそれをアダプタ経由で使って欲しいと意思表示しているように思える。そうでなければ、ベストセラーの12-60mmや50-200mmをマイクロフォーサーズに移植しないわけがない。事実、パナソニックがそれを代わりにやろうとしているのだから、技術的には可能なはずだ。などと考えているうちに、システム変更の先延ばしが決まったというわけだ。
GR
- さて、少し余談を。全く想定外だったが、4月17日にリコーからGRが発表された。イメージセンサーが1/1.7型から一気にAPS-Cサイズに大きくなり、CCDからCMOSセンサーに変わった。イメージセンサーの面積が約8.6倍大きくなったにも関わらず、ボディがそれほど大きくなっていないのは立派だ。ただ、GR DIGITALシリーズは頑にワイシャツの胸ポケットサイズを守ってきたわけだが、ついにその縛りを破ってしまった。ネットユーザのファーストインプレッションはニコンのCOOLPIX Aと比べても圧勝なのだが、売れるだろうか。心配である。99,800円という価格は安いものではないからだ。長らく沈黙を守っていて死に体になっているのかと心配していたリコーの久々の新型カメラなので注目していきたい。
- 個人的には単焦点コンパクトカメラには興味がないのでGRはパスである。まあ、センサーサイズがメインのE-5を超えてしまっては困るという理由もある(笑)。個人的にはセンサーは4/3サイズぐらいの大きさで良かったのではと思うが、入手しやすいセンサーという意味ではAPS-Cサイズは一番なのだろうか。
- 実は私は単焦点カメラをほとんど使ったことがない。昔、XAを使ったことがあるが、レンズが35mmなので全く合わなかった。カメラとしては面白かったのだが、自分の好みは24mmだったので仕方がない。その後、単焦点カメラはいろいろ見てみたが、28mmが多く、24mmや21mmはほとんどないのだ。かつて、GR21というカメラが存在したが、135サイズフィルムの21mmは少し広角すぎた。135フィルムは画面が3:2の比率なのでワイド感が強く出るからだ。デジタルになって画面が4:3の比率になり、24mmより21mmがピッタリくるようになったというわけだ。
- ここ数年は24mmスタートのズームレンズを搭載したカメラが増えているし、ワイコンをつければさらに広角までカバーしてくれる。そういう理由で、私のコンパクトカメラはズームレンズを搭載したカメラになってしまう。私の愛機の1つであるGX200の後継機が出てくれば無条件で買いなのだが……。出ないだろうなあ。GX200のレンズをもうちょっとワイド寄りにして21-63mmとか、21-84mmなら素晴らしいのだが、そんなカメラを欲しがる変人はそんなにいないのだろう。確かにGRにワイコンをつけたら21mmになるのだが、ズームに慣れると単焦点コンパクトカメラは物足りない。レンズを交換できないからだ。
- 今回の発表はリコーファンとしてはとても喜ばしいことなのだが、発表会の背景のPENTAXロゴはいただけない。RICOHとPENTAXのダブルブランドで行くと決めたはずなのに、なぜRICOHロゴを使わないのか。そもそも企業名や企業ロゴがダメダメなのだ。リコーがペンタックスを買収しているのにペンタックスリコーイメージングと、ペンタックスが先にきているのは異常である。さらに、企業ロゴでPENTAXを大きく表示しているのもおかしい。リコーが何を考えているのか理解できない。
- 他社のダブルブランドの事例を見てみよう。例えば、パナソニックは三洋電機を買収しても三洋電機の製品ブランドを残している。例えば、三洋電機の充電池のeneloopはブランドを確立していた。パナソニックにもEVOLTAという充電池のブランドがあったのだが、統合されずに両方のブランドが残されている。しかし、SANYOという企業ブランドは廃されている。これが一般的な手法である。この点からもリコーのやっていることは常識はずれなのだ。まあ、常識が常に正しいとは限らないのではあるが……。ただ、リコーファンとしては発表会の背景にはRICOHロゴを使って欲しいと思えてならない。これだけは残念である。
2013/04/14
CP+ 2013 雑感(その2)
- さて、その他の雑感も書き残しておこう。
- 今回のCP+は不景気を強く反映したものだった。民主党政権から自民党政権に代わり、安倍首相の元でアベノミクスが進められている。大胆な金融緩和、多額の財政出動による公共投資の推進、民間投資の活性化による成長戦略により2%以上の物価上昇をめざしてデフレから脱却しようとしているのだが、まだ始まったばかりである。確かに1ドル80円を割り込んだ為替レートも1ドル94円台まで円安に振れ、日経平均株価も1万1,400円程度にまで上がってきている。しかし、円安が強力な追い風になるトヨタなどの自動車メーカに比べて電機業界やカメラ業界はまだ復調の兆しは見えていない。
- そのような環境で開催されたため、ちょっと困ったことになった来場者が多かったようだ。どういうことかというと、紙袋がほとんど配られていなかったのである。せっかくのパンフレットやカタログを入れる袋がないのである。例年エコバッグを大量に配布しているハクバも今年は配布量が少なかったようだ。それで、来場者はどうしていたかというと、「写真・映像 用品年鑑」をもらってその袋を使っていたのだが、この年鑑は分厚く重いのだ。できれば帰り際にもらうのが理想なのだが、そういう事情で先にもらう人が多かったようだ。来年はもうちょっと何とかして欲しいが、景気次第というところだろうか。
- さて、新製品のほとんど無かった今年のCP+だが、私には充分に面白かった。私は基本的にステージを中心に見て回るのだが、各社とも写真の面白さ、さまざまなレンズをで撮れる写真の素晴らしさをうまくアピールしていたと思う。また、写真の基本的なテクニックの解説もあり、写真初心者の取り込みも意識していたようだった。やはり、こういう地道な活動がユーザを増やしていくのだろうと思いたい。
