80才体験するの巻
2001年02月08日

#お暇な時にどうぞ



2/8〜9に、幕張メッ●で行われたシニア向けのイベントに、出展者として参加した時の話である。

イベントに出展している某ブースで、”誰でも80歳のお年寄りになれる体験”というのをやっていた。今まで、TVや雑誌で見たことがあったので、是非、体験してみたかった。自分のブースの様子を見て、休憩時間に行ってきた。

ブースに行くと、「体験ですか?」と聞かれ、女の人(おばさん)が慣れた手つきで私の体にいろいろと装着を始めた。まずは、手術用みたいなぴったりするビニールの手袋をはめる。その上に、手品師がはめるような白い布の手袋をする。さらに、利き腕のひじの関節には、マジックテープつきのバンドをぐるぐる巻きにされる。同様に、利き足の膝の関節にも、バンドでぐるぐる巻きにされる。さらに、ベストを着させられ、ポケットに重り(たぶん1キロずつ)を入れられる。重りの入った靴も履かせられ、杖を渡される。目の上には、だいだい色のスキーのようなゴーグルをはめさせられる。わざと曇りガラスのようにしてあるもので、前が雲ってよく見えない。さらに、耳栓をしっかりとさせられた。これが、80才の平均的な体なのよ、と言われた。関節もよく曲がらず、体も重く感じ、指先も思うように動かない、耳も聞こえにくい。色つきのゴーグルは、白内障の人のイメージなのだそうだ。

その状態で、最初に、「今着たベストのファスナーをしめてみて」と言われた。ファスナーの前は開いたままだったのである。ビニール手袋の上に、布の手袋をしているので、指先が思うように利かない。おまけに、色つきゴーグルのせいで、物がよく見えない。ちょっと時間がかかりながら、ようやくしめられた。すると、「今のを試してみて、お年寄りの洋服を選ぶ時に、気にしてあげなければいけないことって何かなぁ?」と聞かれた。私:「ん〜っと、ファスナーの大きいものを選ぶこと?」 おばさん:「正解。他には?」 私:「ファスナーと洋服の色が違うものを選んであげることかな?」 おばさん:「大正解! 試してみると、どういうことに気をつけなければいけないかわかるでしょ?」

それでさっそく、散歩に出ることに。おばさんが付き添ってくれる。まずは、公衆電話へ。テレホンカードを渡されて、「177(天気予報)にでもかけてみて」と言われた。まず、カードがつかみにくい。おまけに、プッシュボタンも押しにくい。なんとか電話をかけて、受話器を耳にあてると、今度は177の放送が聞き取りにくい。たまたま、音量を調節できる公衆電話だったので、音を大きくしてみた。「ね、聞こえづらいでしょ?」と言われ、今度は、おばさんがわざと、テレホンカードを床に落とした。「拾ってみて」。これがまた、しゃがみづらい&カードなんて薄いものを、手袋をした手だと本当に拾えないのである。なんとか、拾うことができて立ちあがった。

すると、おばさんは、お財布から100円玉、10円玉、1円玉を取り出して、「落としてみるから、どれがどれか当ててみて」と言ってきた。私は、そっぽを向いて、耳を澄ませる。「チャリーン」「チャリーン」「チャリーン」。全部同じ音に聞こえるよぅ。適当に答えたら、大ハズレ!「じゃあ、拾ってみて」。これがまた、カードもそうだけれど、小銭も拾いづらいのである。「ね、お金を落としても、何を落としたのかわからないし、拾いにくいし、大変でしょ? もしも、駅とかで困ってる人がいたら助けてあげてね」と言われた。納得。

次は、階段をのぼりに行った。「手すりにつかまらずにのぼってみて」と言われた。杖があるものの、手すりがないと、結構怖い。それに、足がうまく曲がらないし、重いので、うまくのぼれないのである。むぅぅ。「今度は降りてみて」と言われて、降りてみた。降りるほうが怖い!! ここでも、おばさんは「ね、階段も、1段ずつ色が違うとか、階段の縁に色がついていたりすると、降りやすいでしょ? 全部同じ色だとよく見えないし、つるつるしている階段だと怖いでしょ?」。こちらも納得。また、階段の手すりの重大さを実感した。

下まで降りると、今度は、「イスに座ってみて」と言われた。休憩所にある、普通の木のイス(1人掛け)である。これが、ひざが曲がらないので、座る時に加減でできず、どんっと、尻もちをついたようになってしまう。また、「立ちあがってみて」と言われたのだが、これがまた立ちづらい。おばさんが、腕を支えてくれた。すると、立ちやすいのである。「ね、肘掛があるイスとか、なくても、誰かが腕を支えてあげると立ちやすいのよ。手を貸してあげてね。」こちらも、納得。

そのまま、また会場の中へ。今度は、会場内の案内板の前につれていかれる。「●●っていうブースの場所を探してみて」と言われた。色つき&曇っているゴーグルのせいで、全然文字が見えない。「わかりません」と言うと、「じゃあ、トイレの場所はわかる?」と聞かれた。人型マークが見えたので、「あ、ここですね」と答えた。すると、「当たり。じゃあ、どっちが男性かわかる?」と聞かれた。赤い色の女の人型(スカートになっているもの)と、青い色の男の人型(ズボンになっているもの)が2つ並んで書いてあるのだが、色の区別がつかないうえに、形がはっきりと見えないので、どっちがどっちかわからない。「うぅ」と困っていると、おばさんは、「私達は、普段、瞬間的に、色とかで区別しているのよね。色も形もはっきりしないと困るでしょ。もっとマークにも工夫をすべきね」と言っていた。たしかに‥‥ 世の中って、高齢者に厳しいのだろうか? そんなこんなで、体験終了。お疲れ様〜

ブースに戻って、全部装着品をはずしてくれる。うぉー、体が軽い! 色がはっきり見える! まわりの音がうるさい!! ひぇぇ、と言っていると「これから、お年寄りを見たら、助けてあげてね」と言われた。ん〜、重い一言かも。貴重な経験をした象。まさに、当事者になってみないと、その人の気持ちはわからない、といった感じであった。これからは、なんとなく、ではなくて親身になって助けてあげられそうな気がした。


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