Macintosh 雑記帳(バックナンバー)
このページには Macintosh についての個人的メモを掲載しています。不定期に更新します。
1999/07/18
アフターサービスとは?
- 今インターネット上では某大手メーカのビデオデッキの修理に関して「暴言を吐かれた」件が話題になっている。Real Audio で公開された電話の録音テープには驚いた。それだけならそこで話は終わったのだが、私も同じような経験をしてしまった。
- 買って半年の AppleVision 850 が写らなくなったのだ。起動して暫くすると画面が写らなくなる。別に省エネルギー設定をオンにしているわけではない。インジケータもオレンジではなくグリーンのままだ。P-RAM をクリアしてもディスプレイの初期化をしても状況は改善しない。保証期間内なので修理を頼もうと購入した店に出向いたのだが……
- 「ディスプレイの修理は受け付けません」「直接アップルに連絡して下さい」の一点張りである。販売店として修理を仲介するべきではと聞いてみても「そんな義務はない」「販売店の仕事は売って利益を上げることだ」最後には「何なんだあんたは」「帰って下さい」である。困ったものである。これが秋葉原でも有名な Macintosh 安売店の現状である。ちょっとガッカリしてしまった。
- だが、某大手メーカの場合もこの店の場合も共通点がある。この2例で全てを論ずるのは極端だが 冷静に考えてみよう。アフターサービスとは何なのか。販売店の役割は何なのか。私もあるメーカに勤務する者だからだ。
- メーカは販売した商品に対して責任がある。故障すれば保証期間内外に関わらず修理する義務がある。製造終了後8年間はユーザのために補修部品を保管する義務もある。つまり、ユーザは最低でも8年間はその商品を安心して使うことができるはずなのだ。ただ、8年も経てば安い新製品もたくさん売られているわけで修理するより買い換えるという選択肢もある。しかし、それは別の話だ。
- では販売店はどうだろう。販売店はメーカが販売するための窓口である。よぼどの巨大メーカでない限り全国に販売網を作り上げることはできない。そのため、さまざまな店と販売店契約を交わし商品の販売を代行してもらっているのだ。だが、アフターサービスはどうなのか。原則的にはメーカの役目である。当然だが販売店に修理は出来ないからだ。しかし、ユーザはメーカにどうやって商品を持ち込むのか。そう、メーカが修理するには故障した商品を受け取らないといけないのだ。通常は販売店契約には修理品の受付という項目が含まれているはずだ。保証書に販売店印を押すところがある。それは販売日を保証するためと同時に修理受付窓口をユーザに明示するためなのだ。いくら販売店でも他の店で売られた商品の修理受付まではやりたくないだろう。修理受付だけでも人件費などのコストがかかるからだ。
- そう、このコストが問題なのだ。人が1時間働けば4,000円から5,000円のコストがかかる。人件費やら事務所の賃貸料、光熱費などが必要だからだ。そして、修理受付をすると他の業務ができなくなる。その損失を考慮すればコストは2倍になるのだ。このコストはどこで負担するのか。当然ながらメーカが負担するわけだが、販売店にキャッシュバックするわけではない。販売店への商品の卸金額とユーザへの販売価格の差額ににそのコストが含まれているのだ。販売店はそういうアフターサービス費用も含めて販売価格を決めているのだ。しかし、安売店の場合は得てしてアフターサービス費用を切り詰める傾向にある。同じ商品を他の店より安い価格をつけるためにはそうするしかないのだ。
- さて、少し方向を変えてみよう。ブランドイメージというものがある。魅力ある商品を作るメーカはブランドイメージが高い。そしてユーザに次にも同じメーカブランドの商品を買ってもらえるのだ。ただ、魅力ある商品を作ればブランドイメージが高くなるのか。そうではない。アップルが一時期大幅にブランドイメージを落としたのは記憶に新しい。市場不良を多く出してしまったのが原因だった。そう、製品の品質が高いこともブランドイメージに向上に関係がある。しかし、品質が高くても商品は故障する。これは仕方のないことだ。故障をゼロにすることは限りなく困難である。
- つまり、ブランドイメージを高くするためには「魅力ある商品を作り」「品質の高い商品を作り」「故障した商品の修理などのアフターサービスを充実させる」ことが必要なのだ。この3つの中で一番難しいのは「魅力ある商品を作る」ことで各メーカが苦労している。しかし、残りの2つは品質管理を正しく行い、修理受付体制を明確に作り上げればどんなメーカでも実現できるのである。ただ、コストがかかる。この不景気でそのコストまで削られ始めているようだ。