- また、今回は主催者が各出展社のステージスケジュールをまとめて公開してくれていた。私のようなステージを巡る来場者にとってはこの対応はありがたいものだった。各社のWebサイトを訪れてそれぞれのステージスケジュールを確認し、巡回計画を練るのは大変だからだ。ぜひ、来年以降も続けてもらいたいものだ。
- 話を戻そう。私のような古くからのカメラユーザから見ると今のダブルズームキットがカメラメーカの首を絞めていると思えてならない。今ではクラッシックカメラと呼ばれるマニュアルフォーカスのフィルムカメラの時代にはカメラボディと標準レンズがセットで売られていたからだ。まあ、当時のズームレンズは単焦点レンズに比べてかなり高価だったのが原因の1つではあるのだが、ユーザは必然的にレンズを買い足したものだ。しかし、今のユーザは手頃な価格のダブルズームキットがあるので、最初にそこから入ってしまう。そうすると、レンズを買い足そうという気持ちが起こりづらいのだ。かわいそうである。メーカはいろいろステージで単焦点レンズの魅力や上位グレードレンズの描写の素晴らしさをアピールしているのだが、今のユーザに通じるだろうか。プロカメラマンの作例は素晴らしく、自分の撮った写真とは差があり過ぎるのだ。プロはレンズを選ばずに素晴らしい写真が撮れる。一般ユーザにとってこればっかりは自分で使ってみないとなかなかわからないのではないだろうか。
- 実は私もえらそうなことを言えない。今回のCP+で「あれ?、俺ってこんなに下手だっけ?」という体験をしてしまったからだ。私は風景や建築物を中心に撮るので人物はほとんど撮らない。ただ、CP+ではメモ撮り用などにE-620と14-42、40-150をポケットに入れている。さすがに「カメラ小僧」という歳でもないので、コンパニオンやモデルの撮影は基本的にしないのだが、ステージが始まる前のコマーシャルタイムでモデルがカメラを持って出てきたりする際に撮ったりするのだ。その写真の出来がひどかった。何枚も撮っているのにピントは甘いし、露出もホワイトバランスもおかしい。ピントが甘いので当然だが、解像感もない。
- 焦った私は翌日にE-5と50-200SWDを持ち出してもう一度撮ってみた。そして、その差に唖然とした。ピント、解像、露出と全く格が違うほど良いのだ。確かにかなりの価格差のある機材だが、これほど差があるとは……。ZUIKO DIGITALのSTANDAD GRADEレンズは悪くないと思っていたし、E-620も良いカメラだと思っていたのだが、ここまで差があると考えを改めないといけないようだ。プロは機材を選ばないが、アマチュアは機材を選ばないといけないのだ。メーカーはプロの素晴らしい写真を見せるだけでなく、素人に自分のカメラとお薦め機材での撮り比べをしてもらうべきだろう。その違いに唖然としてくれれば買ってもらえるかもしれないのだ。
- 私はできるだけ絞り開放で撮る癖がある。しかし、 STANDARD GRADEのZUIKO DIGITALレンズは開放で撮ると描写が少し甘くなる。また、私はピントはオートフォーカスで合わせているが、E-620とE-5のAFセンサーの性能にはグレード相応の差があるのだ。パシフィコ横浜のようなコンベンションセンターは天井が非常に高く、さまざまな照明が使われているミックス光源環境なので、露出やホワイトバランスの調整が難しい。それらをテクニックでカバーできるスキルが私には無いというわけだ。まあ、今回気づけたので私も少し精進してみようとは思うものの、考えを改めなければならないことに変わりはない。
2013/04/06
CP+ 2013 雑感(その1)
- CP+が閉幕した。今年も1日仕事を休んで3日間入り浸っていただが、簡単に雑感をまとめておきたい。インフルエンザで寝込んだりして公開が遅れているうちにニコンからD7100が発表されたりと動きがあったが、CP+当時の感想をそのまま記録しておきたいと思う。
- 今年はPhotokinaの翌年ということもあり、新製品が全くと言って良いほどない。つまり、2012年9月のPhotokinaで新製品を出し尽くしてしまったため、2013年1月のCP+は各社ともネタ切れということだ。まあ、これは毎度のことで、2年に1度開催されるPhotokinaこそがグローバルなカメラショーなのだと痛感させられる。ただ、今年になってカメラメーカ各社の新製品の噂が飛び交ってはいる。しかし、今年のCP+は例年より半月程度開催が早い。ちょっと新製品の発表には時期が早かったのかもしれない。
- とはいうものの、それでもCP+への来場者数は去年と同等のように思えた。大入り盛況である。公式発表の来場者数は合計で62,597名。昨年が65,120名だったので私の感覚とも合っていた。公式発表を記録しておこう。1月31日(木)は午後からの開催だったが10,692名、2月1日(金)は15,910名、2月2日(土)は20,652名、最終日の2月3日(日)は16:00までと1時間短い開催だったが15,343名の来場者数だった。
- 今年のCP+で強く感じたのは3点ある。まず、「やはり、ニコンは強い」、そして、「パナソニックが頑張っている」、最後に「リコーが消えた」である。
- ニコンは昨年にFXフォーマットの新製品(D4、D800/D800E、D600)を相次いで発売した。そして、NIKKORレンズは累計出荷7500万本を達成し、今年に発売開始から80周年を迎えるそうだ。FXカメラボディがヒットし、NIKKORレンズも売れている。向かうところ敵なしであろう。私がフォーサーズでデジタル一眼レフの世界に触れた時には「デジタル対応はまだまだ」だったNIKKORレンズが今やデジタル対応の新レンズがたっぷり揃うようになっている。ZUIKO DIGITALのSUPER HIGH GRADEに相当するレンズもリリースされ、デジタル専用の素晴らしいレンズ群というオリンパスのアドバンテージはもはや存在しない。それどころか、FXフォーマットでもDXフォーマットでも2グレードのレンズラインアップを用意するまでになっているのだ。それも単焦点レンズを含めてである。うらやましい限りだ。
