1999/10/12
アップル新製品の第一印象(その3:Power Macintosh G4)
- 第一印象は「高級感」である。Power Macintosh G3 よりはるかに洗練されて見える。色が違うだけでここまで違うのかと驚かされた。特にポリタンクといわれるサイドビューは素晴らしい。G3 のサイドビューが安っぽく見えてしまう。ただ、フロントビューは相変わらずだ。何が気に入らないのか考えてみた。たぶん、一体感がないのが問題なのだろう。縦の細かなスリットが入ったカバーがマッチしていない。スピーカの位置もサイズも間が抜けている。色使いも問題だろう。サイドの色をそのまま持ってきた方が良いのでは無いだろうか。私はデザインの素人ではあるが消費者としての好みで言えばこんな印象であった。
- スペックは細かな強化が行われている。Ultra ATA/66 が搭載されたので記憶装置への転送速度が上がったはずだ。AirPort へも対応し、AGP×2 へも対応した。ただ、個人的には予想以上に早く PowerPC 7400(G4)が登場したのには驚かされた。かつて AltiVec と呼ばれた Velocity Engine の能力は未知数だが楽しみだ。現在は対応アプリケーションが少なく、Photoshop 専用マシンなどと言われているが、画像処理アプリケーションは今後大幅な機能アップが期待できる。
- 今回の Power Macintosh G4 の登場は Velocity Engine 対応アプリケーションを増やしたいというアップルの戦略的なリリースだと思われる。通常の処理では PowerPC 750(G3)でも十分に高速であるからだ。Pentium に搭載された MMX 技術もそうだが、新たな機能を生かすためにはアプリケーション自体を書き直さなければならない。それは大変な作業だ。新しい命令セットを勉強し、それに対応するプログラムを書かなければならない。そして、その技術が将来的にも提供され続けられるかは未知数である。市場に受け入れられなければ消えていくのだ。それならばアプリケーションを書き直さず、CPU の高速化を待てば良い。CPU 速度に比例してアプリケーションは高速化されるからだ。どこでブレイクスルーが起こるのかが問題だ。
- アップルは何をしたかったのだろう。私には時期尚早に思われた PowerPC 7400(G4)の投入にはブレイクスルーを起こそうという意志を感じる。G4 ユーザが増えれば増えるほどソフトハウスは Velocity Engine にアプリケーションを対応させたいと思うからだ。つまりそれだけたくさんの販売が期待できるということだ。もちろん、G4 Velocity Engine 以外にも多くの機能強化が行われている。バス幅は広がり、演算ユニットの数も増えている。動作周波数以上の性能強化が計られている。
- ただ、モトローラは最新チップを量産するのに苦労するだろう。あれだけの LSI を量産するのは大変だ。歩留り(良品率)も最初は高くはないだろう。十分に供給できないなどの噂も出るほどだ。私が時期尚早と思った理由もそこにある。アップルもそのリスクはわかっていたはずだ。それでも G4 を出荷したかったのだ。アップルの心意気をくんでやりたいものだ。
- さて、アップルは Power Macintosh G3 を生産中止し全てを Power Macintosh G4 に切り替えるようだ。そこまでしなくてもとは思う。並売しても良かったのではないか。事実 Power Macintosh G4 / 400MHz は従来のマザーボードの改良型に PowerPC 7400(G4)を搭載したものだ。マザーボードを2種類にするのだったら G3 のまま売っても良さそうなものだ。ボディが2色になるのが生産管理上などで困るのなら Power Macintosh G3 の色をグラファイトにすれば良いことだ。うーん。そこまで PowerPC 7400(G4)に入れあげているのだろうか。やはりアップルの心意気と思うしかないようだ。
- 私見だが、最近の CPU のスピード競争にはむなしさを感じている。果たしてどれほどの意味があるのだろう。あれだけのスピードを生かせるアプリケーションなどどこにあるのだ。Photoshop と QuickTime 4、3D ゲームぐらいしかないのではないか。そのためだけに最新式の高速 CPU を搭載する必要があるのか。無駄だと思う。それなら安い CPU を搭載したマシンを安く販売した方が良い。1000$ パソコン実現のためにはその方が近道だ。まあ、IBM-PC/AT 互換機の世界では既に 700$ PC ぐらいは当り前になってはいるのだが、それは機能を削ぎ落とした単機能モデルである。Macintosh のローエンドモデルを企画するのも意味があるのではないだろうか。私は PowerPC 750(G3)の266MHzマシンを使っているが快適である。