- 修理受付でユーザを門前払いできればその後のコストはゼロになる。具体的には故障した商品の往復の輸送コストや修理コストとそれらに関わる人件費が不要になるのだ。景気が悪くなると企業経営に余力がなくなる。意図的だとは思いたくないが、そういう経費を切り捨てても販売数を伸ばすため商品価格を安くする傾向があるようだ。不景気だとユーザは少しでも安い商品を買おうとするし、高ければ買い控えてしまうからだ。「暴言を吐く」ということはこの門前払いである。ユーザを脅して修理受付を断念させようとしていることに他ならない。
- もう一つ大切なことがある。「お客様は神様です」この言葉はウソではない。お客様に商品を買ってもらえるからメーカは存在できるし、販売店も存在できるのだ。得てして商品を売る営業係が重要視されるが、アフターサービスを受け持つ人達も重要な役割を担っている。それは忘れられ勝ちである。10の満足は1の不満で簡単に消えてしまう。たった一つのトラブル処理を失敗したためにその人はそのメーカの商品を買わなくなるし、その販売店から買わなくなるのだ。そして、それは口コミで(そしてインターネットで)たくさんの人達に広まっていくのだ。
- お客様はわがままなものだ。自分のお金で商品を買っているのだ。その商品が期待を裏切ったら怒るのは当然である。その怒りを受け入れるのがアフターサービス担当者なのだ。理不尽なクレームでもじっと我慢してニコニコ笑いながら、すみませんと恐縮しながら受け入れなければならない。それが出来ないならアフターサービスを担当してはいけない。アフターサービスは尻ぬぐいである。設計上の問題で故障しやすい商品もあるだろう。営業が不人気商品をたたき売ったものもあるだろう。自分で壊しておいてメーカ責任にする理不尽なユーザもいるだろう。しかし、耐えなければならない。そう、アフターサービスに最も要求されるのは製品知識でも、技術力でもない。忍耐力なのだ。それが欠けているプロ根性のないサービスマンが「暴言を吐く」のだ。
- どんなにサービスマンが強がってみたところで故障品を修理するのはメーカの義務である。修理を仲介するのは販売店の義務なのだ。それはどんなに理屈を並べたところでくつがえるものではない。そのあたりをよく知ったユーザに突っ込まれると「暴言を吐く」しかない。優秀なサービスマンなら「なだめたり」「泣き落としたり」テクニックを駆使するだろう。「その商品はとてもお安いのでそこまでの機能はないのです。申し訳ありません」「うちは安売店なのでそこまでしているとやっていけないのです。メーカがキチンと対応してくれますからそちらにお問い合わせいただけないでしょうか」
- 要は人と人とのコミュニケーションである。お客様に納得いただくべくテクニックを駆使することが大切なのだ。お客様のリクエストを全てかなえることが重要なのではない。勘違いしてはいけない。お客様に納得していただくことが大切なのだ。先に述べたようにメーカにも販売店にも事情はある。赤字になったのではメーカも販売店も潰れてしまう。それではユーザも困るだろう。ただ、「暴言を吐く」などの「脅し」は止めた方がよい。逆効果になってしまう。怒ったユーザが一人いればメーカや販売店は大きなカウンターパンチを受けるのだ。それを避けるためにもユーザにその事情をやんわりと納得いただくことが重要なのだ。こういうテクニックは使って悪いことはない。ユーザが言いくるめられたのではなく自分で納得したのだと思ってくれればそれで良いのだ。
- また、テクニックの一つに「ユーザを悪者にする」というものもある。つまり、ユーザに因縁をつけられたことにするのだ。某メーカとのトラブルの電話録音テープに再三でてくる「あなたの要求は何ですか」という言葉である。そこでユーザが「慰謝料として100万円寄こせ」とでも言ってしまったら「脅迫」になってしまう。そうすれば簡単にユーザを告訴することができるのだ。そういう最低のテクニックは使ってはならない。メーカや販売店の品位が下がってしまう。そんな輩からは誰も商品を買おうとは思わないだろう。
- 最後に良いメーカを一つあげておこう。悪い例ばかりでは憂鬱になるばかりだ。ソニーのサービスステーションは優秀である。全国にサービスステーションを配置していて土曜日も営業している。応対もていねいで古い製品を持ち込んでも「ああこんなに大切に使っていただいてありがとうございます」と言われこそすれ「さっさと新しいのに買い換えたらどうですか」などとは絶対に言われない。ユーザの言う不具合に真剣に耳を傾け的確に処置してくれる。だから私はソニー製品を愛用しているのだ。
- さて、アップルのサポートに電話してみるか。どんな対応をされるか楽しみである。たった1本しか電話番号がないのでつながるかどうか。まあ、電話機一台と言うことはないだろうが。一般的に外資系企業のアフターサービスは不十分である。日本に参入してからの時間が日本企業と比べて圧倒的に短いのだから仕方がない。アップルはどうなのか。フリーダイヤルではあるが、月曜から金曜までしかやっていない。ピックアップに来てくれるらしいが平日に来られたら会社を休まないといけない。楽しみなようで不安である。