- パナソニックはフラッグシップのDMC-GH3が昨年末に発売されたこともあり、今年は力が入っていた。昨年までのパナソニックブースはそれほど混雑しておらず、ステージ中でも空席があるのでちょうど良い休憩スポットだったのに対し、今年は大入り盛況でステージも超満員だった。面白かったのはステージの表と裏に席が用意されていて三面ステージになっていたことだ。おかげで多くの観客が座れたのだが、説明する写真家の皆さんはどちらを向いて話したら良いのかとまどっていた。(笑)
- ペンタックスリコーイメージングのブースには「PENTAX」ロゴが大きく掲げられていた。リコーがペンタックスを買収したはずなのに「RICOH」ロゴが無い。確かに「PENTAX」ロゴの下に小さく「A RICOH COMPANY」と書いてあるのだが、違和感が強い。どちらが親会社なのだろう。昨年のように「PENTAX」と「RICOH」の両方のロゴを掲げることはできなかったのだろうか。リコーのカメラユーザーとしてはとても悲しい。今回、コンセプトモデルとして全天球カメラを発表していたものの、PhotokinaでもCP+でもリコーの新製品は何もなかったのである。どうなってしまったのだろう。軒を貸して母屋を取られた、というところなのだろうか。
2012/02/25
今年のCP+ は大盛況
- 3.11の東日本大震災、福島第一原発の爆発と大量の放射性物質の飛散、と、その後に続く混沌とした状況に思うところあって更新を停止していたが、CP+の備忘録は残しておこうと思う。記録しておかなければ記憶は曖昧になって薄れてしまうからだ。いろいろ思うところはいつか書けるかもしれない。今はなかなか頭の整理がつかないのだ。
- さて、今年のCP+は大盛況だった。私は例年どおり金曜日に休みをとって土日も含めて3日間入り浸っていたが、さすがに疲れた。例年をはるかに上回る大入り満員だったのだ。昨年までなら各メーカのステージはそれなりに座ってみることができたのだが、今年は結構厳しかった。金曜日は平日だったこともあり多少何とかなったものの、土曜日は動き回るのもひと苦労だった。ただでさえ混んでいるのに、コンパニオンの撮影をしている人がいると前を横切れない。大変だ。(笑)
- 今年のCP+を取り巻く状況は特に厳しかった。昨年まではアメリカのサブプライムローン問題に端を発したリーマンショックとギリシャショックに始まった欧州通貨危機による景気後退の影響があった。しかし、日本への影響は致命的ではなく、不景気ではあるものの元気は残っていたのである。しかし、今年は違う。3.11の東日本大震災によって東北地方の製造業が大きなダメージを受けてしまった。自動車工場や電子部品工場の被害はニュースになったが、例えば、ニコンは東北地方に生産拠点があり被害を受けていたのだ。加えて電子部品メーカがかなりのダメージを受けたため、カメラ工場が復旧しても部品が足りなくて生産できなかったりしたのである。そして、影響は日本全国に広がっていたのである。自動車やエレクトロニクス業界だけではない。製紙業界、インク・印刷業界、ペットボトルや飲料缶製造業界、……さまざまな業界がダメージを受け、モノが足りなくなった。
- 東北地方、特に福島、宮城、岩手は東日本大震災の被害が大きく、さらに、レベル7超級の福島第一原発爆発事故が被害の追い打ちをかけている。食料品には放射能が問題なのだが、製造業には電力不足がダメージを与えた。「計画」停電とは名ばかりの停電で電子部品業界は生産もままならなくなってしまった。電力を独占している企業が電力を供給できなくなるということが最悪であることが明白になったのだ。長い混乱が続いたが夏場を超えて涼しくなり、何とか電力供給が間に合うようになって生産を再開したと思ったら、タイのバンコク近郊で大洪水が起こってしまった。「洪水」と報道はされたのだが、バンコク近郊は極めて平坦な地形であるので、雨期で降った大量の雨がチャオプラヤー川から溢れてそのまま溜まってしまっているのだ。つまり、海へ流れていかないのである。これは洪水というよりも浸水と言うべきではないかと思うのだが、膨大なエリアが水に浸かってしまったのだ。そして、タイは日本の大きな生産拠点でもあったのだ。ホンダの巨大な工場と駐車場にずらっと並んだ新車が水没している映像はショックであったが、カメラ業界も大きな被害を受けていたのである。特にニコンとソニーの被害は大きかったようで、カメラの新製品発売が延期・中止になったり、発表が延期されたりしていたのだ。
- ニコンは東日本大震災とタイの大浸水の二重被害を受けたわけだが、同じように被害を受けた日本の製造業は何社もあるようだ。その被害が何とか収束してきた頃にCP+が開催されたのである。こういう状況では展示会出展などの販売促進は経費が削られる傾向が強い。日本のエレクトロニクスショーであるCEATECは年々縮小傾向が続いており、そのうち成り立たなくなるのではと心配しているが、今年のCP+も厳しいのではないかと思っていた。さらに、昨年の10月にペンタックスのカメラ事業はHOYAからリコーに売却されたので、大きなブースが1つ減っている。また、オリンパスは「とばし」の粉飾決算で「日本企業全体の信用を地に落とした」と叩かれまくっている。年に1度のカメラ・写真ファンの祭典なのにどうなるのか、と心配していたのだ。
- 主催のCIPAは2010年の41,033名、2011年の49,368名を踏まえて、今年は50,000名を目指していた。まあ、リーズナブルな目標値である。厳しい状況はもちろんだが、今年は開催期間は昨年と同じ4日間であるものの、開催時間が1時間ずつ短いのだ。これは電力消費を少しでも抑えようという主催者の配慮である。
- しかし、CP+が近づくにつれて各社から新製品が発表され始めた。オリンパスからはマイクロフォーサーズのOM-D E-M5が発表された。 かつてのフィルム一眼であるOMシリーズに似せたEVF内蔵のミラーレス一眼である。リコーからはGXRのカメラユニット「RICOH LENS A16 24-85mm F3.5-5.5」が新発売された。APS-Cサイズのズームレンズユニットである。ペンタックスからはKマウントのAPS-Cサイズのミラーレス一眼のK-01が発表された。ニコンからはフルサイズの36.3Mのセンサーを搭載したD800とD800Eが発表された。さらに、シグマからはAPS-Cサイズ16Mの3層センサーを搭載したコンパクトカメラのDP1 Merrill、DP2 Merrill、そして、大幅にコストダウンされた一眼レフのSD1 Merrillが発表された。そして、ネットではかなりの盛り上がりを見せ始めていたのだ。
