剣、それは山を目指す者にとっては特別な響きがある 65歳以上は参加を断わるツアーもある 今回参加した朝日旅行会も事前に特別な登山を義務付けえられた それだけになんともいえない緊張感を持っての登山であった |
・日 時 2001年7月30日〜8月2日
・参加者 朝日旅行会参加 13名
(男10名女3名)
7月30日
かって一度雨のため断念し、その後風雨のなかの立山を縦走した思い出の剣へ再挑戦することにはかなり迷いがあったが、どうしてもこの山だけは登っておきたいという思いが強く、トップシーズンで小屋が混むことを覚悟の上でツアーに参加する。しかし利尻でヒザを痛めトムラウシを断念し、約一ヶ月半の空白があっただけに、その間スポーツクラブでのトレーニングはそれなりにやったつもりではあったが、果たして大丈夫かなという不安を抱えての参加となる。事前に問い合わせてみるとタタミ一畳分は保証するとのこと、さらに特にカラビナなどはいらないという話しに一安心。
当日は6時30分集合でこれでは時間的に電車はムリということで家内に羽田まで送ってもらう。40分で到着、さすがに早い。7時発の便で8時には富山着。すぐにマイクロバスで室堂へ。久しぶりの室堂はさすがに涼しく懐かしい風景の中を雷鳥沢へ。そこで弁当を食べ、以前苦労した懐かしい雷鳥沢を登る。あれからの鍛錬の成果は歴然でそれほどの苦労もなく、これまた思いでの剣御前小屋に着く。かなり寒い中ポカリを飲んで一息。肝心の剣岳は雲の中だったが、眼下に剣沢小屋と以前に泊まった剣山荘が見え懐かしい思いとともに、果たして登れるかどうかの不安がよぎる。3時に剣沢小屋に到着。約束通りの8畳に8人だったが隅を確保して一安心。カラビナはいらないという話しだったが、ガイドの近田氏は無いと安全は保証できないという。確認までとったこともあり抗議したが話しにならないのでままよと腹をくくっていたが、親切にも小屋の主人が貸してくれほっとする。結構豪華な夕食をとり睡眠薬を飲んで、朝3時の起床にそなえて7時には睡眠態勢に入る。はじめて使用した耳栓の効果もありかなりぐっすりと寝られる。
7月31日
3時起床、3時45分スタート。剣の頂上にかなり黒い雲がかかりいやな予感がし、しかも何となく気持ちがのらない中、ヘッドランプをつけ剣山荘を目指して歩く。結構な行程で早朝の歩きだけに厳しい。剣山荘で一息入れていよいよ登りがスタート。小一時間で一服剣(2618m)に着きそこで朝食。丁度日出の時間で鹿島槍、五竜などが見られ、これならいけると思ったところで、ガイドの近田氏が中止を宣言。全員唖然としたが、雲行きと風の向きから雨が降る可能性が強いとの説明に納得せざるをえない。そのための予備日がありやむなし。しかし小生は気持ちが何となく盛り上がっていなかったためむしろほっとする。 剣山荘でコーヒーを飲んで6時30分に小屋に帰る。
それからの一日は小屋の窓から剣の雲行きを眺めたり、丁度やっていたフジテレビの中継などを冷やかしたり、持参した本を読んだりビールを飲んだりして、悶々とした時間を過ごす。しかし先に出発した他ツアーのメンバーが無事に登頂して帰ってきたときはさすがに全員がしょんぼり。果たして明日はどうなることか、もし雨で登れなかったら・・・の思いに全員の顔色がさえない。明日を信じて眠りにつく。それにしても何もない一日は長い。
8月1日
3時起床。ゴーゴーという風の音にがっくり、しかし昨日より頂上の雲の形が異なり少し高い。予定通り昨日と同じルートをたどり一服剣へ。朝食をとっていると朝日がまぶしく照らす。頂上は見えないがなんとかなりそうで昨日のような不安感を混ぜたいやな気分は今日はない。いよいよ未知の世界へ挑戦。そびえ立つ前剣へ向かって前進。うわさ通りの厳しさで緊張の連続。しかし高所恐怖症でない限り、握力がしっかりしていればそれほどおそれることもない。幸いトレーニングで腕力や握力を鍛えていたお陰で鎖場は順調にこなせる。
6時25分前剣(2813m)へ着く。眼下に富山湾までが見渡される状況に一安心。本峰が眼前にそびえ立つ。頂上は雲の中だが雨の心配はなさそう。いよいよここからが難所の連続、平蔵のコルまではどこをどう通ったのか全く覚えていない。それほど歩くことに神経を集中していたのだろう。ようやくカニのタテバイに取り付く。ここで念のためはじめてカラビナを使用。それほど期待していなかったが、いざ使ってみると結構安心感が持てて40mといわれる垂直の岸壁を快調に登りきる。そこからは最後の登り、幸運にも雲が切れ晴れ間が見え始める。累々たる岩をかき分けるように頂上を目指す。8時25分雲の切れた頂上に立つ。感激ひとしお
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頂上は槍ヶ岳より少し大きいくらいでそれなりにこじんまりとした祠が鎮座。早速にお参りして後は記念撮影に大わらわ。全員が子供にかえったようで無邪気な感動にひたる。展望は完璧とはいえないまでもかなりの山々が臨まれそれなりに満足して9時に下山開始
問題のカニのヨコバイは第一歩だけが問題で、後は順調に平蔵のコルへ。しかし前剣まではとにかく緊張の連続、両手両足をフルに使ってなりふり構わぬ歩きに徹する。登りと同じでどこをどう歩いたか全然覚えていない。ところどころ断片的に記憶がよみがえるだけ。ようやく一服剣にたどり着き全員がほっと一安心。後はのんびり下るだけで12時40分剣沢小屋に帰還。後で聞いた話では頂上が晴れたのは我々がいた小一時間ぐらいだけだったとか。山の神様に感謝。夕方の剣の写真などを撮りまくり夜は全員で乾杯し大いに満足して眠りにつく。
8月2日
5時食事、6時30分出発。今日は雲一つない快晴。しかし池には氷が張っているのはさすが。見送ってくれる様な剣岳を何度も何度も振り返りながら別山乗越へ。そこからは大日岳方面への緩やかな下り道を選択。これ以上無い快晴の中を室堂平をはじめ遠く薬師岳、黒部五郎岳、槍ヶ岳、そして白山を見ながら雷鳥沢を経て10時40分室堂へ。すぐにバスで下山、立山国際ホテルで入浴と昼食を済ませ、富山空港への途中で立山博物館に立ち寄って、剣岳の山頂で発見されたという槍の穂先と錫杖の頭を見て歴史の長い立山信仰に思いをはせる。
5時55分発のANAで7時羽田着、8時30分帰宅。最大の課題であった剣岳を登頂したことで何となく気が抜けて様な気分におちいる。しかしまだまだこれから、気を引き締め頑張らねば・・・