1999/07/16
本音と建て前(Mac OS 8.6J)
- アップルは Mac OS 8.6J のアップデータを雑誌の付録に添付しないと言う。添付しない理由は「Mac OS はアップルの重要な商品なので直接お客様に届けるべきだと判断した」ということらしい。Macintosh 情報誌もそれを非難していない。全く情けない限りだ。
- もう少し素直に言えないものか。「Mac OS でも稼げることがわかったので、雑誌にアップデータを添付せずお客様に直接販売します。」と言えば良いではないか。言葉を選んでスマートに言うならば「Mac OS はアップルの大切な商品であり、無償提供するべきものではないと判断しました。」で十分である。
- 私はアップデータを雑誌の付録に添付しないことに不満を言っているのではない。本音を言わずきれい事で済ますやり方が気に入らないのだ。そして Macintosh 情報誌が何も言えないのが気に入らないのだ。アップルを非難すれば今後の雑誌編集に支障がでるのか。情報がもらえなかったり、テスト機を貸してもらえないなどのいやがらせを受けるのか。アップルはそこまで子供なのか。それではあまりにも悲しいではないか。
- アップデータはインターネットから「無償」でダウンロードできる。しかし、実際には通信費(電話代)と接続費(プロバイダへの支払い)が必要になる。1MB程度のファイルならダウンロード費用もそれほどではない。しかし、47MBもあればダウンロード費用は膨大になる。(英語版は35MBである。日本語版は最初は90MBを超えていたのだ。)こういうことに「無償」という表現を使って良いものだろうか。結局のところ、アップルから CD-ROM を購入した方が安いはずだ。
- アップルは多くの人がダウンロードしたと発表しているが、アップデータをダウンロードするユーザとは一部だと思われる。
- 会社に専用線が引かれていてインターネット使い放題であるユーザ。
- 定額制のプロバイダと契約していて、かつ、テレホーダイも契約しているユーザ。
- どうしても CD-ROM 到着まで待てない新しい物好きのユーザ。
- 以前と異なりアップルのユーザは増えている。ダウンロードに躊躇するユーザがたくさんいるはずだ。ダウンロードに何時間かかるかわからないのだ。また、ダウンロードに失敗するかもしれない。長い時間かけてダウンロードしたのに失敗していたらショックは大きい。日本のインターネットインフラは不十分であるし、ダウンロード用サーバにアクセスが殺到すれば不具合が起きてもおかしくない。
- そして、大きなファイルを保存しなければいけない。Macintosh に不具合が起これば Mac OS を再インストールしなければならない。しかし、ハードディスクに保存していたらフォーマットなどできないではないか。その度にアップデータをダウンロードすることなど出来ない。2台目の HDD や Zip、MO などのドライブなどの大容量の記憶装置を持っているユーザはまだ少数だ。やはり、CD-ROM に入ったアップデータは必要なのだ。
- もう一つ問題がある。アップデータは新機能強化は当然だが、バグフィックスを含んでいるのだ。私はスグに新しいバージョンのソフトウェアに飛びつくことは危険だと思っている。機能が強化されたということは大きく重くなっているからだ。また、別の新しいバグを持っているかもしれない。現状で満足しているなら新しい物に飛びつく必要はないだろう。しかし、バグフィックスとなれば話は別だ。バグといっても全ての Macintosh モデルに関係するものではないが、関係のあるモデルを使っているならバグフィックスを行うべきだ。メーカとしてバグフィックス版をユーザに無償提供するのは義務である。バグフィックス部分だけでも Macintosh 情報誌の付録の CD-ROM に収録して欲しかった。
- ちなみに Mac OS 8.6J のアップデート CD-ROM には2種類ある。単なるアップデータが入った CD-ROM と Mac OS 8.6J を最初からフルインストールできる Mac OS 8.6J そのものが入った CD-ROM の2種類である。(実際に確認したわけではない。アップルの説明を読めばそう思える。)この2種類で十分差別化できるのではないか。システムの再インストール時に Mac OS 8.5J をインストールしてから Mac OS 8.6J のアップデータをかけなおすのは面倒である。それを一度にできるのであれば購入しても良いと思うのではないか。