- 結果は先に述べたとおり大盛況で、65,120名もの来場者があったのだ。今年は東北や北陸で大雪被害が出ており、横浜も例年になくとても寒かったものの晴天に恵まれたことも追い風だった。CIPAの発表では2月9日(木)は午後からの開催だったが11,711名、2月10日(金)は16,774名、2月11日(土・祝)は22,408名、最終日の2月12日(日)は16:00までと1時間短い開催だったが14,227名の来場があったそうだ。昨年の2月9日(木)は同じく午後からの開催で8,835名、2月10日(金)は12,409名、2月11日(土・祝)は15,259名、最終日の2月12日(日)は同じく16:00までで12,865名で合計49,368名の来場だったことを考えると大幅増である。主催者、出展社の関係各位の頑張りには拍手を送りたい。ただ、事務方は大変だったろう。金曜日は普通に受付をしていたが、土曜日は受付でパンフレットを配るのをあきらめてしまっていた。入口に平積みされていたのだ。(苦笑)
CP+ 2012 ファーストインプレッション(オリンパス)
- 出展社ごとに簡単に第一印象をまとめておこう。印象というのは新しい情報でどんどん上書きされてしまうからである。
- オリンパスのブースには各所に「粉飾決算のお詫び」が掲示されていたが、大盛況だった。開場直後からTシャツとOM-1のストラップの記念品に長い列ができた。そして、OM-D E-M5のタッチ&トライコーナーにも長い列ができていた。経営者が愚かであっても社員はまじめに仕事をしているのだ。その事を皆良くわかっているのだろう。
- E-M5は思っていたより小さかった。高級感もそこそこあり、格好良い。これは売れるだろう。PENに続いて過去のOMシステムの遺産を食い潰そうとしている、と揶揄する輩もいるが、プロモーションとしては悪くはない。私はPEN-FTやOM-4、OM-4 Ti Blackのユーザだが、今のPENやOM-Dはうまくテイストを引き継いでいると思う。もちろん、根本的に別物であるのは言うまでもない。フィルムカメラとデジタルカメラが同じわけがなく、雰囲気を受け継ぐという手法がポイントなのだ。
- E-M5はPENシリーズの上位に位置するマイクロフォーサーズのカメラである。スペックの目玉はEVFを内蔵したこと、16Mの新型イメージセンサ、5軸の手ぶれ補正、動体追尾も強化された高速AF、防塵・防滴の5つだ。
- 内蔵されたEVFはPENの外付けEVFと同等の144万ドットだが、使い勝手が向上している。光学ファインダー(OVF)と異なり、電子ビューファインダー(EVF)はさまざまな付加情報を表示することが可能である。格子状のラインを表示すれば、水平・垂直が容易に出せる。ホワイトバランス、白とび、黒つぶれもそのまま見ることが出来る。拡大してピントを確認することも可能なのだ。つまり、デジタルカメラにとっては非常に有望な技術なのだ。現状ではEVFは背面液晶と同等のドット数に達しているが、OVFには見劣りする。付加情報と見栄えを天秤にかけることになるのだが、 EM-5のEVFはどうなのだろう。ほんの少し触っただけなのでコメントは控えることにしたい。
- 16Mの新型イメージセンサーはその製造元が話題になっているが、オリンパスは公表していない。まあ、素性よりもサンプル画像で判断すべきだと思うのだが、簡易版のカタログにもサンプル画像が載っていない。これも後日に判断することになりそうだ。また、E-M5の画像エンジンTruePic VIはE-5と第三世代のPENに採用されているもので、ファインディテール処理が可能であり、このイメージセンサーもローパスフィルタを極力薄くしているのだろう。解像感に期待したい。そして、画像データの読み出しがかなり高速化されており、連写は最大9コマ/秒を実現している。まあ、ピント固定で手ぶれ補正なしでのスピードだが高速化しているのは間違いない。この高速化で動画撮影が改善されており、「こんにゃく」現象が大幅に改善されているらしい。今までのデジタルカメラの動画はちょっと不自然だなあと思っていたが、要はイメージセンサーの画像データの読み出しと処理が追いつかないのが原因らしい。これが高速化によってかなり改善されたそうだ。
- 5軸の手ぶれ補正はすごいらしい。細かなところまではわからないが、ペンタックスが既に実現している磁力でイメージセンサー自体を浮遊させて動かすことで補正する方式に似ているそうだ。スチルカメラは2軸の補正を行っているが、縦方向・横方向の並進ぶれと回転ぶれにも対応したので5軸なのだ。説明されたのは並進ぶれはマクロ撮影に、回転ぶれはスローシャッターに効果的らしい。ただ、実際のところはどちらもムービー撮影を意識したものであるのは明らかだ。いろいろ見聞きしたところでは非常に強力なもののようだ。
- 動体追尾も強化された高速AFはオリンパスのハイスピードイメージャーAFから改良されてきたコントラストAFである。詳細はブラックボックスの中だが、アルゴリズムの見直しやメカニズムの高速化でスピードアップしたのだろうか。こういう「世界最速」というカタログスペックはプロモーションとしては重要なのだが、正直なところ、私には重要とは思えない。なぜなら、現状のコントラストAFのスピードは十分に速いからだ。確かに最初の頃のPENのAFは遅かったが、第三世代になったPENのAFは十分に速い。それをさらに高速化したのは動体撮影のためだろう。私のように風景写真を中心に撮る者には十分なスピードであっても、動体撮影には力不足だからだ。さらに、E-M5には3Dトラッキングが搭載されている。これはニコンのお家芸であるパターン認識技術による動体追尾オートフォーカスと同じことを狙った機能だろう。ニコンがNikon FAから20年以上かけて熟成してきた技術にオリンパスがどこまで迫れているのか興味深いところだ。余談だが、Nikon FAのマルチパターン測光に次いでオリンパスもESP測光(エレクトロセレクティブパターン測光)というパターン測光を搭載したOM40を製品化していたのは懐かしい。まあ、キャッチコピーが確か「逆光強し」だったように、逆光で被写体が真っ黒につぶれない程度のものだったのではあるが、パターン測光を試行していたわけである。そう言えば、ニコンは「3D-トラッキング」を商標登録していなかったのだろうか。厳密には「-」が入っていないのだが、キヤノンが「アートフィルター」で失敗した二の舞はして欲しくはないものだ。事前に調整がついていることを願いたい。
