見たまま作文 

  No.996
  題名 霜とシュンギク(「五行歌の会」の同人誌に掲載された)
  書込日 08-02-07
霜とシュンギク

 「うっ〜! スガコのようだ」
 シュンギクの茎を指で折ったときのおどろきだ。茎が氷のように冷たい。早くなんとかしてあげなければ。五〜六十センチに伸びた二十株ほどのシュンギクを手早く収穫した。

 昨夜のこと。「明日は朝の冷え込みが厳しい。関東北部では霜の恐れがある」と天気予報がくりかえす。川崎の北部でも霜がおりるかもしれない。
シュンギクは霜があたると完全に萎えてしまい食用に適さなくなる。過去に何度も被害にあっている。それを承知の上でわき芽を採ろうと茎を伸ばしている。伸びればそれだけわき芽が多く採れる。だから霜との勝負だ。
今年も、一度わき芽を収穫した。今日の昼、散歩のとき見ると、あと一週間もすれば二度目の収穫ができそうだった。

 夜の七時のニュースでも明朝の冷え込みを予報している。霜がおりたらおしまいだ。どうしよう。気持ちが落ちつかない。これから畑に行って収穫しようか。だが、晩酌にお酒を少し飲んだ。車で行くわけにはいかない。十分もかからない所だから歩いて行こうか。でも、暗い畑で収穫していたのでは泥棒とまちがえられるかも知れない。寒い中を歩いて行って脳卒中にでもなったのでは割に合わない。昼間から寒くなる予報がでていたのだから収穫しておけば良かった。
 そうだ、明朝、日の出前に行って収穫しよう。霜がおりても、まだ被害は軽いかもしれない。そう割り切ろう。

 ソファで一刻ほどまどろんだ。目覚めると、未練が頭を持ち上げた。シュンギクは茹でてよし、鍋によし。香りが大好きで毎年育てている。よその、どの菜園よりもできがいいと自慢だ。それなのに、霜でやられたのではみっともない。畑に行って収穫したい気持ちがぶり返す。少しの酒だから抜けているだろう。だが、もう九時を過ぎている。やはり、あきらめよう。
 待てよ、明朝車に霜が張り付いていたら面倒だ。霜除けにフロントガラスに新聞紙をかけておこう。霜がおりる夜は風が弱いから飛ばされることもなかろう。
 外に出ると空に雲が半分ほど広がっている。新聞紙をワイパーで押さえただけでは新聞がめくれてしまった。雲があり少し風があるから、強い霜にはならないかもしれない。それに期待しよう。

 今朝、書斎の窓から日の出をたしかめてから外に出た。車の屋根やフロントガラスが少し白くなっている。弱い霜がおりたようだ。早く行って収穫しなければ萎えてしまう。

 持ち帰ったシュンギクを早く温めてあげなければ。温いお湯を流しながら枯れた葉や萎えた葉を取り除いた。茎はまだ氷のよう冷たかった。
(2007-12-21)