- アップルも考えてほしい。アップデータを複数のバグフィックス・モジュールと新機能モジュールに分割し、バグフィックス・モジュールを無償で提供し、それを CD-ROM でも配付する。そして、全てを含んだフルインストール版の Mac OS を販売すればどうだろう。バグフィックスも「xxx用xxxx改善モジュール」など数種類になるだろうから面倒な人はフルインストール版の Mac OS を購入するだろう。
- ただ、一つ懸念がある。違法コピーの問題だ。販売する場合に何をもって正規ユーザと判断するのか。今のところアップルは製品に同梱されているアップグレード・クーポンチケットをよりどころにしている。しかし、この方法は何度も使えない。クーポンチケットの枚数は限られているからだ。使い切ってしまえば正規ユーザと証明できない。Mac OS 8.7J がでて、Mac OS 8.7.1J がでて、……。いつかは新たに購入しなければならなくなる。
- やはり、昔ながらの方法しかないのだろうか。昔はバージョンアップの際には旧バージョンのメディアを返送していた。つまり、「交換」するのである。これなら正規ユーザを確認できるし、パソコンショップ経由でもバージョンアップできるのだ。旧バージョンを手許に置いておきたい場合は新規購入すればよい。もともとソフトウェアはバージョンアップしてもライセンス数が増えるわけではない。新旧両バージョン使おうという方が無理なのだ。
- こういう議論は Macintosh 情報誌がやるべきだと思うのだが……
1999/07/15
台湾 PC 恐るべし
- SOTEC のコマーシャルを見た。私は最初勘違いをしていた。CRT は別売りで 99,800円だと思ったのだ。しかし、違うのだ。CRT 込みで Celeron 400MHz 搭載の IBM-PC/AT 互換機が10万円を切って販売されているのだ。なぜこんなに安くできるのか。台湾で生産しているからだろう。
- もはや日本で生産していては安くならないのだ。日本は完全に台湾に抜かれてしまった。物価水準が異なるため台湾の方が人件費が安いのは当然ではあるが、それだけが理由ではない。台湾には PC 先進国のアメリカの技術が惜しげもなく投入されているのだ。日本の PC メーカも台湾メーカからの OEM を受けたりしているようだ。以前は回路設計は日本で行い、台湾では量産を行っていただけだった。しかし、アーキテクチャは共通なのだから回路設計をどこでやっても同じだ。台湾には電子部品工場がたくさんあり、最新パーツやボードがいち早く手に入る。モデルチェンジが頻繁であれば時間が一番大切なのだ。
- IBM-PC/AT 互換機のモデルチェンジは頻繁である。半年毎に新製品が出るのは当たり前で、ひどい場合には3ヶ月毎に新製品が登場する。問題は何も進化していないことだ。CPU のスピードは10%程度速くなり、グラフィックチップは1世代新しくなったりしているもののアーキテクチャは進化していない。しかし、これは仕方ないことだ。IBM-PC/AT 互換機の規格改定は年に1回だからだ。車に例えれば、フルモデルチェンジが年に1回あり、マイナーチェンジが年に3回あるということだ。
- IBM-PC/AT 互換機のアーキテクチャは Windows の進化に合わせて毎年改定されている。「PC99」などと呼ばれているのがその規格だ。例えば、Windows 98 の登場に合わせて USB や IEEE1394(FireWire)が規格に統合された。最近の「ボタン一つでインターネット」ができるキーボード上のアプリケーション起動ボタンなども規格に入っているはずだ。そうでなければ各社いっせいに同じようなアプローチはできないはずだ。
- さて、この規格の発表に合わせて全世界でいっせいに新モデルの開発が始まる。新規格にあったパーツはまずアメリカで登場する。そしてすぐ台湾でボード化される。このパワーはかつての日本人も持ち合わせていたものだが、今では台湾をはじめとする東南アジアのものになっている。もちろん、海賊版などの問題もあるが、日本は上品さと引き換えに「がむしゃらさ」を失いつつあるようだ。
- 製造技術の面でも日本人が得意にしている「軽・薄・短・小」化技術も追い付かれつつある。ノートPC ですら Made in Taiwan になってきている。もはや微細加工技術といえども日本の専売特許ではない。
- さて、Macintosh はどうなのか。iMac は韓国で作られており、待望のコンシューマ・ノートブックは台湾で作るようだ。やはり、もはや台湾・韓国などの東南アジアの国々を抜きには考えられないのだ。そして彼等はただの下請けではなくなりつつある。かつては電子立国と呼ばれた日本のライバルになったのだ。どのように対決するのか真剣に考える時が来てしまった。
バックナンバー(その11)
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