- 防塵・防滴はフォーサーズのフラッグシップであるE-5と同等らしい。ただ、マイクロフォーサーズはこれまで防塵・防滴をしてこなかったため、対応しているレンズがM.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZしかないのが残念である。そもそもマイクロフォーサーズは小型化が最優先なので、レンズも小型なものがほとんどである。小型にするためにはF値は暗くせざるを得ないし、防塵・防滴にはできなかったのだ。そこで、オリンパスは防塵・防滴のアダプタMMF-3をリリースし、フォーサーズの防塵・防滴レンズを使用できるようにしている。私はZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWDで試してみたが、ガタガタ微調整をしながら合焦する感じでスパッとAFは決まらない。まあ、位相差AF用のレンズでコントラストAF(ハイスピードイメージャーAF)をするのは無理があるので仕方ない。グリップをつけるとフォーサーズレンズでも楽にホールドできるだけにちょっと残念ではある。
- さて、マイクロフォーサーズでフォーサーズのレンズをストレスなく使うための解決策は現状でも既に2つ明らかになっている。1つはソニーが製品化したマウントアダプタであるLA-EA2である。これはAマウント(αマウント)の位相差AFレンズをEマウント(NEX)のミラーレスカメラに取り付けるアダプタなのだが、ハーフミラー(トランスルーセントミラー)と位相差AFセンサが内蔵されているのだ。そして、もう1つはニコンのNikon 1で製品化されている撮像面位相差AFである。ニコンはコントラストAFと撮像面位相差AFのハイブリッドのオートフォーカスシステムをイメージセンサーユニットに内蔵したのである。これらは共にソニーにはEマウントのレンズが、ニコンには1マウントのレンズが少ないことをカバーするために開発された技術でもあるのだが、マイクロフォーサーズには既に数多くのレンズが用意されている。
- オリンパスもこの2つの技術を意識している発言をしているものの、わざわざ大きなレンズをアダプタ経由で使う必要はなく、マイクロフォーサーズレンズを使えば良いのだろう。オリンパス自身がE-M5に関する発表で「E-M5はプロ用ではない」「フォーサーズのカメラもレンズも開発している」とコメントしていることからも、マイクロフォーサーズの防塵・防滴システムの完成にはしばらく時間がかかると思われる。当面はまだ防塵・防滴にはフォーサーズのE-SYSTEMが必要だということだろう。
- 私としては小型・軽量ならE-620とZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6、ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6、ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6の3本のレンズがあればマイクロフォーサーズでなくても問題はない。防塵・防滴や高性能レンズを使いたければ、E-5やE-3とZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0、ZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWD、ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4.0 SWD、ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD、1.4x Teleconverter EC-14のレンズがあれば十分なのだ。もちろん、10mm F2などの単焦点レンズが欲しい気持ちに変わりはないが、ちょっと辛抱というところだろう。
- E-M5で面白いと思ったのはライブバルブとライブタイムだ。長時間露光の進捗状況を背面液晶で確認できるのだ。いつか夜空を撮ってみたいと思っているのだが、私のようなにわか夜景カメラマンには便利な機能だ。シャッターを開け、背面液晶で露光具合を確認し、良い感じと思えばシャッターを閉じれば良いのだから簡単である。「はやぶさ」の帰還をE-30で撮影したプロの写真を見て、私は「E-SYSTEMでも十分に夜景は撮れる。高感度に弱いが、そんなにひどいものではない」と思っていたので興味がわいたのである。
- さて、今年のオリンパスはE-M5などいつものステージも行っていたのだが、それとは別に「写真のチカラ」と銘打って東北応援のステージを展開していた。桃井一至氏の岩手三陸鉄道、土屋和義氏の福島いわきフラガール、斎藤功一郎氏の宮城石巻の田代島のネコ、の3つのステージだ。これはCP+ 2012のテーマ「伝える、つながる、写真の力」にも通じるもので、かなりの力作のステージだった。
CP+ 2012 ファーストインプレッション(ノンレフレックス)
- 次に「ノンレフレックス」について書いておこう。CIPAは統計用に「ノンレフレックス」という呼称を使うことにしたと発表した。私は「業界団体として良くぞ決めた!」と関心してしまった。昔と違って業界団体には力がなくなっており、個々の企業の方が力を持っているからだ。もちろん、CIPAは各カメラメーカに「ノンレフレックス」と呼べと強制しているわけではない。自分達の統計資料にその呼称を使うと宣言しただけなのだ。
- この呼称の意味は、ミラーレス一眼(マイクロ一眼、デジタル一眼、アドバンストカメラ、など各社呼称が異なる)だけを見ている人にはわからないだろう。デジタルカメラにいろいろなバリエーションが生まれてきて従来の「レンズ交換式」と「レンズ一体型」では分類できなくなり、今後は「一眼レフ」と「ノンレフレックス」で分類するということなのだ。ただ、この変更にはミラーレス一眼は関係ない。従来の区分でも明確に「レンズ交換式」に分類できたからだ。私は実は今回のCIPAの変更の原因になったのはリコーのGXRだったと思っている。GXRは「レンズ交換式」でもあり、「レンズ一体型」でもある。レンズとセンサーが一体化した「カメラユニット」を交換できるからである。今回の区分の変更によりGXRは「ノンレフレックス」に分類されることになったわけだ。
- まあ、実はこのニュースで私が驚いたのは従来の分類基準が「レンズ交換式」と「レンズ一体型」だったということだ。てっきり「一眼レフ」と「コンパクトカメラ」で分類されていると思っていたのである。統計ってなかなか面白いものだ。(笑)
CP+ 2012 ファーストインプレッション(ペンタックス・リコー)
- CP+の初日にリコーは「デジタルカメラ関連事業の組織機能の変更について」という発表を行った。その内容はリコーのカメラ事業と買収したペンタックスのカメラ事業を単に統合するのではなく、パーソナル向けのカメラ事業はペンタックスに、業務用のカメラ事業はリコーに統合するというものだ。しかし、リコーが親会社でペンタックスは子会社である。その中で、メインのパーソナル事業を子会社の方に統合する意味は何なのだろう。そして、パーソナル向け、業務用と言っても共通のカメラ技術を使っていたりするはずだ。なぜ、わざわざ分けるのだろう。正直なところ、良くわからない。
- さて、リコーとペンタックスのブースは1つになっていた。出展申込時にはリコーとHOYAだったのだろうが、今は親子会社であるので共同出展となったのだろう。ブースの作りは昨年のリコーのブースに似ており、大きく引き延ばした写真が目を引いたものの、展示やステージはペンタックス6:リコー4という感じだった。「田中希美男が語るリコー・ペンタックスのカメラの魅力と将来」というステージの中で、田中希美夫氏が「無茶ぶりにもほどがある。将来なんて私にわかるわけがない」とぼやいていたが、両社のカメラがどうなっていくのか興味深いところである。先の発表を踏まえれば、ペンタックス色が強くなるような気もしないではないが、リコーのGR DIGITALについては田中氏いわく、「リコーのカメラのアイデンティティだから、手を触れるな」ということで、全く同感である。
- 余談だが、「田中希美男が語るリコー・ペンタックスのカメラの魅力と将来」というステージは急きょタイトルに「と将来」が追加されたようだ。リコーのホームページのステージプログラムにはその3文字が無く、司会者ですらその3文字を読み落として田中氏に指摘されていたぐらいなのだ。先の発表を受けて3文字を追加したのかと勘ぐってしまう。
CP+ 2012 ファーストインプレッション(ニコン)
- 私は現在のデジタルカメラで一番技術的に進んでいるのはニコンのカメラと思っている。ただ、「いや、キヤノンだろう」と言われたら反論はしない。私はキヤノンのカメラはノーマークだからだ。実は私はキヤノンのカメラが余り好きではない。フィルムカメラ時代のNew F-1やAE-1は好きだったのだが、タンクと呼ばれたT90のなで肩フォルムの不細工さにあきれ果てて対象外にしてしまったからだ。カメラは趣味の道具であり、機能・性能以上に好きになれるかが重要なのだ。余談だが、私はパナソニックのマイクロフォーサーズカメラやレンズは性能的には嫌いではない。しかし、カメラの正面にLUMIXと銘打っているのは好きになれない。どうしてPanasonicにしないのだろう。リコーも以前はCaplioというブランドを使っていた。Caplio GX100が登場した際には最終的にCaplioロゴで購入をあきらめた。次世代機のGX200でロゴがRICOHになったので購入したというわけである。まあ、あくまでも個人的な好みの問題である。
- さて、ニコンのカメラで最も優れていると思うのはレンズである。デジタル対応レンズは元々はオリンパスのお家芸であったのだが、フォーサーズの新しいレンズが開発されなくなりニコンにその座を明け渡してしまったようだ。私は広角使いなので、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G EDやAF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G EDは素晴らしいように思える。しかし、高い。高すぎるのだ。そのため、私はZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0とZUIKO DIGITAL ED 14-35mm F2.0 SWDを購入したわけだ。
- そして、カメラボディもニコンは素晴らしい。カメラの基本は正確なピント合わせ、正確な露出制御である。もちろん、連写性能なども人によっては重要な機能だろう。これらについてニコンはダントツにトップ性能を誇っている。オートフォーカスセンサーは「アドバンストマルチCAM3500FXオートフォーカスセンサーモジュール」に進化し、F8に対応した。これは暗いところでピントが合うということではない。どのレンズまでAFが効くかということなのだ。通常のAFセンサーはF5.6対応なので、開放F値がF5.6までのレンズに対応している。最近はテレ側でF6.3なんて悲しいズームレンズがあるように暗いレンズが増えている。小型化の方が優先されているからだろう。さすがにニコンにはそんなレンズはないのだが、テレコンバーターを使用する場合にはF値が1段、2段暗くなってしまう。F4のレンズがF5.6、F8になってしまうのだ。それでも十分にAFが効くのは素晴らしいことなのだ。
- また、オートフォーカスには位相差AFとコントラストAFの2つがあるが、コンパクトカメラやミラーレスカメラ、そして、ライブビュー時にはコントラストAFしか使えない。これは位相差AFセンサーが使えないからなのだが、ニコンはレンズ交換式アドバンストカメラであるNikon 1に「撮像面位相差AF」を搭載した。これはイメージセンサーユニット自体に位相差AFセンサーを組み込んでいるということだ。Nikon 1はコントラストAFと位相差AFを併用するハイブリッドAFによってFマウントのFX/DXレンズをストレス無く使えるらしい。先に述べたとおり、フォーサーズ使いとしてはこの技術にとても興味がある。
- 露出制御についてもニコンは進んでいる。「91KピクセルRGBセンサー」は従来の「1005分割RGBセンサー」を大幅に進化させた約91,000分割とも言える高性能なものになっている。画面を細分化してパターン認識をすることで露出を決めるのだが、Nikon FAのマルチパターン測光始まるこの技術はニコンのお家芸である。この露出補正の究極の姿は露出補正が必要ないことだが、ニコンのD4やD800/D800Eはそれにかなり近づいているようだ。シャッターを押せば誰でも素晴らしい写真が撮れるようになるのは素晴らしいことだ。まあ、そうなってしまうとちょっとつまらないかも知れないのだが……
- さて、ニコンはオートフォーカス(AF)と露出制御(AE)を組み合わせて画像エンジンのEXPEEDで処理することで多彩な機能を提供している。詳しくはニコンのホームページを見ていただきたいが、個人的に興味のある機能を書いてみよう。3D-トラッキングは被写体をパターン認識してAFが追い続ける動体撮影には便利な機能である。アクティブD-ライティングは画面のハイライト部とシャドー部をパターン認識して露出を制御するものだ。適正露出にするのではなく、シャドー部はつぶれないように持ち上げ、ハイライト部は白とびしないように落とすデジタルの覆い焼き処理を自動で行っているのである。
- 私はカメラの基本性能はレンズ、ピント、露出であると思っているが、ニコンのカメラは基本性能が極めて高いのだ。デジタルに移行し、ごみ取りや防塵・防滴が基本性能に加わったのだが、それらはオリンパスが上かもしれない。だから私はオリンパスのカメラを使っているとも言える。実際にはフルサイズと呼ばれる135サイズのカメラは大きく、重く、それにレンズまでつけると持ち歩けないという事情と資金がたりないという問題があるのだ。ただ、前述のとおり、オリンパスのカメラ開発はニコンと似ているところがある。私にとってはニコンは「あこがれのカメラ」であり、オリンパスは「比較的安価な小型軽量のニコンのようなカメラ」という側面も若干ではあるのである。
- 忘れていた。最後にD800とD800Eについて書いておかなければならないだろう。今回ニコンはD4とD800/D800Eを発表した。D3シリーズとD700に代わる新世代機である。ニコンのステージで阿部秀之氏が説明していたところによると、D3s、D3xの後継機がD4、D700の後継機がD800というものではないらしい。D3sの後継機種がD4、D3xとD700の後継機種がD800/D800Eということらしい。阿部氏によると、ニコンのフラッグシップは報道系とコマーシャル系の2つがあるらしい。スポーツ写真などに代表される報道系にはチャンスを逃さず、暗いなど撮影条件が悪いことが苦にならないカメラが必要だ。つまり、連写速度が速く、高感度に強いことが必須条件なのだ。そして、それはD3sがその役割を担っていたのである。対してモデル撮影、風景写真、カタログ写真などに代表されるコマーシャル系には高い階調性と解像感のあるカメラが求められる。そして、それはD3xがその役割を担ってきたのである。これに対し、D700はD3sの弟分としてバッテリーグリップに相当する下の部分を切り取ったカメラだったのだ。
- 今回ニコンは報道系にはD4を、コマーシャル系にはD800を用意したというわけである。確かにD4は16.2Mのセンサーを搭載し、ISOは12,800まで対応している。増感すればなんとISO 204,800まで対応するのだ。これに対し、D800は36.3Mのセンサーを搭載し、ISOは6,400、増感しても25,600までの対応である。現時点ではD4xの予定はなく、その役割はD800が担うそうだ。確かに、風景写真を撮るのに高速連写は不要である。しかし、高感度撮影は必要かもしれない。この2つのカテゴリはスパっと切り分けられるものではないので先のことはわからない。まあ、現状では万能なカメラは作れないのだから仕方がない。
- D800とD800Eの違いはローパスフィルタの処理が有効か無効かの違いだそうだ。しかし、ローパスフィルタの役割を知っていればわかることだが、ローパスフィルタの処理が無効化されているD800Eはレンズを選ぶのだ。阿部秀之氏はD800Eを買うよりD800とレンズを1本買った方が良いと言っていたがそのとおりだろう。D800Eは素人には敷居が高い。さらにD800より5万円程度高いらしいことを考えると阿部氏の意見はリーズナブルと言えるだろう。
- そう言えば、XQDカードという高速カードが登場し、D4に採用された。こういうメディアについては規格として生き残ることが重要だ。画質に優れてたベータマックスはVHSに破れて市場から消えていったのだ。高速だからといって無条件に生き残れるものではないのだ。たくさんあったメモリーカードも今や生き残っているのはSDカードとCFカードだけになりつつある。xDピクチャカードもメモリースティックも消え去るのは時間の問題なのだ。やはり、それなりの数量が売れないことには存続できないのである。XQDカードはちょっと注目しておこうと思う。
- さて、ニコンのフラッグシップの一覧表をアップデートしておこう。D2xs以降の機種を時系列に並べてみた。個人的には2009年11月以降はモデルチェンジしていなかったのに驚いた。それまでは毎年モデルチェンジしていたのに、今回は約2年半ぶりのモデルチェンジなのだ。デジタル一眼レフが成熟した製品になってきているのはもちろんだが、それだけ製品としての完成度が高いのだろう。
- この2年半を挟んだ約3年間には数多くの普及機がリリースされている。D3000系、D5000系、D7000系のボディである。当り前だがフラッグシップだけでは数が売れない。多くの普及機があってこそシェアがとれるのである。そしてこれらの普及機にはフラッグシップの技術が投入されているのである。
| フォーマット |
マグネシウム ボディ 防塵・防滴 |
画素数 |
ファインダ |
背面液晶 |
オートフォーカス センサー |
測光センサー |
ISO |
シャッター ユニット |
発売 |
D2xs |
DX |
○ |
12.4M |
100% (0.86倍) |
2.5型 23万ドット |
マルチCAM2000 |
1005分割 RGBセンサー |
100〜800 |
1/8000 〜30秒 |
2006/6 |
D3 |
FX |
○ |
12.1M |
100% (0.7倍) |
3型 92万ドット |
マルチCAM3500FX (51点) |
1005分割 RGBセンサー |
200〜6400 |
1/8000 〜30秒 |
2007/11 |
D300 |
DX |
○ |
12.3M |
100% (0.94倍) |
3型 92万ドット |
マルチCAM3500DX (51点) |
1005分割 RGBセンサー |
200〜3200 |
1/8000 〜30秒 |
2007/11 |
D700 |
FX |
○ |
12.1M |
95% (0.72倍) |
3型 92万ドット |
マルチCAM3500FX (51点) |
1005分割 RGBセンサー |
200〜6400 |
1/8000 〜30秒 |
2008/7 |
D3x |
FX |
○ |
24.5M |
100% (0.7倍) |
3型 92万ドット |
マルチCAM3500FX (51点) |
1005分割 RGBセンサー |
100〜1600 |
1/8000 〜30秒 |
2008/12 |
D300s |
DX |
○ |
12.3M |
100% (0.94倍) |
3型 92万ドット |
マルチCAM3500DX (51点) |
1005分割 RGBセンサー |
200〜3200 |
1/8000 〜30秒 |
2009/8 |
D3s |
FX |
○ |
12.1M |
100% (0.7倍) |
3型 92万ドット |
マルチCAM3500FX (51点) |
1005分割 RGBセンサー |
200〜12800 |
1/8000 〜30秒 |
2009/11 |
D4 |
FX |
○ |
16.2M |
100% (0.7倍) |
3.2型 92万ドット |
アドバンスト マルチCAM3500FX (51点) |
91Kピクセル RGBセンサー |
100〜12800 |
1/8000 〜30秒 |
2012/3 |
D800 |
FX |
○ |
36.3M |
100% (0.7倍) |
3.2型 92万ドット |
アドバンスト マルチCAM3500FX (51点) |
91Kピクセル RGBセンサー |
100〜6400 |
1/8000 〜30秒 |
2012/3 |
D800E |
CP+ 2012 ファーストインプレッション(その他)
- その他でまとめてしまっては申し訳ないのだが、CP+は私の興味の範囲内でしか見ていないのでお許しいただきたい。さらに、実物を見ていないものまである。大混雑の中だったので探すのをあきらめたのだが、マイクロフォーサーズだから「まあ、良いか」と思ったのだ。(苦笑)
- 今回のCP+ではマイクロフォーサーズに参入したレンズメーカが話題になっていた。パナソニックとオリンパスが始めたマイクロフォーサーズ規格だが、フォーサーズの失敗から安易に賛同企業を増やさなくなっていた。しかし、マイクロフォーサーズがミラーレスカメラで大きなシェアを占めるに至って賛同企業が増えたのだ。マイクロフォーサーズでは製品を発売する前提でないと賛同企業にはなれないそうなので、これはマイクロフォーサーズの新しいレンズが登場することを意味する。
- フォーサーズの盟友でもあったシグマはマイクロフォーサーズにも参入するようだ。フォーサーズが過去形になってしまったのは残念だが、2本のマイクロフォーサーズ用のレンズを発表している。SIGMA 19mm F2.8 EX DNとSIGMA 30mm F2.8 EX DNの2本はAPS-CサイズのソニーNEXのEマウントとも共用のレンズなのでやや大きいがミラーレス専用の高性能レンズである。
- マイクロフォーサーズ用のマウントアダプタを発売していたコシナは明るい単焦点レンズを発売・発表している。NOKTON 25mm F0.95とNOKTON 17.5mm F0.95の2本のレンズはマニュアルフォーカスだが、F値が1を切る明るいレンズなのだ。
- そして、トキナーがReflex 300mm F6.3 MF Macroを参考出展していた。また余談だが、OM-4を使っていた頃に超広角ズームが欲しくてトキナーのAT-X 24-40mm F2.8を検討していたのが懐かしい。当時のオリンパスにはS ZUIKO AUTO ZOOM 28-48mm F4しか広角ズームがしかなかったからだ。結局、24mm F2があるので手を出さなかったのだが、私にはトキナーはサードパーティの中では高級レンズのイメージがあるのだ。
- 最後にタムロンもマイクロフォーサーズへの賛同とレンズ開発を発表している。ニコン最強のセールスプレゼンターの阿部秀之氏はタムロンでもステージを行っているのだが、それを聞く限りではタムロンのレンズの強みは次の2つだ。1つは高性能なレンズ素材をケチらずに使うことで実現する小型・軽量化で、高倍率ズームを小型軽量化するのは得意のようだ。もう1つは強力な手ぶれ補正技術で4段分以上の効果があるそうだ。どんなレンズを開発するのか楽しみである。
バックナンバー(その40)
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